【第二章 スライム街へ】第九話 相談
キングとクイーンは、もう少し池?湖?川?の状況を確認したいらしい。
私とカーディナルは、急いで家に戻ることにした。
家では、既に私が状況を説明している。
私が家に戻ると、議論は終わっていた。
反対者は居なかったということだ。どうやら、ライが、私の受けた衝撃や哀しみを皆に伝えたようだ。ライが感じた衝撃や哀しみや憎しみが私に伝わるように、私に生じた感情は、ライにも伝わってしまう。
『ご主人さま。困りました』
”ライ?どうしたの?”
私とカーディナルが到着してすぐに、ライとアドニスが近くにやってきた。
『はい。今回の掃討作戦は、かなりの規模になってしまいます』
”そうだね”
『皆に危険を説明したのですが、誰一人として反対をしませんでした』
”うん。それは聞いた”
『皆が参戦を希望しています』
”え?カラントやキャロルは無理でしょ?”
『はい。でも、場所が川のような場所なので、自分たちが必要だと言っています』
”あっ・・・”
それからが大変だった。
パロットは、家を守るために残ってくれると最初に宣言をしてくれた。
続いて、ギブソンとノックも、裏庭の守護と家の周りの警戒をしてくれる。
ラスカルは、少しだけ渋っていたが、裏庭と裏山の巡回をしてくれることになった。私たちの家が拠点で、帰ってくる場所だ。奪われるわけにはいかない。あの川での出来事が、私たちの近くで発生しない保証はない。だから、戦闘力があって飛行能力がない物には残ってもらいたかった。
皆に、しっかりと説明をした。
最後まで、渋っていた。カラントやキャロルも、近くの川や興津川までなら移動が出来る。そこから、情報収集をお願いした。
出陣するのは、私の分体。ライの分体(多数)。カーディナル。キング&クイーン。アドニス。テネシー&クーラー。ピコン&グレナデン。
フィズは1/3が参戦して、ナップが小さくなって背中に乗っていく。
アイズとドーンは、どこに居ても違和感がないから、連絡兼予備戦力として、待機することになる。家と現場までの各地を繋ぐ役目を担当する。
フリップとジャックは、戦力になるディック/キルシュ/グラッド/コペンを運ぶ。その後は、前線が逃したものを掃討する役目だ。
最前線は、皆の大反対が有ったが、私とライが担当する。武器を使えるのが、私とライだけなので、これは皆に納得してもらうしか無い。その代わり、私もライも分体で参戦する。本体は、家でパロットたちに守られている。
実は、武器はいくつか確保している。
裏山や近くの山に居た魔物のドロップ品だ。
『ご主人さま。僕たちは、こっちの短剣を使います』
武器や防具がドロップしたのだ。
ドロップする確率は低い、ほとんど、ドロップしないと言ってもいいくらいだ。私たちの手元には4本の武器と、4つの防具がある。
ライは二本の短剣を使うようだ。短剣と言っても、脇差のような物だ。逆手で構えて、カッコいい。ライは、男の子の格好で武器を構えている。
私は、刀を使う。太刀に分類される物だ。持った状態で、街を歩いていたら完全に捕まる物だ。だけど、私は魔物だ。それに、この刀は、日本刀ではない・・・。と、思う。ライが使うと宣言した短剣は、鑑定で”鋼”と出た。私が使おうとしている太刀の素材は、”鋼?”と出ている。”?”が怪しい。すごく怪しいが、気にしてはダメなのだろう。地球上に存在してはならない素材だとしても、これは”鋼”を鍛えたものだ。
もう一つは、弓だ。使ってみたが、遠距離に攻撃が出来るが、私には、私たちには向いていない。矢も用意しなければならないので、備品の用意が必要になってしまうのも問題になった。
防具は、必要ないという結論になった。
身につけて、動いてみたが、大きかった。オートアジャスト機能くらい欲しかったが、無理なようだ。スライムボディを調整すればいいのだろうけど、動きが鈍くなったり、バランスが難しかったり、防具を身につけるほうが危険だと結論がでた。ライも同じだ。
防具に関しては、パルが巣に使い始めた。新しい眷属?を誘致するのにちょうどいいのだと言っていた。
正直な話をすると、パルたちが集める蜂蜜だけでかなりの分量になっている。商売をしてもいいと思われる位だ。
討伐が終わったら、スライム印の蜂蜜と言って、売り出そうかと思っている。もちろん、通販限定だ。
