【第二十三章 旅行】第二百三十七話

 

「ルート!どういうことだ!」

「襲撃です」

「だから、誰が!?どこからだ!俺たちが出る必要があるのか?」

「大丈夫です。すでに、冒険者のグループと警備隊が向かっています」

「魔物が主体なのか?」

「はい」

ルートは現場に向かった。
神殿の近くの森から、魔物が溢れたということか?
それとも、何者かが後ろに居るのか?

中央大陸か、アトフィア教か、サラトガやアンクラムやミュルダで権益を持っていた連中。俺を恨む者は多い。残党が結集してくれていれば、いいのだが、散発的に襲撃されるのが面倒だ。防衛費は必要なのだろうが、無駄に思えてしまう。もっと違うことに資金を投入したい。

ドアがノックされる。
ルートがもう戻ってきたのか?

「誰だ」

「ツクモ様。シュナイダーです」

「入れ」

「はっ」

「どうした?」

「ツクモ様。早速ですが、神殿が襲撃された件でご報告があります」

「どうして、お前が?中央大陸に居たのだろう?」

「はい。ツクモ様の結婚の儀に出席する為に戻ってきました。中央大陸で調べた話です」

「どうした?何を知っている」

「はい。噂ですが、ゼーウの生き残りが、ツクモ様が持っている”レベル9の完全回復”を狙っています」

「完全回復?」

ふーん。
クリスに念話をつなげる。

『クリス。すぐに、ルートに連絡してくれ、カトリナを連れて、すぐに執務室に来るように言ってくれ』

『え・・。あっはい』

「ツクモ様?」

「あぁ悪い。大丈夫だ。レベル9の完全回復なら、俺しか知らない所に隠して保護しているから大丈夫だ」

「そうですか・・・。それなら安心ですね」

「教えてくれて助かった。賊・・・。いや、屑たちの狙いがわからなかったからな」

「お役に立てて何よりです。それで、ツクモ様。他のスキルカードと一緒に保護されているのですか?普段は、御身がお持ちだと伺ったのですか?」

「シュナイダー。どこでそれを聞いた?」

シュナイダーを睨む。
大商人になっても、自分で行商に歩いている。元老院でおとなしくしているような人物ではない。俺が睨んだくらいではひるまない。

「・・・」

「どうした?言えないのか?」

『カイ。ウミ。ライを連れて、俺の影に移動しろ』

『はい』

『俺の合図で、部屋に居る男を制圧しろ』

『かしこまりました』『わかった』『はーい』

『殺すなよ』

カイとウミとライから了承が返された。

『リーリア!』

『はい。旦那様』

『モデストを執務室に向かわせろ』

『はっ』

準備が整うまで、もう少しだけ時間が必要だな。
シロとの結婚式をあげるだけで、こんなに襲撃されるとは思わなかった。いろいろ有りすぎて、1年位は時間が経過している気がしてしまう。

