【第一章 スライム生活】第二十話 名前
うーん。
なんか、裏庭に住み着いた動物たちの様子がおかしい。
私に襲いかかるようなことは無いのだけど、なんだか見られているように感じる。最初は気のせいかと思ったけど、裏山に魔石で作った結界を設置しているときに、フクロウが一定の距離で付いてきた。ハクビシンも、付かず離れずの距離を保っていた。東側に行ったときのような、立体機動はしなかったが、それでも、かなりの速度で移動したけど、二匹とも私を監視するようにしていた。
スライムは珍しいだろうから、不思議な生物だと思って、見ていたのかな?
気にしてもしょうがないよね。
私は、スライムだし、希少種だ(多分)!人類から、スライムに進化したのだ。これは、進化だ。暑さを感じない。去年までなら、この時期は残暑に苦しんでいた。エアコンがある部屋から出たくなかったが、今年はエアコンも必要としない。寒さはわからないけど、多分大丈夫だ。学校から、家まで歩いても疲れなかった。裏山の東側を散策しても、疲れなかった。うん。やっぱり、進化だ。
別に良いけど、前も上がってきたから気にしないけど・・・。
裏庭に来ていたネコが、私が裏山から帰ってきたら、一緒に家に上がってきた。
(ネコさん。足を綺麗にしてから!)
なんとなく、ネコを見ながら告げるようにしたら、ネコが動きを止めてくれた。意識が伝わったのかな?
わからないけど、濡れた雑巾を持ってくるまで、待ってくれていた。あれ?前は、足だけじゃなくて、身体も汚れていたのに、身体は綺麗だ。抜け毛もなさそうだし、気持ちふっくらとしているし、顔も綺麗になっている。よくわからない。
裏庭を見ると、ハクビシンや狸?も居る。よく知らないけど、寄生虫や病原体が怖いけど、スライムには関係がないよね?それに、なんとなく大丈夫な感じがする。かっこよく言えば、『目に知性を感じる』だ。自分で言っていて恥ずかしい。
うーん。
裏庭に来ている子たちは、逃げる様子がない。
理解できるとは思えないけど、聞いてみようかな・・・。
(ねぇネコさん。君たちに名前を付けていい?私と一緒に居てくれる?)
『にゃ!にゃぁぁぁ!にゃ!』
ん?大興奮?
私の言っている内容が理解できるの?話が出来るの?偶然だよね?
(ネコさん。私の言っていることが解るの?)
『にゃ!』
あっわかるの?スライムボディはすごいな。ネコさんの言っていることはわからないけど、私が言っている内容を理解してもらえるのね。
そうだ、せっかくだから聞いてみよう。
(ねぇネコさん。庭に居る子たちは、ネコさんの仲間なの?)
『ふにゃ?にゃぁにゃ!』
うーん。
仲間じゃないけど、一緒に居ても大丈夫って感じかな。
(庭の子にも、名前を付けて良いのかな?)
『にゃ!』
聞いてくるって感じかな?
言葉ってよりも態度で示してくれた。いきなり、裏庭に戻って、何かを訴えている。ワシやフクロウも鳥小屋から出てきて(サイズ感がおかしい?どうやって入っているの?)ネコさんと話をしている。
すごいな。
十二支の会議みたい。裏庭が見える場所まで移動して、動物たちの声を聞いている。言葉はわからないけど、なんとなく言っていることが解る。
別に、私の負担なんて、名前を考えるだけだから、気にしなくていいのに・・・。ワシさんは真面目だな。
なんとなく、フクロウさんが議長なのかな?皆の意見をまとめている。
ハクビシンさんは、ちょっとやんちゃな弟なのかな?ワシさんとフクロウさんに窘められている。
鮎さんや鮠さんは、集団で名前が欲しいみたいな感じがしている。ファミリー名みたいな感じなか?
え?蛇さんは、皆に合わせるような感じかな?
そもそも、なんで、魚や爬虫類の言っていることが解るの?きっと、スライムになったからだよね?人の時に、この能力があれば、優秀な獣医になるという選択肢があったのに・・・。しょうがないけど、今は寂しくならないだけで良かったと考えよう。
会議が終わった?
ワシさんが、私の前に降り立った。
頭を下げる?器用だな・・・。
ふむ。
(名前は、欲しいけど、私の負担になるのがイヤ?気にしなくていいよ。その代わりに、この場所に居てくれる?)
ばさばさと翼をはためかせている。喜んでいるのかな?
『にゃ』
ネコさんが、ワシさんの隣に来て、”興奮するな”って感じかな?
