非ハーレムの記事一覧
2022/05/30
【第三章 帝国脱出】第二十話 ???
カリンとおっさんが、辺境伯の領都で落ち着いたころ、王都ではいろいろなイベントが行われていた。 勇者召喚が行われて、5人の異世界人が帝国に降り立ったと貴族に通達が行われた。 市井へのお披露目の前に、貴族たちのお披露目が行われる手はずになっている。 ラインリッヒ辺境伯をトップに置いた派閥は、勇者たちから距離を取る事が決まっている。呼びかけに対して、”魔物の襲来”や他国の動向が不安になっていることを理由に応じていない。 集まっている貴族への対応や派閥の貴族からの陳情を受けるという重要な案件を後回しにして、ブーリエ…
続きを読む2022/05/28
【第十章 エルフの里】第三十話 珍道中
エルフの里を出るときに、大樹に向かってリーゼと一緒に頭を下げる。 コアであるマリアにではない。大樹の側で眠るエルフたち・・・。リーゼの母親に向かってだ。 リーゼが、一筋の涙を初めて見せた。黙って、リーゼを抱き寄せる。それだけで、リーゼは身体を少しだけ強張らせたが、俺の背中に腕を回して、抱きついて、泣き出してしまった。 リーゼは、声を出さずに泣き続けた。溜まっていた物が流れ出たのだろう。 「ゴメン」 身体を離すと、リーゼは俺に謝ってきた。何に対して、謝っているのか・・・。聞かない。聞いてはダメなことくらい解る…
続きを読む2022/05/26
【第六章 ギルド】第二十話 おい
ギルドに俺のメリットを提示して、ミルとミアが居る訓練場に向かった。 「ミル!」 声をかけるが聞こえていないようだ。 音を遮断しているのか? ミルが、ミアに武器の使い方を教えているのか? ミアが、ギルドが用意している模擬戦用の武器を選んで、レオを相手に模擬戦を繰り返している。 ミアのステータスは低くない。テイマーなら、本人が戦う必要は少ないけど、戦えて困らない。ギルドが用意している武器の中では、短剣が合うようだ。レオが徐々に速度を上げるが、攻撃を当てられないが、しっかりと対応は出来ている。種族的なものなのか、…
続きを読む2022/05/17
【第六章 ギルド】第十九話 メリット
イリメリは、俺をまっすぐに見ている。 挑むような目線ではない。表現が難しいけど、挑発されているわけでも、攻撃されているわけでも、よくわからない目線だ。 「”白い部屋”で話された内容を考えてみた」 「え?」「続けて」 ルナが疑問に思っているような声を上げるが、イリメリが全員を見てから、俺を見つめて、説明を続けるように言葉を続ける。 「勝利条件は、全員を殺せとか、王になれとか、そんな事ではない」 ここで、全員を見れば、覚えているのだろう。頷いてくれる。 イリメリは思い出したのだろう。俺のメリットが解ったようだ。…
続きを読む2022/05/09
【第六章 ギルド】第十八話 会話?
俺の言葉を受けて、サリーカは”やっぱり”という表情をしているが、他は、まだ理解が追いついていない。 「リン君」 やはり、サリーカだけが神殿の意味がわかるようだ。 「出入口だけど、例えば、メロナとアロイに設置した場合に、メロナから入って、アロイに出られる?」 最初に聞いてきたのが、さすがだな。 「可能だ」 「神殿の広さは?」 質問の流れから通路だろう。 「通路の幅や建物は自由に設置できる。もちろん、馬車がすれ違えるくらいの幅にできる。今は中央に、ラウンドアバウトを設置している。神殿の広さは、ダンジョンのよくあ…
続きを読む2022/05/05
【第三章 帝国脱出】第十九話 おっさん動く
カリンが、ギルドで労働に勤しんでいる間に、おっさんは辺境伯の領都の隅々を観察するように歩いていた。それこそ、少しだけ柄がよくない連中が屯している場所も歩いていた。 「お!まーさん」 日本に居れば、間違いなく、職質の対象になっているような風体の男たちが、おっさんに近づいてきて声をかける。 「なんだ。お前たち、また昼間から飲んでいるのか?」 「いやぁ・・・」 「仕事は?」 「それを、まーさんが言うのか?まーさんこそ、仕事は?」 「俺?俺は、仕事をしなくてもいい身分だから、大丈夫だ」 「そりゃぁ大層なご身分だな」…
