異世界の物流は俺に任せろの記事一覧
2020/06/01
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十五話 帝国の村
子爵たちの処分に目処が付いたヤスは、保留していた帝国への対応を開始した。 マルスからの情報で、帝国軍は、3つの家の連合で作られているようだ。それぞれの家の三男や四男が率いている。連合と言っても、統率が出来ているわけではない。ただ一緒にいるだけの関係だ。兵士数も、各家では3、000の兵士を出して、物資を輸送する兵站を1,000名出している。合計すると1万2,000にもなるが烏合の衆であるのは間違いない。 石壁が始まっている場所で、陣取って動こうとしない。 先に攻撃を仕掛けて、失敗したら笑いものになる。…
続きを読む2020/05/31
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十四話 捕らわれの者たち
見世物になるのが確定しているリップルたち”ヒトモドキ”は、隷属の首輪をするのを拒否している。 リップル子爵の命令で、身分の低い者が首輪を付けられた。宣言通りに、絶命するまでゆっくりと首輪が絞まっていった。その間、首輪を付けられた者は苦しみ続けた。それを見て誰も首輪を着けようとしなくなってしまったのだ。一人と首輪一つが減った檻の中では、醜い争いが発生していた。 身を隠すことが出来ない場所に捕らわれている。食事も人数分しか提供されない。 快適な生活が出来るような場所と環境ではない。魔物が出ないだけマシだ…
続きを読む2020/05/30
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十三話 トーアヴァルデ
帝国は確かにトーアヴァルデには近づいてきている。 しかし、戦闘が開始されるような距離ではない。入口に到達したに過ぎない。それも、野営地を作って新たに作られた壁を調べている段階だ。帝国は、リップルとは違って撤退しても問題はない。攻めてこない可能だって残されている。 リップル元子爵軍は、騎士を中心に一斉に動き出した。 規則正しい動きではなく、統率も取れていない。ただ、門を目指しているのだ。 先頭が門に到達する寸前に、門が内側に開かれた。 ”開いた!” ”進め!勝利は我らの物だ!” ”何が神殿の主だ!所…
続きを読む2020/05/29
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十二話 帰還と開戦
ヤスとリーゼとサンドラが神殿に帰ってきた翌日には大量のドワーフがアシュリに到達した。 酔っぱらい状態だったらしいが、足取りはしっかりしていた。それだけではなく、リップルの神殿討伐軍(笑)の動向も掴んできていた。途中で逃げ出した者や軍から物資を持ち逃げして、盗賊になった者を討伐してきたようだ。逃げ出した者は、そのままレッチュ辺境伯領に押し付けてきたとルーサに説明した。 ドワーフたちが討伐軍よりも早く到達したのにも理由がある。 ドワーフたちは、最短距離を移動してきた。レッチュ辺境伯領を突っ切った形だ。限…
続きを読む2020/05/28
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十一話 鉱山の村
「ディアス。二人の様子はどうだ?」 『エミリアが応えます。ファーストからの問題点の指摘はありません』 「そうか・・・」 神殿を出て、ユーラット経由でアシュリに向かっている。 一度、アシュリでルーサに会って、リップルの動向を確認してから、鉱山の村に向かう道を考えることに決まった。 「ディアス。ファーストに連絡して、アシュリの駐車スペースに停車させろ」 『了』 運転しているのは、リーゼだ。 ヤスの指示に従って、駐車スペースにFITを停めた。 リーゼが運転席。サンドラが助手席に座っている。後部座席には、…
続きを読む2020/05/27
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十話 イワンの依頼
ドアを開けて入ってきたのは、リーゼとサンドラだ。 サンドラは、ヤスを見て頭を下げるが、リーザはヤスに飛びついたのだ。 「ヤス!僕が案内するよ!」 「わかった。わかった。イワン。二人で間違っていないのか?」 「あぁ・・・。サンドラの嬢ちゃんだけの予定だったが・・・」 「駄目だよ!サンドラとヤスを二人だけなんて!僕も一緒に行く!案内なら任せて!」 ヤスは、サンドラを見るが、なぜか懇願する表情になっている。ヤスはリーゼが無理矢理サンドラを説得したのだと理解した。 「わかった。その鉱山の村までは遠いのか?」 …
続きを読む2020/05/26
