【第二十九章 鉱山】第二百九十四話

 

ダンジョンを俺たちが攻略してしまえば、ダンジョンの所有権は俺たちが取得することになる。
そのうえで、ゼーウ街に借用するような契約にすればいい。

近隣の街から文句を言われたら、デ・ゼーウは俺たちに交渉を丸投げすればいい。
俺たちは、面倒だからゼーウ街に”ダンジョンを丸投げしている”立場を取る。そのうえで、他の街が交渉してきたら、デ・ゼーウ以上の好条件を出さない限りは提供しないと言えばいい。
それでも、ダンジョンにアタックする奴らは出てくるだろう。
見逃してもいい。自己責任でアタックするのなら、勝手にすればいい。

ダンジョンを攻略してコアの支配が完了したら、いろいろ面白いことができそうだ。できるはずだ。

ファビアンを見ると、どこか遠い目をしているが、気にしたら負けだ。

「ツクモ様。ダンジョンの攻略を行うというのは?」

恐る恐ると言った感じで、俺に質問をしてきた。
別に、そんなに怖がらなくてもいいと思うのだが?

すっかり湯気が無くなってしまった飲み物に口をつけてから、ファビアンをまっすぐに見つめて、俺の考えを伝える。

「本気だ。俺たちが、攻略をして、ゼーウ街。そうだな。デ・ゼーウに”好条件”で貸し出せばいいよな?」

”好条件”は、デ・ゼーウとの交渉になるが、ルートガーか、この話を拾ってきた、リヒャルトに丸投げでいいだろう。
別に占有権を貰っても困る可能性がある。入ダン料を貰うくらいで十分だろう。

俺たちのダンジョンと同じような設定ができるのなら、難易度を少しだけ高めにしておけばいい。ゼーウ街で受付した物には、難易度が下がるようなスキルを持たせればいい。何ができるか解らないが、出来たら面白そうだ。
低階層で、ドワーフ向けの鉱石がドロップするようにして、低階層でも長く留まるようなマップにすれば収支のバランスは保てるだろう。

「それが出来れば・・・。しかし、ダンジョンは・・・」

ファビアンは、新しく出した飲み物にも手をつけていない。
緊張しているのだろうか?

「どうした?何か、懸念があるのなら教えて欲しい」

ダンジョンの攻略には自信があるが、初めてのダンジョンだ。
何か、懸案があるのなら、最初から知っておきたい。そもそも、ダンジョンの中での行動はもう決まっている。攻略にはそれほど心配はしていない。

「はい。デ・ゼーウが攻略を試みましたが、凶悪な罠だけではなく、他の攻略者からの妨害も激しく・・・」

ダンジョンの中央大陸のダンジョンで注意しなければならないのは、ダンジョンの罠ではない。
ダンジョンに潜っているはずの人間だ。中央大陸なら、特にプライドだけが高い人族が厄介だろう。自分たちよりも後に来て、自分たちよりも奥に進む、者たちをよく思わないだろう。
中央大陸に住んでいない。俺たちは殺してでも排除したいと考えるだろう。

「それは、大丈夫だと思うぞ?」

俺としては、攻撃してくれた方が、排除の理由ができるから嬉しい。
どうせ、邪魔にしなからない。俺たちが攻略してからも、難癖を付けて来る可能性がある者たちだ。できるだけ排除しておきたい。問題になる奴らは、ダンジョンに潜る前に当たりをつけておきたい。デ・ゼーウに聞けば何か解るか?
それともファビアンが何か情報を持っているのか?

