ダンジョンの記事一覧

2023/01/17

【第二十九章 鉱山】第二百九十六話

船は、海原を進んでいく、何度かウミの魔物が襲ってきたが、ライが仕留めた。吸収したが正しいのか? 甲板で、海原を眺めていると、よく知る気配を持つ者が近づいてきた。 誰なのかわかっているので首も動かさずに、殺気を向ける。視線を向けることで、認識していると説明をした。つもりだ。 俺が”何を”したのか解ったのだろう。慌てては居ないが、周りを見回している。魔物が居ると誤解したのだろう。 周りに、危険がないと判断して、少しだけ大きめの声で俺を呼んだ。 「カズト・ツクモ!」 よく見ると、ルートガーの後ろに4人の従者(正確…

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2023/01/16

【第五章 共和国】第四十七話 男たち

観察を続けたが、エイダからの報告でも、それらしい反応を見つけることが出来なかった。ダンジョンの内部に、黒い石や関連する物も発見が出来ていない。 アルバンとカルラには、ダンジョンに入ってもらって、低階層を周ってきてもらった。 列は途切れないが、ダンジョンから出たばかりの者には救済処置が存在している。 話を聞くと、補給を行うために出てきて、並びなおしている間に、ダンジョンの中で待っている者たちが死んでしまった事例が重なって、ダンジョンから出た当日と翌日は簡単な検査だけでダンジョンに入ることができる。らしい。抜け…

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2023/01/04

【第二十九章 鉱山】第二百九十五話

よくわからない状況になった。 中央大陸に向っている。もう、港に辿り着いた。 船の手配も終了している。 竜族に乗っていくという話も有ったが、中央大陸に行くのには向かないと判断された。 一人、強固に反対した者が居たので、今回は船で移動する。 船も、通常なら数日から待つ時には2-3週間は待機の日数が必要になるのだが・・・。俺たちの予約は、すんなりと通って、今は船の上だ。 あと数時間で出港する。 横に居る人物に声を掛ける。 「ルート。本当に大丈夫なのだな?」 本来なら俺の代わりに、チアル大陸を統治する。ルートガーが…

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2023/01/03

【第五章 共和国】第四十六話 地上

地上には一気に戻らなかった。最下層のボスが居た場所には、魔法陣が出現している。 一気に戻る方法は存在している。戻る場所がダンジョンの外側に設定されているために、使うのを躊躇っていた。エイダの解析でも、設定の変更は不可能だと言われてしまった。ダンジョンに組み込まれている機能のようだ。オーバライドが可能かもしれないが、解析を行って、組み込みを作るのなら、俺たちしか使わないことを考えれば必要がない。入口近くに転移するゲートを設置したほうが合理的だ。 「カルラ。アル」 二人を呼び寄せて、俺の考えを伝える。 「兄ちゃ…

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2022/12/07

【第二十九章 鉱山】第二百九十四話

ダンジョンを俺たちが攻略してしまえば、ダンジョンの所有権は俺たちが取得することになる。 そのうえで、ゼーウ街に借用するような契約にすればいい。 近隣の街から文句を言われたら、デ・ゼーウは俺たちに交渉を丸投げすればいい。 俺たちは、面倒だからゼーウ街に”ダンジョンを丸投げしている”立場を取る。そのうえで、他の街が交渉してきたら、デ・ゼーウ以上の好条件を出さない限りは提供しないと言えばいい。 それでも、ダンジョンにアタックする奴らは出てくるだろう。 見逃してもいい。自己責任でアタックするのなら、勝手にすればいい…

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2022/12/06

【第五章 共和国】第四十五話 設定?

