物流の記事一覧

2020/06/18

【第九章 神殿の価値】第八話 サンドラの憂鬱

サンドラは、ローンロットの道のりで2回の休憩を挟んだ。 アーティファクトの魔力切れを理由にしたが、実際には、ジークとアデーからの質問攻めに精神が疲れてしまったからだ。 質問される内容の殆どが、サンドラでは答えられない内容だった。ヤスに聞いて欲しいと思ったが、ヤスを質問攻めにすると、嫌になって貴族と合わないと言われてしまう。実際にヤスは気に入った人にしか合わない傾向が強い。それでは、困る場面が出てくるかもしれない。 サンドラは、ハインツに助けを求めたが、ハインツはアーティファクトの速度に驚いて使い物にならなか…

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2020/06/17

【第九章 神殿の価値】第七話 サンドラの仕事

サンドラの朝は早い。 日の出前には起きるようにしている。神殿に住むようになってから、朝に強くなった。 ギルドのサポートがメインだったはずが、いつの間にか、貴族対応の窓口になっていた。 「お兄様!問題点を伝えているのです。しっかりと、聞いてください」 『聞いているよ。それで、サンドラ。僕はどうしたらいいの?今日、届けられた、価格表で交渉すればいいのかい?』 「本当に、第一王子と第二王女が神殿に別荘をお作りになるのですか?」 『流石に、国王は遠慮してもらったが、第一王子は是非とおっしゃっているし、第二王女は自分…

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2020/06/16

【第九章 神殿の価値】第六話 イチカ

イチカは、カイルと話をして、妹や弟をカイルが面倒をみてくれると聞いて安心していた。 ドーリスやサンドラや時にはヤスやリーゼが妹や弟の世話をしてくれるが、もうしわけなく感じていた。本当なら、今回の依頼も断ろうと思っていたのだが、先方から”イチカ”を名指しで依頼してきたのだ。 一泊になるのも、神殿のギルドで処理した書類をローンロットまで運んで、ローンロットの各ギルドに来ている神殿あての書類をまとめるのに時間が必要になるのだ。ギルドからも、ギルドで宿を用意すると言われているので、受けるしかなかった。 行程にも時間…

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2020/06/15

【第九章 神殿の価値】第五話 カイルと子供たち

「イチカ!」 「なに?」 「今日は、どこに行く?」 「カイルは?」 「俺は、今日はアシュリに配達だけ」 「そう、私はローンロットに配達で、向こうで宿泊になると思う」 「わかった。妹たちは?」 「ドーリスさんが手配してくれる。先生たちも居るし大丈夫だと思う」 「わかった。俺もなるべく早く帰ってくる」 「うん。お願い。それじゃ先に行くね」 「おぉ!」 カイルとイチカのお決まりのやり取りだ。 最初の頃は、二人で依頼を受けていたが、効率が悪かったり、行く先々でからかわれたり、不都合ではないがカイルが不機嫌になるので…

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2020/06/13

【第九章 神殿の価値】第四話 ヤスのワガママ

「マルス。魚が食べたい」 『マスター。個体名セバス・セバスチャンに命じて、迷宮区で採取出来ます』 「それもいいが・・・。そうだ、湖の村に行こう。あそこなら、湖の恵みを食べられるだろう?頼まれた荷物もある」 『了』 ヤスは思い立ったら吉日。一人で移動する。場所も解っている。 S660の出番だ。ナンバーを660にしている。異世界で召喚したときにナンバーが外れていたので、ヤスはイワンに注文をだしてわざわざ黄色のナンバーを作成して取り付けている。地名が書かれている場所は、”神殿”と日本語で書いた。 ヤスの乗るアーテ…

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2020/06/12

【第九章 神殿の価値】第三話 イワンとルーサ

「イワン殿。ヤスから、魔道具は受け取ったのか?」 「ルーサ殿か?魔道具は解析中だ。それよりも、”殿”はやめてくれ、気持ち悪い」 ルーサは、イワンの工房を訪れていた。 工房の前でイワンを呼び出して話を始めたのだ。 「それなら、俺もルーサで頼む」 「”敗者(ルーサ)”か?もう良いのではないか?」 「いや、俺は、ルーサだ。逃げ出した、俺は、敗者ですら無い」 「わかった。わかった。それで、ルーサ。何か用事なのか?」 イワンも触れられたくない話は当然ある。 ルーサも同じだ。隠すわけではない、聞かれたら話をするし、過去…