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十九話 後始末の準備
ヤスは、魔通信を切った。 ヤスは、大事な用事を思い出した。辺境伯でも良かったが、サンドラに繋いだ。 「サンドラ。聞きたいことがあるけど大丈夫か?」 『大丈夫です』 「豚公爵の名前と領地を教えてくれ」 『ヤスさん。何をなさるおつもりですか?』 「明確な敵なのだろう?名前と所在がわからないと、気持ちが落ち着かない」 『・・・。ヴァルブルグ公爵です。領地はありません。王都にお住まいです』 「へぇ王都か・・・。そりゃぁ大変だな。狐侯爵は?」 『お父様ですか?ヤスさんに教えたのは?』 「うーん。それで?」 サン…
続きを読む2020/05/25
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 国の行く末を憂慮する辺境伯
『お父様!』 「わかった。サンドラ。みなまで言わなくていい。ハインツに連絡して、王家に筋を通しておく」 『ありがとうございます。後ほどヤスさんからお父様にご連絡があると思います。よろしくお願いします。それでは!』 娘からの連絡を受けて、リップルの連中が暴発したのを知った。 儂が放っていた者たちからの連絡よりも、娘から連絡が早かったのが情けなくなる。抜本的な変革が必要になってきたのかも知れない。魔通信機が使いやすい環境だとしても、時間の差を考えてしまう。そして、娘は神殿が負けるとは考えていない。王家への連…
続きを読む2020/05/24
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十八話 落日のリップル
”リップル子爵領から兵士が関所を目指して進軍している” この情報が神殿にもたらされたのは、ヤスが関所の森、神殿の森、魔の森にポッドの配置を終えた翌日だ。 休む暇も無いと愚痴を言っているヤスだったが、報告をあげてきたルーサと話をするためにモニターの前に居た。 『ヤス!』 ルーサがモニター越しに怒鳴っている。 ヤスが言った愚痴が聞こえてしまっていたのだ。わかっていた話だが、緊急事態には違いない。 「ルーサ。聞こえている。状況を教えてくれ」 『すまん。ヤスだけか?』 いつものメンバーが揃っていると思っ…
続きを読む2020/05/23
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十七話 ヤスの勘違い
ヤスは、レイクサーペントを、安全を考慮して配置範囲のギリギリにあたる100メートル先に召喚した。いきなり襲われる可能性は無いと思ったが、魔物の大きさが解らなかった為の処置だ。 ヤスの目の前に体長10メートルを超えそうな巨大な白蛇が姿を現した。赤い目を持つ白い蛇だ。 『マスター』 白蛇は、ヤスに頭を垂れるような姿勢になっている。 「ん?お前か?」 目の前の白蛇にヤスは話しかける。 『マスター。名前を頂けないでしょうか?』 「名前?」 『はい。マスターの眷属にしていただきたいのです』 白蛇はヤスに懇願…
続きを読む2020/05/22
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十六話 日常の一コマ
難民たちは、神殿の領地内に散らばった。 ヤスに取って、嬉しい誤算もあった。村で、宿屋をやっていた夫婦が数組だが存在していた。それだけではなく、神殿内に足りなかった雑貨屋や食堂の経験者も居た。希望を聞きながら、神殿の都(テンプルシュテット)とアシュリとトーアヴァルデとローンロットに散らばった。冒険者たちも、ユーラットや神殿の都(テンプルシュテット)に拠点を移動した。 関所の森に作った2つの村は、食料供給の一大拠点となった。 現在は、畑仕事だけだが、マルスから食料確保の簡単な方法が提示されて、実行すると…
続きを読む2020/05/21
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十五話 急報
ラナが立ち上がって、部屋から出ていく。 「それで、ルーサは?」 「魔通信機からの連絡です」 「マルス!ルーサからの通信を繋いでくれ!」 『了』 モニターにルーサが表示される。 「ルーサ。何があった?」 「ヤス。いきなりすまん。ドーリスにも繋げたいが大丈夫か?」 「マルス。手配してくれ」 『了』 すぐに、画面が分割されて、ドーリスが表示される。 「ヤスさん。ルーサさん。緊急事態だと聞きましたが?」 「あぁ時間的には、1-2日は余裕があるが、どうしたらいいのか判断出来ない」 ルーサが、ドーリスに返事をす…
続きを読む2020/05/20
