物流の記事一覧

2021/08/25

【第十章 エルフの里】第十一話 愚者

「ヤス。ごめん」 「リーゼが謝る必要はない」 「でも・・・」 「そうだな。気になるのなら、帰ったら、西門にできた店で、奢って貰おうかな?」 「え?あっうん!いいよ!帰ったら、一緒に西門に行こう!僕が運転するからね!」  テンションが上がったリーゼを見て、良かったと考えている。リーゼの責任ではない。エルフたちが悪いのは、ヤスにもリーゼにもわかっている。しかし、リーゼは、自分がエルフの里に来てしまったことが問題になっていると考えてしまったのだ。  ヤスに置いていかれると心の片隅で恐怖とともに、感じてしまっていた…

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2021/08/01

【第十章 エルフの里】第十話 リーゼの想い

 ヤスとリーゼは、ラフネスの言い訳とも考えられる、”エルフの事情”を聞いた。 「そうなると、長老たちは、リーゼに無関心なのだな?」 「・・・。はい」  ラフネスは、素直にヤスの質問に答えた。  実際に、暴走したのはエルフの村に着ていた商人たちと取引があるエルフだ。それも積極的に、商人と交流を行って他種族と関わりを持とうとしていた。  ただ、やり方を間違えた。  今まで、他種族との付き合いをしてこなかった者たちが、いきなり商人と取引をした。そして、騙された。エルフ族は、アフネスなど、外の世界で生きていくことを…

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2021/07/31

【第十章 エルフの里】第九話 エルフの事情

 ラフネスは、ヤスとリーゼに事情を説明した。  説明を聞き終えたヤスは頭痛を抑えるような仕草をする。リーゼは、事情がよく飲み込めていないようで、ラフネスとヤスの表情を必死に読み取ろうとしている。 「ラフネス。率直な意見を言っていいか?」 「何を言いたいのか解っていますが、どうぞ?」 「エルフはバカなのか?」 「・・・」  リーゼがヤスの服の袖を可愛らしく引っ張る。 「ねぇヤス。どういうこと?エルフ族が、僕の持っているお金が欲しいってこと?」 「そうだな」 「僕、お金なんて持っていないよ?」 「そうだな。今の…

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2021/05/27

【第十章 エルフの里】第八話 エルフたち

「リーゼ様。ヤス殿。私は、エルフの里長候補の1人で、ペドロと言います」  ヤスを、射殺すような目線で見てから、リーゼに頭を下げながら”ペドロ”と名乗った。ヤスは、面倒な流れだと思いながらも、ペドロを観察し始める。  ヤスの存在は、ペドロの中からは完全に消えていた。リーゼの従者としてしか認識をしていない。  ペドロが、リーゼに美辞麗句を並び立てている所で、ドアがノックされた。 「誰だ!リーゼ様が、この俺様!ペドロ様の話をお聞きしているのを邪魔するのは!」  ヤスは、ペドロから出たこのセリフだけで、目の前に居る…

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2021/03/22

【第十章 エルフの里】第七話 森の村

 砦の門が閉まる寸前に、ヤスたちは到着した。  貰い受けた許可書では、門が閉まっていても通過はできるのだが、ヤスが特例を行使したくないと言って、アクセルを踏み込む力を強めたのだ。 「ふぅなんとか間に合ったな」 「うん。どうする?砦で休むの?」 「俺としては、砦で休むのは避けたい」 「??」 「砦の責任者が、俺に会いたいとか言っていたからな。先を急ぐ用事があると伝えているから、砦でちんたらしていたくない」 「あぁ・・・。そう言えば、守備隊の人が言っていたね」  ヤスと言うよりも、アーティファクトを欲しがってい…

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2021/03/10

【第十章 エルフの里】第六話 リーゼとヤス

 国境に近づいてきて、砦が見えた場所で車を停めた。 「ヤス。なんで?もう砦だよ?許可書もあるから、大丈夫だよ」  リーゼが言っている通り、王都を出る時に許可書をもらっている。許可書があれば、”行き”も”帰り”も検査を受けなくてもいいという最上級な物だ。 「ん?」  ヤスは、砦の入り口を指差す。  砦の関所を超えるための行列が出来ている。ヤスたちが持っている許可書は、行列を無視できる物で、並ぶ必要はない。 「並ばなくてもいいよね?」 「あぁだけど、列を見ると、高級な馬車が見えるだろう?」 「あ?うん」 「ほら…

