異世界の物流は俺に任せろの記事一覧

2020/04/29

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十四話 子供と名前とイチカ

「旦那様。テンです。おはようございます。朝からもうしわけございません。ディアス様とイチカ様が面会を求めてお越しです」 「うーん。わかった。工房の執務室に通しておいてくれ、着替えたらすぐに行く」 「かしこまりました」 (昨晩の話かな?まぁ子供関係だろう) — 昨晩  子供が寝ているのを確認して、ヤスとリーゼは寮に入った。  子供たちは一つの部屋でまとまって寝ていた。ベッドを使うわけでもなく、床で、部屋の奥で肩を寄せ合いながら寝ていた。  それを見たリーゼが急に怒り出した。 「(ヤス!なんなの!)」…

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2020/04/28

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十三話 ディアスと子供とリーゼと神紋

 神殿のリビングに戻ったヤスは、気持ちを落ち着かせるために、アルコール度数が強い蒸留酒を煽った。  一杯だけで止めたのは、この後、ディアスが訪問してくると思ったからだ。  喉を焼くほどの強いアルコールを感じながら、ヤスは子供たちの怯えた目を思い出していた。 「旦那様。お水です」 「ありがとう」  ファイブから水を受け取り、喉の疼きを抑える。一気に、水を流し込んで目を閉じて考える。  自分は、ただの”トラック運転手”だ。それ以上でも、それ以下でもない。異世界に来て、分不相応の力を手に入れた。力に振り回されるな…

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2020/04/27

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十二話 子供たち

「旦那様。旦那様」  ヤスは、久しぶり・・・、でも無いけど、ゆっくりと寝た。 「リビングに、水を用意しておいてくれ」  外からの呼びかけに布団の中から答える。 「かしこまりました」  メイドが、扉の前から消えるのを気配で察してから布団から出た。  服を着替えてから、リビングに向かう。 「旦那様。おはようございます。ファイブです」 「おはよう。マルス。デイトリッヒやサンドラの帰還はまだだよな?」 『はい。まだ、神殿の領域内にはおりません』 「わかった。子供たちへの対応を先に行ってしまおう。その前に、食事と報告…

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2020/04/26

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十一話 リーゼに頼み事

「マルス。それで、リーザは?」 『地下を出て、自宅に戻りつつあります』 「誰か付いているのか?」 『個体名ファーストが付いています』 「今から行けば、家で捕まえられるな」 『はい』  ヤスは、地下の執務室を出て、リーゼの家に向かった。 「旦那様。ファーストです。リーゼ様は、お部屋でお待ちです」 「ファーストか、ありがとう。マルスから連絡が入ったのか?」  ヤスはドアの前で待つファーストから、リーゼが待っていると告げられる。  考えられるのは、マルスだけなのだが、ファーストに確認した。 「はい。情報端末に連絡…

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2020/04/25

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十話 ディアスの報告

「ヤス様。子供たちは・・・」  ディアスが言葉を詰まらせる。カスパルが、慌ててディアスの表情を見るが、泣いているわけではない。どう説明していいのか、自分の考えが正しいのか、正しかった時に神殿に影響が出てしまうのではないかといろいろ考えてしまっただけなのだ。 「大丈夫だ。ディアス。教えてくれ」 「はい。子供たちは、帝国を通って来たようです」 「ん?ディアス。ちょっとおかしくないか?」 「今、”帝国を通ってきた”と言ったよな?間違いじゃないよね?」 「はい。彼らの言葉を信じるのなら間違いなく、彼らは、ラインラン…

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2020/04/24

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十九話 カスパルの報告

 動かない二人を見てヤスは戸惑っていた。部屋の前で立って待たれるとヤスが困ってしまう。それに、どこから突っ込んでいいのか解らないのだ。  ヤスも神殿から出る時に、二人を見送っているが、その時にはしていなかった腕輪をしている。それも、二人でお揃いの腕輪だ。 『マルス。お揃いの腕輪は、結婚の証なのか?』 『婚約指輪と同等と考えてください』 『わかった』  ヤスは、二人を観察した。おそろいの腕輪以外ではおかしなところはない。座っていたソファーから立ち上がって二人を招き入れる。 「いい加減に入ってこいよ」 「あっ。…

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2020/04/23

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十八話 嫌がらせ作戦実施中??

