ダンジョンの記事一覧
2023/07/18
【第五章 共和国】第六十三話 声なき声
戦闘は終わった。 体力も気力も限界だ。 精神的に疲れたので動きたくない。 カルラも珍しく座り込んでいる。アルバンは、横になって目を閉じている。 確かに、周りには脅威になるような物はない。 クォートとシャープもユニコーンもバイコーンも機能が十全に使えるようになって、確認をしてから移動を開始した。 クォートたちが帰って来るまで休憩する。 さすがに、疲れた。 葬送を終わらせて、やっと終わった感じがしている。 辺りは、先頭の余韻が漂っているが、しばらくしたら消えるだろう。 自然が戦闘を隠して、元の状態に戻すだろう。…
続きを読む2023/06/29
【第三十章 新種】第三百十話
デ・ゼーウに情報を提供するために、ルートガーが部屋から出て行った。 方針も決まったのだし、もう大丈夫だろう。 もういい加減にチアル大陸に戻りたい。差し迫ってやることは思いつかないが、適当な理由を考えて帰ってしまおうか? ルートガーが戻って来るまで、新種に関して、解っていることを考察しておこう。考えるだけしかできないけど・・・。 中央大陸は安定してくれた方が嬉しいが、荒れたら荒れたで接し方を変えるだけで、チアル大陸への影響は少ない。少なくなるように動けばいい。 そうなると、安全面や今後の動きを考慮すれば、”新…
続きを読む2023/06/27
【第五章 共和国】第六十二話 DoS攻撃?
黒ドラゴンの正体が、人を核にしたキメラだった。 煙が天に上がる。 森の木々を越えたあたりで、煙が霧散する。 それぞれ・・・。待つ人の所に向かっているようにも思える。 「兄ちゃん?」 「アル。お疲れ。カルラは?」 「姉ちゃんは、防具をまとめている」 さっそく動き出している。 アルバンの視線を追うと、カルラが防具をまとめている姿が目に飛び込んできた。 俺とアルバンは、攻撃をかわすために、全力だった。スキルを使わない戦いは辛かった。 途中からスキルを全開で使わなければならなかった。 本当に、嫌らしい敵だ。 「旦那…
続きを読む2023/06/21
【第三十章 新種】第三百九話
新種の話は一旦、棚上げすることにした。新種は気になるが、すぐに動くことができない。情報も不足している。今、動いても無駄になってしまう可能性が高い。 それ以上にやらなければならないことも残っている。 ルートガーからの報告は、大きな問題はなさそうだ。 ドワーフたちが思っていた以上に理性的だったのは、予想とは違ったが、いい誤算だ。 ドワーフたちは、求めていた鉱石を、デ・ゼーウから譲り受ける事で合意した。 必要な分量を確保することを、デ・ゼーウが約束したからだ。 デ・ゼーウは、ダンジョンを公開すると約束して、攻略を…
続きを読む2023/06/21
【第五章 共和国】第六十一話 黒ドラゴン
黒ドラゴンは、黒い靄を纏っているようにも見える。 ブラックドラゴンではなさそうなのは・・・。不幸中の幸いか? 考えていても意味がなさそうだ。黒ドラゴンは、既に戦闘態勢だ。 四体の龍を呼び出す。 黒ドラゴンに突っ込ませるが、ダメージを与えているようには思えない。靄は、一瞬だけ剥がれるがすぐに元に戻ってしまう。それだけではない。龍を吸収しているようにも見える。 アルバンとカルラも、後ろを気にしながら攻撃を加えるが、黒い靄が崩れるだけで、すぐに戻ってしまう。 「カルラ!」 「はい。スキルで攻撃します」 「頼む。ア…
続きを読む2023/06/07
【第三十章 新種】第三百八話