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2021/02/01

【第十章 エルフの里】第五話 道中(神殿→王都→国境の砦)

「ねぇヤス・・・」 「駄目だ!」 「まだ何も言っていないよ?」 「解っている。FITを運転したいのだろう?駄目だ。リーゼの運転は、粗い。もっと、ブレーキをしっかりと操れるようにならなければ、荷物を運ばせられない」 「うぅぅぅ。だって、アクセルを踏み込んだ方が速いよ?」 「そうだな。最高速は出せるだろうけど、ラップタイムは遅くなるな」 「う・・・」 「リーゼ。モンキーだと、イチカに負けるよな?」 「・・・。うん。でも、それはイチカの方が、体が軽いから・・・」 「でも、俺はイチカに完勝できるぞ?」 「それは、ヤ…

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2021/01/17

【第十章 エルフの里】第四話 出発

 ヤスの準備は終わったが、リーゼの準備が終わらなかった。  主に、アフネスとラナからの説教が原因だ。 「アフネス。ラナ。確かに、リーゼは準備を、ファーストに投げて、カートで遊んでいた」  リーゼは、ヤスがイワンとテントの打ち合わせに行っているときに、カート場でカイルとカート勝負をしていた。リーゼにも言い分はあった。 「ヤス!」 「”しばらく旅に出る”とカイルに話したら、勝負を挑まれた」 「うん。うん。僕は悪くない!」 「別に、私たちは、カートで遊んでいたのが悪いと言っているのではないのですよ!」 「リーゼ。…

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2021/01/10

【第十章 エルフの里】第三話 準備

「リーゼ。モンキーはどうする?」 「え?ヤスに任せるよ?」  エルフの里に向かう事が決定してから、リーゼは機嫌がよくなっている。地下に出入りできるようになってからは、輪をかけて機嫌がいいのだ。  ヤスとリーゼはエルフの里に向かう準備を行っている。食料は、ツバキたちが準備をしてくれている。移動距離は、マルスの計算では片道1,200キロで、移動時間の目安は、36時間と算出された。野営は、5回を予定している。王国内なら、ヤスの使うアーティファクトは知られているので、街に入って宿を利用する方法も考えられるが、王国か…

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2021/01/06

【第十章 エルフの里】第二話 ラナからの依頼

 朝食をリビングで食べて、食後の珈琲を飲んでいるヤスに、セバスが会釈してから今日の予定を説明した。 「そうか、今日は荷物の運搬はないのだな?」 「ございません」 「他に仕事の依頼は?」 「ギルドからの依頼は、割り振りが全て終了しております」 「わかった。1-2週間なら時間が空けられそうか?」 「緊急依頼が入らなければ、依頼の割り振りは可能です」 「そうか、ディアナでしか運べないような依頼は俺が担当しなければならないか・・・」 「はい。しかし、旦那様でしか運べない物は、もともと”運べない”ものです。ダメ元で依…

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2020/10/24

【第十章 エルフの里】第一話 状況確認

 神殿の領域は(・)静かな時間が流れている。  今日は、神殿の各村の代表と各部署の責任者を集めた会議が行われている。  神殿を取り巻く情勢が落ち着いてきたので、後始末と今後の対応を含めた話し合いを行っている。  会議の冒頭で、状況をマルスが皆に説明している。  サンドラやアーデベルトやドーリスは知っていることも多かったが、状況を全ては把握していない。当初は、認識合わせを行おうとしたのだが、ヤスが”神殿として認識している”事実をベースに考えたいと説明したことで、皆がマルスの話を聞いてから、後始末と各自に来てい…

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2020/10/15

【第九章 神殿の価値】第二十七話 ハインツノート2

 王国内が再編されている状態にも関わらず、僕や父上は王都から離れられない。  毎日ではないが会議が行われている。神殿の主の協力(アーティファクト)が必要になる前提ではあるが、物資の輸送が可能になり、生産調整が必要になってしまっているのだ。派閥内で調整は可能だが、派閥に属さない貴族家への配慮も必要になる。もちろん、王家の直轄領や公爵家へ配慮も同様だ。輸送に適さない物は、近隣で調整すればよかったが、長距離搬送が可能になり状況が変わった。  神殿の主が提供するアーティファクトは、神殿に住まう者が教習を受けて運用が…