扉を抜けると、階段が見えた。 下の階層に向うようだ。 降りていくと、途中で二つに別れていた。 一つは、扉で塞がれている。 もう一つは、扉はついていない。 「扉がないのは、地上に戻る部屋か?」 「わかりませんが、その可能性が高いでしょう」 扉に触れると、面倒な”箱”が現れた。寄木細工だ。 「兄ちゃん?」 「ん?アル。やってみるか?」 「うん!」 アルバンに寄木細工の箱を投げ渡す。簡単に説明をするが、俺もそこまで詳しくない。 振ると、何か入っているのが解るが、そのまま蓋を開けたのでは、鍵は取り出せない。 俺も、…

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2022/11/28

【第五章 共和国】第四十四話 最適解

透明な扉は突破した。 最下層のボスは討伐した。 奥に進むための扉が開かない。 扉は、鍵がかかっている状況には思えない。 両開きの扉で、隙間があり、閂などが見えない。ダンジョンのギミックで、扉が閉められていると考えるのが妥当だろう。 扉の近くを探していると、後ろに気配を感じた。 「兄ちゃん!」 アルバンの声に驚いて、後ろを振り向くと、先ほど倒したオルトロスが現れた。 まだ臨戦態勢ではない。 時間の問題だろう。 オルトロスが現れたと同時くらいに、調べていた扉が消えて、壁に変わる。やはり、オルトロスと扉は連動して…

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2022/11/08

【第二十九章 鉱山】第二百九十三話

ファビアンの話を聞いて、少しだけ考える。 新しく入れてもらったカップの縁を指で弾きながら状況を整理する。 現在、ゼーウ街には二つの問題がある。 一つが、ドワーフ族だ。これは、鉱石を求めている。厳密に言えば、自分たちが自由にできる鉱山が欲しいのだろう。ドワーフ族は、鍛冶をしていなければ、たんなる酒飲みだ。そして、鍛冶をやらせていても、多くは愚か者の集団だ。話を聞けば、ゼーウ街で文句を言っている氏(うじ)族は、武器を得意とする者たちだ。 武器の需要は確かにある。しかし、武器は消耗品になってしまっているために、品…

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2022/11/07

【第五章 共和国】第四十三話 透明な扉

黒い獣の集団を駆逐して、下層に向う。 次の階層には、魔物は居なかった。予想はしていた。黒い獣の集団は、一つの階層だけの魔物ではなかった。 「エイダ。黒い石が無いか調べてくれ」 『了』 下層に向う階段を探しながら、黒い石を探す。 階段を見つけるまでに、13個の黒い石を発見した。実際には、もっとあるのだろう。エイダの探索にも限界はある。 黒い石が機能していることから、このダンジョンも制御室があるはずだ。 最下層に設置されているはずの、制御(サーバー)室(ルーム)で”黒い石”を一斉に駆除したい。一斉の駆除が可能な…

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2022/11/03

【第二十九章 鉱山】第二百九十二話

ファビアンの話を聞いても、よく解っていないことだけが解った。 「本当か?」 ファビアンが知っている限りだという前提だが、中央大陸にはドワーフ”だけ”が住む街や村は存在しない。エルフの様に、大陸を支配しているわけではない。 「はい。過去には、一つの大陸をドワーフ族が支配していましたが・・・」 「どうした?」 「いえ、ご存じだと・・・」 「いや。俺は、歴史に詳しくない。説明してくれると助かる」 「わかりました」 ファビアンが知っている。 中央大陸とドワーフ族の関わりと、ドワーフ族の公になっている歴史を教えてもら…

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2022/11/02

【第五章 共和国】第四十二話 黒い獣

攻略組のベースキャンプは、61階層にも存在していた。 最前線は、一つ下の階層にキャンプを構築していた。階段付近は、キャンプに適していなかったようで、少しだけ離れた場所に構築を行っていた。 俺たちは、攻略組に気が付かれないように、迂回しながら下層に向かった。 63階層からは、索敵範囲を広げても、魔物以外はヒットしなくなった。 「アル。カルラ。エイダ。手加減は無用だ。最短で最下層を目指す」 64階層も同じ状況だ。 今までは、戦闘時に使うスキルを制限していた。 スキル発動時の音や魔物を撃退するときの波動で、同じ階…

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2022/10/26

【第二十九章 鉱山】第二百九十一話

結婚騒動は、子供ができた場合でも、仕事に配慮すること、産まれた子供を安全に預かる場所を作ること、これらのことを、ルートガーに宣言をさせた事で、落ち着いた。 獣人族は”子供は皆で育てる”が染み付いているので、それに倣った形だ。 ルートガーは、最初は抵抗したのだが、クリスからの説得を受けて、最後には受け入れて、宣言を出すのに賛成した。ルートガーが反対していた理由も理解ができる。上流階級で産まれて教育を受けてきたルートガーには、獣人族のやり方が正しいと言われても納得ができないだろう。俺も、クリスも、獣人族が正しい…