話を進めるほどに、ルートガーの表情が変わる。 「それで?お前の考えは?」 実際に発生した事案としての話を終えた。 もちろん、俺の考察は出来るだけ省いた。ルートガーの意見を聞きたいだけだ。 「先に、ルートの考えを聞きたい。俺の話だけだから、誘導してしまったかもしれないけど・・・。感想でいいから、聞きたい。考えの補填に使いたい」 俺の主観での説明だから、俺が導き出した結論がベースになっている。 ルートガーの見解が同じになってもしょうがないと思う。 話はできるだけ、贅肉をそぎ落として実際に発生していることだけを語…
続きを読む2023/06/06
【第五章 共和国】第六十話 死闘
クラーラ! お前だけは、お前だけは・・・。 『アルノルト様。その”絡繰り”はダメです』 指を鳴らす音が響いた。 「アルノルト様!」 カルラが慌てて、俺に駆け寄ってくる。 剣は構えたままだが、クラーラの姿が見えない。スキルを使うが、クラーラを補足さえできない。 「アルノルト様!クォートとシャープが!」 カルラに指摘されて、二人を見ると、糸が切れたかのように、身体から力が抜けて、座り込んでいる。 バックアップは作成してあるので、復元はできるだろう。 しかし・・・。 その前に、クラーラは、”何を”やったのだ? そ…
続きを読む2023/05/16
【第三十章 新種】第三百七話
ゴブリンの巣を殲滅した レベル5の”猛毒”という新しいカードを取得した。 他にも、レベル1-3のカードを大量に入手した。戦果としては、十分なのだが、しっくりこない。 ”蟲毒”が行われたのは想像出来るのだが、”蟲毒”が新種発生のプロセスなのか? 人為的に”蟲毒”が行われたのか?自然発生なのか?偶然にしては出来すぎている。 「ライ。近くには、ゴブリンは居ないよな?」 『居ない』 「ゴブリン以外は?」 『居ない』 洞窟の探索では、新しい発見はなかった。 洞窟を出て、高台になっている場所に上がってみる。 違和感が凄…
続きを読む2023/05/16
【第五章 共和国】第五十九話
丘の頭頂部に座っていると、注ぎ込む太陽が気持ち良い。風も気持ちがいい。吹きおろしの風だ。 「アル!」「アルバン!」 何があった? 俺とカルラは、武器を抜いて走り出した。 丘から駈け下りる。 数十メートルの距離がもどかしい。 「クォート!シャープ!」 ダメだ。 森から出てくる奴らを抑えるだけで精一杯だ。二人が苦戦しているわけではない。連携が阻害されている。 違和感しかない連中だ。強いわけではない。数が多いわけではない。でも、ダメージをダメージとして認識していない? 武器を恐れていない。 でも、武器の扱いに慣れ…
続きを読む2023/05/02
【第三十章 新種】第三百六話
ゴブリンの新種?が落したスキルカードを見ているのだが、チアル大陸で出現していたゴブリンたちが、落すスキルカードとの違いは見られない。 「カイ!ウミ!」 スキルカードの回収が終わっているが、また奥からゴブリンの新種と思われる気配が近づいてくる。 カイとウミも解っているのだろう、臨戦態勢に戻る。 ライが分体で周りの探索を始める。 スキルに頼ることも出来るのだが、新種のゴブリンは急に湧いた感じがした。 もし、これがダンジョンと同じように、新種として産まれてくるのなら、対策が難しい。チアル大陸でも、街中でいきなり、…
続きを読む2023/05/01
【第五章 共和国】第五十八話 合流
俺とカルラは、荷物や馬車を置いて、アルバンが戦っている場所に急いだ。 アルバンが負けるとは思っていない。 俺とカルラが問題に思っているのは・・・。 アルバンが、相手を殺してしまう可能性があることだ。 アルバンの過去にも影響しているのだが、アルバンにはトリガー(トラウマ)が存在している。トリガーが引かれると俺やカルラが対応しないと、抑えられない。今回は、大丈夫だとは思うが、何があるかわからない。 アルバンを襲った奴らが殺されようが、どんな酷い結末を迎えようが、気にしない。 しかし、アルバンが落ち込むのは避けた…
続きを読む2023/04/18
【第五章 共和国】第五十七話 襲撃者?