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2020/06/11

【第九章 神殿の価値】第二話 別荘地

やる事がないヤスは、アフネスとサンドラと一緒に貴族用の別荘建築予定フロアに来ている。 神殿の西門近くに作られた入口から入る場所だ。 ヤスは別荘地と言えば、軽井沢か伊豆を思い浮かべる。 イメージは、高級リゾート地ではなく、チープな匂いがする”なんちゃってリゾート”だ。入る前に、審査が行われる。審査は、通常の神殿に入る審査とは違う。貴族や従者に、同じ調査をしていたら殆どの者が許可されない。そのために、リゾート部分を分離したのだ。 「ヤスさん。リゾートという名前で決定なのですか?」 「ん?名前が必要なのか?」 「…

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2020/06/10

【第九章 神殿の価値】第一話 ラナからの依頼

 神殿だけは落ち着きを取り戻しつつある。王国や帝国は、神殿を巻き込んだ騒動の後始末が終わっていない。  特に王国は子爵家の暴走から始まる騒動が予想以上に大きな火になって王国中を巻き込んでいる。  最大派閥の貴族派の重鎮である侯爵家の当主が病死した。同じく後ろ盾になっている、公爵家の当主が同じ日に事故死した。これらの葬儀に列席するために、貴族家の当主は王都に集まっている。  侯爵家は、当主の病死の後で王家から指名された者が継いだ。もともと居た息子や娘たちは、事故死したり病死したり、連続で”不審”な死を遂げた。…

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2020/06/09

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十八話 開戦と終了と後始末

「アフネス。ルーサ。ダーホス。ドーリス。サンドラ。ヴェスト。エアハルト。イワン。帝国を殲滅する準備が出来た。ここで、見られるがどうする?」  ヤスは、皆を見るが、誰一人として帰ろうとしない。  どんな状況になるのか確認したいのだ。 「わかった。セバス。操作を頼む。マルス。作戦を実行しろ」 「はい。旦那様」 ”イエス。マイマスター”  プロジェクターで投影されたスクリーンには、駐屯する帝国軍が映されている。  ドッペル兵士たちが、進軍し始めた。まだ距離があるために、二画面に分かれて表示されている。 「ヤス。あ…

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2020/06/08

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十七話 帝国に穿たれた小さな楔

 ヤスへの質問はまだ続いていた。  ドッペル男爵を使った帝国での”いやがらせ”は十分に理解できたが、まだ聞かなければならなかった。 「ヤスさん。お父様とドッペル男爵の会談を取り持てませんか?」 「問題ないぞ?家の格を考えると、ドッペル男爵をローンロットに向かわせるか?その時に、帝国の村の村長をやるドッペル息子も一緒に連れていけばいいよな?」  エアハルトが手を上げて話に入ってきた。 「ヤス殿。サンドラ様。その会談には、私も出席したいのですが問題はありますか?」  ヤスはサンドラを見る。問題はないと思っている…

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2020/06/07

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十六話 報告会

「ヤス。正直に教えてほしい。なんなら、ここに居る全員にリーゼを呼んで制約の魔法をかける」 「そこまでは必要ない。話を聞いて出ていきたいのなら出ていけばいい」  ヤスは、自分の行動を秘密にする必要性を感じていない。秘密にして隠していれば、弱みになりかねない。秘密は弱点にもなりかねない。ヤスは、幼馴染でもある男の顔を思い出していた。 「わかった。聞いた後で判断させてもらうよ」 「皆もそれでいいか?」  サンドラに続いてルーサが皆に確認をする。  ルーサの確認に皆がうなずいた。  皆がうなずいたのを見てヤスは肩を…

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2020/06/01

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十五話 帝国の村

 子爵たちの処分に目処が付いたヤスは、保留していた帝国への対応を開始した。  マルスからの情報で、帝国軍は、3つの家の連合で作られているようだ。それぞれの家の三男や四男が率いている。連合と言っても、統率が出来ているわけではない。ただ一緒にいるだけの関係だ。兵士数も、各家では3、000の兵士を出して、物資を輸送する兵站を1,000名出している。合計すると1万2,000にもなるが烏合の衆であるのは間違いない。  石壁が始まっている場所で、陣取って動こうとしない。  先に攻撃を仕掛けて、失敗したら笑いものになる。…