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十四話 散歩
ヤスは、今日ものんびりと過ごしていた。ヤスが受けなければならない依頼が来ていないのが主な理由(いいわけ)だ。 プラプラと、神殿の街をぶらついている。 帝国で行っている意識改革(報復)も目に見える成果が出てくるのはしばらく時間が必要だろう。 リップル子爵家がそろそろ王都に付きそうだという報告は読んだ。到着してから自分たちがどれほど愚かだったのか気がつくのには、それでも2-3日はかかるだろう。 ヤスは、綺麗に整備された道をギルドに向かった。ギルドに用事があるわけではないが、なんとなくギルドに足を向けた…
続きを読む2020/05/19
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十三話 報復
ヤスが出した指示をマルスは計画を立てた。 すぐに実行しなかったのは、魔力の吸収を優先させたからだ。せっかくなので、彼ら自身の魔力で魔物を召喚してみることにした。 ヤスが命じたとおりに、ゴブリンとオークとオーガのメスを召喚した。 奴隷化を実行しようとしたが、下位の個体では不可能だったので、上位個体を12体召喚した。その中の一体が主(あるじ)となるのだ。上位種は身体も顔つきも違ってしまうので、主(あるじ)の見分けが出来てしまう。ヤスの意図とは違うが、下位個体に兵士たちの相手をさせて上位個体に貴族と司祭と…
続きを読む2020/05/17
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十二話 後始末
リーゼは、ヤスの背中を見ながら、後ろに付いていった。リーゼは、執務室に行く必要はなかったが、子供たちがどんな結論を出したのか気になったのだ。 執務室に入ると、イチカだけが待っていた。 「なんだ、座っていれば良かったのに・・・」 「今日は、ヤスお兄様にお願いに来ました」 「いいよ。イチカも座って・・・。えぇーと」「マスター。セブンです。お飲み物をお持ちいたします」 ヤスは執務室で控えていたメイドを見た。名前が解らなかったが、メイドが自分から名乗った。 「うん。セブン。頼む。リーゼの分も頼む」 「かしこま…
続きを読む2020/05/15
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十一話 帝国の子供たち
ヤスは、会議の終わりを告げてから回線を遮断した。 「旦那様。関所の森の帝国側に関してのご報告があります」 「あぁセバスの眷属も参加していたのだったな」 「はい」 「こちらの犠牲は?」 「ありません。怪我を追ったものがいましたが、旦那さんの指示を優先させ、一人の犠牲も出しておりません」 「それは重畳。それで?」 「はい・・・」 話は、10日前のマルスの報告から始まった。 — 『マスター。関所の森に侵入者です』 「帝国側か?」 『はい』 「何度目だ?」 『6度目です』 「奴らは馬鹿なのか?違うな…
続きを読む2020/05/14
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十話 塩と砂糖と胡椒
『はぁ・・・。ヤス。まぁいいけどな。まずは、リップルからでいいか?』 「頼む」 『その前に、サンドラ嬢。ディトリッヒは居るか?』 『いますよ。ミーシャと後ろに控えています』 『そうか、まずは、ディトリッヒから、塩と砂糖がどうなったのか報告させたほうがいいと思うが?』 ヤスが承諾したので、ディトリッヒがサンドラに変わって、前に出て説明する。ヤスとルーサは聞いていた話だが、黙ってディトリッヒの報告を聞いた。サンドラは、父親からの説明を受けていたので、実際の現場以外で行われていた内容を補足するように説明した。 …
続きを読む2020/05/13
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十九話 神殿会議
クラウス辺境伯が、長い後ろ髪を引っ張られながら、領地に戻っていってから、2週間が経過した。 ヤスは、一つの仕組みをドワーフのイワンと構築していた。 殆どは、マルスの仕事だったのだが、必要になって構築をおこなって、本日テストとして使うことにした。 『おぉヤス。どうだ?』 「お!感度もいいな。問題はないな」 『これはいいな。工房にいながら注文が出来る』 「イワン。会議用だぞ?注文に使うのは控えろよ」 『解っている。たまにならいいだろう?』 『ヤスさん。イワンさん。こちらも、問題はありません』 サンドラと…
続きを読む2020/05/12
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 クラウス辺境伯。疲労困憊