しまった! 内通者の存在自体が罠の可能性を完全に忘れていた。 王国に帰ることで頭がいっぱいだった。 共和国のダンジョンが弱かったことや、思っていた以上に共和国の連中が弱かったから、気を抜いてしまっていた。 俺たちだけが、共和国内で実践形式の訓練をしていたわけではない。 帝国の奴らも、共和国を狙っていても・・・。それなら、俺たちを見つけて、情報を抜こうとしていても不思議ではない。 俺が、帝国の立場でも同じ事を考えただろう。 そして、実行する。 内通者が仕立て上げられたら、内通者に情報を送らせる。 情報が流れて…
続きを読む2023/04/13
【第三十章 新種】第三百五話
ルートガーとファビアンが、俺たちから離れた。ルートガーの従者として連れてきた連中も、ルートガーと一緒に交渉をまとめるように伝えている。ダンジョンの内部の説明を、ファビアンだけに任せるのは、ルートガーの立場が悪くなる。俺が着いて行くことも考えたが、ルートガーに交渉を任せるのに、俺が一緒では意味がない。従者たちは、ダンジョンに潜っている。俺の代わりに、ルートガーにダンジョン内部の説明をする役割を与えた。 それに、記録係りくらいはできるだろう。 ルートガーには必要がないと言っても、従者だけではなく護衛としての役割…
続きを読む2023/04/13
【第五章 共和国】第五十六話 同行者?
クォートとシャープとの合流まで、半日程度の距離に到着した。 順調な行程に、少しだけ不安を覚える。 俺たち側には、問題は出ていない。 アルバンが暇をもてあましたのが、問題と言えば問題になっている程度だ。俺もカルラも、それぞれでやることがある。何もないアルバンだけが暇を持て余している状態になってしまっていた。狩りに出かけようにも、目的が合流なので、俺たちから離れての行動は許可できない。食料の調達や素材の確保も現状では必要ない。流石に、文句(グチ)は言っていないが、何もない状況に飽きているのが目に見えてわかってし…
続きを読む2023/03/28
【第三十章 新種】第三百四話
最下層に、ファビアンとイェレラとイェルンとロッホスとイェドーアが転移してきた。 呼び寄せたので、当然なのだが、本人たちは何が発生したのか混乱していた。 俺が居るのを見て、俺が何かをしたのかと考えているようだ。 表情を変えすぎの気がするが、俺を見て安堵するのは、少しだけ違う気がする。時に、ファビアンを除いた4名は、護衛の役割を含めて、ルートガーに報告して、再教育を受けてもらおう。 「揃ったな」 皆が俺の前に来て、頭を下げる。 「ツクモ様」 「攻略が終わった。今から、地上に帰る。君たちを呼び寄せたのは、コアの力…
続きを読む2023/03/28
【第五章 共和国】第五十五話 内通者
準備が出来た馬車を、あえて王国とは逆の方角に馬車を進めた。 カルラは、反対したのだが、俺が押し切った形だ。 3つの情報を流した。流し方にも工夫をした。俺たちの情報だと解るようにした物と、俺たちだと解らないようにした情報だ。 ・アルトワ町に寄ってから共和国内の別の国から王国に帰る ・馬車は囮で、徒歩で王国に向かっている ・数多くの嘘情報を流して、裏切り者を探している。実際にはダンジョン内に隠れている者をあぶりだす。 情報を流して、すぐに効果が現れた。半日程度で状況が変わったのには驚いた。しっかりと、耳が設置さ…
続きを読む2023/03/20
【第三十章 新種】第三百三話
帰ることにした。 カイとウミとライもそのつもりで準備を行っている。 準備と呼べるような物ではないが、倒したボスの素材は持ち帰ったほうがいい。ダミーコアの準備も終わっている。 使い方も、コアに話を聞いているので大丈夫だ。それに、間違えても、コアがハッキングされたり、クラッキングされたり、乗っ取られなければ間違えた使い方をされても問題にはならない。 チアルの対応が出来ない状況になったら、また攻略すればいいだけだ。その時には、ダンジョンを討伐することになるので、最悪はダンジョンが消滅してしまう可能性が高い。 デ・…
続きを読む2023/03/20
【第五章 共和国】第五十四話 密談
