ダンジョンの記事一覧
2022/09/28
【第十五章 調査】第百五十四話
報告を聞いて、5つのダンジョンの存在を確信しているのだが、少しわからない事もある。襲撃が行われている場所が、石壁全域に及んでいる事だ。 石壁の長さは、万里の長城ほどではないが、かなりの距離を誇っている。正確に計測したわけではないが、ミュルダ-ロングケープ街道を倍にした長さがあると思って間違いないだろう。 そして、石壁から目視出来る程度の場所にダンジョンが発見出来ていない。 中央付近から石壁に来ているのだとしたら、距離的な事を考慮すると、4-5日前にダンジョンから這い出た魔物が来ている事になる。 石壁にのぼっ…
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【第十五章 調査】第百五十三話
さっそく、魔の森に行くぞ! とはならなかった、オリヴィエとリーリアから、ステファナとレイニーの武器と防具を新しくしたほうが良いだろうという進言を貰ったからだ。 シロが2人を連れて、商業区に買い物にでかけた。 オリヴィエに問いただす必要がある。 「それで、オリヴィエ。本当の目的は?」 「マスター。なぜ?」 「わからないと思ったのか?シロが何か頼んだのだろう?」 「はい。奥様から、2人が休もうとしないと相談されました」 「それなら、シロが一緒では・・・。そうか、シロが途中で帰ってくるのだな」 「はい。商業区なら…
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【第十五章 調査】第百五十二話
「カズトさん?」 シロが俺の顔を覗き込んで心配そうに声をかけてきた。 確かに少しだけイラッとしたけど、そんなに態度に出たか? 「シロ。悪い」 「いえ、いいのですが、何か有ったのですか?」 隠す意味はないな 「スーンから連絡が入った。魔の森でスタンピードが発生した」 「・・・」 「今から、ログハウスに行くけど、シロもついてきてくれ」 「もちろんです」 「ステファナとレイニーにも準備させてくれ、もしかしたら、魔の森に調査に行く事になるかもしれない」 「はい。エリンちゃんとリーリアとオリヴィエはどうします?」 「…
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【第十五章 調査】第百五十一話
「ツクモ殿。本当なのでしょうか?」 いきなりの質問だな。 「ヨーゼフ。何か不満なのか?」 「いえ、不満という事は無いのですが・・・」 「なんだよ。煮え切らないな。なんか有るなら言えよ」 疑っているという雰囲気ではない。戸惑っているという雰囲気の方が適切なのだろう。 「本当に、ゼーウ街の・・・。違いますね。もっと具体的に聞きます。ヤーティが率いる兵が負けたのですか?」 「ん?ヨーゼフ。俺、そのヤーティなる人物を知らない」 「失礼。獅子族の者で、歴戦の勇者です」 歴戦の勇者と言われてもな・・・。 「歴戦の勇者っ…
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【第十四章 侵入】第百五十話
翌日には、パレスケープ区でも戦端が開かれた。 影通信(仮)での連絡が入ったのは、朝食を食べている最中だった。アポリーヌには、悪いけど状況が落ち着くまで、俺の近くに居てもらう事にした。デ・ゼーウの屋敷の地下牢は、ヤニックだけで支えてもらおう。 残ってもらったのは、パレスケープ区で俺たちの陣営に始めての犠牲者が出たためだ。幸い命は助かったが、かなりの怪我をしてしまった。第一報では、死亡者が出ていてもおかしくない戦闘の状況だ。 新兵が居る事を考慮していなかったからだ、俺のミスだ。 パレスケープ区では、ギリギリまで…
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【第十四章 侵入】第百四十九話
昼前に目が覚めた。 リーリアに連絡をとって、スラム街まで偽ツクモと偽シロを連れてこさせた。 スラム街で偽物と入れ替わった。 偽物は、暫くスラム街で預かってもらう事にした。眷属化と呼子を使えば、チアル街に返還する事は出来るかも知れないが、そんなに重要な事でもないので、スラム街に放置する事にした。レベル7帰還を使えば帰られる事もわかっているが、それこそもったいない。 宿に帰る前に、ライに眷属を呼び出してもらって、街中に放つ。 街中の情報を得る事が目的だが、同時に街の動きを観察する目的もある。動線がわからないこと…
