依頼の記事一覧

2020/08/20

【第九章 神殿の価値】第十九話 リーゼの仕事

「ねぇヤスは?」  リーザは、ファースト(専属メイド)に神殿の主であるヤスの居場所を尋ねる。 「セバスの話では、明日には帰ってくるそうです」 「わかった。明日だね。ねぇ僕が相談したいことがあると言ったらヤスは会ってくれるかな?」 「大丈夫だと思います。事前に、お伝えしておきますか?」 「え?あっうん。お願い」  ファーストが、すぐにリーゼの家から出て、神殿に向かった。  セバスかツバキに、リーゼの要望を伝えるためだ。  幸いなことに、セバスが神殿に居たので、リーゼの要望を伝えた。  セバスは、マルスに伝達を…

続きを読む

2020/08/14

【第九章 神殿の価値】第十八話 ヤス。爆走中

『マスター。個体名サンドラから依頼が入っています』 「ディアナに出してくれ」 『了』  ヤスは、ディスプレイに表示される文字を目で追う。  目的地も解る。荷台が空にならないように、サンドラやドーリスが調整をしてくれているのが解る。  今の荷物を運び終わってから空荷になるのはローンロットまでだな。 「マルス。積み込みは?」 『おおよそ、52分で終了します』 「わかった。少しだけ寝る。終わったら起こしてくれ」 『了』  ヤスは、居住スペースに移動する。  もともと、改造されて快適に過ごせるようになっていた居住ス…

続きを読む

2020/08/09

【第九章 神殿の価値】第十七話 物流倉庫

 ヤスは、各地に出来た拠点に荷物を運んでいた。  拠点から拠点に荷物を運んでいる。主に、建材に使うような物が多く、馬車ではそれこそ、数ヶ月にも渡って搬送しなければならない建材も、ヤスなら1-2日で搬送できる。それも、馬車の何倍もの量を積んでも大丈夫なのだ。 「旦那様」 「あぁ今日、神殿の主が来たのだったな。どうだった?」 「・・・。はい」 「どうした、正直に話せ。何か、無茶なことをいいだしたのか?それなら、辺境伯に苦情を言わなければならない」 「いえ、違います。神殿の主様は、ヤス様と名乗られまして、その荷物…

続きを読む
広告

2020/08/03

【第九章 神殿の価値】第十六話 女子会の続き?

「リーゼじゃないの?」  ディアスの言葉は、リーゼの事情を知っている者たちは、あえて口にしなかったセリフだ。  皆の微妙な雰囲気を悟って、ディアスは首を撚る。  リーゼの雰囲気や、ヤスのリーゼへの優遇から、間違いないと思っていた。サンドラやアデーが違うのなら、第一夫人は間違いなく、リーゼだと思っているのだ。サンドラやアデーが第一夫人なら、リーゼは第二夫人になると思っていたのだ。 「ディアスは、リーゼの種族はご存知?」  代表して、サンドラがディアスに説明を始めた。 「えぇエルフ族だとお聞きしましたが?」 「…

続きを読む

2020/07/03

【第九章 神殿の価値】第十五話 女子会

 アーデベルトが、リゾート区を2(3)フロアを購入してから、3ヶ月が経過した。  アーデベルトのリゾート区の購入と同時に発表されたのが、アーデベルトが継承権を返上して神殿のリゾート区に住むという事だ。  王国の貴族だけではなく、国民にも驚きをもって迎えられた。  侯爵や公爵の処分が決定したのもあるが、その受け入れ先が、アーデベルトが購入した、神殿のリゾート区なのだ。  侯爵や公爵の一族は、神殿のリゾート区へと監禁されると決まった。監禁といっても、かなりの自由が許されている。リゾート区から出るのは許されないが…

続きを読む

2020/07/02

【第九章 神殿の価値】第十四話 ヤスの仕事

 サンドラが、兄やジークムントやアーデベルトをリゾート区に案内するために、王都に向かっている時、ヤスは、自分の仕事を行っていた。  ヤスは、カートで遊んだり、東コースや西コースをS660で走り回ったり、工房でイワンと怪しい相談をしたりするのが仕事ではない。  外部から見たら、ヤスは神殿の主である。  したがって、いろいろと要望が上がってくる。しかし、それらはセバスやマルスが処理している。ヤスが目を通すのはごく一部だ。  今日は、そのごく一部の対応を行っていた。 「マルス。それで、設置は迷宮区の中でいいのか?…