続きを読む2022/05/04
【第十章 エルフの里】第二十九話 エルフ
エルフの里まで戻ってきた。 歓迎されている雰囲気は皆無だが、俺とリーゼが行った事は、ラフネスから皆に伝えられているのだろう。嫉妬や嫌悪の視線は消えていないが、前の様に侮蔑を含んだ視線は少なくなっている。 ”助けてやった”から、感謝しろとは言わないが・・・。本当に、この種族を延命させたのは正しかったのか疑問に感じてしまう。 そして、コアからある事実を教えられた。当然の事だが、考えてもいなかった。このエルフの里には、ハイエルフを含めて、300名程度が住んでいる。外に作られた村には、里に入ることができないエルフた…
続きを読む2022/05/01
【第六章 ギルド】第十七話 合流
ドアが勢いよく開かれた。 タシアナが、涙目のミトナルの腕を引っ張る形で、入ってくる。 タシアナとミトナルの後ろには、ルアリーナとサリーカが続いて、フェムやカルーネやフレットやアルマールも居る。最後には、目を伏せたイリメリが続いている。イリメリは、ミアと手を繋いでレオの首輪を握っている。さすがは、委員長だ。ここでも、委員長をやっているのだろう。 タシアナの目が怖い。 俺を睨んでいる。涙目のミトナルから推測できる。俺が想定していた中では、最悪な部類だ。 次は、タシアナがいうセリフも想像ができる。 「ギルドマスタ…
続きを読む2022/04/30
【第二章 帰還勇者の事情】第三十七話 襲撃
ユウキとリチャードは、建物の入口で椅子に座っている。 建物の中では、マイとロレッタが準備を行っている。 これから、4人で次の作戦を実行する。骨子を考えたのは、ユウキだがいやがらせの部分で日本に居るメンバーも手伝ってくれている。 そして・・・。 ユウキが持っているスマホに着信がある。ユウキは、着信した番号を見て、”にやり”と子供に似合わない表情をする。リチャードは、この表情を見るのが好きだ。ユウキが活き活きとしているのがわかる。リチャードだけではなく、皆がユウキを頼りにして、ユウキを守ろうとして、ユウキに助け…
続きを読む2022/04/29
【第三章 帝国脱出】第十八話 カリン働く
辺境伯領に到着してから、おっさんとカリンは着実に足下を固めている。 カリンは、おっさんの期待通りに、ギルドで頭角を表し始めている。 カリンが受けている依頼は、主に採取に偏っている。 それには、深くもない理由が存在していた。 「カリンちゃん。今日こそ、俺たちのチームに」「カリン。お姉様!男。臭い。消えろ!」 ギルドに顔を出すと、毎回の様にいろいろなチームから誘われる。ギルドは、カリンの事情を把握している。ギルドに伝えられている事情は、おっさんが念入りに考えて、イーリスとフォミルと巻き込んで作った事情(嘘)だ。…
続きを読む2022/04/28
【第十章 エルフの里】第二十八話 行商
ヤスは、ラフネスから受けた依頼を考えていた。 神殿から、エルフの里までの距離が問題になってくる。ヤスがディアナで移動するには、無理がある。集積所を作る場所も問題になってくる。 しかし、ヤスはラフネスの依頼を前向きに考えていた。物流ですべてが解決するとは思っていないが、神殿から派遣する行商人なら、エルフの里に喰い込んでいた商人の様に、エルフ族を騙して至宝を掠め取ろうとしたり、結界の中に無理矢理入ったり、愚かな行為は控えるだろう。 ”マリア(コア)”と絡んでしまったから、見捨てる選択肢はないのだが、面倒なことに…
続きを読む2022/04/27
【第六章 ギルド】第十六話 説明準備
ギルドはうまく回っているが、うまく回り始めているから、新しい問題が出始めている。子供やメンバーが狙われ始めている。 ナッセの話し方から、理解したことだ。 ナッセが目配せをする。 「そうか、それで、監視しているのだな?」 そこまでヒントを貰えれば、さすがに判るだろう。 それに、”監視”対象は、中に居る者たちではないだろう。ミルが、ギルドのメンバーと話をして、問題が無いと判明したら、監視している視線が弱まった。 「気が付きましたか?」 「入口やギルドに近づく者たちを監視しているのだな?」 テーブルの上に置かれて…
続きを読む2022/04/20
