ご都合主義の記事一覧
2020/08/03
【第九章 神殿の価値】第十六話 女子会の続き?
「リーゼじゃないの?」 ディアスの言葉は、リーゼの事情を知っている者たちは、あえて口にしなかったセリフだ。 皆の微妙な雰囲気を悟って、ディアスは首を撚る。 リーゼの雰囲気や、ヤスのリーゼへの優遇から、間違いないと思っていた。サンドラやアデーが違うのなら、第一夫人は間違いなく、リーゼだと思っているのだ。サンドラやアデーが第一夫人なら、リーゼは第二夫人になると思っていたのだ。 「ディアスは、リーゼの種族はご存知?」 代表して、サンドラがディアスに説明を始めた。 「えぇエルフ族だとお聞きしましたが?」 「…
続きを読む2020/07/03
【第九章 神殿の価値】第十五話 女子会
アーデベルトが、リゾート区を2(3)フロアを購入してから、3ヶ月が経過した。 アーデベルトのリゾート区の購入と同時に発表されたのが、アーデベルトが継承権を返上して神殿のリゾート区に住むという事だ。 王国の貴族だけではなく、国民にも驚きをもって迎えられた。 侯爵や公爵の処分が決定したのもあるが、その受け入れ先が、アーデベルトが購入した、神殿のリゾート区なのだ。 侯爵や公爵の一族は、神殿のリゾート区へと監禁されると決まった。監禁といっても、かなりの自由が許されている。リゾート区から出るのは許されないが…
続きを読む2020/07/02
【第九章 神殿の価値】第十四話 ヤスの仕事
サンドラが、兄やジークムントやアーデベルトをリゾート区に案内するために、王都に向かっている時、ヤスは、自分の仕事を行っていた。 ヤスは、カートで遊んだり、東コースや西コースをS660で走り回ったり、工房でイワンと怪しい相談をしたりするのが仕事ではない。 外部から見たら、ヤスは神殿の主である。 したがって、いろいろと要望が上がってくる。しかし、それらはセバスやマルスが処理している。ヤスが目を通すのはごく一部だ。 今日は、そのごく一部の対応を行っていた。 「マルス。それで、設置は迷宮区の中でいいのか?…
続きを読む2020/06/29
【第九章 神殿の価値】第十三話 説得他
ジークは、王都に向かうアーティファクトの中で、ハインツと話をしている。 「ハインツ。神殿を”どう”見る?」 「ジークムント様。難しい質問です」 「ハインツの感じたことを教えて欲しい」 「そうですね。まず、敵対しないほうがよいと思います」 「そうだな。俺もそう思う。帝国とのやり取りや、リップルへのやり方といい。公爵や侯爵の現状を考えると・・・。敵には容赦がなさすぎる」 「はい。しかし、頼ってきたものには門戸を開いていますし、仲間の為ならば神殿の権能を使うのに戸惑いはなさそうです」 「あぁ仲間は無理でも、敵対…
続きを読む2020/06/26
【第九章 神殿の価値】第十二話 視察?終了
ストレスが発散出来た、サンドラはニコニコ顔だ。ジークに対しては、丁寧に接しているが、兄であるハインツには、父親以上の衝撃を与えるように、説明を行った。 アデーは、ジークやハインツと違う疲労感で満たされていた。 イワンと会話して、エルフの責任者からも、付与や魔道具の作成に関しての話を聞いた。 秘術に関わる部分では無いのかと質問したが、二人は笑って、ここでは標準的な内容で秘匿する価値もないと教えられて、自分の常識が崩れ去った。 奥には、案内されなかったが、それでも十分な魅力を感じてしまった。リゾート区ではなく、…
続きを読む2020/06/24
【第九章 神殿の価値】第十一話 許可
「ジーク様。アデー様。ハインツ様。見学の許可が降りました。どの順番で回りますか?」 3人は、起きてから食事を済ませていた。案内である、サンドラが来るのを待っていたのだ。 そこに、ツバキが別荘にやってきて、3人に予定を聞いたのだ。 「お兄様!工房に行きましょう!工房!」 「アデー。落ち着け。ツバキ殿。案内は、ツバキ殿がしてくれるのか?」 「はい。私が、ご案内いたします」 「ハインツはどうする?」 「ツバキ殿。サンドラがどこに居るのかご存知ですか?」 「サンドラ様は、本日はお休みの予定ですが、ギルドに顔を出すと…
続きを読む2020/06/22
【第九章 神殿の価値】第十話 アーデルベルトの思惑