アルトワ・ダンジョンの周りには、動物がちらほらと見受けられるが、魔物や人は存在していない。 街道から外れている状況で、且つ、その街道が殆ど使われていないことを考えれば、当たり前の結果だが、野盗が隠れている可能性も考慮した。 動物を見つけられたから、盗賊は居ないと思っていた。 アイツらは、近くに居る動物は狩りつくす。狩りつくした上に、盗賊行為を行う。知恵が付いたゴブリンだ。見つけ次第、殲滅が正しい対応だと思っている。使い道もあるので、殺さずに捕まえることが多いのだが・・・。共和国に入ってからは、野盗は殺してい…
続きを読む2023/03/14
【第三十章 新種】第三百二話
魔法陣が歪んだ。魔法陣が消えてしまえば、脱出が難しくなってしまう。 ダメなのか? 「ライ!」 『カズ兄。終わった』 ライからの返事が聞こえてきたと同時に、魔法陣が正常に戻った。 それだけではなく、壁が崩れ始めていたのも止まった。 コアの吸収が終わったのか? チアルが作り出したコアと融合したのか? ライからの呼びかけに従って、コアが置かれているはずの、コアルームに移動する。 一つのコアが明滅している。 コアの横には、ライがいつもの姿で待っていた。 「ライ」 『カズ兄。新しいダンジョン・コアに、名付けをお願い』…
続きを読む2023/03/13
【第五章 共和国】第五十三話 出立準備
アルトワ・ダンジョンの要塞化は、残りは中身をソフトウェアを整える段階に入った。ここからは、時間がかかる為に、アルトワ・ダンジョンに残る者たちに任せることになる。 残る者たちの手助けに鳴るように、警報装置を設置した。 結界を応用した物だが、消費を抑えた魔法(プログラム)が完成した。かなり機能を削ったが、アラーム程度には使える。アルトワ・ダンジョンに近づいた者をマーキングするだけの魔法だ。 正規の手続きをしないで、城壁を越えたらアラームが鳴るようになっている。 出来たらブラックリストを作りたかったが、そこまで組…
続きを読む2023/03/07
【第三十章 新種】第三百一話
俺たちのボス戦を見学して、これ以上は付いていけないと判断をした。 イェレラとイェルンとロッホスとイェドーアは、途中で引き返す事にした。ファビアンと一緒に待っている。武器と防具は、持たせたので途中で県令や戦闘訓練を行っているように伝えた。物資も持たせたので、1週間くらいなら大丈夫だろう。 俺とカイとウミとライだけになると、ダンジョンの攻略は気持ちが悪いくらいに順調だ。 途中ですれ違った攻略者たちから聞いた、最高到達階層に到着した。 ここまで、俺は戦っていない。 ライは、ほぼ荷物持ちだ。 カイとウミ。正確に言え…
続きを読む2023/03/06
【第五章 共和国】第五十二話 要塞化
俺は、カルラとアルバンをアルトワ・ダンジョンの拠点に残して、最下層に移動した。エイダと二人で駆け抜けた。 『マスター』 「ウーレンフートから、ラックを持ってきてくれ」 『了』 エイダに指示を出す。ラックサーバで、アルトワ・ダンジョンと周辺を構築する。 城塞を作るには、組み込んでいるサーバーではパワーが足りない。アルトワ・ダンジョンは、共和国内のダンジョン(サーバー)を管理する必要もある。モニターを行うだけでも、十分なパワーがないと重要な情報を見逃すことがある。 各ダンジョンには、最低限の施設だけを残すように…
続きを読む2023/02/21
【第二十九章 鉱山】第三百話
ファビアンと10階層のセーフエリアで別れた。 4人には改めて説明をした。 これからが本当の戦いだと認識させるためだ。4人の顔つきも変わってきた。 ルートガーが居ない事に最初は戸惑っていたが、強くなろうという意識はあったのだろう。 10階層までの戦闘で、戦闘の入り方や終わらせ方が洗練され始めている。 「どうする?」 「ツクモ様。どうするとは?」 「スマン。スマン。10階層のフロアボスは、低階層と中階層を繋いでいるボスで、中階層の階層主と同じ強さだ。俺の見立てでは、お前たちだけで討伐は可能だと思う。しかし、少し…
続きを読む2023/02/20
【第五章 共和国】第五十一話 再びのアルトワ
ダンジョンの攻略を終わらせて、王国に帰還するために、拠点を築いたアルトワ町に向かっている。 より正確に言えば、アルトワダンジョンに向かっている。 俺たちだけなら、アルトワダンジョンの最下層からウーレンフートに移動することも出来るのだが、国境で証拠を残す必要がある。 『マスター』 俺の横で静かに作業をしていたエイダが話しかけてきた。 「終わったのか?」 『是』 クォートとシャープと合流して、報告を受けたのだが、俺たちが攻略を見送った小さなダンジョンや、未発見状態だったダンジョンを攻略してきた。眷属を自由に増や…
