異世界の物流は俺に任せろの記事一覧

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第三十四話 我が家へ

 ヤスは順調にユーラットへの道を走っていた。  頭の中では、どんなトレーラー(被けん引車)を討伐ポイントで交換しようか考えていた。  実際、かなりの討伐ポイントが有りヤスが望む物が手に入る状況になったのだ。 「マルス。ナビにエミリアの操作画面を表示して、音声で操作する事はできるか?」 ”可能です” 「設定を頼む。準備ができたら、討伐ポイントで交換できるリストを表示してくれ」 ”了”  マルスが設定の変更を始めたのか、ナビが暗転した。  暗転していたナビが再起動したのは5分くらい経ってからだ。 「マルス。コン…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第三十三話 移動開始

 ヤスがマルスに指示を出している間に、ラナは移住希望者の間を駆け回っていた。  領都を見捨てる決定をしたのはラナだったのだが、エルフ族の取りまとめをしている者たちへの説明を行う必要があったのだ。  経緯の説明をした結果、移住希望者の数が増えてしまった。  当初は、ラナを中心にした者たちだけの予定だったのだが、リーゼの話が伝わるとラナたちが(正確にはアフネスがリーゼの両親が残した物を使って)支援している孤児院も移動する事になった。成人して孤児院を出ていった者たちもそれに加わった。  ドワーフたちも移住を行う事…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第三十二話 状況確認

「ヤス殿。申し訳ないが、時間を少しもらいたい」  ラナが申し訳無さそうにヤスに頭を下げる。 「ん?どうした?」  ヤスとしてはもう自分の作業は終わったものと思っていた。後は、荷物が積み込まれたらユーラットに運ぶだけだと考えていたのだ。魔物はすでに討伐しているので、帰りは流しながら帰る事ができると思っている。 「思った以上に神殿への移住が魅力的なのか希望者が増えてしまった」 「そうなのか?荷物が多いのか?」 「いえ、人数が多くなってしまいまして、アイテムボックスを持っている者もいるのですが、ドワーフたちが鍛冶…

続きを読む
広告

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第三十一話 交渉

「大体で構わないのだが、何人くらいが移住できそうだ?」  ヤスの言葉に、ミーシャとラナは固まってしまった。  ある程度は把握していたのだが、実際に移住の意思を確認した事がなかったのだ。 「おい?」  実際に人数の把握は難しいことはヤスにもわかっている。 「ヤス殿。神殿に移住を希望する者は全て受け入れてくれるのですか?」 「そうだな・・・。今の状況だと、リーゼも神殿に来るよな?」 「・・・」「・・・」 「おい。ラナ!ミーシャ!俺を見ろ。目を逸らすな!」  ラナとミーシャは、リーゼを止める事ができないことはわか…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第三十話 交渉?

 二人は、ヤスの提案を承諾するしか道が無いように思われた。頭の中でいろいろ考えているのだが条件が曖昧すぎるために何を聞いていいのかさえもわからない状況になってしまっている。そのために、二人はヤスが何か聞いてくれる事を期待しているのだ。  三人がいる部屋に沈黙の時間が流れる。 ”エミリア。神殿の広場にユーラットに向かう道と山下りへの道と魔の森に向かう道を作る事はできるか?” ”個体名セバス・セバスチャンの眷属に指示を出す事で可能です。討伐ポイントでの設置は現実的ではありません” ”討伐ポイントは使えない?” …

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第二十九話 実際問題?

「わかった。ラナ。でも、ユーラットに・・・。エルフ族が何人いるのかわからないけど入る事ができるのか?入れたとして、生活できるのか?」  ヤスの懸念も当然なのだ。  ユーラットは王国の辺境伯の領地から更に辺境に移動した場所にある。辺境の町だ。村と呼んでもいいレベルだ。  土地は有るのだが問題は食料となる物が、漁業が中心になってしまう事だ。肉は魔の森が近くになるので供給する事はできるだろう。  問題は、穀物や野菜や水だ。  狭い土地を切り開いて作った町なので、畑を作る余裕が無い。ユーラット単体ではどうあがいても…