風呂を堪能してから、タブレットを兄のジークムントとハインツから奪い取った。タブレットをニコニコ顔で抱えながら、与えられた部屋に入ったアーデベルトは、早速カタログを見始めた。 「(ふふふ。やはりありました!さすがは、神殿ということでしょう!!!)」 バッケスホーフ王国の第二王女アーデベルト・フォン・バルチュ=バッケスホーフ。近親者や上級貴族の間では、”錬金姫”と呼ばれている。 アデーはカタログから素材がないか探していた。 アデーが、今回、兄であるジークムントの視察に着いてきたのは、神殿の工房に興味が有ったから…
続きを読む2020/06/19
【第九章 神殿の価値】第九話 ハインツの驚愕
サンプル別荘に入った3人は、驚愕で身体が固まってしまった。 メイドからフロアの説明を聞いたからだ。 「ハインツ?」 「おい!ハインツ!」 「あっはい。ジークムント様」 「ハインツ。ジークと呼べ」 「あっはい。もうしわけありません。ジーク様」 ハインツは、普段の癖が抜けきらない。 サンドラのように、”さん”とは呼べないのだ。王宮に行っていた癖が抜けきらないのは無理からぬことだ。 「”様”も必要ないが、無理だろうな。ハインツ。お前は知っていたのか?」 ジークムントが言っているのは、別荘に入ってきて、最初に説明を…
続きを読む2020/06/18
【第九章 神殿の価値】第八話 サンドラの憂鬱
サンドラは、ローンロットの道のりで2回の休憩を挟んだ。 アーティファクトの魔力切れを理由にしたが、実際には、ジークとアデーからの質問攻めに精神が疲れてしまったからだ。 質問される内容の殆どが、サンドラでは答えられない内容だった。ヤスに聞いて欲しいと思ったが、ヤスを質問攻めにすると、嫌になって貴族と合わないと言われてしまう。実際にヤスは気に入った人にしか合わない傾向が強い。それでは、困る場面が出てくるかもしれない。 サンドラは、ハインツに助けを求めたが、ハインツはアーティファクトの速度に驚いて使い物にならなか…
続きを読む2020/06/17
【第九章 神殿の価値】第七話 サンドラの仕事
サンドラの朝は早い。 日の出前には起きるようにしている。神殿に住むようになってから、朝に強くなった。 ギルドのサポートがメインだったはずが、いつの間にか、貴族対応の窓口になっていた。 「お兄様!問題点を伝えているのです。しっかりと、聞いてください」 『聞いているよ。それで、サンドラ。僕はどうしたらいいの?今日、届けられた、価格表で交渉すればいいのかい?』 「本当に、第一王子と第二王女が神殿に別荘をお作りになるのですか?」 『流石に、国王は遠慮してもらったが、第一王子は是非とおっしゃっているし、第二王女は自分…
続きを読む2020/06/16
【第九章 神殿の価値】第六話 イチカ
イチカは、カイルと話をして、妹や弟をカイルが面倒をみてくれると聞いて安心していた。 ドーリスやサンドラや時にはヤスやリーゼが妹や弟の世話をしてくれるが、もうしわけなく感じていた。本当なら、今回の依頼も断ろうと思っていたのだが、先方から”イチカ”を名指しで依頼してきたのだ。 一泊になるのも、神殿のギルドで処理した書類をローンロットまで運んで、ローンロットの各ギルドに来ている神殿あての書類をまとめるのに時間が必要になるのだ。ギルドからも、ギルドで宿を用意すると言われているので、受けるしかなかった。 行程にも時間…
続きを読む2020/06/15
【第九章 神殿の価値】第五話 カイルと子供たち
「イチカ!」 「なに?」 「今日は、どこに行く?」 「カイルは?」 「俺は、今日はアシュリに配達だけ」 「そう、私はローンロットに配達で、向こうで宿泊になると思う」 「わかった。妹たちは?」 「ドーリスさんが手配してくれる。先生たちも居るし大丈夫だと思う」 「わかった。俺もなるべく早く帰ってくる」 「うん。お願い。それじゃ先に行くね」 「おぉ!」 カイルとイチカのお決まりのやり取りだ。 最初の頃は、二人で依頼を受けていたが、効率が悪かったり、行く先々でからかわれたり、不都合ではないがカイルが不機嫌になるので…
続きを読む2020/06/13
【第九章 神殿の価値】第四話 ヤスのワガママ
「マルス。魚が食べたい」 『マスター。個体名セバス・セバスチャンに命じて、迷宮区で採取出来ます』 「それもいいが・・・。そうだ、湖の村に行こう。あそこなら、湖の恵みを食べられるだろう?頼まれた荷物もある」 『了』 ヤスは思い立ったら吉日。一人で移動する。場所も解っている。 S660の出番だ。ナンバーを660にしている。異世界で召喚したときにナンバーが外れていたので、ヤスはイワンに注文をだしてわざわざ黄色のナンバーを作成して取り付けている。地名が書かれている場所は、”神殿”と日本語で書いた。 ヤスの乗るアーテ…