【第六章 ギルド】第十五話 ナッセ・ブラウン
ミアと手を繋いで、ギルドに近づく。 ミルが警戒を強めるが、誰も襲ってくる様子は無い。視線は増えていない。監視は、俺やミルを見ているわけではなさそうだ。 (ギルドを監視している?) フェム辺りなら、状況を把握しているのだろう。王都の様子を含めて聞いたほうがいいかもしれない。 「ねぇリン?」 「ん?」 「リンの事を話すの?」 ミルは、時々・・・。言葉を抜いた・・・。省略した話し方をする。 俺の何を話すのか?ミルの中では、詳細な説明をしているつもりのようだが、俺からしたら、言葉が足りない。 「俺の何を?」 「ん?…
続きを読む2022/04/10
【第二章 帰還勇者の事情】第三十六話 葬送
ユウキたちは、アメリカに渡っていた。 皆で歩いているのは、よくある街並みだ。 街並みを歩く子どもたちは、人種もバラバラで統一しているのは、”子供”だと思える年齢だということだ。ユウキたちを見つめる視線は存在しない。 今回の作戦で最後に訪れる予定になっていた場所だ。 先頭を黙って歩いているのは、リチャードとロレッタだ。 ユウキだけは、リチャードとロレッタと一緒に来ているので、リチャードの態度は理解ができる。 「リチャード?」 たまらず、ディドが声をかけるが、ユウキがディドだけではなく、皆を手で制する。皆もユウ…
続きを読む2022/04/05
【第三章 帝国脱出】第十七話 おっさん相談する
カリンを出迎えたおっさんは、カリンに”おかえり”と伝えて、背中を見せる。カリンは、おっさんの背中を呆然と見つめている。 カリンは、怒られると思っていたので、神妙は面持ちで居たのだが、一言だけで終わってしまって、余計に怖くなってしまった。カリンが抱えていた、バステトは、カリンの腕から飛び出て、おっさんの肩に駆け上がっている。おっさんは、バステトの頭をなでながら、後ろを振り返る。 「そういえば、カリンは、夕飯は食べてきたのか?」 普段通りの声色で、おっさんがカリンに話しかける。 これなら、怒られたほうがまだまし…
続きを読む2022/04/05
【第十章 エルフの里】第二十七話 決着?
この神殿。詰んでいないか? いや、まだ大丈夫だ。魔物への対処ができればいい。それに、大物は多くない。対処が可能な魔物だけなら、問題ではない。 どうやら、俺がこのコアを吸収するのはできるようだが、そうなると、エルフたちをどうするのか考えなければならない。神殿に依存している者たちを、俺の神殿に住まわせるだけで終わるのならいいのだけど、問題まで一緒につれていくことになりそうだ。 それでなくても、俺の神殿は”多種族”が住んでいる。 エルフのように他種族を見下す者たちは来て欲しくない。他種族との接触を避けるために、エ…
続きを読む2022/04/03
【第六章 ギルド】第十四話 監視
おばちゃんから話を聞いた。 思っていた以上に王都は悪い方向に進んだようだ。これなら、王都を拠点にしないで、ギルドの本部ごと神殿に移動させたほうがいいかもしれない。いや、俺が考えることではない。ギルドのメンバーやハーコムレイたちが考えるべきことだ。 俺は、皆が”神殿”を選んだときに、受け入れるだけだ。 「リン。どうする?」 ミルが、レオの上に乗るミアの手を握りながら、俺に問いかける。 おばちゃんの話はたしかに衝撃的だけど、俺たちに何ができるかわからない。貴族同士の見栄の問題にまで発展しているのなら、俺たちがで…
続きを読む2022/03/25
【第二章 帰還勇者の事情】第三十五話 サトシ
俺は、サトシ。 地球から召喚された勇者の一人だ。そして、レナートの次期国王だ。と、なっている。だよな? 地球に居る時から一緒に居る。マイが今でも一緒に居てくれるのは嬉しい。 しかし、しかし、しかし、しかしだ! ユウキやヒナやレイヤは、日本に帰った。俺と一緒にレナートに残ってくれると思っていた。 ディド。テレーザ。ヴァスコ。ニコレッタ。ロミル。イェデア。レオン。フェリア。パウリ。イターラ。オリビア。ヴェル。たちは、レナートに残ってくれた。俺を支えてくれる。 地球に戻った者たちも、やるべきことがあって地球に戻っ…
続きを読む2022/03/25
