【第三章 魔王と魔王】第十四話 確定?

 

ふぅ
神聖国と魔王カミドネの戦闘は、勝てそうだな。
初手が決まったのが大きかった。そこからは、消化試合のような感じだ。

セバスが、助力に向かっている。
一人で観戦している。寂しくはないが・・・。何か、物足りない。

アンデッドで、神官を倒すのは、いい試みだ。
今度、アンデッドだけのフロアを作って見るか?

でも、俺たちの居城まで攻め込んでくる連中が居ないから、仲間内で試すことになりそうだ。

それでは面白くない。
魔王カミドネの所は、今後、彼女に任せるとして、神聖国に接している場所に、アンデッドだけのギミックハウスを作ろうかな?それとも、地形を利用した罠満載でアンデッドだけの防衛線を構築した方が、神聖国にダメージを与えられるか?

神聖国の法王?皇王?は、ダンジョンマスターだろう。
神官が使っている服装が、歴史書で見た宗教騎士たちが着ているような意匠が見える。

魔王だと仮定すると、いろいろ見えて来る。
神聖国の中央にある城がダンジョンになっているのだろう。獣人たちが書いた、城のデザインが、スペインにある地球で有名な建物に似ている。

ダンジョンマスターなら、王を倒せば神聖国は終わる。
前の帝国のような戦い方をする神聖国は気分が悪い。

暗殺を仕掛けてみるか?
ダンジョンなら、防御は万全だろう。情報を収集して、狙えそうなら狙ってみるか?

魔王カミドネたちの戦闘は、もう終わりそうだ。

『魔王様。掃討作戦に入ります』

セバスからの連絡が来た。
見ているのは知っているのに、律儀な奴だ。

『わかった。一人も逃がすな。捕えた者は、魔王カミドネのダンジョンに沈めろ』

『はっ物資は、どういたしましょうか?』

『食料や消耗品は、解放した獣人たちに渡してしまえ、武器やアイテムは、カプレカ島で解析を頼む』

『かしこまりました』

『詳しい事は、戻ってから聞く』

『はっ!』

セバスなら全力で戻ってくるだろう。

まずは、魔王カミドネから事情を聞いて、神聖国を挑発するために抗議文でも出そうか?
攻め込まれても、あの程度の戦力なら怖くない。

ギルドからの情報で、怖いのは、王国と皇国か?
神聖国は、ダンジョンマスターが主だろう。魔物の召喚は行っていないようだが、近侍なんかはダンジョンで召喚したのかもしれない。連合国は、ギルドからの報告から、放置でもよさそうだ。
内部分裂が始まっている。崩壊までのカウントダウンが始まっていると思っていいだろう。
残るのは、エルプレ国だろうけど、単独国家で考えれば、神聖国よりも余裕で対応ができる。エルプレは、後ろにダンジョンマスターが居るのは確実だ。エルプレにだけスキルのスクロールが流れている(らしい)。国王は、代替わりしているらしいので、ダンジョンマスターが国を取っているのでは無いだろう。協力関係にあると考えるのが妥当だ。

俺たちのダンジョンも国の様にした方がいいか、セバスたちに聞いたことがある。
俺の好きにして良いと言われた。ミアやヒアたちも同じ意見の様だ。

だからというわけではないが、このダンジョンでは、俺が全面に出ての、統治は考えない事にした。

村を作るけど、責任者を設置するだけに留めて、後は好きにさせている。
俺には寿命がないようだし、セバスたちにも寿命はない。

魔王ルブランとして、セバスが統治に近い事をしている。

アラームが鳴った。
モニターを切り替えると、セバスが戻ってきたようだ。カプレカ島に到着した。

ギルドに戦利品の一部を渡して、解析を行う為に、モミジとナツメとカエデにアイテムを渡す。

そのあとで、この部屋まで来るのだろうから、1ー2時間くらいはかかりそうだな。

シャワーでも浴びておこう。
今日は、セバスだけだから、この部屋に通せばいいか?人数が多いと立って報告しようとするから、見ているこっちが疲れてしまう。

シャワーで汗を流して、涼んでいたら、セバスが訪ねてきた。

「魔王様」

「セバスだけか?」

「いえ、ミアが一緒です」

ミア?
今回の作戦には絡んでいなかったよな?