続きを読む
広告

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第二十八話 事情確認2

 ミーシャとラナはお互いが知っている事情を補足しながら、一日目に発生したことを説明した。ヤスは、目を閉じながら二人の話を聞いていた。  ヤスが閉じていた目を開いて二人を見た。 「それで?それだけじゃないのだろう?」  ヤスの怒りを含んだ言葉に二人は驚いた。  飄々としていたヤスがはっきりと怒りの感情を出したのだ。二人は、自分に向けられた怒りの感情でない事は理解できているが、それでも背中に流れる汗を止める事ができなかった。それほど、ヤスは怒っていたのだ。ヤスも自分が何に怒っているのか理解できないでいた。ただ、…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第二十七話 事情確認1

 ラナが立ち上がって部屋から出ていこうとする。ミーシャが腕を掴んで目線で何かを訴えている。ヤスに一人で説明するのが嫌なようだ。 「ミーシャ。飲み物を持ってくるだけよ」  ミーシャも手伝う事で妥協したようだ。説明が嫌だった事も有ったのだが、話す内容の打ち合わせができていなかったので、ラナと話をしたかったようだ。ラナとミーシャは、コンラートの醜態を見て、ヤスには正直に話す事に決めたようだ。アフネスからの伝言もあり、ヤスには敵になって欲しくはなかった。できれば、リーゼのことを守って欲しいと思っていた。  ラナとミ…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第二十六話 事情説明

 コンラートには、ヤスが救世主に見えたことだろう。何か情報を持っているのかもしれない。  停まったアーティファクトの所まで、コンラートは急いだ。 「ヤス殿!」 「どうした?何か有ったのか?」 「何か有ったではない!ヤス殿。ユーラットには行けなかったのか?」  コンラートが危惧したのは魔物がすでにユーラットに至る街道を封鎖してしまっていることだった。 「ユーラットには届けた。”魔通信機”での通信もできただろう?」  確かにユーラットから通信が届いたと報告は有った。  ヤスが荷物を運んできたと報告も上がってきて…

続きを読む
広告

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第二十五話 急展開

 ヤスが美味しく夕ご飯の時間に食べる朝ごはんを食べている頃。  領都は大騒ぎになっていた。  領都の守備隊が魔物討伐に参加しないのは納得できないが、納得しなければならない理由がある。領都を守護するための守備隊なので、王家直轄領のユーラットに派兵する事はできない。そもそも、魔物がユーラットに向かっているという正確な情報がない上に領都に魔物が来ないという保証がない間は動くことができない。  守備隊が動かないのは冒険者ギルドも納得していた。  ユーラットに行くことができる冒険者を領都で募っていた。一部のチームには…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第二十四話 後始末?

 ヤスは、トラクターの運転席で眠ってしまっていた。  太陽に照らされるトラクターはボディーが凹んでミラーも割れている。根本から折れてぶら下がっている状態だ。  スマートグラスの表示は戦いの激しさを物語るには十分な情報が表示されている。 損傷率:32%(自走可能) 稼働時間:2分30秒 風魔法:0回 結界損傷:—  ディアナには辺りの情報が表示されている。  神殿の境界まで自走してきて魔力が無くなって体力もなくなって眠ってしまったのだ。あと少しで境界の中に入る事ができる位置まで来ているのだ。  辺…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第二十三話 討伐?虐殺?

「結界の発動トリガーはエミリアが担当。結界の効力が切れたら発動」 『了』 「100体以上の群れが索敵対象。それ以外の群れはスマートグラスに表示」 『了。マスター。上位種がいる集団を”群”。それ以外は集団と認識します。色分けを行います』 「わかった。群れの上位種も解るように色分け。色は、赤の濃さで識別」 『了』  ヤスも指示が熟れてきた。  曖昧な部分を消すことはできないが、それでも以前よりもだいぶマシになってきた。エミリアやマルスも学習を行い。ヤスの指示を補正できるようになってきている。 「索敵対象の群を時…