続きを読む2020/06/12
【第九章 神殿の価値】第三話 イワンとルーサ
「イワン殿。ヤスから、魔道具は受け取ったのか?」 「ルーサ殿か?魔道具は解析中だ。それよりも、”殿”はやめてくれ、気持ち悪い」 ルーサは、イワンの工房を訪れていた。 工房の前でイワンを呼び出して話を始めたのだ。 「それなら、俺もルーサで頼む」 「”敗者(ルーサ)”か?もう良いのではないか?」 「いや、俺は、ルーサだ。逃げ出した、俺は、敗者ですら無い」 「わかった。わかった。それで、ルーサ。何か用事なのか?」 イワンも触れられたくない話は当然ある。 ルーサも同じだ。隠すわけではない、聞かれたら話をするし、過去…
続きを読む2020/06/11
【第九章 神殿の価値】第二話 別荘地
やる事がないヤスは、アフネスとサンドラと一緒に貴族用の別荘建築予定フロアに来ている。 神殿の西門近くに作られた入口から入る場所だ。 ヤスは別荘地と言えば、軽井沢か伊豆を思い浮かべる。 イメージは、高級リゾート地ではなく、チープな匂いがする”なんちゃってリゾート”だ。入る前に、審査が行われる。審査は、通常の神殿に入る審査とは違う。貴族や従者に、同じ調査をしていたら殆どの者が許可されない。そのために、リゾート部分を分離したのだ。 「ヤスさん。リゾートという名前で決定なのですか?」 「ん?名前が必要なのか?」 「…
続きを読む2020/06/10
【第九章 神殿の価値】第一話 ラナからの依頼
神殿だけは落ち着きを取り戻しつつある。王国や帝国は、神殿を巻き込んだ騒動の後始末が終わっていない。 特に王国は子爵家の暴走から始まる騒動が予想以上に大きな火になって王国中を巻き込んでいる。 最大派閥の貴族派の重鎮である侯爵家の当主が病死した。同じく後ろ盾になっている、公爵家の当主が同じ日に事故死した。これらの葬儀に列席するために、貴族家の当主は王都に集まっている。 侯爵家は、当主の病死の後で王家から指名された者が継いだ。もともと居た息子や娘たちは、事故死したり病死したり、連続で”不審”な死を遂げた。…
続きを読む2020/06/09
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十八話 開戦と終了と後始末
「アフネス。ルーサ。ダーホス。ドーリス。サンドラ。ヴェスト。エアハルト。イワン。帝国を殲滅する準備が出来た。ここで、見られるがどうする?」 ヤスは、皆を見るが、誰一人として帰ろうとしない。 どんな状況になるのか確認したいのだ。 「わかった。セバス。操作を頼む。マルス。作戦を実行しろ」 「はい。旦那様」 ”イエス。マイマスター” プロジェクターで投影されたスクリーンには、駐屯する帝国軍が映されている。 ドッペル兵士たちが、進軍し始めた。まだ距離があるために、二画面に分かれて表示されている。 「ヤス。あ…
続きを読む2020/06/08
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十七話 帝国に穿たれた小さな楔
ヤスへの質問はまだ続いていた。 ドッペル男爵を使った帝国での”いやがらせ”は十分に理解できたが、まだ聞かなければならなかった。 「ヤスさん。お父様とドッペル男爵の会談を取り持てませんか?」 「問題ないぞ?家の格を考えると、ドッペル男爵をローンロットに向かわせるか?その時に、帝国の村の村長をやるドッペル息子も一緒に連れていけばいいよな?」 エアハルトが手を上げて話に入ってきた。 「ヤス殿。サンドラ様。その会談には、私も出席したいのですが問題はありますか?」 ヤスはサンドラを見る。問題はないと思っている…
続きを読む2020/06/07
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十六話 報告会
「ヤス。正直に教えてほしい。なんなら、ここに居る全員にリーゼを呼んで制約の魔法をかける」 「そこまでは必要ない。話を聞いて出ていきたいのなら出ていけばいい」 ヤスは、自分の行動を秘密にする必要性を感じていない。秘密にして隠していれば、弱みになりかねない。秘密は弱点にもなりかねない。ヤスは、幼馴染でもある男の顔を思い出していた。 「わかった。聞いた後で判断させてもらうよ」 「皆もそれでいいか?」 サンドラに続いてルーサが皆に確認をする。 ルーサの確認に皆がうなずいた。 皆がうなずいたのを見てヤスは肩を…