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【第十四章 侵入】第百四十八話
救出は無事に終わった。 ヤニックとアポリーヌは、地下牢に残るようだ。いつでも出てこられる状態なので、逃げ出す必要が無い。それに今まで食事を運んだり手伝っていた者がいきなり居なくなったら流石に怪しむだろうという考えからだ。 それに、屋敷の中にもまともな者が居るので、連れて帰るなり、ゼーウ街で働かせるなりしてはどうかという事だ。、デ・ゼーウが俺に対応する事を考えているのなら、ヤニック達の方が人質として価値が有るので、ヨーゼフ達の事がバレにくいのではないかという考えだ。 余計な事だが、偽妹と偽夫人は下半身は男性が…
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【第十四章 侵入】第百四十七話
「ツクモ様」 「ファビアン。待たせてしまったようだな」 「いえ、大丈夫です」 辺りを見回すが、つけられている様子はない。 俺たちだけではなく、ファビアンも誰にも後をつけられていないようだ。 「マスター!」 オリヴィエが俺の前に剣を持って飛び出す。 肩に手をおいて 「大丈夫だ。だろう?」 「怖い。怖い。これでも俺の全力だったのだけどな」 そう言って建物から男が出てきた。 「ファビアン。この弱そうな男は?」 「言ってくれるな、坊や!」 「全力でその程度なら、怖くもなんともないからな。これなら、55階層のギガント…
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【第十四章 侵入】第百四十六話
スーンにはすぐに連絡が付いて、実験区から素体を3体送ってもらう事になった。 方法はいたって簡単。ライの眷属に、スキル眷属化を使わせて、3体の素体を眷属化する。ライが、その眷属をスキル呼子で呼び寄せる。そして、呼び寄せた眷属が持ってきたスキル呼子で素体を呼び寄せる。 レベル6眷属化が3枚とレベル5呼子が3枚とレベル6変体が3枚使う、63万円(=日本円)の作戦だ。 贅沢な使い方だよな。レベル6眷属化じゃなくて、レベル5隷属化でもできるかも知れないけど、実験していなかったから、安全を見ないとな。スーンに、隷属化で…
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【第十四章 侵入】第百四十五話
どのくらい抱き合っていたのだろう。 何回唇を合わせたのだろう。舌が絡み合うようなキスをした。 「カズトさん。僕おかしくなりそう」 「俺もだよ。でも、シロ。まずはやることをやろう」 「はい!」 俺が愛したシロがそこに居る。二人でお互いの身体を拭いてから、用意されていた新しい下着を身に付けた。 リーリアとオリヴィエとステファナとレイニーが資料をまとめてくれている。 できた資料から持ってくるように伝えた。順次、資料を読み込んでいく、思っていた以上に警備が硬い場所がある。何か隠していますと言っているのに気がついてい…
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【第十四章 侵入】第百四十四話
「大丈夫か?」 シロが少しじゃなく疲れているように見える。 「だ、大丈夫です。少し、人が多くて・・・びっくりしただけです」 「あれ?フラビアとリカルダと一緒に」 アトフィア教では姫様的な立場で注目されるのにはなれているのではないか? 「あっえっ、あっそうです。大聖堂とか大きな場所で、それに僕たちはその他大勢の1人でした」 と、思ったが違ったようだ。 でも、ログハウスや迎賓館では俺の横で注目を浴びているよな? 「それなら、迎賓館やログハウスでなれているだろう」 「あれは、カ、ユリアンさんに皆が注目しているので…
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【第十四章 侵入】第百四十三話
裏路地に入ったが、男たちはまだ襲ってこない。後ろから着いてきているだけだ。 襲われないまま両替屋まで到着してしまった。 「旦那様。ここは私達が行ってきます」 「いや、ここは、ルチに教えられた場所の一つだ」 「え?かしこまりました」 ステファナが俺に道を譲る。 路地に入ってから地図を思い浮かべていた。 ルチが印を付けた店の一つがこの場所だったと記憶している。地図を取り出して見るわけには行かないので確認はできない。でも記憶ではこの辺りだ。店に入ればわかるだろう。向こうからリアクションが期待できる。 もしかしたら…
