【第九章 神殿の価値】第十六話 女子会の続き?

 

「リーゼじゃないの?」

 ディアスの言葉は、リーゼの事情を知っている者たちは、あえて口にしなかったセリフだ。

 皆の微妙な雰囲気を悟って、ディアスは首を撚る。
 リーゼの雰囲気や、ヤスのリーゼへの優遇から、間違いないと思っていた。サンドラやアデーが違うのなら、第一夫人は間違いなく、リーゼだと思っているのだ。サンドラやアデーが第一夫人なら、リーゼは第二夫人になると思っていたのだ。

「ディアスは、リーゼの種族はご存知?」

 代表して、サンドラがディアスに説明を始めた。

「えぇエルフ族だとお聞きしましたが?」

「そうですね。エルフ族なのは間違い有りませんが、ハイエルフのハーフなのです」

 サンドラの説明は、そこで終わってしまった。

「え?」

 ディアスの反応は間違っては居ない。
 だが、アデーやサンドラやドーリスやマリーカには、その反応が不思議に思えた。リーゼの種族を説明するだけで、十分なのだ。

「・・・」

「・・・」

 姦しかった部屋に静寂が訪れる。

「ハーフエルフだというのは知っているけど・・・?」

「え?」

 今度は、サンドラたちが驚く。
 常識だと思っていたことが崩れたのだ。

「サンドラお嬢様。ディアス様は、リーゼ様の・・・。ハイエルフのそれもハーフエルフの事情を、ご存知ではないのかもしれません」

 皆の視線が、ディアスに集中する。

「事情?」

「ふぅ・・・。ごめんなさい。ディアス。私たちには常識だったので、知っているのだと思っていました」

「え?」

「ハイエルフは、エルフ族の中でも、特別な存在だと言うのは知っていますか?」

「えぇもちろん。エルフ族の族長が、ハイエルフで、エルフの集落をまとめている種族ですよね?」

「寿命に関しては?」

「え?500年とも1000年とも言われていますが、実際にはわからないと言うのが通説なのでは?」

「やはり・・・」

 マリーカが予想した通りだ。
 知らないのなら、リーゼが第一夫人候補だと考えていても不思議ではない。

「サンドラ様」

「そうね。皆が知っていると思っていたのは、確かに間違いのようね」

 サンドラが途中まで話をして途中で、アデーの方を向く。

「私もそこまで詳しいわけではないので・・・」

 アデーが、ドーリスを見る。
 確かに、ギルドの職員であるドーリスは事情を知っている。

「ドーリス?」

 ディアスが、ドーリスに狙いを定めた。

「はぁ・・・。ディアス。ハーフのエルフは人数が少ないと思いませんか?」

「え?リーゼ以外は見たこともないかも・・・。だけど、偶然じゃないの?エルフ族は子供ができにくいと聞いたから・・・」

「それも間違いではありませんが、エルフ族は実は子供が出来にくいのは俗説です」

「え?」

「エルフ族が精霊祭と呼んでいる期間は必ず子供が授かるのです。ただ、エルフ族は長命な為に、相手を定めない場合が多い上に、子供は集落で育てるので、子供が少ないと思われているのです」

「そうだったのですね。でも、それだけでは、リーゼがヤス様の相手ではないという理由にはなりません?よね?」

「はい。エルフ族として、子供が少ないという理由は無いのに、ハーフエルフは少ないのです」

「それは、エルフ族が、多種族とあまり関わりを持たないからなのでは?」

「はい。それも正しいのですが、ハーフエルフの特性が問題なのです」

「特性?」

「はい。ハーフエルフ・・・は、オンリーワンという特性を持っています。生涯に、伴侶は一人だけで、心が認めて、身体が求めなければ駄目なのです」

「ん?」

「それに、もう一つ特性がありまして、伴侶に定めた人に寄り添ってしまうのです」

「それは、悪いことなのですか?いいことのように聞こえます」

「はい。ハイエルフでないのなら問題はありません。ただ、ハイエルフの場合には、どういう理由なのかは語られていませんが、伴侶に選んだ者と同等の寿命になってしまうのです」

