【第三章 魔王と魔王】第五話 従属

 

話は理解ができた。

魔王を従属させた。俺の手柄ではないが、配下が行った行為なので、責任は、俺にあるのだろう。

それに、ミアとヒア以外の者たちも、魔王ルブランから説明を受けて、納得しているような表情を見せる。今後も、外向けの魔王はルブランの仕事になる。

ん?これは・・・。

俺に恭順を示している魔王に話しかける。

「魔王。貴様には、”名”があるのか?」

「ある」

「それは、”サン=ジュレ”と言うのか?」

魔王・・・。サン=ジュレは、驚いて顔を上げて、俺を見て来る。セバスも、他の者も同じような反応だ。

「・・・。そうだ」

サン=ジュレは、どこか諦めた表情で、”名”を認めた。

「そうか、外で名乗る”名”が必要になるな・・・。そうだな。カミドネを名乗れ」

「え?」

「ん?どうした?」

魔王カミドネが、俺を不思議な生き物でも見るかのような表情をしている。

「我を生かすのか?」

「殺す理由がない」

「我を殺せば、ポイントが得られる」

「ポイントは、潤沢にある。得られるポイントが、消費を軽く上回っている」

魔王カミドネは、驚いた表情を見せるが、俺を見てから、なぜか納得した表情に変わる。俺の保有するポイントを見たのだろう。雰囲気という曖昧な状況だが、保有しているポイントが解る。魔王カミドネもポイントを保有しているが、潤沢というには心許ない。

「・・・」

他の魔王はどうしているのか解らないけど、俺のギミックハウスは罠が主体だ。
魔物も存在しているけど、自動ポップする魔物を捕えてきて鍛えたり、は逃げることを推奨したり、最初から強い魔物しか使っていない。消費はそれほど多くない。カプレカ島や城塞村の存在で、得られるポイントの方が多い。他にも、ギミックハウスの周りにでき始めている村からも収入がある。

「魔王カミドネ。貴様が管理するダンジョンをいじっていいか?」

「・・・。我は、降った。きさ・・・。・・・。貴方様の自由にしてくれ」

セバスがなぜか、カミドネに強い視線を向ける。
自由にしてもいいと言われても・・・。

おっ出来そうだ。
飛び地だけど、俺の領域として認識している。ポイントの配分が決められるのか?

「魔王カミドネ。貴様は、そのままダンジョンを運営しろ」

「え?」

そんなに不思議なことか?
運営とか面倒は人に任せたい。作るまでが楽しい。それからは、日々の管理とか面倒に思える。

「今、領域を限界まで広げた。カプレカ島の状況は見ただろう?」

「あぁ」

「同じように、ダンジョンの入口を城壁で囲んで、水堀を作った。一か所だけ橋をかけた」

「は?作った?」

そんなに不思議ではない。
ポイントが潤沢にあれば、施設を作るのは難しくない。

施設は作ったけど、人が居なければ意味がない。それは、ギルドに担当させよう。

「ルブラン!」

「はっ」

「ボイドに連絡して、カミドネのダンジョン前に、ギルドを作らせろ。建物も用意する。あと、従業員は、ギルドに任せる」

「はっ」

セバスは、近くに居たモミジに指示を出した。
モミジは、マアとラアに命令を出している。3人は、俺の前に出てきて深々と頭を下げてから玉座から出ていく、すぐに受けた指示を実行するようだ。

「ロア。ベア」

二人は、急に名前を呼ばれて、戸惑っている。
いろいろな事が発生しているからしょうがないだろう。

「魔王様。二人は、まだ混乱しているので、質問なら我が・・・」

カンウが二人の前に出て頭を下げる。

「そうか、カンウは、ダンジョンに行ったのだったな。俺たちのギミックハウスと比べると、難易度はどうだ?」

「そうですね。初級よりも上で、中級よりも下ですね。罠は、初級ですが、魔物が出て来るので、戦闘は中級程度ですね」

「そうか」

「ロアとベアたちは、魔王様から頂いたスキルがあるので、補給が楽でしたが、補給を考えて、中級程度です」

ロアとベアを見ると、頷いているので、カンウの評価を”是”として考えよう。
中級程度だと、攻略は、それほど難しくないだろう。せっかく手に入れた、領地を失うのは面白くない。