続きを読む2020/06/01
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十五話 帝国の村
子爵たちの処分に目処が付いたヤスは、保留していた帝国への対応を開始した。 マルスからの情報で、帝国軍は、3つの家の連合で作られているようだ。それぞれの家の三男や四男が率いている。連合と言っても、統率が出来ているわけではない。ただ一緒にいるだけの関係だ。兵士数も、各家では3、000の兵士を出して、物資を輸送する兵站を1,000名出している。合計すると1万2,000にもなるが烏合の衆であるのは間違いない。 石壁が始まっている場所で、陣取って動こうとしない。 先に攻撃を仕掛けて、失敗したら笑いものになる。…
続きを読む2020/05/31
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十四話 捕らわれの者たち
見世物になるのが確定しているリップルたち”ヒトモドキ”は、隷属の首輪をするのを拒否している。 リップル子爵の命令で、身分の低い者が首輪を付けられた。宣言通りに、絶命するまでゆっくりと首輪が絞まっていった。その間、首輪を付けられた者は苦しみ続けた。それを見て誰も首輪を着けようとしなくなってしまったのだ。一人と首輪一つが減った檻の中では、醜い争いが発生していた。 身を隠すことが出来ない場所に捕らわれている。食事も人数分しか提供されない。 快適な生活が出来るような場所と環境ではない。魔物が出ないだけマシだ…
続きを読む2020/05/30
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十三話 トーアヴァルデ
帝国は確かにトーアヴァルデには近づいてきている。 しかし、戦闘が開始されるような距離ではない。入口に到達したに過ぎない。それも、野営地を作って新たに作られた壁を調べている段階だ。帝国は、リップルとは違って撤退しても問題はない。攻めてこない可能だって残されている。 リップル元子爵軍は、騎士を中心に一斉に動き出した。 規則正しい動きではなく、統率も取れていない。ただ、門を目指しているのだ。 先頭が門に到達する寸前に、門が内側に開かれた。 ”開いた!” ”進め!勝利は我らの物だ!” ”何が神殿の主だ!所…
続きを読む2020/05/29
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十二話 帰還と開戦
ヤスとリーゼとサンドラが神殿に帰ってきた翌日には大量のドワーフがアシュリに到達した。 酔っぱらい状態だったらしいが、足取りはしっかりしていた。それだけではなく、リップルの神殿討伐軍(笑)の動向も掴んできていた。途中で逃げ出した者や軍から物資を持ち逃げして、盗賊になった者を討伐してきたようだ。逃げ出した者は、そのままレッチュ辺境伯領に押し付けてきたとルーサに説明した。 ドワーフたちが討伐軍よりも早く到達したのにも理由がある。 ドワーフたちは、最短距離を移動してきた。レッチュ辺境伯領を突っ切った形だ。限…
続きを読む2020/05/28
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十一話 鉱山の村
「ディアス。二人の様子はどうだ?」 『エミリアが応えます。ファーストからの問題点の指摘はありません』 「そうか・・・」 神殿を出て、ユーラット経由でアシュリに向かっている。 一度、アシュリでルーサに会って、リップルの動向を確認してから、鉱山の村に向かう道を考えることに決まった。 「ディアス。ファーストに連絡して、アシュリの駐車スペースに停車させろ」 『了』 運転しているのは、リーゼだ。 ヤスの指示に従って、駐車スペースにFITを停めた。 リーゼが運転席。サンドラが助手席に座っている。後部座席には、…
続きを読む2020/05/27
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十話 イワンの依頼