続きを読む
広告

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第二十二話 強行

『マスター。トラクターの準備が整いました』 「ありがとう」  ヤスは残っていたパンを口に押し込んで、ジュースで流し込んだ。 「マルス。トラクターを正面まで移動しておいてくれ」 『了』 「エミリア。山下りのルートは算出できるか?」 『可能です』 「スマートグラスに表示してくれ」 『了』  5分ほど経過した。  ヤスは準備を整えていた。死ぬつもりはない。運転には自信を持っている。無茶な事ではないと考えているのだ。 「マルス。行ってくる」 『マスター。お気をつけて』  マルスに声をかけてから正面に停められているト…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第二十一話 神殿

 ヤスは、マルスの指示通りにアーティファクト(HONDA FIT)に乗り込む。  神殿の領域範囲内のギリギリだがディアナでの制御が可能で自動運転ができる状況なのだ。  ヤスがエンジンをスタートした。 『マスター。自動運転に切り替えますか?』 「頼む。さすがに疲れた」 『了』  ディアナは静かにスタートさせた。  速度を緩めるだけでモーターだけで動作する事がわかっている。マスターであるヤスが乗っているので、魔力の供給が受けられる為にモーターでの移動が可能なのだ。常にバッテリーがチャージされている状態なのだ。 …

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第二十話 情報と依頼

 沈黙を破ったのは意外にもイザークだ。 「ヤス。魔物が迫っているのは間違いないのか?」 「解らない。大きな群れができていたのは間違いない。領都に向かっていないと言っていたが、それも俺が確かめた情報ではない」  ヤスの言い回しが気になったのかアフネスが口を挟む。 「ヤスは、その情報だけで、リーゼ様を領都に置いてきたのか?」  批判する気持ちが全く無いわけではない。連れてきて欲しいというのは状況を考えれば無理な話である事も理解している。  たとえ、スタンピードが発生してユーラットに向かっているのではなく、領都が…

続きを読む
広告

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第十九話 伝達

 ヤスは、寸前まで猛スピードで突っ込んで門の手前で停まった。砂煙を上げてユーラットの正門前で停まったのだ。 「ヤス!」 「イザーク!丁度良かった。裏門の鍵。それから、ダーホスとアフネスに裏門・・・。いや、ギルドに集まるように言ってくれ。俺もすぐに行く」 「・・・」 「イザーク!」 「すまん。わかった」  イザークは、屯所に居た者に声をかけて、ヤスに裏門の鍵を渡すようにいいながら自分はギルドに向かって走り始めていた。  どう考えても、ヤスの到着のほうが早いと考えたからだ。  何かが発生しているのは解るのだが、…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第十八話 爆走

「ヤス様。こんなに詰めるのですか?」 「あぁ問題ない」  ヤスの前には、コンラートが持ってきた武器と防具が並んでいる。  それだけではなく、食料やポーションも置かれている。 「ヤス様。これは、武器と防具と食料とポーションと魔石の目録です。ダーホスに渡してほしい」  コンラートが目録をヤスに渡す。受け取った目録をポケットに押し込むふりしてエミリアに格納する。 「わかった。それで積み込んでいいよな?」 「えぇ大丈夫です。数は品物の確認はいいのですか?」 「武器と防具の本数と、食料の数。ポーションの総数が合ってい…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】幕間 コンラートの決断

 儂は、コンラート。辺境伯の領都にある冒険者ギルドのギルドマスターだ。  髪の毛が薄いのも、背が低いのも、全部”ドワーフ”の特性だ。ただ、一点違うのは、声が甲高いことだ。全部がドワーフ族の特性なら問題はなかった。父方の父。儂から見たら祖父だが・・・。その祖父の嫁がハーフリングだった為に儂はこんな声になってしまった・・・。らしい。  別にこまる事はないが、初めて合う人間からはかなり驚かれる。笑い出す者もいる。  アフネス殿から話しを聞いて、面談した人族も少しだけ驚いた顔をしたのだがすぐに表情を消した。  面談…

続きを読む
広告

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第十七話 急報

 ヤスとリーゼは、2日に渡って領都中を歩くことになった。  主に、リーゼの責任だが、ヤスにも問題はあった。リーゼが方向音痴だという事を認識しながら、リーゼが地図を持って案内することを許したのだ。ヤスなりの考えも有ったのだがすべてリーゼの方向音痴度合いが上回った。広いと言っても1日あれば十分回れる広さ程度の領都の中に、訪れる必要がある場所が11ヶ所あるのだ。  一日目は迷いながらも4ヶ所に辿り着いた。リーゼはその時点でヤスに泣きついた。その日は、宿に戻ってゆっくり休んで翌日にヤスが地図を見ながら残りを訪れたの…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第十六話 デート?