疲れた。一言で、表現してしまったが・・・。心の底から軽蔑する相手だが、リップル子爵と話をしたときの方が疲れなかった。 別に、ヤス殿が嫌いとか軽蔑すべき人物だという意味ではない。自分で言っていてよくわからないが、ヤス殿との交渉は本当に疲れた。 疲れただけの成果は有った。 「お父様。お疲れ様でした」 「サンドラ。疲れた。あの地図!?それに、モニターはあのようにして使うのか?セバス殿はまともだと思ったのだが?」 「お父様。それは無理というものです。ここ1週間住んで見ればわかります」 「どういう意味だ?」 「…
続きを読む2020/05/10
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 クラウス辺境伯。神殿を視察6
儂は、クラウス・フォン・デリウス=レッチュ。バッケスホーフ王国の辺境伯だ。神殿の視察で、神殿の真実の一端に触れてしまった。しかし、これが終わりではなかった。娘の笑顔を見て、これで終わったと思ったが違っていた。 もう少し、カートを動かしたいと思ったが、ダメだと言われた。今度、休みが許可されたときにまた来て視察し(遊び)たい。ドワーフの工房は心臓に悪いから、カート場だけでいいか・・・。だが、ドワーフの酒精は魅力がありすぎる・・・。 カート場を出て、バスと呼ばれたアーティファクトに乗って、教習場と呼ばれる場…
続きを読む2020/05/09
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 クラウス辺境伯。神殿を視察5
儂は、クラウス・フォン・デリウス=レッチュ。バッケスホーフ王国の辺境伯だ。絶賛、後悔中だ。 ドワーフの工房で精神的に疲れてしまった儂は、いろいろ譲歩・・・。ではなく巻き込まれてしまった。娘の策略を疑っているが、悪い話ばかりではない。いや、違う・・・。本来なら、領を富ませる最高の物を得たと喜ばなければならない。ただ、他の領主や王家だけではなく、領内の有力者に知られた時に、誰にどれだけの情報を流すのか、調整が難しい。 そして、ドワーフの工房の最奥部に入るときに、娘が言っていた。『神殿に住むと言わないで・・…
続きを読む2020/05/08
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 クラウス辺境伯。神殿を視察4
儂は、クラウス・フォン・デリウス=レッチュ。バッケスホーフ王国の辺境伯だ。絶賛、後悔中だ。 ドワーフ族だと名乗ったのに、実はエルダードワーフだったイワン殿。家名持ちと教えられた時点で気がつけばよかった。 目の前にあるものは見なかったことにして、自分の屋敷に帰ろうと本気で考えた。娘が、帰さないと徹底抗戦だ。たしかに、王家からの頼みをヤス殿に伝えないとならない。娘を睨むが、娘は、もういろいろと諦めている表情をしている。 目の前に置かれている、魔道具と酒精。見なかったことにしたい。 「イワンさん。それで、…
続きを読む2020/05/07
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 クラウス辺境伯。神殿を視察3
儂は、クラウス・フォン・デリウス=レッチュ。バッケスホーフ王国の辺境伯だ。絶賛、後悔中だ。好奇心に負けた過去の自分を殴りたい。 「クラウス殿。ここが貯蔵庫だ」 「貯蔵庫?」 「そうだ、ここで蒸留酒を寝かせている」 「しかし・・・」「そうだ、単純に寝かせているわけではない。ヤスが作った部屋で、端から1年。2年。4年。8年。16年。32年。と、なっている」 「??」 「嬢ちゃんに聞いていないのか?」 「えぇ何も?」 「そうか、それじゃしょうがないな。この部屋は、広さは20メートル四方くらいの部屋で、1日で言っ…
続きを読む2020/05/06
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 クラウス辺境伯。神殿を視察2
儂は、クラウス・フォン・デリウス=レッチュ。バッケスホーフ王国の辺境伯だ。だが、現在の状況が理解出来ない。 ドワーフの工房は、凄まじかった。一級品の武器や防具が作られていた、日用品と思われる物もドワーフたちが作っていた。一部魔道具も見られた。ドワーフが魔道具を作る?と思ったが、エルフ族が居て、ドワーフ族と連携しているのなら可能なのだろう。こんな事が貪欲な貴族に知られたら、また胃に痛みが走る。 娘の言葉にも耳を疑った。 「サンドラ。二級品とは、見てきた工房で作られている物か?購入できるのか?」 「えぇ。…
続きを読む2020/05/05
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 クラウス辺境伯。神殿を視察1
