ちょっとだけ切ない短編集の記事一覧
2020/03/29
【紙とペンと復讐】復讐を誓った男の行動
そこは、寂しい港町。始発を待つ者は誰も居ない。 誰も居ないと解っていながら、1人の男性は毎日ホームに立つ。 ホームで始発電車が到着するのを待っている。 男が持つメモ用紙には、電車の時刻表と到着時間がメモされている。 ホームに電車が滑り込んでくるのを待っている。 数分後に、電車がホームに滑り込んできた。 男は、ホームに吊り下げられている時計を見る。毎朝、男が調整している時計だ。 電車が止まって扉が開く。 寂れた港町の駅では降りる客も少ない。 始発となれば、0人が規定の数字だ。 男は、ホー…
続きを読む2020/03/28
【隣の料理人】食事のスパイスは勘違い?
その女性の住む部屋は、古いアパートだだ。 (はぁ今日も疲れた) 誰も待っていない部屋に女性が入っていく。手に持っているのは、近くにある弁当屋さんの袋だ。 部屋に入って、仕事場にしていくポニーテールを解いて、髪の毛を下ろす。 (どんどん。好きだけど・・・今日も、隣の部屋からはいい匂いがしている) アパートと言っても、女性の一人暮らしだ。セキュリティには気を使った。 部屋を借りる時に、隣に音が聞こえないようにとか、周りにどんな人が住んでいるのかを確認していた。 しかし、匂いまでは気にしていなかったの…
続きを読む2020/03/25
【二番目の愛情】戸惑いの告白
俺には長男だけど二番目の子供だ。 当然の事だと思う。 俺は少しだけ複雑な子供だ。 俺の父はバツ1なのだ。 父の再婚相手が、俺の産みの母で、産みの母の最初の配偶者が本当の父なのだ。 ようするに、俺が今『父』『母』と呼んでいる両親とは血が繋がっていない。 本当の両親が、どうなったのかは知らない・・・ことになっている。 一度酔った父が話してくれた。 俺の本当の父は、父の友人だった人物ですでに死去している。産みの母も、父と再婚して2年後に死去した。 自殺だと言っていた。父は、本当の母の死を自分た…
続きを読む2020/03/25
【白いフクロウ】御使い
そこは終末医療専門の病院だ。 誰も訪ねてくる事もなく、ただ死を待つだけの人たちが、最後の時を心安らか過ごす場所だ。冥界に旅立つその時まで、サポートを行う病院なのだ。 1人の女性が運び込まれた。 身寄りのない女性。女性というには幼い。少女と言ってもいい年齢だ。 「先生」 「もって1ヶ月と言われている」 「でも、なんでここに?」 看護師が不思議に思うのも当然だ。 ここは救いのない病院。少女が最後を迎えるのに相応しいとは思えない。 「彼女の希望だ」 「え?」 「彼女は、とある事件の被害者の家族で、唯一…
続きを読む2020/03/22
【雨の日】海に浮かぶ傘
僕は、雨が嫌いだ。 この表現は、間違っていないが、合っているわけではない。 正確に言うのなら、雨が降っているときに、差して一人で歩くのが嫌いだ。傘を差さないで移動することは、別に嫌いでもない。むしろ好きだと言える。雨に濡れながら歩くことで、思い出も、過去も、積み重なった想いも、全て流してくれる・・・そんな感じがする。 雨の日は、僕の心の中にある、蓋さえも溶かしてしまう。 思い出したくもない。でも、忘れたくない。そんな、蓋をしてしまい込んだ思い出を・・・。 そう、あれは、僕が初めて人を好きになった…
続きを読む2020/03/22
【近くて遠い50cm】最後の一歩
僕が彼女を意識し始めたのは、何時だっただろうか? 彼女が、僕に向かって 「ちょっと家まで遠いけど送ってくれる?」 送った時に話した事がきっかけだったのだろうか? 彼女は、1つ年下の19歳になる大学生。話を聞いて初めて知ったのだが、僕と同じ大学の2つ下の学年になる。 僕と彼女の出会いは、バイト先が同じになったことがきっかけになる。 バイト先も同じだし、同じ大学に籍を置いている、話そうと思えば話せる関係にあるし、メールアドレス・電話番号も知っている。 同じ時間を共有する機会は多く存在している。 …
続きを読む2020/03/22