続きを読む
広告

2020/06/29

【第九章 神殿の価値】第十三話 説得他

 ジークは、王都に向かうアーティファクトの中で、ハインツと話をしている。 「ハインツ。神殿を”どう”見る?」 「ジークムント様。難しい質問です」 「ハインツの感じたことを教えて欲しい」 「そうですね。まず、敵対しないほうがよいと思います」 「そうだな。俺もそう思う。帝国とのやり取りや、リップルへのやり方といい。公爵や侯爵の現状を考えると・・・。敵には容赦がなさすぎる」 「はい。しかし、頼ってきたものには門戸を開いていますし、仲間の為ならば神殿の権能を使うのに戸惑いはなさそうです」 「あぁ仲間は無理でも、敵対…

続きを読む

2020/06/26

【第九章 神殿の価値】第十二話 視察?終了

ストレスが発散出来た、サンドラはニコニコ顔だ。ジークに対しては、丁寧に接しているが、兄であるハインツには、父親以上の衝撃を与えるように、説明を行った。 アデーは、ジークやハインツと違う疲労感で満たされていた。 イワンと会話して、エルフの責任者からも、付与や魔道具の作成に関しての話を聞いた。 秘術に関わる部分では無いのかと質問したが、二人は笑って、ここでは標準的な内容で秘匿する価値もないと教えられて、自分の常識が崩れ去った。 奥には、案内されなかったが、それでも十分な魅力を感じてしまった。リゾート区ではなく、…

続きを読む

2020/06/24

【第九章 神殿の価値】第十一話 許可

「ジーク様。アデー様。ハインツ様。見学の許可が降りました。どの順番で回りますか?」 3人は、起きてから食事を済ませていた。案内である、サンドラが来るのを待っていたのだ。 そこに、ツバキが別荘にやってきて、3人に予定を聞いたのだ。 「お兄様!工房に行きましょう!工房!」 「アデー。落ち着け。ツバキ殿。案内は、ツバキ殿がしてくれるのか?」 「はい。私が、ご案内いたします」 「ハインツはどうする?」 「ツバキ殿。サンドラがどこに居るのかご存知ですか?」 「サンドラ様は、本日はお休みの予定ですが、ギルドに顔を出すと…

続きを読む
広告

2020/06/22

【第九章 神殿の価値】第十話 アーデルベルトの思惑

風呂を堪能してから、タブレットを兄のジークムントとハインツから奪い取った。タブレットをニコニコ顔で抱えながら、与えられた部屋に入ったアーデベルトは、早速カタログを見始めた。 「(ふふふ。やはりありました!さすがは、神殿ということでしょう!!!)」 バッケスホーフ王国の第二王女アーデベルト・フォン・バルチュ=バッケスホーフ。近親者や上級貴族の間では、”錬金姫”と呼ばれている。 アデーはカタログから素材がないか探していた。 アデーが、今回、兄であるジークムントの視察に着いてきたのは、神殿の工房に興味が有ったから…

続きを読む

2020/06/19

【第九章 神殿の価値】第九話 ハインツの驚愕

サンプル別荘に入った3人は、驚愕で身体が固まってしまった。 メイドからフロアの説明を聞いたからだ。 「ハインツ?」 「おい!ハインツ!」 「あっはい。ジークムント様」 「ハインツ。ジークと呼べ」 「あっはい。もうしわけありません。ジーク様」 ハインツは、普段の癖が抜けきらない。 サンドラのように、”さん”とは呼べないのだ。王宮に行っていた癖が抜けきらないのは無理からぬことだ。 「”様”も必要ないが、無理だろうな。ハインツ。お前は知っていたのか?」 ジークムントが言っているのは、別荘に入ってきて、最初に説明を…

続きを読む

2020/06/18

【第九章 神殿の価値】第八話 サンドラの憂鬱

サンドラは、ローンロットの道のりで2回の休憩を挟んだ。 アーティファクトの魔力切れを理由にしたが、実際には、ジークとアデーからの質問攻めに精神が疲れてしまったからだ。 質問される内容の殆どが、サンドラでは答えられない内容だった。ヤスに聞いて欲しいと思ったが、ヤスを質問攻めにすると、嫌になって貴族と合わないと言われてしまう。実際にヤスは気に入った人にしか合わない傾向が強い。それでは、困る場面が出てくるかもしれない。 サンドラは、ハインツに助けを求めたが、ハインツはアーティファクトの速度に驚いて使い物にならなか…

続きを読む
広告

2020/06/17

【第九章 神殿の価値】第七話 サンドラの仕事

サンドラの朝は早い。 日の出前には起きるようにしている。神殿に住むようになってから、朝に強くなった。 ギルドのサポートがメインだったはずが、いつの間にか、貴族対応の窓口になっていた。 「お兄様!問題点を伝えているのです。しっかりと、聞いてください」 『聞いているよ。それで、サンドラ。僕はどうしたらいいの?今日、届けられた、価格表で交渉すればいいのかい?』 「本当に、第一王子と第二王女が神殿に別荘をお作りになるのですか?」 『流石に、国王は遠慮してもらったが、第一王子は是非とおっしゃっているし、第二王女は自分…