まぁいいか・・・。

「入ってきてくれ」

二人から嬉しそうな返事が聞こえる。

「座ってくれ、ルブラン。報告を」

セバスが俺の前に座った。
ミアは、簡易キッチンで飲み物の準備を始める。セバスは、飲み物の準備をさせるために、ミアを連れてきたのか?

「はい。まずは・・・」

魔王カミドネとの話から、説明を始める。
状況は、何か発生する度に聞いていて把握しているが、時系列で発生した事をまとめられると、状況がより鮮明に解る。

「そうか、獣人側にも被害者が出たのか?」

「はい。もうしわけありません」

「聞いた限りでは、最善の手法だ、それでも助けられなかったのは、ルブランや魔王カミドネが悪いわけじゃない。神聖国の奴らが卑劣なだけだ」

「はい。ありがとうございます」

神聖国の神官たちが、アンデッドを倒せなくて、逃げ出すときに、獣人族を盾にするくらいは考えていたが、殺してから逃げるとは思わなかった。可能性の一つとして考えていたのだが、相手がアンデッドだ。獣人族を殺せば、アンデッドになって自分たちを襲ってくると考えて、躊躇するかと思った。神聖国の神官どもは逃げる時に、手元に置いた獣人たちを、手足を切り落として、首を刎ねてから、スキルを当てて逃げた。アンデッドにならないようにしたのだ。

「他には?」

「確保した獣人たちは、一部はカプレカ島に移動しました。残りは魔王カミドネに預けました」

「一部?」

「はい。それは、ミアから報告があります」

ミアが飲み物を作って持ってきた。
俺が普段用意している珈琲や紅茶ではない。

「これは?」

「はい。魔王様。ベアたちの村で作られていた蜂蜜酒です」

「ほぉ」

ミードとか言われているよな?
それを、冷やした物か?

これを持ってきたのは、俺に飲ませるのが目的ではなく、ベアたちに関わる事だな。

「これを作った者たちが、神聖国で奴隷になっていたのか?」

「はい。他にも、ロアが元居た集落の者も奴隷に落されていました」

ミアの説明は簡潔で解りやすい。

「カプレカ島までなら許可しよう。そのあとは、モミジと四天王とミアたちに任せる」

カプレカ島の役割としては、獣人の保護が上げられる。
ダンジョンの領域だし、何かおかしな動きをされても問題はない。スパイが潜り込む可能性は低いが、いきなり内側に入れるつもりはない。既に、内側では、独自のコミュニケーションが構築されてしまっている。寿命が伸びた者や、寿命が無くなった者でないと、内側では生活が難しい。

ミアたちは、セバスの見立てでは、寿命は無くなっているが、活動の最適化が行えるようになるまで成長するのではないかと思われている。

「ありがとうございます」

「この蜂蜜酒は、カプレカ島でも作るのか?」

「ご許可が頂ければ・・・」

「蜂が必要だろう?」

「はい」

「それなら、魔王カミドネに伝えて、近くの森を使え」

「よろしいのですか?」

「あぁ集落を作るのなら、ルブラン。サポートしてやれ」

「かしこまりました」

「森に住んだ方が楽な種族の為の集落を作ってもいいな。森の魔物をアンデッドだけにしておけば、襲われないようにはできるだろう?」

セバスもミアも、了承してくれた。
あとは、場所の選定だが、これは魔王カミドネと3人と獣人族のトップを交えて行ってもらう。

魔王カミドネの領域も広げた。今回の戦闘で、神聖国が保持していた場所まで確保できるようになった。相手に知らせる行為だが、こちらは”魔王”を名乗っている。大きな問題はない。敵認定が終わっている。自然な防壁の先に、本当の防壁を作ろう。魔王カミドネに任せるよりも、俺が作ったほうが早そうだ。
魔王カミドネの領域が広くなった関係で、連合国を牽制するために作成したギミックハウスまで城壁をほぼ直線で繋げる事ができる。崩されても問題にはならないが、城壁と合わせて、塔も立てておこう。

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