 ヤスは、ユーラットの駐車スペースに戻ってきた。メイドにカードを渡して、FITのロックを外す。  運転席に乗り込んだ。 『マスター。東門に向かう。ルートが構築されました』 『お!どんなコースだ』 『ディアナに転送しました』  カーナビに、レイアウトが表示される。上から見たコースと高低差が解るようになっている。表示が切り替えられるようになっている。 『マルス。なんで、130Rからの高速S字が有ったり、立体交差が有ったり、わざわざ登ってから下りながら90度ターンをするようなコースになっている?』 『マスターの満…

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2020/04/22

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十七話 関所の村を説明

 アフネスは、手に持っていた試算表をヤスに渡した。 「ふぅーん。アフネス。これで、ユーラットはいいのか?」 「問題はない」 「今更ながらの質問だけど、ユーラットのまとめ役は、アフネスなのか?」 「ん?確かに今更な質問だが、私ではない。村長は、しばらく空席になっているが、まとめ役はロブアンだ」 「え?」 「何かおかしいか?」 「いや、なんでも無い。・・・。・・・。・・・。そうだ!忘れていた」 「なんだ。ヤス?」「ヤス殿?」 「カイルとイチカの事は聞いているよな?」  ヤスの問いかけに二人は渋い顔をしたが頷いた…

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2020/04/21

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十六話 ユーラットに寄り道

 ヤスは、関所の村をルーサとイレブンに任せた。  マルスも反対していないので、これが正解だったと思っている。 『マスター。セカンドが、FITで向かっています』 『わかった』  ヤスがユーラット方面に歩いていると、10分程度進んだ所で、FITが見えてきた。セカンドが運転しているのだが、ヤスが見えてきた時点で速度を落として、手前で停まった。 「旦那様。セカンドです」 「ありがとう」  セカンドは運転席を降りた。ヤスと運転を変わるのだ。  運転席に乗り込んだヤスは、窓を開けてセカンドに声をかける。 「セカンドはど…

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2020/04/20

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 関所の村

 俺は、ルーサ。以前は、リップル子爵領の領都で、スラム街の顔役をしていた。  今は、しがない村の村長だ。  俺に、この村を任せたヤス様は頭のネジが数本抜けていても不思議ではない。そんな言葉では生ぬるい可能性だってある。  リップル領からの脱出は簡単だった。レッチュヴェルト(レッチュ領の領都)まで移動してギルドに顔を出したら、領主の屋敷に行けと言われた。どうやら、デイトリッヒが関係していた。俺としては、カイルたちがどうなった確認して、レッチュ領の顔役に話を通しに行く予定だったのだが崩れてしまった。  デイトリ…

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2020/04/19

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十五話 ルーサという男

「旦那様。執務室でお待ち下さい」 「ん?執務室なんて作ったのか?」 「はい。旦那様と面談を希望する者、全員を神殿の工房に連れて行くわけには行きません」  ツバキがきっぱりと言い切った。マルスもセバスも当然だと考えている。  そして、常々ヤスが気楽に人に会いすぎると思っているのだ。神殿の中なら、多少は許されるだろうが、ユーラットや領都での行動はマルスとしても、眷属代表としてセバスやツバキが許容できる範囲を越えている。  しかし、マルスもセバスもツバキもヤスの行動を縛ろうとは思っていない。ヤスが外に出るのをやめ…

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2020/04/18

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 ルーサ

 俺は、ルーサ。貴族籍はすでに抜けているので、ただのルーサだ。あの夫婦に請われてリップル領で孤児たちを集めたり、攫われそうになるのを助けたり、スラム街で死にそうになっている餓鬼を助けたりしていたらいつの間にかスラム街の顔役の一角を占めるようになっていた。  裏方仕事が好きな俺には丁度良かった。  貴族の煩わしさもない。力だけが・・・。力がすべてを支配する場所は心地よかった。すべてを失った俺にはもっともお似合いの場所だ。  あの夫婦も、孤児院を開設して餓鬼の面倒を見ている。  どうしても、孤児院に馴染めない餓…

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2020/04/17

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十四話 ルーサがやってきた!

