【第五章 スライムとダンジョン】第三話 スライムと洞窟?
一緒に探索しているのは、熊から進化したよくわからない種族のディックです。腕が4本と第三の目を持つディックが、禍々しい洞窟を発見しました。
以前から、考察されていました。
『”動物”だけが魔物化するのか?自然物が”魔物化”しないのか?』
実際に私の家の周りでは、木が魔物化しています。家族です。
話すことは発声器官がないので無理なのですが、意思があるのは独特のコミュニケーションが可能であることから正しいと思っています。気持ちも伝わってきます。気持ちはすごく便利で、植え替えや水やりのタイミングがわかります。念話のスキルを込めた魔石を与えれば、念話での会話が出来るようになりました。
全部の木に魔石を与えていないが、意思疎通ができるのは確認しています。ギルドに報告もしました。報告の時に驚かれましたが、ユグドちゃんの例があります。聖樹のこともあるので、不思議ではないと思っていました。
そして、ワイズマンからは世界各地で、魔物化したと思われる動物が見つかっていることも伝えられました。
私だけが動物を魔物化できるのではなく、自然界でもなんらかの方法で、動物が魔物化することが確認されている。頻度としては、徐々に増えているという印象らしいです。よくわかりませんが、大変なことだとワイズマンは考えているようです。
動物の魔物化と木や植物が魔物化することから、ワイズマンが導き出した結論が、次に発生するのは無機物の魔物化か機械の魔物化だと告げられました。
人が多い場所では魔物が湧き出さないことや、活火山(3,000メートル以上)の周りだという制限は外れていないために、無機物や機械の魔物化は山のなかで発生すると考えているようです。ワイズマンから、各ギルドに調査の徹底するように通達がありました。日本では、私が調査を担当しています。
『ディック。あの洞窟。魔物?』
『主様。判断ができません。ただ、魔物特有の嫌な感じがします』
『中に入るのは・・・』
『ダメです』
やはり、ディックは反対のようです。
家族を危険にさらないという意味でも、一番だと思うけど・・・。
戦力や安全の意味でも、本体が別に存在している私が適任だと思っています。
分体でも、私が傷つくのを家族は極端に嫌います。過保護を通り越してしまっているように感じていますが、家族に告げても当然だといわれるだけです。でも、私が望めば最終的には承諾してくれます。
ディックだけなら説得はできると思うけど、後でライやカーディナルやアドニスを説得するのが難しそうです。彼らに余計な知恵をつけた者が居るようです。あと、パロットが私が危険なことをしたらすごく怒ります。怒るよりも拗ねるに近いので困る対応なのです。本当に怖いし哀しい。だから、自重することに決定しました。パロットだけではなく、皆の意見を聞いて説得してから突入したいと思います。真子や茜にも黙っていると、後が怖いので教える予定です。
好奇心は抑えられないけど・・・。
『でも、調べないとダメでしょ?敵性なら、対処が必要だよ?』
『・・・。そうですね。皆さまを呼びましょう』
『え?』
『主様も、ギルドで信頼できる人たちを集めてください』
『え?ギルドも巻き込むの?』
『はい。その方が、安全だと思います。まずは、洞窟の周りをエント殿とドリュアス殿の眷属で固めましょう』
『ん?』
そうだ!