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2022/10/26

【第五章 共和国】第四十一話 攻略

カルラに聞いても、攻略組がこのダンジョンに拘っている理由は解らなかった。 最難関と言われているダンジョンを攻略すれば、名誉なことだが、同時に攻略して、俺たちの様に永続させる方法が無ければ、ダンジョンの破壊に繋がる。最難関のダンジョンだ。同時にアタックしている人間は、10や20ではない。万に届く可能性もある。 それらの人間がどうなるのか?俺たちがやっているように、ダンジョンを乗っ取っていくのなら、アタックしている者たちは何も気が付かない。しかし、ダンジョンが破壊されてしまったら・・・。俺たちだけなら、逃げるの…

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2022/10/20

【第五章 共和国】第四十話 攻略組

男から、話を聞いていたら、列が動き出した。 列の横を、豪奢な馬車が駆け抜けていった。どうやら、貴族は、突入を諦めたようだ。後ろに居る騎士たちが安堵の表情を浮かべているので、よほど”慕われている”貴族なのだろう。騎士風の男たちは、貴族家への称賛(陰口)を忘れない。馬車に乗っている者の情報を、べらべらと話してくれている。それも、待機列で待っている者たちに聞こえるように・・・。 やはり、男が想像した通りに、貴族家が治める領地にあったダンジョンから食料だけではなく、貴族家として戦略物資になっていた物もドロップしなく…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百九十話

ギュアンとの話を終えて、崖の住居に戻ることにした。 シロも一緒だ。フラビアとリカルダは、フリーゼが帰ってくるのを待って、決まったことを、フリーゼに説明を行う。 崖の下に移動したら、久しぶりに顔を見る面子が揃っていた。 シロが、俺の前に出るが、肩を叩いて下がらせる。俺が前に出ると、一人の男が、俺の前に出てきて頭を下げる。 「どうした?イェレラ?皆で揃って来た理由は?俺に解るように説明してくれるよな?クリスとルートガーの従者であり、護衛であるお前たちが職場を放棄してきたとは考えていない。だから、緊張しなくていい…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十九話

フラビアとリカルダの案内で、ギュアンとフリーゼが仕事をしている舟屋に向かった。住居は以前に与えた物で変わっていない。仕事場としている舟屋で待っていると教えられた。 舟屋の数は増えていない。 船の数が増えているように思える。当然だな。当初の数では、増え続ける人口を支えるだけの魚を確保するのは不可能だろう。 「ツクモ様」 ギュアンが俺に気が付いて舟屋から出てきた。どうやら、フリーゼは、所用で出かけているようだ。ギュアンが、フリーゼの不在を詫びてきた。 ギュアンの態度が少しだけ固いように思える。表情も前に会った時…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十八話

湖の集落に行く前に、フラビアとリカルダから報告を受ける。 湖の集落は、ギュアンとフリーゼが仕切っていたのだが、人が増えた。フラビアとリカルダも運営の手伝いを行ったが、限界が近いようだ。 元々は、別荘地にする予定で整備を行っていた。 そのために、交通の便や、移動のしやすさや、生活を行う為の設備が少ない。 フラビアとリカルダは、馬車の本数を増やして対応を行っていた。 「そもそも、湖の集落は、別荘地だぞ?そこに、利便性を求めるような奴は、他に移動した方がいい」 俺の言葉に、フラビアが反応した。 どうやら、最初はそ…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十七話

シロとのデートを終えて、部屋に戻ってきた。 途中で、ギュアンたちが居る”湖の集落”に寄ろうという話も有ったが、時間も遅くなってしまったために、明日以降に行くことにした。 「シロ。今日は、上で過ごすか?」 「はい!」 シロが嬉しそうにする。 崖の上に作られた、屋敷?は、改修に改修を加えて、十分に屋敷としての機能を持たせることが出来ている。 地下に作った部屋は、部屋で実験が行える状況になっているので、残している。地下には、俺とシロと眷属しか入ることを許していない。ダンジョンからの進入路は、既に潰してある。 部屋…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十六話