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2020/10/13

【第九章 神殿の価値】第二十六話 ハインツノート1

 僕の名前は、ハインツ。クラウス・フォン・デリウス=レッチュ辺境伯の長子だ。  ”俺”という一人称を使ったり、”私”と言い換えてみたりしているが、”僕”が一番しっくりと来る。  今の僕の役割は、妹のサンドラからくる情報を、父や派閥の長(陛下)に伝えるのが仕事になっている。  こんな状況になってしまったのには理由がある。  僕の弟である、ランドルフの問題行動に起因している。  最初に話を、サンドラから聞いた時には、僕が自ら手を汚して殺してやろうかと思った。  サンドラの機転と、神殿の主の温情によって救われた。…

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2020/10/09

【第九章 神殿の価値】第二十五話 神殿攻略の余波

 朝から、イーリスとサンドラは、不機嫌を隠さないで来る”客”の対応を行っていた。  想像通りだった。  神殿の迷宮区が”一般公開”されて、皆が考えている状態になった。ヤスというよりも、マルスの読みどおりに、面白いように王国内の貴族が喰い付いた。それだけではなく、教会も前のめりになるくらいに喰い付いてきた。帝国も皇国も喰い付いてきた。  続々と軍を送り込んでくる愚か者たちの相手を、ヤスがするわけがなく、ギルドの代表としてイーリスと辺境伯から委任される形でサンドラが行っている。 「ですから!何度もお伝えしている…

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2020/09/17

【第九章 神殿の価値】第二十四話 住民代表会

 ヤスの宣言を、大木の都(ヒュージツリーラント)の代表者で協議した。  実行してもいいだろうと賛成したのは、アフネスとサンドラとルーサとイワンとラナだ。反対したのは、エアハルトとドーリスだ。意見を保留したのは、ヴェストとデイトリッヒだ。デイトリッヒは、冒険者の取りまとめとして参加している。ラナは、住民の代表として参加した。  賛成した者の意見は、別段反対する理由がないという意見だ。アフネスはユーラットに溜まっている貴族からの間者が居なくなれば嬉しいという考えが根本にある。サンドラは、うるさい貴族の問題が片付…

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2020/09/08

【第九章 神殿の価値】第二十三話 サンドラへの説明

 セバスに連れられて、サンドラが部屋に入ってきた。 「ヤス様。先程の学園村ですが、イワン殿とルーサ殿とヴェスト殿とエアハルト殿とアデーは、賛成しています。ドーリスとアフネス様は、連絡が取れなかったので、後ほど連絡します。クラウス辺境伯。ハインツお兄様は、会議に出ていまして不在でした。家令のガイストに伝言を頼んであります」  部屋に入ってきて、サンドラは状況をヤスに伝える。 「わかった。ドーリスとアフネスの賛成を持って、学園村の建設を始めようと思う。皆で規模を決めてくれ」 「はい」 「場所はこちらで決めるが、…

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2020/09/07

【第九章 神殿の価値】第二十二話 ヤスの判断

「それで?」  サンドラは、次の話をする前に、資料をヤスに見せる。 「ヤス様。話は一つですが、その前に状況をお伝えします」 「頼む」 「はい。リップル子爵家から始まった騒動ですが、セバス殿やツバキ殿のご協力を得て、証拠が固められました。本来なら、王家がヤス様にお礼を言いに来るのが筋ですが・・・」 「必要ない」 「ありがとうございます。既に、ヤス様にご報告の通りに、指示を出した、公爵家と侯爵家は当主の交代と、領地の没収が完了しております」 「あぁ聞いている。クラウス殿の領地が増えるのだろう?寄り子に任せたとは…

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2020/09/05

【第九章 神殿の価値】第二十一話 サンドラへの提案

 ヤスは、サンドラからの二つの報告を聞いて、少しの休憩を挟んだ。ヤスの問題ではなく、サンドラの体調を考えてのことだ。  会議に参加はしていなかったが、マルスからの指示を受けて、ツバキがタイミングを見て飲み物の替えを用意した。一段落したタイミングで飲み物の交換なのだが、サンドラの分だけしか用意されていなかった。  ツバキがお茶を替えている時に、セバスがヤスを探していると告げた。強制的に中断させる方法を取ったのだ。  部屋から一時的に出ていくヤスを、サンドラは見送った。気を使われているのだと解ったが、確かに休憩…