木の魔物をエントと呼んで、木を除く植物の魔物をドリュアスと呼んでから、皆が名前だと思ってしまいました。種族名だと伝えたのですが後の祭り状態です。本人?たちが気に入ってしまって、呼び名として定着してしまいました。
やはりというか既定路線というか・・・。不思議なことに、もともとの種別が違った植物でも名前としてエントとドリュアスを認識したことで、同化進化が始まりました。個別にできることはもともとの植物として性質を現しているスキルが芽生えますが、エントとドリュアスとして存在が同化してしまいました。
『洞窟から魔物が出てきたら、エント殿とドリュアス殿に対処してもらったほうがいいと思います。主様の領土に不浄の魔物は必要ありません。見つけ次第、殲滅が正しい対処です』
意識を持たない魔物や私たちに敵対する魔物を、不浄の魔物と呼んでいます。
不浄の魔物として認識された者たちが、私たちに降ったとしても一段下としての認識になり、家族にはくわわりません。最近では
家族の合意を得ないと家族に加われないというルールができました。
降った魔物が少ない事や、もともと意識を持っていなかったこともあり、私が名付けをしなければ、大きな問題にはならないだろうと思っています。虐待を禁止して、できそうなことをやってもらうことで、働き次第で家族にくわわるという道があるだけです。
『わかった。エント!ドリュアス!』
私の呼びかけで、近くにいたエントとドリュアスが寄ってきました。
ディックに洞窟の監視を任せることにしました。
私は、意識をギルドで働いている私に移動します。
都合がいいことに、ギルドには主要メンバーがそろっていました。
「あれ?貴子ちゃん。今日は、山の確認をするのではなかった?」
最初に気が付いたのは、茜さんです。少しだけ嬉しいです。でも、内緒なのです。
「はい。山に問題があって、皆さんに相談したかったのです」
「相談?」
私の言葉に反応したのは、円香さんです。
見ていた書類から目を離して近くで作業をしていた孔明さんに目線で指示を出しています。以心伝心と言ったら怒られそうですが、長年連れ添った夫婦のようです。
孔明さんは、立ち上がって、書類ケースの中に隠している魔石を取り出します。私が提供した魔石です。覚えていませんが、付与されているスキルを見れば私が提供したものだとわかります。
遮音の結界が発動する魔石です。私が”相談”といたことから、秘密の話だと思ってくれたようです。本当に、頼りになる人たちです。
「どうした?」
遮音結界の発動を確認してから、蒼さんと千明さんが結界の範囲内に飲み物と食べ物を持って入ってきました。
皆が遮音結界に入ったことを確認してから、山の洞窟から”魔物”の気配を感じることを説明します。説明は苦手なのですが、なんとか納得してもらいました。
「貴子嬢。それは、洞窟の中に魔物が居るのと違うのか?」
「判断は難しいのですが、”洞窟”が魔物の雰囲気があります。ディックが入ることを拒否しました。戦力が足りないと判断したようです」
「ディックというと、新しく家族になった熊だったよな?インビジブルアームとかいう反則的な腕を持つ・・・」
蒼さんは、ディックと模擬戦を繰り返しているようです。
他の家族では、変則すぎて訓練にならないと嘆いていました。二足歩行も可能なディックとの訓練が蒼さんの刺激になっているようです。戦績は聞かないことが優しさと言われて聞いていません。でも、ディックが嬉しそうに”初めて、旦那が手を貸してくれた”と言っていた。そういうことなのでしょう。聞かない優しさを覚えました。
「はい。ディックが、私と一緒でも入るのは難しいと判断して、家族の勢力を集める方がよいだろうと言っていたので、私が家族を集めています」
「それで、貴子。ギルドに何を求める?」
円香さんの言い方から、ギルドとして動いてくれることが伝わってきます。最終的な確認は必要だとは思いますが、今はこのまま話を進めます。
「記録をお願いします。それと、できれば現地で実際に洞窟を見て私やディックが感じことが伝わるか確認してほしいです」
「わかった。孔明!」
「大丈夫だ。今日の業務なら、他のメンバーに回せる」
「蒼!」
「俺たちは大丈夫だ。千明」
「うん。車は無理だから、装備を確認する」
「頼む。それから、茜。場所が山の中だと、ユグドの力が必要になるかもしれない」
「はい。皆も話を聞いていて、全員が”着いて行く”と言っています。止めるのは不可能です」
「あっ!アトスも一緒だと言っています」
”みゃぁみ!”
千明さんの膝の上に居るアトスも身体を起こして、着いて行くと宣言しています。相変わらず、可愛い。パロットの方が可愛いけど、パロットにはない積極性を感じるのは気のせいなのでしょう。
円香さんから、現場を見てから装備を整えたいと提案があって、皆も同じような考えであることから、今から現場を確認して突入は見てから判断することになり、早速現場に向かうことが決定しました。
現地に居る私からディックに伝えたら、皆も現地に集まりだしていて、同じように考えていたようです。
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