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2020/05/31

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十四話 捕らわれの者たち

 見世物になるのが確定しているリップルたち”ヒトモドキ”は、隷属の首輪をするのを拒否している。  リップル子爵の命令で、身分の低い者が首輪を付けられた。宣言通りに、絶命するまでゆっくりと首輪が絞まっていった。その間、首輪を付けられた者は苦しみ続けた。それを見て誰も首輪を着けようとしなくなってしまったのだ。一人と首輪一つが減った檻の中では、醜い争いが発生していた。  身を隠すことが出来ない場所に捕らわれている。食事も人数分しか提供されない。  快適な生活が出来るような場所と環境ではない。魔物が出ないだけマシだ…

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2020/05/30

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十三話 トーアヴァルデ

 帝国は確かにトーアヴァルデには近づいてきている。  しかし、戦闘が開始されるような距離ではない。入口に到達したに過ぎない。それも、野営地を作って新たに作られた壁を調べている段階だ。帝国は、リップルとは違って撤退しても問題はない。攻めてこない可能だって残されている。  リップル元子爵軍は、騎士を中心に一斉に動き出した。  規則正しい動きではなく、統率も取れていない。ただ、門を目指しているのだ。  先頭が門に到達する寸前に、門が内側に開かれた。 ”開いた!” ”進め!勝利は我らの物だ!” ”何が神殿の主だ!所…

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2020/05/29

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十二話 帰還と開戦

 ヤスとリーゼとサンドラが神殿に帰ってきた翌日には大量のドワーフがアシュリに到達した。  酔っぱらい状態だったらしいが、足取りはしっかりしていた。それだけではなく、リップルの神殿討伐軍(笑)の動向も掴んできていた。途中で逃げ出した者や軍から物資を持ち逃げして、盗賊になった者を討伐してきたようだ。逃げ出した者は、そのままレッチュ辺境伯領に押し付けてきたとルーサに説明した。  ドワーフたちが討伐軍よりも早く到達したのにも理由がある。  ドワーフたちは、最短距離を移動してきた。レッチュ辺境伯領を突っ切った形だ。限…

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2020/05/28

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十一話 鉱山の村

「ディアス。二人の様子はどうだ?」 『エミリアが応えます。ファーストからの問題点の指摘はありません』 「そうか・・・」  神殿を出て、ユーラット経由でアシュリに向かっている。  一度、アシュリでルーサに会って、リップルの動向を確認してから、鉱山の村に向かう道を考えることに決まった。 「ディアス。ファーストに連絡して、アシュリの駐車スペースに停車させろ」 『了』  運転しているのは、リーゼだ。  ヤスの指示に従って、駐車スペースにFITを停めた。  リーゼが運転席。サンドラが助手席に座っている。後部座席には、…

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2020/05/27

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十話 イワンの依頼

 ドアを開けて入ってきたのは、リーゼとサンドラだ。  サンドラは、ヤスを見て頭を下げるが、リーザはヤスに飛びついたのだ。 「ヤス!僕が案内するよ!」 「わかった。わかった。イワン。二人で間違っていないのか?」 「あぁ・・・。サンドラの嬢ちゃんだけの予定だったが・・・」 「駄目だよ!サンドラとヤスを二人だけなんて!僕も一緒に行く!案内なら任せて!」  ヤスは、サンドラを見るが、なぜか懇願する表情になっている。ヤスはリーゼが無理矢理サンドラを説得したのだと理解した。 「わかった。その鉱山の村までは遠いのか?」 …

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2020/05/26

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十九話 後始末の準備

 ヤスは、魔通信を切った。  ヤスは、大事な用事を思い出した。辺境伯でも良かったが、サンドラに繋いだ。 「サンドラ。聞きたいことがあるけど大丈夫か?」 『大丈夫です』 「豚公爵の名前と領地を教えてくれ」 『ヤスさん。何をなさるおつもりですか?』 「明確な敵なのだろう?名前と所在がわからないと、気持ちが落ち着かない」 『・・・。ヴァルブルグ公爵です。領地はありません。王都にお住まいです』 「へぇ王都か・・・。そりゃぁ大変だな。狐侯爵は?」 『お父様ですか?ヤスさんに教えたのは?』 「うーん。それで?」  サン…