リヒャルトは、俺と話をして、安心したのか、来た時とは違う表情で、部屋から出て行った。 おかしい。 俺も新婚なはずなのに、忙しい。忙しくなりたくなかったから作った仕組みがうまく行けば、また忙しくなってしまう。 「カズトさん」 シロが、部屋に入ってきていた。 テーブルの上に乗ったカップを片づけている。 今まで居たはずのメイドは下がらせたようだ。 「どうした?」 「僕が、カズトさんと・・・」 「いいよ。少しだけ話をしよう」 「はい!」 帰ってきてから、シロとの時間はそれほど無かった。誰かが訪ねて来たり、用事が出来…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十五話

執務室で、カトリナと打ち合わせを行った。俺の後ろにはメイドが控えている。必要ないと思ったが、シロからの指示だと言われて受け入れた。 「ツクモ様。本当に、いいのですか?」 「構わない。それよりも、もう一度だけ聞くけど、本気か?」 「はい」 カトリナから提出された計画書だが、長老たちでは判断ができなくて、ルートガーに回されて、奴は考慮の必要がないとばかりに、俺に回してきた。俺にしか判断ができないと言うのが、ルートガーの言い分なのだが、別に俺でなくても大丈夫だと思う。 そして、内容なのだが、ロックハンドを一大リゾ…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十四話

ルートガーも平等と公平の違いがわからない。 そもそも、公平なら平等が成り立つと思っているようだ。 「ルート。公平は、誰かが判定している。平等は、皆が等しく冷遇される世界でしか成立しない」 「??」 まぁ解らないだろう。 ルートガーが不思議そうな表情をする。クリスは、思考を放棄しているように見える。 「皆が平等なら、冷遇されるのはおかしくないか?」 「いいか、簡単な例だ。ルートがこの大陸の覇権を目指したとする」 「!」 ルートガーは机を叩いて立ち上がる。ルートガーが覇権を目指していないのはわかる。今は、クリス…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十三話

ルートガーも実際に使われ始めた時期や言葉が産まれた経緯は把握していなかった。クリスは、俺が何を問題にしているのか解っていない。ルートガーもクリスも小さな村や町の・・・。支配層の人間だ。 支配層から見れば、身分は解りやすい指標になる。対応する態度を簡単に選択ができる。 「わかった。ルート。他には?」 「他?」 「言葉遊びで、他人を傷つけている連中が居るのか?」 「わからない」 ルートガーを見つめているが、本当に解らないようだ。 長老衆よりも、市井に詳しい人間に聞いた方がいいのか? クリスも俺が気分を悪くしてい…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十二話

ギュアンとフリーゼに結婚の許可を出した。 同時に、クリスを通して、ルートに召喚状を出す。 反応は、すぐに返ってきた。 ”忙しいから、俺の拠点にはいけない”と、いうそっけない物だ。 しょうがない。行政区で待ち合わせをすることにした。 内容は、住民の婚姻に関してだと伝えた。 「ツクモ様」 行政区にある。俺の執務室で待っていると、ルートがクリスと一緒に入ってきた。 「デートの最中に悪いな」 ニヤニヤして、揶揄うと、クリスは目を見開いてから、言葉の意味が理解できたのか、耳まで赤くした。ルートは、憮然とした表情で俺を…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十一話

状況はわかった。俺がしなければならない事も理解した。 そして、総合的に判断した結果、俺の状況は・・・。やることが無くなって暇になった。 報告書を読む限りでは、玩具の開発は順調だ。俺の雑な下書きからすでに試作が行われている。今回は、値段が低く押さえられた物からリリースするので、試作段階では、自由区の住人たちに試してもらうことになった。新しい技術ではなく、”おもちゃ”なので”遊べるか?”や”価格帯は?”を調べる必要がある安全性の確認よりも、市場調査がメインになっている。”遊び”だが、真剣になり、ギャンブルに発展…