「ミーシャ!ヤス!」  ヤスがギルドマスターとの話を強制的に終わらせて階下に戻った所で、置いていかれたリーゼが怒鳴り込んできた。 「お!リーゼ。起きたのか?」 「ヤス!酷い。僕を起こしてくれても良かったのに!」 「いや、可愛く寝ていたからな。起こしては悪いと思って、そのまま寝かせておいた。そうだ、リーゼ。用事はいいのか?終わったのなら、領都を案内してくれよ」 「可愛い・・って・・・。そうだね。わかった。用事は、まだだよ。でも・・・。あ!ミーシャ。おばさんからの手紙を渡しておくね。ミーシャでしょ?」  ヤスの…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第十五話 ギルドマスター

 ヤスが冒険者ギルドに到着したらミーシャが出迎えてくれた。  ヤスに見えない場所で、荷物の運搬で不正を働いた者たちの処分が降された。  不正を働いた者たちは、盗もうとした物と同額の罰金を言い渡されていた。殆どの者が払えるはずもなく、冒険者ギルドの狗となる事が決定した。犯罪奴隷に落とされないだけましである。 「ヤス!」 「おっ悪い。それでどうしたらいい?」  冒険者ギルドの中でキョロキョロしていたヤスにミーシャが声をかける。 「査定は初めている。ギルドマスターに会って欲しい」 「わかった」  明らかにホッとし…

続きを読む
広告

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第十四話 冒険者ギルド

「ヤス。もう大丈夫だよ!」 「わかった」  ヤスは三月兎(マーチラビット)に部屋を借りた。ラナがやっている宿屋で、アフネスの息がかかっている。  部屋を借りる時に料金で少しだけ揉めた。値段ではなく、ラナ(宿屋の主)はすでに受け取っていると言っているが宿泊数が伸びたり料理が付いたりで変わっているはずだとヤスが譲らなかったのだ。  それで、ラナは正直に話をしてリーゼの父親が持っている権利の代金が貯まっているので、その中から支払われるから大丈夫だと説明したのだが、話を聞いてヤスは手持ちの金貨を差し出して、足りなけ…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】幕間 ミーシャ

 私は、ユーラットのギルドから領都のギルドに栄転となった。・・・・事に、なっている。  実際には、姉(あね)さんが裏で何かやったのだろう。そうでなければ、デイトリッヒまで一緒に領都の冒険者ギルドに移動になるわけがない。デイトリッヒは、ギルド職員ではないのだ。それがいきなり領都の冒険者ギルドの職員となる事になったのだ。  そして・・・。今度、何年かぶりにリーゼ様に会える事になった。  姉(あね)さんは何年か前にリーゼ様を領都に行かせるつもりだったのだが、ロブアンが反対して流れてしまった。人族の成人が15歳なの…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第十三話 宿屋

「リーゼ様。お久しぶりです」  ミーシャが連れてきたエルフはリーゼを”様”と呼んだあとでヤスの方を見てから 「貴殿がヤス殿ですか?」 「えぇそうです。貴方は?」 「失礼致しました。アフネス様からのご依頼で、領都にいる間は私たちの宿にお泊りください」  そこで、しっかりとヤスの方を向き直して、頭を下げる。 「私は宿の店主をしています。ラナと言います」 「ヤスです。よろしくお願い致します」 「ラナおばさん!何回も言わせないで!僕の事は、リーゼでいいよ。僕・・・ハーフなのに・・・」 「いえ、姫様は姫様です。ミーシ…

続きを読む
広告

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第十二話 領都

「リーゼ様。本当だったのですね?」  ミーシャと呼ばれた女性は、アーティファクト(HONDA FIT)の前で止まる。 「ミーシャ!こっちがヤス。それで、僕を連れてきてくれた!アーティファクトだけど乗り心地も最高だよ?ミーシャも乗ってみる?」 「リーゼ様。自由なのはいいことですが・・・。その耳は・・・。はぁ姉(あね)さんの苦労が・・・」  垂れきっている耳を見て、ミーシャが呟いた。 「耳?割とはじめからリーゼはこんな感じだよな?」 「え?あっそうそう。僕の耳はこんな感じだよ。ね。ね。ミーシャ。そうだよね?」 …

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第十一話 到着?

