【第三十章 新種】第三百三話

 

帰ることにした。
カイとウミとライもそのつもりで準備を行っている。

準備と呼べるような物ではないが、倒したボスの素材は持ち帰ったほうがいい。ダミーコアの準備も終わっている。
使い方も、コアに話を聞いているので大丈夫だ。それに、間違えても、コアがハッキングされたり、クラッキングされたり、乗っ取られなければ間違えた使い方をされても問題にはならない。
チアルの対応が出来ない状況になったら、また攻略すればいいだけだ。その時には、ダンジョンを討伐することになるので、最悪はダンジョンが消滅してしまう可能性が高い。

デ・ゼーウには、間違えた使い方をして、ダンジョンが暴走した時には、消滅の可能性があることを告げておけばいいだろう。

『マスター。魔法陣を使いますか?』

ダゾレが、俺に話しかけて来る。
魔法陣を使えば、一気に帰ることができる。目立つ事は避けられない。帰還の場所は、任意の場所に設定できるようなので、1層で人が行かない場所に転移すれば・・・。

ん?
何かを忘れている?

そうだ!
イェレラとイェルンとロッホスとイェドーアたちと合流して戻らなければならない。

それに、ファビアンもダンジョン内に居るのなら、探して連れて行く必要があるのか?

面倒だな。
ルートガーの従者だけでいいか?

「途中で仲間を拾っていく」

面倒だけど、拾っていかないとダメだな。
デ・ゼーウに文句を言われるのは構わないが、ルートガーが行っているだろう交渉に影を落すのは得策ではない。

完全な成功にするためにも、ファビアンを拾っていく必要がありそうだ。

よかった。帰る前に思い出した。俺を褒めてあげたい。

『指定していただければ、こちらに呼び寄せます』

指定?
呼び寄せる?

「名前はダメだな・・・。どうやって特定する?」

ダゾレが出来るのなら、チアルもできるはずだ。

そうか、ダンジョン内という条件が付くのか?
今は、便利だけど、使い道が限られそうだ。チアル・ダンジョンなら・・・。

『私に触れてください。階層を指示していただければ、階層の様子を見る事が出来ます。該当の人物に触れてください。マーキングをした人物を呼び寄せます』

使い方は、コアに触れなければならないのなら、チアル・ダンジョンには使えない機能だな。
ダミーコアでも同じ事が出来たら便利だ。無理なのは解っている。無理だけど、機能が付けられないかだけでも確認をしておこう。どんなスキルか解れば・・・。

「便利だな」

今は、凄く嬉しい機能だ。
早速、試したいが・・・。その前に確認をしておこう。

「ダゾレ。呼び寄せる場所は、指定できるのか?」

『可能です』

「リソースは?」

『ダンジョンの権能です』

「ダンジョンの運用に問題は出ないな?」

『はい。全員を呼び寄せるのは不可能です』

「わかった」

ダゾレに触れて、階層を見ていくと、意外と時間が必要になりそうだ。

ライが、皆と別れた階層を覚えていた。
ライに指示されながら、4人を探す。

ファビアンは、すぐに見つけられた。
4人は、訓練でもしているのだろうか、バラバラに動いていた。

戦闘中は、呼び寄せるのは難しいと言われたので、民が休むのを待っていた。

待っている間に、ライを通して、チアルに俺たちを呼び寄せられるか確認をしたが、無理だと即答された。
特に、俺とライとカイとウミは無理だと言われてしまった。他にも、竜族も不可能らしい。力を持つ者では、呼び寄せを行う時にキャンセルされてしまうようだ。シロでギリギリだと言われたので、使い勝手は良くない。ルートガーもギリギリらしい。眷属の繋がりがあれば、拒否は出来ないので、呼び寄せられる可能性があるというのがチアルの答えだ。
簡単に言えば、やってみなければ解らない。対象が、ダンジョン内に居なければ出来ないようだ。
俺やライやカイやウミは、ダンジョンの力への抵抗力が強いので無理だと考えているようだ。ダンジョンの力への抵抗力は、チアルが説明してくれたが、簡単に言えば、同じ魔物ではダンジョンの外に出た者とダンジョン内の者では、攻撃力が違うように思われていたのだが、実際にはダンジョンへの抵抗力が低い者だと、攻撃を受けた時のダメージに違いが出て来る。