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2022/09/28

【第二十七章 玩具】第二百八十話

俺の執務室に、書類が大量に運ばれてきている。 この部屋に入る許可が出ているのは、眷属を除くと多くない。多くはないが、許可を持つ者はいる。それに、クリスは眷属の属性は外れていない。 何が言いたいかと言うと・・・。 「カズト様。追加の書類です」 自分の部屋に逃げようかと思ったのだが、書類の山が無くなってから帰ろうと考えたのが間違いだった。 それに、自分の部屋に逃げても、クリスなら俺の自宅に入る許可を出してしまっている。 「クリス。少しだけ、本当に少しで構わないから、手伝ってくれないか?」 「ダメです。ルートから…

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2022/09/28

【第二十七章 玩具】第二百七十九話

俺は、カトリナと打ち合わせをするために、カトリナの事務所に残る事にした。俺に、話を聞く為に、ルートガーがついている。事後で話を聞いたり、まとめられた書類を読むよりも、最初から話を聞いていた方が良いと判断したようだ。 シロは、フラビアとリカルダが待っていると、ルートに教えられて、カトリナに挨拶だけをして、湖の畔にある家に急いだ。馬車は、シロがそのまま使うことになったが、御者だけはカトリナから借りることになった。ルートガーが連れてきた御者は、ルートガーの護衛を兼ねている。 俺の前には、カトリナが居る。 ルートガ…

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2022/09/28

【第二十七章 玩具】第二百七十八話

馬車がゆっくりとした速度で、行政区に向かっている。 「なぁルート。あれは、なんだ?」 俺が、目の前に座って居るルートガーを睨むが、俺が指さした物を見て、さも初めて見たかのように驚いて見せた。 「私も始めてみました。どっかの誰かに似ていますね。そういえば、ヨーン殿やロータル殿が、仲間を集めて、何かを作っていました。あれがそうだったのですね」 ルートが澄ました表情で語っているのには、嘘があるのは解っている。 解っているが、指摘できない。 指摘したとしても意味がないことが解っている。 俺の石像が立っている場所は、…

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2022/09/28

【第二十七章 玩具】第二百七十七話

野営地を出ると、遠くに中央が見えてくる。 帰ってきたという思いと、また忙しい日々が来るのかという思いが交差する。 「旦那様」 モデストが御者台から声をかけてくる。 「どうした?」 「ルートガー様が街道でお待ちです」 「ルートが?一人か?」 「はい。お一人のようです」 「わかった。馬車を、ルートの近くで止めて、要件を聞け。一緒に行くのなら、中に誘導しろ」 「はっ」 シロが不安な表情を浮かべる。 確かに、街道まで来ているのは、異常なことだが、ルートだけで来ているのなら、なにか問題が発生していると考える必要はない…

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2022/09/28

【第二十七章 玩具】第二百七十六話

本当か? 原因を切り分けていくと、起因している状況が似てきている。 「カズトさん?」 俺がまとまった資料を見ていると、シロが飲み物を差し出してきた。 資料をまとめるのは、シロも手伝ってくれたから、内容は理解が出来ている。 「シロ。すまん。少しだけ驚いただけだ」 本格的な調査は、戻ってから行うとしても、取っ掛かり位はつかめればと思って、始めた作業だったが、想像以上に、人はどこに居ても人なのだと、納得させられてしまった。 「そうですね。余裕が出来て、できた余裕の為に、争って余裕が無くなる」 「そうだな。愚かだけ…

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2022/09/28

【第二十七章 玩具】第二百七十五話

船旅も終わりに近づいてきた。 「カズトさん」 「シロか?」 「はい。モデストが、もうすぐ到着だと知らせに来ました」 「わかった。起きるか!」 「はい」 シロも俺も全裸だ。 扉の外に、モデストが控えているのが解る。シロを抱き寄せて、キスをする。 カイとウミは、甲板に出て居る。 どうやら、海の中に居る魔物を狩るのが楽しいようだ。 着替えを済ませて、シロの恰好を確認する。 問題はない。俺の恰好は、シロが確認する。 「モデスト」 「はい。まもなく、到着します」 扉の外側で、モデストが応える。 「わかった。リヒャルト…

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