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【第十四章 侵入】第百四十二話
さて、俺たちは荷物もたいして無いからな。着替えも、全部スキル収納に入っている。 作戦の第一段階が始まるのが、早いと明日から、遅いとさらに接触まで数日は必要だろう。ゼーウ街の事を知るためには丁度よかったのかもしれないが、少しだけ暇になりそうで怖い。 シロも少し落ち着いたから、街の散策でも行ってみるか? このまま部屋に籠もっていたら寝てしまって、それこそジェットラグと同じ状態になってしまう。よし、このままシロを連れて街の中を歩こう。昼夜逆転生活にならないようにしないと作戦行動に支障が出てしまう。 シロを見ると、…
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【第十四章 侵入】第百四十一話
ゼーウ街の大きさは、ミュルダ街よりは少し大きいくらいだが、居住区よりは小さい。ルートガーの資料によれば、人口は2万程度となってる。 門はまだ開けられていないが、既に数組の商隊が門の前で待っている。 今日が晴天でよかった。雨が降っていたりしたら、待っているのも億劫に思えただろう。 「なぁリーリア。チアル街でもこんなに行列ができたりしているのか?」 「ご主人様・・・チアル街は閉門しません。常に審査ができるようになっております」 だからと言って行列ができないわけではなさそうだ。進む行列だからイライラも少ないのかも…
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【第十三章 遠征】第百四十話
「カズトさん。カズトさん」 ん・・・あぁ寝てしまったか・・・。 「シロか・・・」 「ゴメンなさい」 「どうした?」 「・・・僕、カズトさんが暖かくて、抱きついて・・・寝ちゃって」 「眠れたか?」 「・・・はい」 「そうか、それならいい。さて、エリンたちと合流して、ゼーウ街に行くか?」 シロが謝ってきた理由・・・。 安心しきって、布団に潜り込んで俺の腕をロックした状態で寝ていた。そして、ヨダレを盛大に出してしまったようで、俺の腕がシロのヨダレで濡れていた。 どうせ着替えるのだし、気にしてもしょうがない。 風呂…
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【第十三章 遠征】第百三十九話
ゼーウ街が動いた。 この情報は、フードコートのオープンを見学するために集まっていた、行政官にも伝えられた。 住民にさとられないように、フードコートを順次出て、迎賓館に集まるように指示を飛ばした。 同時に、ワイバーン便を使って、ロングケープ区、パレスケープ区、パレスキャッスル区に向けて船が出港したという知らせを出した。3つの区に駐屯している部隊には、索敵範囲を広げることを命令として出している。 準備段階で、海図の作成を行わせている。 水深や海岸地形を利用した陸上からのスキル攻撃が可能になるだろう。今までは、船…
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【第十三章 遠征】第百三十八話
作戦準備が始まってから、2ヶ月が経過した。 まだゼーウ街や港には大きな動きがない。 正確には、ペネム街に向けての行動に移っていない。 その間、俺たちは準備だけをして、待っていたわけではない。 内政を粛々と行っていた。 大きく変わったのは、呼称を決定して、告知した事だ。 俺たちが治めた大陸は、ヒルマウンテン大陸と呼ばれていたのだが、正式な呼称ではなかったので、ペネム大陸と呼ぼうとしたら、”ペネム・ダンジョンコア”から待ったがかかった。そのために、初めてここで”チアル”ダンジョンの名前を使う事になった。 大陸の…
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【第十三章 遠征】第百三十七話
新居はできた。新居で楽しい生活の・・・前にゼーウ街の報告を聞く事になっている。 当初は、ログハウスで報告を聞くことにしていたが、ゼーウ街の動きが鈍い事もあり、迎賓館の会議室で意見を集約したルートガーから報告を聞くことになった。行政区と商業区と自由区に来ている代官や希望者が迎賓館に集まっている。 一種のパフォーマンスだ。 報告は滞りなく行われた。 ルートガーの報告の中で、一つだけ聞き逃がせない情報があった。 「ルート。それで、ゼーウ街とアトフィア教の一部が戦闘状態に入ったのは間違いないのか?」 「はい。間違い…