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2020/05/25

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 国の行く末を憂慮する辺境伯

『お父様!』 「わかった。サンドラ。みなまで言わなくていい。ハインツに連絡して、王家に筋を通しておく」 『ありがとうございます。後ほどヤスさんからお父様にご連絡があると思います。よろしくお願いします。それでは!』  娘からの連絡を受けて、リップルの連中が暴発したのを知った。  儂が放っていた者たちからの連絡よりも、娘から連絡が早かったのが情けなくなる。抜本的な変革が必要になってきたのかも知れない。魔通信機が使いやすい環境だとしても、時間の差を考えてしまう。そして、娘は神殿が負けるとは考えていない。王家への連…

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2020/05/24

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十八話 落日のリップル

 ”リップル子爵領から兵士が関所を目指して進軍している”  この情報が神殿にもたらされたのは、ヤスが関所の森、神殿の森、魔の森にポッドの配置を終えた翌日だ。  休む暇も無いと愚痴を言っているヤスだったが、報告をあげてきたルーサと話をするためにモニターの前に居た。 『ヤス!』  ルーサがモニター越しに怒鳴っている。  ヤスが言った愚痴が聞こえてしまっていたのだ。わかっていた話だが、緊急事態には違いない。 「ルーサ。聞こえている。状況を教えてくれ」 『すまん。ヤスだけか?』  いつものメンバーが揃っていると思っ…

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2020/05/23

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十七話 ヤスの勘違い

 ヤスは、レイクサーペントを、安全を考慮して配置範囲のギリギリにあたる100メートル先に召喚した。いきなり襲われる可能性は無いと思ったが、魔物の大きさが解らなかった為の処置だ。  ヤスの目の前に体長10メートルを超えそうな巨大な白蛇が姿を現した。赤い目を持つ白い蛇だ。 『マスター』  白蛇は、ヤスに頭を垂れるような姿勢になっている。 「ん?お前か?」  目の前の白蛇にヤスは話しかける。 『マスター。名前を頂けないでしょうか?』 「名前?」 『はい。マスターの眷属にしていただきたいのです』  白蛇はヤスに懇願…

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2020/05/22

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十六話 日常の一コマ

 難民たちは、神殿の領地内に散らばった。  ヤスに取って、嬉しい誤算もあった。村で、宿屋をやっていた夫婦が数組だが存在していた。それだけではなく、神殿内に足りなかった雑貨屋や食堂の経験者も居た。希望を聞きながら、神殿の都(テンプルシュテット)とアシュリとトーアヴァルデとローンロットに散らばった。冒険者たちも、ユーラットや神殿の都(テンプルシュテット)に拠点を移動した。  関所の森に作った2つの村は、食料供給の一大拠点となった。  現在は、畑仕事だけだが、マルスから食料確保の簡単な方法が提示されて、実行すると…

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2020/05/21

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十五話 急報

 ラナが立ち上がって、部屋から出ていく。 「それで、ルーサは?」 「魔通信機からの連絡です」 「マルス!ルーサからの通信を繋いでくれ!」 『了』  モニターにルーサが表示される。 「ルーサ。何があった?」 「ヤス。いきなりすまん。ドーリスにも繋げたいが大丈夫か?」 「マルス。手配してくれ」 『了』  すぐに、画面が分割されて、ドーリスが表示される。 「ヤスさん。ルーサさん。緊急事態だと聞きましたが?」 「あぁ時間的には、1-2日は余裕があるが、どうしたらいいのか判断出来ない」  ルーサが、ドーリスに返事をす…

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2020/05/20

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十四話 散歩

 ヤスは、今日ものんびりと過ごしていた。ヤスが受けなければならない依頼が来ていないのが主な理由(いいわけ)だ。  プラプラと、神殿の街をぶらついている。  帝国で行っている意識改革(報復)も目に見える成果が出てくるのはしばらく時間が必要だろう。  リップル子爵家がそろそろ王都に付きそうだという報告は読んだ。到着してから自分たちがどれほど愚かだったのか気がつくのには、それでも2-3日はかかるだろう。  ヤスは、綺麗に整備された道をギルドに向かった。ギルドに用事があるわけではないが、なんとなくギルドに足を向けた…