ドアを開けて入ってきたのは、リーゼとサンドラだ。 サンドラは、ヤスを見て頭を下げるが、リーザはヤスに飛びついたのだ。 「ヤス!僕が案内するよ!」 「わかった。わかった。イワン。二人で間違っていないのか?」 「あぁ・・・。サンドラの嬢ちゃんだけの予定だったが・・・」 「駄目だよ!サンドラとヤスを二人だけなんて!僕も一緒に行く!案内なら任せて!」 ヤスは、サンドラを見るが、なぜか懇願する表情になっている。ヤスはリーゼが無理矢理サンドラを説得したのだと理解した。 「わかった。その鉱山の村までは遠いのか?」 …
続きを読む2020/05/26
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十九話 後始末の準備
ヤスは、魔通信を切った。 ヤスは、大事な用事を思い出した。辺境伯でも良かったが、サンドラに繋いだ。 「サンドラ。聞きたいことがあるけど大丈夫か?」 『大丈夫です』 「豚公爵の名前と領地を教えてくれ」 『ヤスさん。何をなさるおつもりですか?』 「明確な敵なのだろう?名前と所在がわからないと、気持ちが落ち着かない」 『・・・。ヴァルブルグ公爵です。領地はありません。王都にお住まいです』 「へぇ王都か・・・。そりゃぁ大変だな。狐侯爵は?」 『お父様ですか?ヤスさんに教えたのは?』 「うーん。それで?」 サン…
続きを読む2020/05/25
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 国の行く末を憂慮する辺境伯
『お父様!』 「わかった。サンドラ。みなまで言わなくていい。ハインツに連絡して、王家に筋を通しておく」 『ありがとうございます。後ほどヤスさんからお父様にご連絡があると思います。よろしくお願いします。それでは!』 娘からの連絡を受けて、リップルの連中が暴発したのを知った。 儂が放っていた者たちからの連絡よりも、娘から連絡が早かったのが情けなくなる。抜本的な変革が必要になってきたのかも知れない。魔通信機が使いやすい環境だとしても、時間の差を考えてしまう。そして、娘は神殿が負けるとは考えていない。王家への連…
続きを読む2020/05/24
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十八話 落日のリップル
”リップル子爵領から兵士が関所を目指して進軍している” この情報が神殿にもたらされたのは、ヤスが関所の森、神殿の森、魔の森にポッドの配置を終えた翌日だ。 休む暇も無いと愚痴を言っているヤスだったが、報告をあげてきたルーサと話をするためにモニターの前に居た。 『ヤス!』 ルーサがモニター越しに怒鳴っている。 ヤスが言った愚痴が聞こえてしまっていたのだ。わかっていた話だが、緊急事態には違いない。 「ルーサ。聞こえている。状況を教えてくれ」 『すまん。ヤスだけか?』 いつものメンバーが揃っていると思っ…
続きを読む2020/05/23
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十七話 ヤスの勘違い
ヤスは、レイクサーペントを、安全を考慮して配置範囲のギリギリにあたる100メートル先に召喚した。いきなり襲われる可能性は無いと思ったが、魔物の大きさが解らなかった為の処置だ。 ヤスの目の前に体長10メートルを超えそうな巨大な白蛇が姿を現した。赤い目を持つ白い蛇だ。 『マスター』 白蛇は、ヤスに頭を垂れるような姿勢になっている。 「ん?お前か?」 目の前の白蛇にヤスは話しかける。 『マスター。名前を頂けないでしょうか?』 「名前?」 『はい。マスターの眷属にしていただきたいのです』 白蛇はヤスに懇願…
続きを読む2020/05/22
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十六話 日常の一コマ
難民たちは、神殿の領地内に散らばった。 ヤスに取って、嬉しい誤算もあった。村で、宿屋をやっていた夫婦が数組だが存在していた。それだけではなく、神殿内に足りなかった雑貨屋や食堂の経験者も居た。希望を聞きながら、神殿の都(テンプルシュテット)とアシュリとトーアヴァルデとローンロットに散らばった。冒険者たちも、ユーラットや神殿の都(テンプルシュテット)に拠点を移動した。 関所の森に作った2つの村は、食料供給の一大拠点となった。 現在は、畑仕事だけだが、マルスから食料確保の簡単な方法が提示されて、実行すると…
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