 ヤスは驚いていた。  カイルとイチカだけではなく、子供たちの身体能力が異様な高さを示していた。 「ヤス兄ちゃん」「ヤスお兄様」  カイルとイチカは、すでに自転車を乗りこなして、スクーターの運転も問題ではなかった。ブレーキの概念もしっかりと把握出来ている。カイルは、”勘”で操作するので 最初に運転ができるようになる。しかし、運転がうまいのはイチカだ。イチカは、ブレーキでカートが止まる理由から、構造が違う自転車ではなぜ構造が違うのか?スクーターの動かし方について、ヤスを質問攻めにした。  地頭がいいのだろう。…

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2020/04/16

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十三話 イチカとカイルの仕事

 ヤスは、リビングを出て地下にあるカート場に向かった。  マルスからのカイルとイチカがカート場に居ると教えられたからだ。 「ヤス兄ちゃん」 「お!カイルだけなのか?イチカは?」 「イチカは、リーゼ姉ちゃんの手伝いをしている」 「手伝い?」 「うん。カートの練習相手が欲しいって連れて行かれた」 「カイルは?」 「案内の仕事があるから、残った」  カイルは案内と言ったのだが、カート場に来るのは限られている。  リーゼ。ディアス。ドーリス。サンドラ。ミーシャ。デイトリッヒを除くと、数名が降りられるようになっている…

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2020/04/15

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十二話 嫌がらせ-ヤスの仕事-

『ヤスさん。王都に向かいます』 「サンドラ。頼むな。セバスも無理するなよ」 『旦那様。ありがとうございます。”あんぜんうんてん”で行ってきます』  セバスたちとの通信が切れた。  リビングに設置しているディスプレイには神殿が管理している領域が表示される。 『マスター。関所と村を作ります』 「そうだったな。候補地はあるか?」 『関所は二箇所、一つの村で管理したく思います』 「そうだな。関所の一つは現存している物を拡張すればいいよな?」  ヤスは、ユーラットに向かう街道にも関所が作られると思っていたのだが、現存…

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2020/04/14

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十一話 嫌がらせ開始

 カスパル。ディアス。サンドラ。デイトリッヒ組が出発して、一日半後にセバスが出発した。  セバスは、朝方に領都に到着した。  ヤスは、神殿のリビングでマルスから報告を受けていた。  カスパルも心配では有ったが同乗者が居るので無理はしないだろうと思っていた。セバスは、夜の長距離は初めてで、本人は大丈夫だと言っていたが心配になってしまったのだ。  マルスは、地図を表示してカスパルとセバスが運転する車両の現在位置を表示していた。  マルスにしても、ヤス以外の長距離の運転で、神殿の領域外に出ているので、データの収集…

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2020/04/13

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十話 嫌がらせ作戦

 壺の準備に手間取ったが、ドワーフたちの活躍で会議から3日後には、カスパルが運転するアーティファクトで、ディアスとサンドラとデイトリッヒが領都に迎える準備が整った。  塩100キロと砂糖100キロと胡椒20キロは、強奪される物だ。  領都で馬車に載せ替えて、王都まで運ばれる。壺には、レッチュ辺境伯の証が刻印されている。  貴族から王族や貴族に貢物として送られる場合には必ず刻印される。中身に印が付けられない場合には、入れ物に刻印される。  強盗や野党に襲われて強奪された物品で、貴族の印が刻印されている物品の場…

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2020/04/12

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第九話 嫌がらせの準備

 ヤスが考えた”嫌がらせ”の準備は、神殿の都(テンプルシュテット)をあげて行われている。  ヤスが示した”嫌がらせ”という指標だが、神殿の都(テンプルシュテット)では主からの命令に等しい。会議が終わって、神殿に帰ると、マルスがすでに輸送に必要な物をリストアップしていた。セバスが行っている業務の引き継ぎや作らなければならない物品もあるために、開始はすぐには出来ない。  情報共有や協力を求める連絡をしておく必要もあるので、時間がある程度は必要になってくる。  サンドラは、即座にギルドから辺境伯に連絡をした。サン…

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2020/04/11

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第八話 嫌がらせの相談(3)

