【第二章 スライム街へ】第二話 検証

 

 学校が始まった。
 スライムになってしまった。私には、無縁な世界だ。でも、なんとなく寂しいので、学校を覗きに行った。もちろん、私が行こうとしたら、皆から反対された。危ないというのが、家族たちの考えだ。強固に反対をしたのが、ラスカルだ。

 ラスカルは、やはり山に捨てられた一族の生き残りだった。飼えなくなった人が、ラスカルたちを山に捨てた。そして、オークに襲われた。辛うじて生き残ったラスカルが私の家族に加わった。そのために、他の者たちよりも、人に対する警戒と嫌悪が強い。私が”元”人だと言っても、私は私だから、”関係がない”というスタンスだ。

 賛成に周ったのが、パロットだ。
 条件付きの賛成だ。ライ(私が吸収したスライムたち、名前が無いと不便なので、名前を付けた)を吸収したことで、新たに芽生えた”固有スキル 分体”を使いこなして、私は家から動かないことが条件だと言っている。

 皆がパロットの意見を採用してくれて、私は新しく芽生えた3つの”固有スキル”を検証しながら、実験を行った。

 吸収は簡単だ。効果は不明だが、アイテムボックスにある物や、吸収したいと思った物を吸収できる。生きている物はまだ吸収していないが、スキルを使ってみた感じでは、生物でも問題はなさそうだ。カラントやキャロルが、吸収して欲しいと言い出したときには、困ってしまった。家族を吸収したいとは思わなかった。魔物が現れたときに、魔物を対象に吸収を発動してみることになった。

 再生も、難しくはなかった。これも、効果が曖昧だ。私の身体・経験を再生すると書かれているが、傷つけたくない。痛いのは嫌だ。検証は、先送りにしようと思ったが、他のスキルを検証しているときに、再生の効果がなんとなくわかった。

 最後の分体は、効果の想像が出来ているが、使い方が難しかった。
 分体の発動は簡単に出来た。私が想像しているように、私のコピーが作成できた。問題は、両方とも私だと認識ができたことだ。簡単に言えば、私が二人存在している状態になってしまった。

 私が二人になった。
 そして、スキル鑑定で、自分自身を鑑定することが出来た。初めて、自分のスキルを把握出来て、状況の理解が出来た。

 鑑定は優秀だ。
 スキルの鑑定まで行えた。

/*****
名前 松原貴子(分体)
種族 ヒューマノイド・エンペラー・スライム
称号 統べる者
固有スキル
 再生
 吸収
 分体
スキル
 拡大・縮小
 擬装-偽装
 隠匿-隠蔽
 鑑定
 錬金
  分解
  結合
  付与
  複製
 格納庫-保管庫
 経験保持-記憶保持
 衝撃耐性-衝撃無効
 スキル耐性
 支配
 結界
 熱変動
 暑さ耐性-暑さ無効
 寒さ耐性-寒さ無効
 回復-治癒
 属性スキル
  火-炎
  風-雷
  水-氷
  土
  影-闇-光
 (ギフトから進化したスキル)
ギフト
 (支配した魔物が持っているスキル)

備考(履歴)
 (行動履歴)
 スキル魔物化により、スライムに変質
*****/

 どうやら、分体は、分体と表示されるようだ。

/*****
名前 松原貴子
種族 ヒューマノイド・エンペラー・スライム
称号 統べる者
*****/

 分体でも、スキルが使える理由は、スキル経験保持が進化して、スキル記憶保持になった。経験保持だけでは、分体ではスキルが使えなかった。分体側で得た経験を、本体でも共有出来るようになるだけだ。スキル記憶保持で、分体でも意識やスキルを保持できるようになった。

 そして、”名付け”を行うのは、スキル支配を使って行われた。
 皆に確認をしたが、支配された状態で何も不自由がないので、このままで大丈夫だと言っている。そして、私には”寿命”が無いようだ。正確には、寿命がなくなったのだ。スキル治癒の力は、パッシブでも適用される。そして、スキル治癒は、損傷した部位の”治療”だと書かれていて、それはDNAレベルでのコピーミス(老化)を防ぐ役割を持っている。