続きを読む2023/02/14
【第二十九章 鉱山】第二百九十九話
ゼーウ街に着くまで、ルートガーは抵抗していたが、決定は変えなかった。ルートガーに悪いが、ゼーウ街で、ゆっくりとデ・ゼーウの手伝いをして欲しい。 ゼーウ街から、ダンジョンまではスムーズに移動が出来た。 デ・ゼーウが手配を終わらせていて、俺たち6名はすんなりとダンジョンに入ることが出来た。 カイとウミとライは、俺の側に居る。 ダンジョンには、俺とイェレラとイェルンとロッホスとイェドーアとデ・ゼーウからのごり押しで、ファビアンが一緒に潜っている。 ファビアン以外の4人には、ルートガーの”ツケ”で武器と防具を渡して…
続きを読む2023/02/13
【第五章 共和国】第五十話 幼き記憶
おいらの名前は、アルバン。 親に与えられた名前は、別にあるのだが、兄ちゃんから、”真名(まな)”を教えない設定でかっこいいと言われた。凄く気に入っている。真名(まな)は誰にも教えない。おいらだけが知っている。魂の名前。 兄ちゃんには、もちろん真名(まな)を教えている。 でも、普段は、アルと呼んでくれる。慣れているのもあるが、しっくりくる。自分が呼ばれていると思える。今更、真名(まな)で呼ばれてもしっくり来ない。 兄ちゃんには、おいらの事は、クリス姉ちゃんから指示を受けたおっちゃんと一緒に旅(行商)をしてきた…
続きを読む2023/02/06
【第二十九章 鉱山】第二百九十八話
新種の話は、十分ではないが、船長からの証言が取れた。 やはり、海上だろうと、新種は存在している。 問題は、”どこから来たのか?”だ。 最初に考えたことは、船長の言葉で潰された。 中央大陸よりも、他の大陸の方がおおいと感じているようだ。 もしかしたら、中央大陸では既に”新種”になっていて、”できそこない”が居ない可能性もある。 そう考えると・・・。 やはり、新種は人為的に作られているのか? 解らないことが増えただけだが・・・。知らないよりは”まし”だと考えておこう。 「ツクモ様」 船長からの伝言を受け取る。 …
続きを読む2023/02/06
【第五章 共和国】第四十九話 カルラノート
私は、カルラ。 カルラの名を継いでから5年が過ぎた。今の主は、クリスティーネ・フォン・フォイルゲン様。フォイルゲン辺境伯家のご息女で、ユリウス・ホルトハウス・フォン・アーベントロート皇太孫の婚約者だ。貴族家にしては珍しく、恋愛からの婚姻(クリスティーネ様が断言されていた)らしい。 クリスティーネ様からの指示を聞いたときに、不思議に思った。クリスティーネ様と幼年学校からのクラスメイトで少しだけ変わった感性を持っていると教えられた、アルノルト・フォン・ライムバッハ。フォイルゲン辺境伯家と同等の辺境伯の跡継ぎと、…
続きを読む2023/01/24
【第二十九章 鉱山】第二百九十七話
船の中で、食事を摂って、カイとウミとライと遊んでいたら、扉がノックされた。 「ツクモ様」 ルートガーの声だ。 船長に余裕ができたのか? 「いるよ?」 「はぁ・・・」 「鍵は開けてある」 「はぁ・・・。入るぞ?」 ルートガー。ため息はないだろう、ため息は・・・。 「あぁ」 扉が開けられて、ルートガーと従者が入ってきた。 後ろには、乗船の時に挨拶をした船長ともう一人が付き従うように入ってきた。 少しだけ、本当に少しだけ狭く感じてしまう。 ルートガーを抗議の意味を込めて睨んでおく。ルートガーも意味が解るのだろう、…
続きを読む2023/01/23
【第五章 共和国】第四十八話 浸食
話しかけてきた男は、またダンジョンに潜るらしい。男たちの後ろに居た商人風の男は、ダンジョンに潜らないようだ。 しかし、商人風の奴は・・・。視線が気になる。確かに、商人に見えるが、何か違和感がある。 しっかりとした根拠があるわけではない。ねちっこく観察されているように思える。商人の視線”だけ”ではない。値踏みしているような視線は、何度も向けられたことがある。辺境伯の跡取りを見るような視線とも違う。敵対している者を見るような視線でもない。 未知な視線だ。確実に俺を見ている。実に気持ちが悪い。 商人風の男は、別の…
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