「え?それは・・・。リーゼが、ヤス様を求めて、伴侶に慣れたとしても、ヤス様の・・・。人族の寿命と同等になってしまうと?」

「はい。だから、ハーフエルフの相手は、人族ではなく、エルフ族やハイエルフが務めるのです」

「でも、それを乗り越えて、リーゼがヤス様を求めて、ヤス様も受け入れたら話は違いますよね?」

「えぇそうですが、その場合でも・・・」

 ドーリスが、サンドラを見る。
 サンドラが息を吐き出しながら、話し始める。

「はぁ・・・。ディアス。エルフ族は、伴侶を決める時に、族長の許しを得なければならないのです」

「でも、リーゼは・・・」

「リーゼ。本人は、母親と父親のことがあるのでしょう。追放されたのだと思っているようなのですが、私がアフネス様に確認した所は、事情は複雑なようです」

「そうなのですか?」

「はい。リーゼは、追放されていません。そもそも、追放されているのなら、アフネス様やミーシャさんやディトリッヒさんが敬うはずがないでしょ?」

「あっ!?考えていなかった」

「追放されたのは、リーゼのお母さんだけで、リーゼは、森の民の一員で次期族長候補なのです」

「え?」

「なので、リーゼの気持ちも大事なのですが・・・」

「そうだったのですか・・・。ヤス様は、ご存知なのですか?」

 皆が、首を横にふる。
 誰もが知っているものと考えていたので、話しては居ない。もちろん、アフネスが話している可能性はあるが、それも無いと思えた。
 ヤスが前から知っていた可能性も考えられるが、それも無いだろうと、皆が思ったのだ。

 リーゼの話が終わると、沈黙が支配したが、すぐに姦しい状態に戻っていく。
 次のターゲットは、カイルとイチカだ。二人の噂話なら、困ることがない。好意を隠さないイチカに、必死に隠しているカイル。可愛くてしょうがないのだ。
 カイルは、バレてはいないと思っているのだが、神殿に住まう者たちだけではなく、ユーラットやアシュリやトーアヴァルデやローンロットだけではなく、最近移動が許されたウェッジヴァイクや湖の村に住む者たちにも知られている。主に、酒呑みたちのツマミにされているのだ。
 駄目な大人たちは、酒場でカイルとイチカがどうなるのか賭けが行われている。

 姦しい女子会が行われている裏で、ヤスが遊んでいる・・・。なんて、ことはなく。
 ヤスは、辺境伯や各種ギルドからの依頼を受けて、王国中を走りまくっていた。
 依頼された、荷物を運んでいたのだ。ギルドの依頼が殆どだが、辺境伯や王家からの依頼も増えている。
 各地に、ヤスが提案した物流の拠点が出来始めている。王家直轄領や辺境伯がまとめている王家よりの派閥に属する貴族の領地だ。ヤスの運送は、拠点までと決めた。それ以上は、よほどの大荷物やヤスでなければ運べない物だけにした。
 ヤスは、王国中を走りまくったことで、王国の地図が十分精度で、作成することが出来た。ディアナに目的地を伝えると、正確に到着時刻が予測できるようになってきた。

 ヤスが求める速度にはまだまだ到達していないが、王国内の物流は飛躍的に改善している。ヤス以外が運ぶ時には、時間がかかるが、荷物の到着率が飛躍的に上がった。道が整備されたことが大きい。
 今までは道が作られていなかったのは、スタンピードを警戒していた。他にも、帝国に攻められた時に道があれば、そのまま自領が襲われてしまう可能性が有ったのだが、王国を守るように出来た石壁の存在が、懸念を取り除いた。
 それだけではなく、物流の集積所だけに繋がる道だけで十分なので、攻め込まれた場合でも防御に移る時間を確保することが可能になる。時間を確保するための連絡網が構築できた。

 ヤスが考案した、定期便も運用し始めている。
 今までは、荷物がある時に街から街に荷物を運んでいたのだが、集積場が出来たことで、定期的に集積場から集積場に馬車を走らせている。荷物がなくても運行している。料金は、領主と王国が折半している。行商になったが、仕事が無い者たちには喜ばれた。小さな荷物を依頼する者たちも多く現れた。実際には、手紙などの荷物を運ぶ需要は前から存在していた。しかし、料金に見合わなくて躊躇していた者たちが定期便を使うようになったのだ。
 定期便を狙った野盗も現れたが、王家と領主が協力して徹底的に追い詰める。いくつかのグループが潰されると、定期便を狙うのは割に合わないと、思っている様子で、定期便が襲わなくなった。同時に、集積所と集積所を結ぶ道が整備され、軍事練習がしやすくなったので、魔物討伐を兼ねる守備隊が行き交うので、安全になっていった。

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