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2020/05/19

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十三話 報復

 ヤスが出した指示をマルスは計画を立てた。  すぐに実行しなかったのは、魔力の吸収を優先させたからだ。せっかくなので、彼ら自身の魔力で魔物を召喚してみることにした。  ヤスが命じたとおりに、ゴブリンとオークとオーガのメスを召喚した。  奴隷化を実行しようとしたが、下位の個体では不可能だったので、上位個体を12体召喚した。その中の一体が主(あるじ)となるのだ。上位種は身体も顔つきも違ってしまうので、主(あるじ)の見分けが出来てしまう。ヤスの意図とは違うが、下位個体に兵士たちの相手をさせて上位個体に貴族と司祭と…

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2020/05/17

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十二話 後始末

 リーゼは、ヤスの背中を見ながら、後ろに付いていった。リーゼは、執務室に行く必要はなかったが、子供たちがどんな結論を出したのか気になったのだ。  執務室に入ると、イチカだけが待っていた。 「なんだ、座っていれば良かったのに・・・」 「今日は、ヤスお兄様にお願いに来ました」 「いいよ。イチカも座って・・・。えぇーと」「マスター。セブンです。お飲み物をお持ちいたします」  ヤスは執務室で控えていたメイドを見た。名前が解らなかったが、メイドが自分から名乗った。 「うん。セブン。頼む。リーゼの分も頼む」 「かしこま…

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2020/05/15

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十一話 帝国の子供たち

 ヤスは、会議の終わりを告げてから回線を遮断した。 「旦那様。関所の森の帝国側に関してのご報告があります」 「あぁセバスの眷属も参加していたのだったな」 「はい」 「こちらの犠牲は?」 「ありません。怪我を追ったものがいましたが、旦那さんの指示を優先させ、一人の犠牲も出しておりません」 「それは重畳。それで?」 「はい・・・」  話は、10日前のマルスの報告から始まった。 — 『マスター。関所の森に侵入者です』 「帝国側か?」 『はい』 「何度目だ?」 『6度目です』 「奴らは馬鹿なのか?違うな…

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2020/05/14

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十話 塩と砂糖と胡椒

『はぁ・・・。ヤス。まぁいいけどな。まずは、リップルからでいいか?』 「頼む」 『その前に、サンドラ嬢。ディトリッヒは居るか?』 『いますよ。ミーシャと後ろに控えています』 『そうか、まずは、ディトリッヒから、塩と砂糖がどうなったのか報告させたほうがいいと思うが?』  ヤスが承諾したので、ディトリッヒがサンドラに変わって、前に出て説明する。ヤスとルーサは聞いていた話だが、黙ってディトリッヒの報告を聞いた。サンドラは、父親からの説明を受けていたので、実際の現場以外で行われていた内容を補足するように説明した。 …

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2020/05/13

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十九話 神殿会議

 クラウス辺境伯が、長い後ろ髪を引っ張られながら、領地に戻っていってから、2週間が経過した。  ヤスは、一つの仕組みをドワーフのイワンと構築していた。  殆どは、マルスの仕事だったのだが、必要になって構築をおこなって、本日テストとして使うことにした。 『おぉヤス。どうだ?』 「お!感度もいいな。問題はないな」 『これはいいな。工房にいながら注文が出来る』 「イワン。会議用だぞ?注文に使うのは控えろよ」 『解っている。たまにならいいだろう?』 『ヤスさん。イワンさん。こちらも、問題はありません』  サンドラと…

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2020/05/12

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 クラウス辺境伯。疲労困憊

 疲れた。一言で、表現してしまったが・・・。心の底から軽蔑する相手だが、リップル子爵と話をしたときの方が疲れなかった。  別に、ヤス殿が嫌いとか軽蔑すべき人物だという意味ではない。自分で言っていてよくわからないが、ヤス殿との交渉は本当に疲れた。  疲れただけの成果は有った。 「お父様。お疲れ様でした」 「サンドラ。疲れた。あの地図!?それに、モニターはあのようにして使うのか?セバス殿はまともだと思ったのだが?」 「お父様。それは無理というものです。ここ1週間住んで見ればわかります」 「どういう意味だ?」 「…

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