【嘘と裏切り】彼と彼女の選択
彼は、僕にこんな感じで話を切り出した。 「彼女は僕を好きでいてくれるし、僕も彼女を愛している」 彼には家庭がある。 その事実を、彼女には告げているという。裏切りが成立してからの恋。 これほど残酷な結末を二人以外に強いる関係ははない。僕は、不倫を否定するつもりはない。僕には出来ない、ただそれだけだ。 僕の持っている”物”で、約束できることは、 ”裏切らないこと” 話すことに”嘘”を、入れないこと。聞かれていない事や聞かれたくないことは、そう答える。それが唯一、僕が、恋人や、好きな人たちに言ってい…
続きを読む2020/03/20
【感じた重さ】失った物
確かに、僕は、彼女の・・・君の重さを感じていた。ほんの数秒前に、君は僕の腕の中に居た。 彼女は僕の前に現れた。僕は、一目見て君を愛する道を選んだ。そして、彼女もそれを受け入れてくれた。僕の心には、彼女がいて、彼女が側にいる日常が当然の事の様に思っていた。 僕は、彼女の夢を聞いて、彼女は僕の夢を聞いてくれた。そう、二人を別つ事が来ることを考えていなかった。 僕は、彼女と初めて身体を合せた公園に来ている。あの時は、確かに彼女を身体で感じる事が出来た。 そして、彼女も僕の重みを感じてくれていた。二人は、…
続きを読む2020/03/20
【消された証】過去の清算
俺は、消防士をしている。 よくある話だが、この職業をしていると、”バカ”に遭遇する事が多い。 今日も、高校生の”ガキ”が、公園で花火をしていると連絡が入った。”警察に言えよ”とも思うが、公園の遊具が燃えていると言われたら、緊急出動しなければならない。 俺は、大木の様にはなれないだろう。 やつは、中学生の時に、学校で自殺騒ぎがあり、それが後に事故だと言われて、最終的には、いじめの延長で殺されたと知った。その殺人がきっかけで、同窓会で数名が殺されるという事件があった。やつは、それがきっかけで、今でも収…
続きを読む2020/03/20
【消えない絆】それぞれの思い
僕には、彼女が居る。他の人には見えないが、僕には彼女を感じる事が出来るし、彼女を見ることができる。 彼女とのであいは、かなり前にさかのぼらなければならない。僕と彼女は、世間で言う”幼なじみ”の関係にある。僕が、彼女を好きだって事に気がついて、彼女が受け入れてくれたのは、つい最近の事で、彼女が肉体を失った日になる。 彼女が好きなアニメの劇場版のチケットを買って、日曜日に映画に誘った。彼女は友達と行く予定だったようだが、僕の誘いを受けてくれた。 そして、映画を見る前に、待ちの駅前の喫茶件で僕の気持ちを打…
続きを読む2020/03/19
【笑えない話】仕事を頑張る人
あぁ今日も終電を逃してしまった。 しょうがない。いつものように、プロジェクトの進行状況を確認して、問題がありそうなところをレビューしておこうかな。 僕が務める会社は、ソフトウェアの開発を行っている。小さな地方都市の、小さな小さな会社ですが、幸いな事に仕事が切れる事がない。人手不足とまでは言わないけど、待機工数が発生しないくらいには仕事が充実している。こんな事を言うと自慢に聞こえかもしれないが、僕が開発した”開発ライブラリ”が売れている。 音声を使って操作コマンド入力を可能にする開発ライブラリだ。各種…
続きを読む2020/03/19
【見えない手】港町の喧騒
僕の田舎は、東名高速が通って居ることと、銘産となる海産物があるくらいしか取り柄がない。田舎町だ。 その中でも、港に近い地区には、昔からの風習が残されている。中学校卒業を間近に控えた、十分冬と言われる季節に行われる行事だ。 春漁の豊漁と、新しく船乗りになる、男児が行う行事だ。 僕は、漁師にはならない。高校に進学するし、できれば、大学にも行きたい。伝統行事と言われるが、はっきりって迷惑この上ない。しかし、悲しい村社会・・・漁師ではない僕は、参加を拒否する事はできるはずだったが、円味(まるみ)が参加する。…
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