裏庭に埋めた。果実も、季節に関係ないように、実を付けてしまっている。困っている。キウイと枇杷と蜜柑と夏蜜柑と無花果とブルーベリーといちごが同じ時期にできているのだ。季節が無視されている。手入れも、家族が率先している。米とか、麦とか、育てたら、スローライフが出来るかもしれない。
次は、作戦の立案だ。
キング&クイーンが、敵性生物の数や戦力調査を行ってくれた。威力偵察は許可しなかったから、正確ではないが、数は把握できた。
あと、魔物の色や、角の数から大まかな強さの把握が出来ている。
私たちの相談は、まだ終わらない。
—
「茜!」
「わかっています。天子湖に向かうのですよね?私たちが行っても何も出来ませんよ?」
そんなことは、榑谷円香も解っている。
しかし、魔物が起こしている事態だ。それに、ハンターを突入させるにしても、現地で指揮を取るべき者が必要になる。
「円香。俺たちも行くぞ」
「わかった。孔明と蒼は、現地で、ハンターの統制を頼む」
「わかった」「いいぜ!突入のタイミングは、任せる。武装はOKだよな?」
「標準装備までなら許可ができる。それ以上は、現地の状態をみてからだ」
「円香!現地では、既に数名が犠牲になっている。もう限界だぞ」
「突っ込んだ、マスコミを制止した警官が二人と、自衛官が3人。あとは、マスコミ関係者が3人だ」
「っち。円香。マスコミへの連絡は」
「今後、警察も自衛隊も護衛のような事はしない。自己責任だと伝えた。あと、紛争地域と同じで、後ろから攻撃される可能性もあるとも伝えてある」
「・・・。無駄だな。アイツらは、自分たちは安全だと思っている」
「今回は、違うと思うぞ?目の前で、警察と自衛官とマスコミの関係者が魔物に拉致されたからな」
「それだけか?」
「消防と警官が、救出に向かおうとした」
「そうか・・・。死んだのだな?」
「あぁ。目の前で、オークの亜種に殺された。それで、マスコミも黙ったようだ」
「そうか、報道規制は?」
「していない。必要ないだろう?それに、現法では、報道規制は出来ない。最大でも協定だ」
榑谷円香は、挑戦するような目線で、桐元孔明と上村蒼を見る。見られた二人は、肩を竦めるだめに留めて、挑発には乗らなかった。実際に、報道規制は必要がない。SNSで瞬時に情報が流れる時代だ。報道が制止を振り切って魔物の巣窟に突っ込んでいって、その結果、警官と自衛隊の隊員が連れて行かれた。助けようとした消防隊と警官が殺された。”非”は制止を振り払って、報道の自由を振りかざしたマスコミだ。BETを行うのなら、自分の命だけにすべきなのだ。
しかしマスコミは、警官と自衛官に護衛を依頼している。
「千明。SNSとマスコミ対応は任せる」
「え?私は、現地に行けないの?」
「付いてきてもいいぞ?でも、危ないぞ?」
「円香さん。私は、事務所に・・・」「茜は、現地だ。情報を即時に引き出してほしい。ハンディのプリンタを準備してくれ、足りない物は、途中にある、エンチョーで買えばいい」
「はい」
「円香さん。私は?」
「危ないけど、いいのか?」
「はい!事務所に残っても・・・。うるさいのが来ると思うので、現地で対応した方が楽です。あ!エンチョーで癒やしが欲しいです!癒やし!」
「いいぞ。30まで許可を出す。茜と相談しろ、日々の費用は、お前たちが持てよ。帰りだぞ。いいか、振りじゃなくて、帰りまで待てよ」
「え・・・。あっはい!わかりました!無事に帰ってこないとダメですね。茜!」
「わかった。わかった。貴女の部屋も用意する」
「うん!」
「円香。茜。千明。そろそろ、いいか?武装は、車に積んである物だけ・・・。あとは、蒼が車を回してくればいいだけだな」
「そうだな。茜と千明の準備が出来たら、魔物たちの巣に向かうぞ!資料映像が必要になる。茜。孔明。頼むぞ」
上村蒼は、近くの駐車場に置いてある。キャンピングカーを取りに行っている。5分くらいしてから、クラクションが鳴らされる。事務所に残った4人は、それぞれの荷物を持って、キャンピングカーに乗り込む。
水や設備に使う燃料の補給は、ホームセンターで行う。ガソリンを入れて、天子湖に向かう。
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