『にゃにゃにゃ』
(代表の者に名前を付けて欲しい?鮎さんなら、鮎さんで使う名前って感じ?)
『にゃ!ふにゃなぉぉにゃ』
(わかった。わかった。興奮しなくていいよ。ん?皆と相談する?わかった。待っているよ。ゆっくり相談して)
『にゃ』
ネコさんとワシさんは、また皆の所に戻って、会議を再開した。
代表を決めるのかな?大変じゃないから、皆に名前を付けてもいいのだけど、問題は私が見分けられるかだよね?でも、なんとなく皆に個性があり、見ていると解ってくる。
え?どこから?
会議に、蜂さんが混じっている。それも、サイズが少しだけおかしい?ミツバチだよね?なんで、体長が5cmくらいなの?興味があって調べたときに、世界最大の蜂は、”メガララ・ガルーダ”とか言って、インドネシアで見つかった蜂だったと思うけど、それでも、4cm程度だと記憶している。確実に、4cmを越えているよね?お腹部分が大きいから、女王蜂?巣箱から出てきて大丈夫なの?
トカゲさんも居る。可愛い。議長のフクロウさんに手を上げて質問をしている。イモリ?ヤモリさんも居る。水中に居る他の生物たちは名前を辞退って感じかな?
昆虫からは、女王蜂だけでいいのかな?あれ?クモさんも居るね。足?を上げている。何か、意見を言っているのかな?
え?裏山からも来ているの?
栗鼠さん?百舌鳥さん?蝙蝠さん?以外と、裏山には動物が生息していたのですね。お祖父ちゃんが大事にするわけだね。
そうなると、この前みたいな”オーク”が居ると、生態系?がおかしくなっちゃうから、私以外の魔物は駆除決定だね。庭に居る子みたいに、みんなで仲良くしてくれるのなら問題はないのかな?
『ふにゃぁ』
(うん。いいよ)
ネコさんがまとめてくれた。
ワシさんとフクロウさんも来て、皆でまとめた意見を説明してくれた。
名前は、種族で付けて欲しいらしい。種族は、認識できているらしい。鳥が増えているのは、裏山に居たのかな?椋鳥さんとか、雀さんとか、サギさんとか、カワセミさんが増えている。サギさんとか、近くで見ると大きいよね。なんか、鳥類が多いのは、空を飛んで来たからなのかな?
個で名前が欲しい子も居るらしいから、その子たちには個別に名前をつける。
ワシさんとネコさんとサギさんは一人らしい。フクロウさんとタヌキさんとハクビシンさんは、家族で来ているから、家族での名前を付けてから、個別の名前にしよう。
どうやら、これから皆で、裏山と近くの山を周ってくる。仲間になりたい者を連れてきていいかと聞いてきたので、許可を出した。住む場所は、私が拡張した裏山の結界の中になるのだと説明された。お祖父ちゃんが、東側にはクマさんとか、イノシシさんが居るって言っていたから、来てくれるのかな?
魔石が増えたら、裏山全部を覆うくらいの結界を作りたいな。モグラさんとかも来てくれないかな。あのフォルムがすごく好き。飼いたいと思ったけど、前は難しかった。
ワシさんが、”もうしわけない”とでも思っているように見えるから、触手を伸ばして頭をなでたら嬉しそうに鳴いてくれたから、よかったのだと思う。
今、居る子たちに名前を付けた。
シリーズにしたほうが解りやすいと思ったけど、いいアイディアが浮かばなかった。
手近にあったのが、お父さんが好きだったカクテルの本だ。カクテルの名前から拝借した。かっこいいし、覚えやすい。
—
ワシさんには、カーディナル
ネコさんには、パロット
アオサギさんには、フリップ
フクロウさんには、アドニス
タヌキさんには、ギブソン
ハクビシンさんには、ノック
女王蜂さんには、パル
アユさんたちには、カラント
ハヤさんたちには、キャロル
トカゲさんたちには、キール
ヘビさんたちには、キルシュ
百舌鳥さんたちには、フィズ
栗鼠さんたちには、ディック
蝙蝠さんたちには、ダーク
イモリさんたちには、グラッド
ヤモリさんたちには、コペン
ムクドリさんたちには、アイズ
スズメさんたちには、ドーン
カワセミさんたちには、ジャック
クモさんたちには、ナップ
—
私は頑張った。
頭は使わなかったけど、精神が疲れた。名前を付けたあとで、頭を撫でてあげないとダメな感じがして、皆の頭を撫でた。
ヘビさんとか、トカゲさんは、同族以外にも同じ名前を使うと決めたらしい。
皆から温かい気持ちが流れてくる感じがする。名前を付けたから、親密度が増したのかな?
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