【第三章 帝国脱出】第十六話 おっさん心配する
おっさんとイーリスが、代官の屋敷から出て、宿に向かっている。 「まー様?」 「ん?どうした?対ダストンは、納得したよな?」 「はい。辺境伯様が裏切るとか、非現実的な点を除けば、納得できる内容でした」 「非現実的か・・・。まぁいいよ。それで?」 「まー様は、これから、どうされるのですか?」 イーリスの質問を、おっさんは当然だと受け止めている。イーリスは、帝国の人間だ。今の体制には不満もあるだろうし、問題だという考えは持っていても、権力側の人間で、辺境伯という協力者を持っている。そんなイーリスが恐れるのは、おっ…
続きを読む2022/03/24
【第十章 エルフの里】第二十六話 善後策
いい方法が思い浮かばない。 俺は、所詮はトラックの運転手だ。小難しい事を考えるのは、専門にやっている奴が行うべきだと考えてきた。 しかし、このエルフの里の奴らは・・・・。 最低限の事さえもできていない。説明をしても理解ができるとは思えない。最大の問題は、魔物の排除が行える力があるのかさえも怪しい。 「なぁ」 「なに?」 リーゼが、俺の問いかけに返事をするが、俺が聞きたかったのは、リーゼではない。神殿のコアに善後策を考える上での、条件やできる事を聞きたかった。俺が考えた事がどこまでできるのか、確認が必要になっ…
続きを読む2022/03/24
【第六章 ギルド】第十三話 王都
ミルが戻ってきた。 怪我もしていないので、相手は問題になるレベルではなかったのだろう。 「リン!」 ミルが駆け寄ってきて、ミアを見つけて、安堵の表情を浮かべる。その表情のまま、俺に抱きついてくる。 ミルの頭を撫でながら、状況を聞く。 「どうだった?」 ミルの様子から、奴らでは無い。貴族関係の者でもなさそうだ。 「関係ない人たちだった。僕や、ミアを見て、奴隷として売ろうと考えたみたい」 それは、それで問題だけど、確かに、ミアは珍しい種族だし、ミルは”美少女”だ。狙うのは理解ができる。でも、簡単に捕まえられない…
続きを読む2022/03/07
【第二章 帰還勇者の事情】第三十四話 作戦
ミケールがユウキとの会談を終わらせて、部屋を出た。 当初の予定通りと言っても、ユウキは契約が成立する可能性は、五分五分だと考えていた。実際に、ユウキが提案した内容は、荒唐無稽だと言われてしまうような内容だ。 「ユウキ!」 レイヤが部屋に駆け込んできた。 「レイヤ。落ち着きなさいよ」 カップを片付けながら、ヒナはあきれた表情をレイヤに向ける。親しい人にしか向けない表情だ。 「ヒナ。そういうけど・・・。作戦の可否が決まるのだぞ?」 「はぁ・・・。レイヤ。貴方まで、サトシと同レベルになってしまったの?」 「あ?」…
続きを読む2022/03/06
【第三章 帝国脱出】第十五話 カリン出歩く
カリンは、おっさんとイーリスが代官に会いに行く時に、最初は自分も一緒に行くと言っていたが、イーリスから代官の為人を聞いて、考えを改めた。一緒に言って、言質を取られるのはよくないと、言い訳を伝えた。 実際には、話を聞いただけで面倒な人とは関わりたくない。せっかく、元同級生たちとも離れることができたのに、自分からおっさん以外の面倒な人とかかわりを持ちたいとは思えなかった。 カリンは、バステトと一緒に宿?で待っていることになった。イーリス付きの護衛は居るのだが、元々は辺境伯の部下だ。その辺境伯からの命令で、イーリ…
続きを読む2022/03/05
【第十章 エルフの里】第二十五話 鍵
いつまでも、神樹を見上げていても何も解決しない。 解っているが、見上げる首が痛くなっても見て居たい気持ちにさせる。 神秘的な風景は、TVや本で見てきたが、一線を画す美しさがある。言葉で表すとチープになってしまうが、他に表現できる言葉が見つからない。 「ヤス。ヤス」 「なんだ?」 「すごいね」 「そうだな」 リーゼも同じ気持ちのようだ。 どんなに言葉を飾っても、チープに思えてしまう。 『(・・・)神殿の主様』 ん?リーゼのはずがない。 マルスも、俺を”神殿の主”とは呼ばない。 「リーゼ。何か、聞こえたか?」 …
続きを読む2022/02/25