「頼む。それで・・・。王都に、塩と砂糖と胡椒が盗まれてから、王都に運ぶ役目は俺がするしかないかな?」  ヤスが周りをみながら宣言する。  長距離の運転だけではなく、街から出て運転できるのは、カスパルとツバキとセバスだけなのだ。ヤスが運ぶのが現実的だろう。 「旦那様。僭越ながら、今回の運搬は、私が担当いたします」 「セバスが?」 「はい。いくつか理由がありますが、旦那様は神殿に残られまして、皆に指示を出していただきたい。もう一つは、なるべく旦那様が貴族や王家との付き合いをしないようにしたほうがよろしいかと思い…

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2020/04/10

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第七話 嫌がらせの相談(2)

「さて、サンドラ。この塩と砂糖を、俺が売ると言ったらどうなる?」 「え?これを・・・。ですか?」 「そうだな」 「量は?」 「さすがに無制限とは言えないけど、かなりの量が用意できる」 「それは、2-30キロですか?」 「ハハハ」  ヤスは、サンドラの言い方が面白かった。  討伐ポイントで交換できるのは、キロ単位だ。20キロや30キロなら簡単に交換できる。ポイントに余裕がある今なら簡単な量だ。 「そっそうですよね」  サンドラは、ヤスが笑ったのは、2-30キロも用意できるわけがないと思ったのだ。  1-2キロ…

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2020/04/09

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第六話 嫌がらせの相談(1)

「ヤス様」 「デイトリッヒ。様は必要ない。それで?」 「そうでした。ヤスさん。”それで”とは?」 「説明しろよ?デイトリッヒが神殿と関係を無くしたいと思った理由は、”それ”なのだろう?」 「そうです」  デイトリッヒは、3つの山を見る。  ヤスを見てから諦めたように説明を始める。  最後の山は、カイトたちに宛てた手紙だったために、デイトリッヒは簡単に説明だけして、手紙の束をカイルに渡した。  卒院していく子供たちに渡していた物で、カイルたちの卒院に向けて書かれていたものだった。  話を聞いて、カイルとイチカ…

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2020/04/08

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第五話 ヤスと愉快な仲間たち?

 新たにギルドに到着した面々は、セバスが案内して会議室にやってきた。  先にタブレットの説明を始めようか、ヤスが迷っていると、マルスから念話が入った。 『個体名デイトリッヒがギルドに到着します』 「ミーシャ。デイトリッヒがギルドに来る頃じゃないのか?見てきてもらえるか?」  ヤスは、ミーシャに話をデイトリッヒの出迎えを頼む。  カイルとイチカがデイトリッヒと聞いて、ヤスの顔を見る。 「わかりました。連れてきてもいいのですよね?」 「頼む。会議室に入る許可は出してあるから、直接入ってもらって欲しい」 「わかり…

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2020/04/07

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四話 主要メンバー集結(除くリーゼ)

 ヤスは神殿に戻って食事(昼飯)を摂ってからから、ギルドに戻った。  ギルドでは、ミーシャがアーティファクトの登録を行っていた。 「ヤスさん。アーティファクトの登録は、全員が帰ってきてから行います。鍵の登録で問題がないと本部から通知が来ました」 「頼むな。それで、カイルとイチカは、まだディアスと見学か?」 「だと思います。呼びますか?」 「いや、いいよ。デイトリッヒも帰ってきていないから、急がなくてもいいだろう。奥の部屋を使っていいよな?」 「はい。ギルドマスターの部屋を使ってもいいですよ?」 「ドーリスの…

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2020/04/06

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 社会科見学(その3)

「カイル君。この部屋は、これから君が生活する部屋で間違っていないよ」 「ディアス姉ちゃん。俺1人で?孤児院に居た時には、この部屋よりも狭い場所で、全員が寝ていたぞ!?」  カイル君の言葉に弟たちが首を縦にふる。 「わかっています。でも、君たちはこれから沢山勉強して、ヤス様のために働いてもらいます。そのためには、広い部屋が必要です。カイル君は冒険者になって魔物を倒して強くなりたいのですよね?」 「・・・。うん」 「それなら、武器や防具を置いておく場所が必要です。それに、素材を集めて、鍛冶屋に武器や防具を作って…