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【第十三章 遠征】第百三十六話
フラビアとリカルダの旅立ちを見送ってから、10日が経過した。 先程ワイバーン便が到着して、無事アトフィア教の使節団は総本山に帰っていった・・・と、報告がまとめられていた。 フラビアとリカルダは、ローレンツを残して先に宿区に戻ってくる事にしたようだ。 ローレンツは、使節団が完全に帰るまでロングケープ区に残るようだ。他にも、元々あった教会の残務処理があるので、それらを終えてから、報告に来るようだ。 交渉は、ローレンツ司祭がおこなったようだが、ヒリヒリするような交渉・・・ではなく、俗物が”あれ”を寄越せ、”これ”…
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【第十三章 遠征】第百三十五話
ルートガーが視察に向かったが、途中で問題が発生して帰ってきた・・・と、いう設定で、予定通り2週間で帰ってきた。 「それで?」 「はい。イサーク殿が説得を試みたのですが・・・説得を聞き入れるといった状態を越えていました」 ルートガーの話をまとめると、ジュアネ・パウマンは”カズト・ツクモ”を破滅させるためだけに動いていたのだ。出世欲とかではなく、単純に憎しみからの行動のようだ。イサークに関しても、仲が良かった”友”ではなく、”カズト・ツクモに従う者”として認識してしまっていた。 説得をおこなった夜に宿屋を襲われ…
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【第十三章 遠征】第百三十四話
非常に残念だ。 すごく残念だ。そして、いろいろ納得してしまった。 「老。それは、間違いないのか?」 「ツクモ様。間違いないと、ワシは思っておる」 ライの眷属からの報告、そしてそれを聞き取りしたフラビアとリカルダのまとめ。 クリスとルートガーの裏付け。 組織され始めたメリエーラ老の諜報部隊。 今回一番活躍したのが、吸血族だ。メリエーラ老に協力する形で、モデストたちが各地に散っていた。これが情報の集約に一役かっていた。 迎賓館の執務室に、メリエーラ老とルートガーとモデストが居る。俺の横には、シロ。近くには、ステ…
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【第十三章 遠征】第百三十三話
前世・・・では無いのだが、死んで生まれ変わった事にした。その方が説明がしやすかったからだ。 同じ宇宙なのかわからないが、広大な宇宙の中の、小さな地球という星の、小さな日本という国の、さらに小さな小さな街に住んでいた事を説明した。 この世界よりも文明が進化していた事や、スキルカードが無い事や、ダンジョンがなく、種族は人族しか居なかった事。魔物もいなくて、代わりに動物が居た事。沢山の国があって、人族が50億人以上居た事を淡々と説明していく。 シロは、黙って俺の告白を聞いてくれている。 俺が作っている料理やスキル…
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【第十三章 遠征】第百三十二話
執務室で、シロとメイド(ドリュアス)が入れたお茶を飲んでいると、スーンとミュルダ老とメリエーラ老が面会を求めてきた。 「大主様。実務会議が終わりました」 「ありがとう。スーン。まとめに入ってくれ」 「はっ」 スーンが一礼して、隣の執事(エント)が待機している部屋に入っていく、会議の内容を議事録の形でまとめさせて、皆に配布する資料にする。そのまま、デ・ゼーウに渡っても問題ないように隠すべき情報は載せない事も忘れずに指示を出しておく。 俺とシロが座るソファーの正面にミュルダ老とメリエーラ老が座る。 「老。それで…
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【第十三章 遠征】第百三十一話
シロは、着飾って緊張した面持ちで執務室のソファーに座っている。 今朝起きてから、フラビアとリカルダに連れられて、宿区に戻って、風呂に入れられて、頭の先から足の指先まで綺麗に洗われたという事だ。17歳になるシロにそんな・・・必要ないと思ったが、女性のやることに口を挟むと10倍以上の小言が届くことを経験で知っている。 ドナドナされるシロに”頑張れ”と念話で送って、俺は会議で使う資料に目を落とす。 スーンとミュルダ老とヨーンが俺に挨拶をした者たちから順次情報を引き出してまとめてくれている。 資料には問題はなさそう…