よし、ダンジョンも改築だ。
まずは、カンウが言っていたように、補給が難しい状況を作ってしまおう。分断するような転移の罠と、深い場所にも安全地帯を作るけど、安全地帯ではスキルが使えない制限を付けてしまおう。
あとは、階層を100階層まで増やそう。それ以上にもできるようだけど、コストがかかりすぎる。

「魔王カミドネ。階層を増やした。貴様の居住区は、最下層にしてある。大丈夫だな」

「はっ!はぁ?階層を増やした?」

「そうだ。100階層にした。最下層は、今までと同じにしている。好きなようにいじれ、あと最下層を守るボスを91階層から99階層まで配置する。カンウ。バチョウ。お前たち二人で戦える程度の魔物をボスとしろ。カエデ。94から99階層は、スキルが使えない階層にする。二人に協力して、突破が不可能だと思える魔物と作りにしろ」

「「「かしこまりました」」」

カエデとカンウとバチョウが、ベアとロアとシアを連れて、玉座から出ていく、割り振られた作業のためだ。ポイントも潤沢に渡してあるから大丈夫だろう。カミドネが持っているポイントの3倍近いポイントを、カエデとカンウとバチョウは使える。3人分だから、細かい数字は無視しても、9倍以上になるだろう。足りなければ、ナツメが補助すればいい。

モミジとナツメを見ると、解ったのだろう。俺が指示を出さなくても、カエデたちの補助に向かった。すでに作られているダンジョンの改装だから、イレギュラーなことが発生する可能性もある。モミジとナツメが補助すれば、問題が発生しても対処ができるだろう。

「ルブラン」

「はっ」

「カエデたちに、階層はカミドネの作ったダンジョンを参考にしろと伝えろ。変更があるようなら、指示を出す」

「かしこまりました」

セバスは、残っていたキアに伝言を持たせて、モミジたちの所に向かわせた。

さて・・・。

「魔王カミドネ」

「・・・」

「そんなに緊張しなくていい。殺さないのは、決まった。貴殿にはやって欲しいことがある」

「なん・・・、で、しょうか?」

セバスに睨まれて言葉遣いを変えたようだ。俺は気にしないが・・・。

「さっき、言ったように、最下層に居住区を作った。まずは、持っているポイントを使って、居住区を作れ」

「いいの・・・。ですか?」

「何か、問題でもあるのか?」

「我が持っているポイントを使ってしまうと、魔物や罠の再構成が出来なくなる」

「あぁこちらからポイントは譲渡できる。収支の計算ができていないから、今は自動にしているが、貴様のダンジョンだけで収支が整うように調整する」

「はぁ?」

「それで、貴様のダンジョンは何か特徴があるのか?」

「特徴?」

「確か、低階層は、初心者向きになっているのだよな?」

「あぁ・・・。あれは、ポイントが足りなくて、罠の設置を見送っている。最初のボスまでは、安全地帯が無いのだが、魔物が弱いから初心者でも安全だと思われている。素材もそれなりのものしか提供していないから、練習に使うだけだな。それでも、月に数名は命を落す」

「そうか、それ以降は?」

「通常のダンジョンだぞ?チュートリアルで説明を受けただろう?」

「ふむ・・・。俺は、本で説明されていた」

「中に誘い込んで殺す。6階層からは、草原にしていて、フロア全体に魔物を徘徊させている」

「罠などもあるのか?」

「もちろんだ。徐々に殺意高めの罠にしている」

「餌は?」

「餌?」

「呼び込むのに、餌は必要だろう?」

「ん?魔物の素材と、ハンターたちが落していった武器や防具だぞ。あとは、野草や鉱石が採取できる場所を作ってある」

「スクロールは?」

「スクロールなんて、割に合わない物はドロップさせていない」

「そうなのか?」

「あぁ」

「例えば、ヒールのスクロールをドロップさせようとしたら、ポイントはどのくらい必要だ?」

「はぁ・・・。ヒール?治癒なら、最低でも100万以上は必要になる」

「え?ちょっと待て、もしかして、ポイントの交換レートが俺と違うのか?」

「は?」

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