【第六章 ギルド】第十二話 散策
見る物すべてが珍しいのか、ミアは周りを見ては、ミルに質問をしている。 ミルも嬉しそうに、ミアの手を握りながら、説明を行っている。俺から少しだけ前を歩く形になっていて、俺には二人の会話が聞こえない。 「あるじ!」 ミアが、後ろを振り返って俺を見た。 「どうした?」 「ミルお姉ちゃんと、あるじは”ふうふ”なの?」 「ん?ミトナルさん?」 ミルを見ると、視線を逸らした。 レオが目線をそらすという器用な真似をしている。 「レオ!」 ”ワフ・・・” レオは、ミルを見つめる。 やはり元凶は、ミルのようだ。…
続きを読む2022/02/21
【第二章 帰還勇者の事情】第三十三話 契約
エアリスの周りを覆っていたスキルが解かれる。 そこには、自分の手足を触って、自分の顔を、自分の手で触って、耳の形を確認して、触った手を自分の目で見つめる。大きな目が印象的な少女が立っていた。 自分の目で見て、自分の手で確認して、立っていることを確認して、自分を見つめている視線に気が付いた少女は、足を進めようとした。 しかし、何年も自分の足で立ち上がっていなかった少女は、立っていることが奇跡のような状態だ。歩くのは難しい。 しかし、少女は自分を見つめて、目を見開いて、流れ出る涙を拭わずに、自分だけを…
続きを読む2022/02/21
【第十章 エルフの里】第二十四話 神樹
ほぉ・・・。 マルスが守る神殿とは違った美しさがある。 馬車を降りてから、20分ほど森の中を歩いて到着したのは、エルフたちの集落のはずだ。 「ここは?」 「集落の入口です」 「ヤス様。リーゼ様。里に向かう前に・・・」 ラフネスが、俺とリーゼの前に出て頭を下げる。 リーゼの方を向いている。 「そうだな。リーゼ。墓を見に行こう。里の中には作られていないのだろう?」 長老が申し訳なさそうな表情をするが、俺としては、素直に墓参りができそうな事に驚いた。何か、対価を要求してくる可能性があると考えていた。そ…
続きを読む2022/02/20
【第三章 帝国脱出】第十四話 おっさん笑う
ダストンは、完全に理解する前に、おっさんに言質を与えてしまった。 イーリスの目の前だ。さらに悪い事に、このおっさんはぬかりがない。スマホを使って、言動を記憶している。勇者の使う道具だと説明して、録音している音声の一部を再生して、ダストンに聞かせた。 最終的には、秘書官を呼び寄せて文章を作成する事態になってしまった。 イーリスは、”そこまで”しなくても・・・。と、いう表情を浮かべているが、おっさんはダストンを一切信じていない。信じているのは、”風見鶏”な部分だ。今、この場ではおっさんが一番の権力を握っ…
続きを読む2022/02/19
【第六章 ギルド】第十一話 到着
王都に入る為には、パシリカの時でもなければ、検閲を受けなければならない。 ハーコムレイ辺りと、ギルドが交渉してくれたら、もしかしたら楽になるのかもしれない。 今は、列に並ぶのが自然な事だ。 それに、目立ちたくない俺たちに取っては、列に並ぶ以外の選択肢はない。 結局、列に並ぶ前に、アウレイアの眷属をどうするのか結論が出なかった。 ミアがテイムしている”白狼(ホワイトウルフ)”だということにした。 本人?に確認をしたら、そのままミアの護衛としてテイムされても問題はないということになった。身振り手振…
続きを読む2022/02/13
【第二章 帰還勇者の事情】第三十二話 エアリス
ミケールは痛みに耐えながら、自分をまっすぐに見つめる少女に微笑みを向ける。 凝縮した痛みを受けているミケールを少女は流れ出る涙を拭わないで見続ける。 『ユウキ様。ありがとうございます』 少女は、まっすぐにミケールを見ながら、斜め後ろにいるユウキに感謝を向ける。 「いえ」 ユウキは短く言葉を発するだけだ。 治療の前段階は、終焉に近づいている。 ミケールは声が出せない。肩で息をしている。支えられなければ立っていられない。 『ミケール』 少女の呟きが室内に木霊する。 それだけ、室内には音が存在しな…
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