「シュナイダー。そう言えば、カリナは元気か?」

「え・・。あっ元気です。今日の騒ぎがなければ、明日の式に参加する予定になっています」

「そうか、それは嬉しいな。カリナが開発した食べ物は美味しい物が多いからな。俺も楽しみにしているよ」

「ありがとうございます。我が娘ながら、よく出来た娘です」

「そうだな」

ドアがノックされる。

「カズト様」

ルートも何か解ったのだろう。もしかしたら、念話で聞いていたクリスから指示が出たのかもしれない。ドアを開けないで話をしてくる。

「ルートか?鎮圧は出来たのか?」

「首謀者が見つかりませんでしたが、魔物は始末しました。一緒に居た賊も全員の捕縛に成功しました」

「そうか・・・。首謀者は、大丈夫だ」

「え?」

「そうだろう?シュナイダー?」

ドアを開けて、ルートとカトリナと本物のシュナイダーが入ってくる。

「カイ。ウミ。ライ」

偽物のシュナイダーが逃げようとした瞬間に影から飛び出したカイとウミが腕を抑えて、ライは喉元に巻き付き口と鼻を塞ぐ。

「カトリナ。シュナイダー。夜に悪かったな」

「いえ、襲撃で起こされたので、大丈夫ですが、説明をしてくれるのですよね?」

「もちろんだ。俺の予想が外れていなければ・・・」

ちょうどいいタイミングでやってきた。

「ツクモ様。何か御用ですか?」

「モデスト。その男は知っているか?」

「え?」

カイとウミに手首を抑えられて、ライに口と鼻を塞がれて、シュナイダーだった顔が元に戻っている。
モデストは、首を持ち上げるようにして男を見る。

「ツクモ様。同族が・・・」

「そうか、やはりな。それで?」

「エクトル。お前・・・」

「うぅぅぅ」

「ライ。話せるようにしてやれ、首を抑えておけばいいだろう」

ライが、塞いでいた口を開放した。
罵詈雑言の嵐だ。俺ではなく、モデストたちに向けての言葉のようだ。

モデストが相手をするようなので、俺はシュナイダーとカトリナに話を聞くことにする。

「シュナイダー。知っている顔か?」

エクトルという男を、シュナイダーも見るが首を横にふる。

「そうか、別人になりすましていたかもしれないな」

レベル5の隷属化のスキルカードを取り出す。
モデストに投げる。

「モデスト、お前に選ぶ権利をやろう。隷属化するか、この場で殺せ」

「はっ。隷属して情報を引き出します」

「わかった。連れて行け」

「ありがとうございます」

ルートが用意していた手枷と口枷を付けて連れ出す。

「どうした。カトリナ?」

「カズト様。どうして、偽物だと気がついたのですか?」

「ん?あぁ。シュナイダーは、この部屋を知らない。この執務室は、式の準備をする為に使っている部屋で、ルートとモデストとシロとフラビアたちと俺の眷属しか知らない。カトリナも知らなかったよな?」

「はい。ルート殿につれてこられなければ、カズト様の執務室と言われたら、神殿区か屋敷に行きます」

「そういうことだ。最初から、シュナイダーが一人で来たし、誰かから教えられたと言わなかったから、偽物だと考えた」

「そこまでは、調べられなかったのか?」

シュナイダーの言葉だったが、調べられないことは無いだろう。シュナイダーに似せられるのなら他の・・・。それこそ、モデストになって、忍び込めばいい。方法は、他にも有った。それを行わないで短絡的に俺を狙った。

「それか、時間が無くなっていたのか・・・」

「ルート。時間?」

「はい。念話を聞いていたクリスからの話では、”完全回復”を求めていたのですよね?」

「そういうことか・・・。だが、方法を間違えたな」

「はい。正面から、カズト・ツクモに面談を申し込んで、正面から理由を言って、対価を差し出せばよかったのです」

「そうだな。”完全回復”は、俺には価値が無いからな」

「そういう人です。あなたは・・・」

「ルート。魔物たちは?」

「はい。全て駆逐しました。建物への被害は軽微です。ちょうど良かったので、シュナイダー殿とカトリナ殿に修繕の依頼をだしました」

「わかった。ふたりとも頼むな。カトリナには、屋台の料理まで頼んで居るが大丈夫か?」

「私は大丈夫です」「ツクモ様。修繕は、儂が担当します」

「頼む」

シュナイダーとカトリナと、神殿の破損した箇所を、ルートが説明をした。
見てみないとわからないという話だが、破損の具合から明日1日で修復は可能だろうという見積もりが出来た。駄目な場合でも、式は強行すると3人には話をした。神殿の破損は外側だけなので、間に合いそうになければ、カトリナが行う屋台を破損した場所を隠すように営業させることで落ち着いた。

二人が部屋から出ていくのを見送ってから、ルートは俺の正面に来て頭を下げる。

「もうしわけありません」

「原因は?」

「現在、調査中ですが、魔道具が使われたようです」

「うーん。魔核を使った道具か・・・。可能なのか?」

「わかりません。魔物が突然、湧いたという証言があります」

「なぁルート。短時間で制圧出来た所を見ると、それほど強い魔物は居なかったのだな?」

「はい。殆どが、ゴブリンです。強くても、オーク程度でした。数は多かったのですが、苦戦するようなことはなかったです」

「・・・。ルート。ゴブリンが急に湧くようなことはない。”ダンジョン・コア”でもないかぎり・・・」

「え?」

「もう一つの可能性は、モデストの話を聞いてからだな。隷属化していたら、具体的な方法も解るだろう。できれば、俺の予想が外れてくれるいいの・・・」

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