ファビアンと4人の監視を、ダゾレに依頼した。
俺が見ていて見逃してしまったら、帰る事が出来ない。

「ダゾレ。頼む。仮眠をしていていいか?カイとウミとライも自由にしてくれ」

壁に寄りかかって、目を閉じる。
ダゾレが監視している上に、ボスがリポップする心配はない。1ー2時間くらい仮眠が取れたら、身体は少しだけだが楽になる。崩壊が近いと思って、少しだけ無理をした。カイやウミやライにも無理をさせた自覚はある。戦闘では無理をしていない。探索や移動で無理をさせられた。

ダゾレからの呼びかけで意識が覚醒する。

『マスター。全員が揃っています』

「同じ階層に移動したのか?」

そうか、ファビアンの所で待っていようと判断したのだな。
確かに、ファビアンと別れた階層なら、護衛としては十分な力を持っている。4人も必要ないが、一緒に居た方がいいと判断したのだろう。俺を待っている間に、順番に戦闘訓練をするくらいのつもりで居たのかもしれない。

『はい』

「丁度よかった。セーフエリアに居るのか?」

ファビアンならセーフエリアに居るだろう。
一応、確認をしておけばいいだろう。

『はい』

「俺たちを、彼等の場所まで移動させてから、1階層に移動できるか?」

『無理です』

想像はしていたが、俺たちが移動するのには、制限なり条件なり、何かしらの枷があるのだろう。
無条件に使えてしまったら、いろいろな事が破綻してしまう。

「わかった。彼等を最下層の階層主の部屋に呼び寄せるのは大丈夫だよな?」

最初に考えたプランで帰還するのがベターなのだろう。
もしかしたら・・・。
今は、帰還するのを優先しよう。チアル・ダンジョンで試せば、違った知見が得られるかもしれない。

『可能です』

「そのあとで、魔法陣を使って、1層に戻るのはできるのか?」

これは、最初からできると言われているので大丈夫なのだろう。

『可能です。帰還場所の指定が出来ます。先に、魔法陣で帰還する場所の指定をお願いします』

「帰還する場所を、1層に設定して、部屋にすることはできるか?」

帰還する場所が指定できるのは嬉しい。

『可能です』

「部屋の扉には鍵を設置できるよな?」

鍵は、どんな物でもいいが、最下層のボスを倒したらドロップした鍵だと言えば、持っていても不自然ではない。

『可能です』

「部屋の鍵は、1本だけで、俺が持っていく」

1本だけしか作られていない鍵で、最下層を攻略して、魔法陣で帰ると、部屋から出られない。

『はい。部屋の広さは?』

「このコアルームと同程度。真ん中に、ダミーコアのダミーを置けるか?機能は何もしない物だ」

『可能です』

「作成してくれ、完成したら、彼らを呼び寄せる」

『完成まで、2分37秒』

すぐに、終わりそうだ。
カイとウミとライを伴って、階層主の部屋に移動する。帰る為の魔法陣は既に出来上がっていて、上に乗ればスキルが発動する。このスキルカードが欲しいと思ってしまうが、最低でもレベル10だろう。似たような使い道が解らないスキルカードがある。何度か、取り出して使おうとしてみたが発動しない。

『呼び寄せを実行します』

「たのむ」

俺たちの前に、新しい魔法陣が現れる。

光の柱が天井まで伸びた。

光がおさまると、ファビアンと4人が、怯えた表情を浮かべていた。

「ツクモ様」「カズト様」

それぞれが俺を見て、安堵の表情を浮かべる。
完全に、光の柱が消えるまでは外に出られないようだ。

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