「ヤス。道違うよ。こっちじゃないよ?」 「そうだな。でも、リーゼを助けたのはこっちの道だぞ?」 「え?そうなの?」 「あぁ間違いない。アーティファクトで通った道は覚えている」 「それじゃ、僕の間違いだね。ごめん」  ヤスは運転しながらリーゼの顔を見る。  少し驚いた。素直に謝るとは思っていなかったからだ。 「その先は?」 「え?」 「だから、しばらくはまっすぐでいいよな?」 「うん!後は、太い道を進めば間違い無いはず」 「わかった」  ヤスは少しだけアクセルを緩める。  バンプが激しくて、FITが左右に揺ら…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】幕間 憂鬱と歓喜

「ヤス殿は行ったか?」  イザークは後ろから声を賭けられたが正面を向いたままでも、声の主は解っている。 「あぁ律儀に裏門の鍵を返すために立ち寄ってくれたよ」 「そうか・・・。イザーク・・・。いや、いい。忘れてくれ」 「そうだな。できれば、帰ってきて欲しいよな」 「大丈夫。そのためのリーゼだろう?」 「そうだな」  二人は、ヤスが走り去った道を見ている。 「イザーク。ヤス殿のアーティファクトを”どう”考える?」 「ダーホス。いや、ギルド長。質問の意味がわかりません」  イザークは、ダーホスというユーラットで昔…

続きを読む
広告

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】幕間 アフネスの考察

「アンタ。もう大丈夫よ」 「リーゼ様は領都に向かったか?」 「えぇ」 「それにしても、本当にヤスをリーゼ様の伴侶に考えているのか?」 「そうね。そうなればいいと思っているけど、ヤスはどうもまだまだのようね。リーゼ様は・・・」 「そうだな。あんな”耳”をされたら認めるしか無いな」  リーゼ様は口では否定しているが、耳がリーゼ様の心を映し出している。  エルフは、感情が現れるのは耳だ。だからではないが、髪の毛で耳を隠すエルフが多い。特に、エルフの里で育った者たちは、隠す傾向にある。  しかし、リーゼ様はユーラッ…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第十話 移動開始

「ヤス!遅い!」 「わるい。わるい。それで準備はいいのか?」 「うん!早く行こう!裏門?」 「あぁ」  リーゼは本当に待ちきれないのか、ヤスの手を引っ張って裏門に急いだ。 「リーゼ。準備は本当に大丈夫なのか?」 「おばさんに確認したから大丈夫!」  リーゼの声を聞いてアフネスが宿から出てくる。 「おい!アフネス!本当に大丈夫なのか?」  アフネスがヤスを手招きしている。 「リーゼ。なんか、アフネスが俺に話があるらしい。先に行っていてくれ」 「うん!わかった!」  本当に、飛ぶようにリーゼが裏門に向かっていく…

続きを読む

2020/03/06

【第五章 ギルドの依頼】第九話 依頼

 一度奥に引っ込んだアフネスが飲み物を持って戻ってきた。 「ヤス。時間は大丈夫かい?」 「あぁ別に遅れても問題ない。ギルドからは30分くらいはかかると言われたからな」 「わかった。これでも飲んで待っていてくれ」 「いいよ。あっ!アフネス。リーゼにやった短剣は、俺がリーゼにあげた物だからな。宝飾品も同じで料金は必要ないからな!」 「はいはい。わかった、わかった。無理に渡そうとはしない。その代わり、リーゼのことを頼むからね」 「わかっている」 「・・・。それなら・・・。いい・・・」  アフネスはなにかを言い掛け…

続きを読む
広告
1 2 3 4 5 6 7