儂は、クラウス・フォン・デリウス=レッチュ。バッケスホーフ王国の辺境伯だ。 貴族位としては、伯爵だが通常の伯爵より上の辺境伯だ。儂の上は、侯爵家と公爵家があるだけだ。 儂は、娘のサンドラが世話になっている神殿の都(テンプルシュテット)の敷地内に足を踏み入れた。軽い気持ちで着いてきたが、後悔し始めている。 神殿の都(テンプルシュテット)は娘たちが名前を付けたと言っているが、信じていない。名前は、主が付けるのが当然で、主の権利なのだ。娘たちも気にして、仮称だとは言っていたが、実際に神殿の主であるヤス殿が…
続きを読む2020/05/04
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 クラウス辺境伯。神殿に行く
儂は、クラウス・フォン・デリウス=レッチュ。バッケスホーフ王国の辺境伯だ。 貴族位としては、伯爵だが通常の伯爵より上の辺境伯だ。儂の上は、侯爵家と公爵家があるだけだ。 儂は、娘のサンドラが世話になっている神殿の都(テンプルシュテット)に向かっている。 関所の村アシュリでは、簡単な食事だけをして、神殿を目指す。関所の村アシュリの代表は、ルーサという男だ。ディトリッヒ殿の知り合いと言っていたが、どっかで見たことがある気がする。思い出せない。王都で行われた、陛下の即位式で見た気がしたのだが・・・。 代表…
続きを読む2020/05/03
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十八話 ヤスへの説明?お願い?
セバスが、サンドラとクラウスを連れて会議室に入ってきた。クラウスが疲れた表情をしているのを見て、ディトリッヒは可愛そうな人を見る目でクラウス辺境伯を見ている。実際に自分たちが通ってきた道である。 クラウスに衝撃を与えた、ヤスはセバスから飲み物を受け取って喉を潤していた。 「お!サンドラ。ありがとう。クラウス殿。お手間をとらせてもうしわけありません」 「ヤス殿。感想は、娘に伝えてあります。本題に入りますが問題はありませんか?」 「わかりました。お願いします」 クラウスは、ヤスに交渉の内容を伝える。 ま…
続きを読む2020/05/02
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十七話 サンドラとデイトリッヒが帰ってきた。おまけ付き
関所の村アシュリからユーラットに向かい始めた。サンドラ。ディトリッヒ。クラウス(辺境伯)を乗せた、ダブルキャブはユーラットに寄らずに神殿を目指す。 「セバス殿。ヤス殿は、”村を作る”と言ったのですよね?」 クラウスが、セバスに質問をする。問い詰めている感じではなく、呆れた感じに聞こえる。 「はい。そうお聞きしました」 セバスも淡々と答えるのだった。 関所の村(・)アシュリは、村ではない。城壁を備えた街なのだ。人数は、確かに街ではなく村なのだろう。設備だけを見れば、領都と同等か領都以上なのだ。クラウス…
続きを読む2020/05/01
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十六話 神紋
ヤスは、リーゼの家で昨晩の結果を含めて聞こうとしていた。 先触れに出た、テンが戻ってきて、リーゼが家に居ると告げられた。マルスに確認すれば済むのだが、ヤスはメイドに仕事を与えたのだ。 リーゼは、家で待っていると言われたので、手土産になるお菓子を持って、リーゼの家に向かう。 「旦那様。ファーストです。リーゼ様がお待ちです」 「ありがとう」 ファーストが、ヤスを案内して、リーゼの家に入る。リビングで、リーゼが緊張した面持ちで待っていた。 「ヤス。昨日の話だよね?」 「そうだ。何があった?」 リーゼがヤ…
続きを読む2020/04/30
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十五話 ディアスとヤスとルーサ
ディアスは姿勢を正して、ヤスを正面から見る。 「ヤスさん。イチカちゃんが言った”お願い事”は忘れてください」 「子供を助けてくれってやつか?」 「はい」 「なぜだ?」 「皇国と帝国を敵に回す可能性があります」 「そうだな」 ヤスの問題はないという態度にディアスは焦りを覚えて、きつい口調になってしまう。 「ヤスさん!解っているのですか?」 「ディアス。解っている」 「いいえ、解っておられません。帝国はどこまでも貪欲に神殿を狙ってきます。皇国も同じです。リップルとかいう子爵家とは違います」 「そうだろうな」…
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