メンバーを考えなくては・・・。
シロは一緒に行くと譲らないだろう。あとは、ステファナはエルフ大陸に行ったから、レイニーか?眷属たちは全員が行きたいと思うだろう。カイとウミとライは連れて行こう。俺とシロとカイとウミとライだけでダンジョンの攻略はできるだろう。
あと、エリンは・・・。竜族の里に戻っている。帰ってくると連絡が入っていないから、向こうで休んでいるのだろう。
竜族には、運搬で手助けをしてもらっている。それに、エリンを連れて行ったら、過剰戦力だ。既に、過剰なのに、そこにエリンが加わったら・・・。

「え?」

ファビアンが驚くのは当然だろう。
俺たちの戦力を正確に伝えていない。使わないで死蔵しているスキルカードを大量に使った物量作戦でもいいだろう。

「俺たちの戦力なら大丈夫だ。それに、失敗になったとして、ゼーウ街やデ・ゼーウは困らないだろう?」

心配は理解ができる。
俺たちに何かあれば、中央大陸とチアル大陸が全面戦争になる可能性もある。ルートガーがそんな愚かな選択はしないだろうが、暴走する者たちは居るだろう。獣人族が暴走の筆頭だろう。今は、おとなしくしている。協調の路線を取っているが、風向きが変われば、砥いでいる牙や爪を振るうだろう。理由が出来たら、牙を首筋に突き立てるのに躊躇はしないだろう。そうなったら、中央大陸だけでなく、安定し始めたチアル大陸やエルフ大陸が混乱するだろう。
獣人族よりも恐ろしいのは、ダンジョン・コアたちがどう動くか?そして、竜族がどうするのか?

だから、俺たちはダンジョンの攻略に失敗しても、”死”は避けなければならない。
特に、ダンジョンに負けたのならいいが・・・。中央大陸の人族が介在した状態や、そう見える状況では、絶対に生きて帰って来なければならない。

「それは・・・」

正直だな。
戦力の問題ではなく、失敗した時の問題を考えたのだろう。
ゼーウ街が矢面に立つのは難しいと考えて躊躇したのだろう。

「ダンジョンに入るのに、申請が必要なら、俺たちはチアル大陸の名前を出す。建前だけだが、建前が必要な場面も多いだろう?」

建前が必要なことは解っている。
この場合の必要な建前は、俺たちはチアル大陸の人間で、ゼーウ街やデ・ゼーウとは関係がないと明確にしておくことだ。

細かい話は別にして、俺たちがダンジョンを攻略することは決めた。

「ツクモ様。それで?」

「あぁすまん。ダンジョンを攻略して、設定をいじる」

できるのか解らないから、ファビアンには説明しない。
ただ、今の紛争の危機を止めるのに必要なのは、ダンジョンの攻略と、攻略したのが”チアル大陸”の人間だということだ。

ドワーフに渡す鉱石の問題は、攻略してから、”設定”が可能なのかで変わってくる。

「”設定”ですか?」

「そう・・・」

ファビアンが知らないのは当然だ。
俺たち以外には知られていない。ルートガーも知らなかった。基本の情報共有が出来ていない。そのために、種族毎ではなく、集落で情報が止まっていた。チアル大陸が一つになって、情報の共有ができるようになった。大陸が統一されて、初めて正しい情報が流れるようになる。

「??」

「説明が難しいが、ダンジョンを攻略して、チアル大陸の様に、ダンジョンを採掘が行える鉱山の代わりにする」

これが、最初の目的だ。
そのあとで、中央大陸で問題が発生した時の足がかりに出来れば嬉しい。チアル大陸の・・・。俺たちの拠点にする。

「それは・・・。チアル大陸だから、可能だったのでは?」

「そんなことはない。多分だけどな。攻略してみないと話は進まないだろう?」

「そうですね」

まだ、ファビアンは何かを懸念している。

俺が気になるのは、邪魔が入ったら全力で排除する。最悪は、俺の配下に居るダンジョン・コアに管理させればいい。

それにしても、シロと眷属とレイニーは確定として、他をどうするか?
モデストやエクトルはエルフ大陸の事で、中央大陸に行ったとしても、ダンジョンにアタックはできない。

そうなると、ヤニックやアポリーヌか?
吸血族を連れて行かなくても、ダンジョンの攻略は大丈夫だ。偵察は、眷属が行える。

問題は、野営だけだ。
誰かを連れて行くか?俺とシロとレイニーだけでは、野営は辛い。ライが居るから無理とは言わないが、目に見えて解る抑止力は欲しい。

ノービスの連中は、論外として・・・。
フラビアとリカルダを連れて行くか?

後で、皆と相談だな。

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