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2020/09/04

【第九章 神殿の価値】第二十話 サンドラからの報告

 大木の都(ヒュージツリーラント)に住む者たちは順調に増えている。しかし、神殿の都(テンプルシュテット)に住む者たちは増えていない。  カイルとイチカたちは、神殿の都(テンプルシュテット)で受け入れた。その後に、帝国で二級国民になっていた子どもたちも受け入れた。ヤスが決定したことなので、異議を唱える者は居なかった。神殿の都(テンプルシュテット)に住むには、マルスの審査が必要になる。厳しい審査だ。審査基準が公開されていないので、敬遠する者も多いのだ。しかし、他の村では、審査は王国の町や都市に近い状況なので、移…

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2020/08/20

【第九章 神殿の価値】第十九話 リーゼの仕事

「ねぇヤスは?」  リーザは、ファースト(専属メイド)に神殿の主であるヤスの居場所を尋ねる。 「セバスの話では、明日には帰ってくるそうです」 「わかった。明日だね。ねぇ僕が相談したいことがあると言ったらヤスは会ってくれるかな?」 「大丈夫だと思います。事前に、お伝えしておきますか?」 「え?あっうん。お願い」  ファーストが、すぐにリーゼの家から出て、神殿に向かった。  セバスかツバキに、リーゼの要望を伝えるためだ。  幸いなことに、セバスが神殿に居たので、リーゼの要望を伝えた。  セバスは、マルスに伝達を…

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2020/08/14

【第九章 神殿の価値】第十八話 ヤス。爆走中

『マスター。個体名サンドラから依頼が入っています』 「ディアナに出してくれ」 『了』  ヤスは、ディスプレイに表示される文字を目で追う。  目的地も解る。荷台が空にならないように、サンドラやドーリスが調整をしてくれているのが解る。  今の荷物を運び終わってから空荷になるのはローンロットまでだな。 「マルス。積み込みは?」 『おおよそ、52分で終了します』 「わかった。少しだけ寝る。終わったら起こしてくれ」 『了』  ヤスは、居住スペースに移動する。  もともと、改造されて快適に過ごせるようになっていた居住ス…

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2020/08/09

【第九章 神殿の価値】第十七話 物流倉庫

 ヤスは、各地に出来た拠点に荷物を運んでいた。  拠点から拠点に荷物を運んでいる。主に、建材に使うような物が多く、馬車ではそれこそ、数ヶ月にも渡って搬送しなければならない建材も、ヤスなら1-2日で搬送できる。それも、馬車の何倍もの量を積んでも大丈夫なのだ。 「旦那様」 「あぁ今日、神殿の主が来たのだったな。どうだった?」 「・・・。はい」 「どうした、正直に話せ。何か、無茶なことをいいだしたのか?それなら、辺境伯に苦情を言わなければならない」 「いえ、違います。神殿の主様は、ヤス様と名乗られまして、その荷物…

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2020/08/03

【第九章 神殿の価値】第十六話 女子会の続き?

「リーゼじゃないの?」  ディアスの言葉は、リーゼの事情を知っている者たちは、あえて口にしなかったセリフだ。  皆の微妙な雰囲気を悟って、ディアスは首を撚る。  リーゼの雰囲気や、ヤスのリーゼへの優遇から、間違いないと思っていた。サンドラやアデーが違うのなら、第一夫人は間違いなく、リーゼだと思っているのだ。サンドラやアデーが第一夫人なら、リーゼは第二夫人になると思っていたのだ。 「ディアスは、リーゼの種族はご存知?」  代表して、サンドラがディアスに説明を始めた。 「えぇエルフ族だとお聞きしましたが?」 「…

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2020/07/03

【第九章 神殿の価値】第十五話 女子会

 アーデベルトが、リゾート区を2(3)フロアを購入してから、3ヶ月が経過した。  アーデベルトのリゾート区の購入と同時に発表されたのが、アーデベルトが継承権を返上して神殿のリゾート区に住むという事だ。  王国の貴族だけではなく、国民にも驚きをもって迎えられた。  侯爵や公爵の処分が決定したのもあるが、その受け入れ先が、アーデベルトが購入した、神殿のリゾート区なのだ。  侯爵や公爵の一族は、神殿のリゾート区へと監禁されると決まった。監禁といっても、かなりの自由が許されている。リゾート区から出るのは許されないが…