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【第十二章 準備】第百三十話
5日後の会談に備えて・・・俺は到着した者から挨拶を受ける事以外にやることがない。 今日は、誰も到着していない事もあって、本当にやる事がない。表の行政区を周って、宿区を通って、ログハウスに帰る事にしたのだが、行政区を抜けた辺りから誰かに見られている感じがしている、眷属たちではない事はすぐにわかった。監視されているというよりは、観察されている感じだ。 「なぁシ・・・ロ」 斜め後ろを振り向いて、今日は1人だった事を思い出した。 行政区を歩いたり、宿区を周ってみたが落ち着かなかった。いつの間には、俺は”シロ”に依存…
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【第十二章 準備】第百二十九話
アンクラム経由で行政区に戻った。 エリンが少しだけユーバシャール区を見て回りたかったと言っていたが、ゼーウ街対策もある事から、予定を切り上げて帰る事にした。俺とシロはエリンに乗って帰ると宣言すると機嫌も良くなった。もちろん、カイとウミとライも一緒だけどな。 リーリアたちはメリエーラ老とイサークたちと馬車で向かっている。 「カズト様!!」 「ん?シロ。何か言ったか?」 結界や障壁を張っていても、風切り音で会話が難しい状況になってしまっている。 『すみません。念話にすればよかったですね』 『あぁそうだな。それで…
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【第十二章 準備】第百二十八話
宿に戻って休もうと思っていたら、代官が面会を求めてやってきた。 「カズト様」 「どうしたシロ?」 「はい。よろしければ、私が、代官に事情説明をしてまいります」 「いいのか?」 「はい」 シロを見ると、何か考えがあるというわけでは・・・なさそうだ。 「・・・シロ。任せていいか?」 「はい!」 途中からだけど、事情が解っているのは、俺かシロだからな。 エリンに説明を任せるわけには行かないから、そうなると、シロが適任である事は間違いないのだろう。 シロが宿に来ている代官と面談してくるために部屋から出ていく。 丁度…
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【第十二章 準備】第百二十七話
『ライ。ここに寝っ転がっている奴らを縛っておいてくれ』 『はぁーい』 「シロ。こいつらを死なない程度に治療してくれ、死なれても困るからな」 「・・・わかりました」 「何か言いたいのか?」 「いえ、コイツらは、カズト様の命を狙いました。それ相応の報いを受けて当然かと思います」 「シロ・・・ありがとう。でも、俺のために、コイツらを治療してくれ」 「・・・はい。かしこまりました」 縛られている男が喚いているので、まず黙らせる事にする。 冒険者を名乗っていた奴らは静かなものだ。それもあって、男の声が頭の中に響いて来…
続きを読む2022/09/28
【第十二章 準備】第百二十六話
部屋の準備が整ったとリーリアから連絡が来たのは、5分くらい経ってからだ。 俺が借りた部屋ではなく、新しくシロが泊まる部屋にテーブルと椅子とお茶が用意された。 カイとウミとライの場所まで用意しているようだ。 俺の横にシロが座って、リーリアとオリヴィエが後ろに控えるようになる。エリンは、カイたちと一緒に座っている。 正面に少し緊張した面持ちでシロの従者となる二人が立って俺を見ている。 「旦那様。私達に名前を付けてください」 エルフっ娘が頭を下げる。 俺は、リーリアを見るがしれっとした顔をしている。 なに、旦那様…
続きを読む2022/09/28
【第十二章 準備】第百二十五話
シロと洞窟に戻ると、スーンが面会を求めてやってきた。 「どうした?珍しいな」 「お休みの所申し訳ありません」 「別に構わない。それで?」 「はい。スキルカードの産出の事でご報告があります」 今、スキルカードは主にチアルダンジョンから入手している。 獣人と魔蟲が一緒にダンジョンに入って魔物を狩っている。 やっと50階層の半ばに到達できる者たちが現れ始めたという事だ。それは喜ばしいことなのだが、取得できるスキルカードが変わってきたという事だ。低レベルのカードの上位版が多くなってきているという事だ。 簡単な例でい…
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