 分体を作り出す時に、意識のコピーをしない設定が出来た。ライとしての分体を作成できた。意味はなかったが、ライはライとしてスライム生を送ってほしかった。
 ライは、1匹のスライムではない。スライムの集合体だ。今は、私の一部になってしまっているのだが、元々は別々の個体だ。ライと話していて、知った話しだ。そして、私の分体は、ライの数だけ分体が作成できる。家族なら、支配のパスが繋がる。

 家族から貰ったギフトで、スキルが進化したパターンもある。検証している間に、家族のスキルが進化を行うと、流れで私へのギフトが強くなり、ギフトにつられて、スキルが進化する。検証を行っている最中に、何度も経験した。

 スキルの検証が終わって、分体を使えば安全に街に行けると判断された。

 昼間なら、アイズやフィズやドーンに分体が乗る。分体で、スキル縮小を使って、身体を小さくすれば、小さい鳥でも乗ることが出来た。
 距離の問題は、ひとまず大丈夫だった。

 夜中にアドニスに街まで飛んでもらった。学校までは意識は繋がった状態だった。安倍川を越えても繋がっていた。
 星空の飛行は気持ちよかった。翌日には、カーディナルが山梨県まで飛行してくれた。どうやら、アドニスに対抗したようだ。いつもは、種族の壁を越えて、中がいい家族だけど、私のことになると、競い合うようになってしまう。嬉しいけど、やっぱり仲良くして欲しい。

 スキル縮小を使って、身体を小さくする。縮小は最小の魔石と同じくらいの大きさになれた。最大は試していないが、どこまでも大きくなる感じがする。魔物の不思議として考えておけばいいだろう。正直、考えてもわからない事が多すぎる。

 一点だけ気になったので、検証を行った。結果は、私が望まない物だった。納戸に押し込んであった秤を持ち出して計測した結果、縮小も拡大も堆積が変わるだけで重さは変わらなかった。縮小すれば、ダークでも私を持ち上げられるかと思ったのだけど・・・。

 分体を作る時に、最初に作る大きさを小さくしてみた。最初から、最小の魔石と同じくらいの大きさだ。
 しっかりと私だと認識出来た。体積を最初から小さくすれば、乙女の敵も怖くない。分体の体重が減っても嬉しくないが、嬉しく思えてしまうのは不思議だ。

 分体の能力は、恐ろしい。これって、私をどこかに残しておけば、私は私として存在が出来るって事になる。
 学生の時に欲しかった能力だ。分体の全部が私だ。皆で手分けして、宿題を行えば、すぐに終わって・・・。あっ。頭の出来は、皆、同じだから、わからない物は、同じか・・・。でも、時間の短縮には繋がる。夢のようなスキルだ。

 目を逸らしていたけど、スキルではなくギフトというものが有るらしい。
 そのギフトの数がとんでもない状態になっている。一部はスキルに進化していると書かれている。ギフトはスキルの下位バージョンだと予測している。

 分体では、ギフトは使えない。ただし、ギフトの元になっているスキルを持っている家族と一緒だと分体でもスキルのように使うことが出来る。
 私と家族の絆だ。

 ギフトの検証は、分体で行うことに決まった。分体と、対応するスキルを持っている家族が、検証を行う。

 ギフト飛翔の様に、数多くの者が持つギフトの場合もあるが、概ね皆が2-3個のギフトを私に芽生えさせてくれている。

 ギフトの検証中に、分体の機能が強化された。多分、進化したのだろう。この機能の強化を繰り返していくと、新しい上位のスキルが芽生えるのだろう。スキルは、面白い。知的好奇心を刺激してくる。それだけではなく、スキルをうまく使えるようになれば、家族が嬉しそうにしてくれる。

 今までは、分体を作る時に、ライの意識か、私の意識か、選択するようにしないとダメだったが、分体になった後でも、意識の切り替えが出来るようになった。私からライの時にはいつでも出来るのだが、ライから私の場合には、私が近くに居ないとダメなようだ。何か、抜け道がありそうだけど、検証を続ければ解ってくるだろう。

 街に行くのは、まだ時間がかかりそうだ。