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2020/07/02

【第九章 神殿の価値】第十四話 ヤスの仕事

 サンドラが、兄やジークムントやアーデベルトをリゾート区に案内するために、王都に向かっている時、ヤスは、自分の仕事を行っていた。  ヤスは、カートで遊んだり、東コースや西コースをS660で走り回ったり、工房でイワンと怪しい相談をしたりするのが仕事ではない。  外部から見たら、ヤスは神殿の主である。  したがって、いろいろと要望が上がってくる。しかし、それらはセバスやマルスが処理している。ヤスが目を通すのはごく一部だ。  今日は、そのごく一部の対応を行っていた。 「マルス。それで、設置は迷宮区の中でいいのか?…

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2020/06/29

【第九章 神殿の価値】第十三話 説得他

 ジークは、王都に向かうアーティファクトの中で、ハインツと話をしている。 「ハインツ。神殿を”どう”見る?」 「ジークムント様。難しい質問です」 「ハインツの感じたことを教えて欲しい」 「そうですね。まず、敵対しないほうがよいと思います」 「そうだな。俺もそう思う。帝国とのやり取りや、リップルへのやり方といい。公爵や侯爵の現状を考えると・・・。敵には容赦がなさすぎる」 「はい。しかし、頼ってきたものには門戸を開いていますし、仲間の為ならば神殿の権能を使うのに戸惑いはなさそうです」 「あぁ仲間は無理でも、敵対…

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2020/06/26

【第九章 神殿の価値】第十二話 視察?終了

ストレスが発散出来た、サンドラはニコニコ顔だ。ジークに対しては、丁寧に接しているが、兄であるハインツには、父親以上の衝撃を与えるように、説明を行った。 アデーは、ジークやハインツと違う疲労感で満たされていた。 イワンと会話して、エルフの責任者からも、付与や魔道具の作成に関しての話を聞いた。 秘術に関わる部分では無いのかと質問したが、二人は笑って、ここでは標準的な内容で秘匿する価値もないと教えられて、自分の常識が崩れ去った。 奥には、案内されなかったが、それでも十分な魅力を感じてしまった。リゾート区ではなく、…

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2020/06/24

【第九章 神殿の価値】第十一話 許可

「ジーク様。アデー様。ハインツ様。見学の許可が降りました。どの順番で回りますか?」 3人は、起きてから食事を済ませていた。案内である、サンドラが来るのを待っていたのだ。 そこに、ツバキが別荘にやってきて、3人に予定を聞いたのだ。 「お兄様!工房に行きましょう!工房!」 「アデー。落ち着け。ツバキ殿。案内は、ツバキ殿がしてくれるのか?」 「はい。私が、ご案内いたします」 「ハインツはどうする?」 「ツバキ殿。サンドラがどこに居るのかご存知ですか?」 「サンドラ様は、本日はお休みの予定ですが、ギルドに顔を出すと…

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2020/06/22

【第九章 神殿の価値】第十話 アーデルベルトの思惑

風呂を堪能してから、タブレットを兄のジークムントとハインツから奪い取った。タブレットをニコニコ顔で抱えながら、与えられた部屋に入ったアーデベルトは、早速カタログを見始めた。 「(ふふふ。やはりありました!さすがは、神殿ということでしょう!!!)」 バッケスホーフ王国の第二王女アーデベルト・フォン・バルチュ=バッケスホーフ。近親者や上級貴族の間では、”錬金姫”と呼ばれている。 アデーはカタログから素材がないか探していた。 アデーが、今回、兄であるジークムントの視察に着いてきたのは、神殿の工房に興味が有ったから…

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2020/06/19

【第九章 神殿の価値】第九話 ハインツの驚愕

サンプル別荘に入った3人は、驚愕で身体が固まってしまった。 メイドからフロアの説明を聞いたからだ。 「ハインツ?」 「おい!ハインツ!」 「あっはい。ジークムント様」 「ハインツ。ジークと呼べ」 「あっはい。もうしわけありません。ジーク様」 ハインツは、普段の癖が抜けきらない。 サンドラのように、”さん”とは呼べないのだ。王宮に行っていた癖が抜けきらないのは無理からぬことだ。 「”様”も必要ないが、無理だろうな。ハインツ。お前は知っていたのか?」 ジークムントが言っているのは、別荘に入ってきて、最初に説明を…

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