続きを読む

2020/06/16

【第九章 神殿の価値】第六話 イチカ

イチカは、カイルと話をして、妹や弟をカイルが面倒をみてくれると聞いて安心していた。 ドーリスやサンドラや時にはヤスやリーゼが妹や弟の世話をしてくれるが、もうしわけなく感じていた。本当なら、今回の依頼も断ろうと思っていたのだが、先方から”イチカ”を名指しで依頼してきたのだ。 一泊になるのも、神殿のギルドで処理した書類をローンロットまで運んで、ローンロットの各ギルドに来ている神殿あての書類をまとめるのに時間が必要になるのだ。ギルドからも、ギルドで宿を用意すると言われているので、受けるしかなかった。 行程にも時間…

続きを読む

2020/06/15

【第九章 神殿の価値】第五話 カイルと子供たち

「イチカ!」 「なに?」 「今日は、どこに行く?」 「カイルは?」 「俺は、今日はアシュリに配達だけ」 「そう、私はローンロットに配達で、向こうで宿泊になると思う」 「わかった。妹たちは?」 「ドーリスさんが手配してくれる。先生たちも居るし大丈夫だと思う」 「わかった。俺もなるべく早く帰ってくる」 「うん。お願い。それじゃ先に行くね」 「おぉ!」 カイルとイチカのお決まりのやり取りだ。 最初の頃は、二人で依頼を受けていたが、効率が悪かったり、行く先々でからかわれたり、不都合ではないがカイルが不機嫌になるので…

続きを読む
広告

2020/06/13

【第九章 神殿の価値】第四話 ヤスのワガママ

「マルス。魚が食べたい」 『マスター。個体名セバス・セバスチャンに命じて、迷宮区で採取出来ます』 「それもいいが・・・。そうだ、湖の村に行こう。あそこなら、湖の恵みを食べられるだろう?頼まれた荷物もある」 『了』 ヤスは思い立ったら吉日。一人で移動する。場所も解っている。 S660の出番だ。ナンバーを660にしている。異世界で召喚したときにナンバーが外れていたので、ヤスはイワンに注文をだしてわざわざ黄色のナンバーを作成して取り付けている。地名が書かれている場所は、”神殿”と日本語で書いた。 ヤスの乗るアーテ…

続きを読む

2020/06/12

【第九章 神殿の価値】第三話 イワンとルーサ

「イワン殿。ヤスから、魔道具は受け取ったのか?」 「ルーサ殿か?魔道具は解析中だ。それよりも、”殿”はやめてくれ、気持ち悪い」 ルーサは、イワンの工房を訪れていた。 工房の前でイワンを呼び出して話を始めたのだ。 「それなら、俺もルーサで頼む」 「”敗者(ルーサ)”か?もう良いのではないか?」 「いや、俺は、ルーサだ。逃げ出した、俺は、敗者ですら無い」 「わかった。わかった。それで、ルーサ。何か用事なのか?」 イワンも触れられたくない話は当然ある。 ルーサも同じだ。隠すわけではない、聞かれたら話をするし、過去…

続きを読む

2020/06/11

【第九章 神殿の価値】第二話 別荘地

やる事がないヤスは、アフネスとサンドラと一緒に貴族用の別荘建築予定フロアに来ている。 神殿の西門近くに作られた入口から入る場所だ。 ヤスは別荘地と言えば、軽井沢か伊豆を思い浮かべる。 イメージは、高級リゾート地ではなく、チープな匂いがする”なんちゃってリゾート”だ。入る前に、審査が行われる。審査は、通常の神殿に入る審査とは違う。貴族や従者に、同じ調査をしていたら殆どの者が許可されない。そのために、リゾート部分を分離したのだ。 「ヤスさん。リゾートという名前で決定なのですか?」 「ん?名前が必要なのか?」 「…

続きを読む
広告

2020/06/10

【第九章 神殿の価値】第一話 ラナからの依頼

 神殿だけは落ち着きを取り戻しつつある。王国や帝国は、神殿を巻き込んだ騒動の後始末が終わっていない。  特に王国は子爵家の暴走から始まる騒動が予想以上に大きな火になって王国中を巻き込んでいる。  最大派閥の貴族派の重鎮である侯爵家の当主が病死した。同じく後ろ盾になっている、公爵家の当主が同じ日に事故死した。これらの葬儀に列席するために、貴族家の当主は王都に集まっている。  侯爵家は、当主の病死の後で王家から指名された者が継いだ。もともと居た息子や娘たちは、事故死したり病死したり、連続で”不審”な死を遂げた。…

続きを読む