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2020/04/05

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 社会科見学(その2)

 私は、ディアス。このくだりも何回か行っていると飽きてきます。  今、私はヤス様が保護を約束された子供たちと一緒にアーティファクトに乗っています。東門から西門に向かっています。 「ディアスお姉ちゃん。今度はどこに行くのですか?」  ”お姉ちゃん”いい響きです。カイル君はやんちゃな弟という感じで、イチカちゃんは好奇心が旺盛な妹という感じです。 「今度は、学校に行きます。イチカちゃんたちがこれから神殿の都(テンプルシュテット)で生活するのに必要な知識を学べる場所です」 「え?学べる?何か、教えてくれるのですか?…

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2020/04/04

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 社会科見学(その1)

 私は、ディアス・アラニス。もうすでに、アラニスの姓は捨てたから、今はただの”ディアス”だ。  アデヴィト帝国で生まれたのだが、帝国を恨んでいる。家族を殺されたからだ。そして、私も殺されかけた。カスパルに救われて、私は神殿の都(テンプルシュテット)に住んでいる。  神殿の主であるヤス様にお願いされて、子供たちに神殿を案内している。子供たちは、来たばかりで神殿の施設(地下)に入る許可は降りていないが、神殿の都(テンプルシュテット)の施設なら案内できる。  まずは、魔の森方面に向かう。子供の代表は、カイルとイチ…

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2020/04/03

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三話 ヤスの勘違い

「ヤスさん。これは、ですね・・・。そう、そう、子供たちにヤスさんの偉大さを伝えていたのです!はい。多少の誇張は許されるべきです!」  ドーリスが一気に捲し立てるが、ヤスの笑顔の前では無意味に思えてくる。  サンドラも何か言おうとしたが、口を開いてから音にするのは止めた。 「ミーシャ!」 「はい?」  後ろからミーシャの声が聞こえる。 「ミーシャ。悪いけど、エイトと一緒に子供たちに神殿の案内を頼む。そう言えばリーゼは?」 「リーゼ様は、地下です」 「カート場か・・・」 「・・・。はい」 「しょうがないな。まだ…

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2020/04/02

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二話 ドーリスとツバキと子供たち

「旦那様。旦那様。ツバキ様とドーリス様がお戻りになりました」  ヤスはまだしっかりと目覚めていない。  エイトが持ってきた水を飲んで、頭がと身体が起き出してくるのを感じている。 「子供たちは?」 「幼体は、孤児院に預ける前にギルドで話を聞くそうです」 「そうか、審査は問題なかったのだな」 「はい。幼体の代表が旦那様に面会を求めております」 「わかった。セバスに言って時間を調整してくれ」 「かしこまりました」 「あっそれから、シャワーを浴びたらリビングに行くから朝食の準備を頼む」 「はい」  ヤスがシャワーを…

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2020/04/01

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第一話 ヤスの帰還

 ヤスはセミトレーラを地下に停めた。 「セバス。コンテナの開け方はわかるよな?」 「はい。旦那様」 「降ろすのも大丈夫か?」 「はい。大丈夫です。セミトレーラの切り離しもマルス様から覚えるように言われております」 「そうか、トラクターとトレーラを切り離して、工房に移動しておいてくれ。コンテナは降ろして、物資は皆に提供してくれ、方法は・・・。ドーリスは居ないか?サンドラとミーシャとセバスでやってくれ」  工房に持っていくのは改造ではなく、メンテナンスのためだ。本格的な移動を行ったので、トラクターにダメージが出…

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2020/03/31

【第七章 王都ヴァイゼ】幕間 ドーリスと子どもたち

 私はドーリス。生まれは・・・。わからない。気がついた時には王都のスラムで生活していた。5歳になるときに、孤児院に入った。そこで、お母さんが出来た。王都に行った時に会いたかったけど都合が合わなかった。  王都までヤスさんを案内した。王都では各ギルドを回って、神殿に新たにできるギルドが承認された。すでに根回しが終わっていたがやはり緊張した。現状の神殿の都(テンプルシュテット)の様子が伝わっていたら間違いなく各ギルドは別々に作ると言い出すに違いないからだ。幸いなことに、ヤスさんのアーティファクトの速度が異常だっ…

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