【第三章 スライム今度こそ街へ】第七話 後始末

 

天使湖の異常な状態が鎮静した。謎の人物?の参戦によって、天使湖に居た魔物たちは駆逐された。

朝日と共に飛び立った鳥たち。一人の少女と少年が居たように見えた。私だけにしか見えなかった。円香さんも、孔明さんも、蒼さんも、千明も、見ていない。私の勘違い?
大きい鳥。鷲とか鷹とかだと思うけど・・・。地面から飛び立った時には、少女も少年も居なくなっていた。眠気は無かった。透明な壁(結界?)に覆われていた場所から、一斉に鳥が飛び立った。種類もいろいろだ。鳥には詳しくないけど、一種類ではない。複数の種類が一斉に飛び立つ。不思議な状況だ。千明が撮影していた動画を見たけど、確かに少女と少年は写っていない。千明が、知り合いのマスコミに確認してくれたのだけど、誰も見ていないし、撮影されていない。それどころか、鳥が飛び立つ映像が撮れていないマスコミが沢山あった。

数羽で、カメラのレンズを塞がれたと言っている人たちが多い。
自衛隊や警察や消防も同じだ。

私だけ?
少女と言っているけど、中学生くらいには見えた。もしかしたら、高校生かも・・・。
でも、誰も見ていない。勘違いではないとおもう。確かに存在していた。

調べようと動き出そうと思ったけど、それからが地獄だった。

魔物たちが居た場所を調べなければならなかった。魔物が残っている可能性がある。それに、誰が倒したのか?何のために?魔物同士?いろいろな疑問がある。不自然な透明な壁に関しても、検証しなければならない。

そして、私たち・・・。自衛隊と警察には大事な仕事が残っている。
行方不明者の捜索だ。

私たちは、魔物の痕跡を探したが、天使湖からは魔物が一掃されていた。山の中までは解らないが、動物の姿もないくらいだ。鳥もまったく見かけない。人が多いから近づいてこないだけの可能性もあるが、それでもカラスくらいならいると思ったが、見当たらなかった。

行方不明者の捜索は難しくなかったが、身元の特定に難航した。すぐに判明した一人を除いては・・・。
天使湖から離れた場所にあった小屋で、綺麗な遺体が見つかった。手帳を大事に抱えていた(らしい)。

最初に遺体を発見したのは、消防隊だ。綺麗な状態だったので、遺体の身元に繋がる物を探した。行方不明になっていた、山本というディレクターだ。正確には、”元”が頭に付くらしい。ギルドのメンバーで、山本というディレクターを知っている。千明が呼ばれた。

私も、千明と一緒に小屋まで移動した。魔物の痕跡を探すためだ。

千明は、遺体を見て、青ざめながらも”山本”だと認めた。消防隊が、千明を呼びに戻っている最中に、何者かが”山本”が持っていた手帳を盗んだことが判明した。消防隊が遺体発見時に撮影していた写真と動画には、手帳を持っていた状態だったが、私と千明が遺体を見た時には、手には持っていなかった。後で見直して、消防隊に確認をしたが、消防隊では誰も手帳には気が付かなかった。もちろん、私も千明も手帳を拾ったり、山本から奪ったり、盗んではいない。
勘違いではすまない状況だが、やることが多いので、消防と警察に”手帳”の捜索はお願いして、私と千明は、魔物の痕跡を探すことにした。

結局、魔物がどこから来たのか、そして全部の魔物が討伐されたのか?

何も解らない状況だけが解った。

”魔石”が10個ほど見つかった。ドロップ品も数点だけだが見つかっている。魔物が存在していた証拠だ。

謎なのは、何かを燃やした跡が数か所、見つかっている。円香さんは、”魔物を燃やして倒した”と考えたが、蒼さんが否定した。魔物を燃やせるだけの火力がだせるスキルを、所持している者はいないというのが根拠だ。そして、普通に火炎放射器で魔物を倒したとしても、地面に焼け跡が残るようなことは無いのだと言っていた。

私を含めて、皆の頭には・・・。”ファントム”の文字が浮かんだ。
しかし、”ファントム”がなぜ?という疑問になってしまう。天使湖の状況を知って、駆けつけてくれた?意味が解らない。警察や自衛隊が困っているから助けた?それなら警察関係者か自衛隊関係者だが、それなら名乗り出て来るだろう。一つの理由が浮かべば、理由を打ち消すだけの疑問が産まれてしまう。
だから、誰も”ファントム”と言わないのだろう。

結局、現場検証?は、5日間に及んだ。

「円香さん。疲れました」

キャンピングカーで来ていたから良かった。
そうでなければ、テントで過ごさなければならなかった。孔明さんと蒼さんは、自衛隊のテントで寝泊りしていた。

「ギルドに帰って、報告書を書いて、提出するまでが出張だ」

報告書は、日本語で良いと言われたのが幸いだ。

「ふえ?」

面倒だという気持ちが言葉になってしまった。

現場の状況や経緯は、すでに千明がまとめている。映像の補助資料があるから、それほど難しい物ではない。問題は、自衛隊や警察や消防に提出する資料だ。書式が面倒な上に、細かい指定が入っている。

「今回の事は、イレギュラーなのか、これからも発生する可能性がある事柄なのか・・・」

円香さんが気にしているのはわかる。
今回のことが、イレギュラーな状況が重なっただけなら、よくはないが、今回だけの特殊な状況だと言える。しかし、これがイレギュラーではなく、状況が整えばどこでも発生する可能性があるのだとしたら・・・。それが解らないから、状況を調べて、報告書をまとめて、ギルドに報告を上げる。

他の国で、他の地域で、同じような現象が発生しているのだとしたら・・・。今後、日本でも同じ状況になる。
情報を精査する為に、賢者ワイスマンに問い合わせる必要が出て来る。日本では、天使湖だけが特殊な場所だとは思えない。

「そうですけど、孔明さんは?」

「もちろん、孔明にも手伝ってもらう。蒼は、戦力外だから、千明と一緒に、マスコミを回ってもらう」

マスコミ対策も必要だ。
人が死んでしまった。結局、しっかりとした遺体が有ったのは、山本元ディレクターだけだ。

「わかった。自衛隊や警察・消防への通達と報告は、俺が引き受ける」

孔明さんのありがたい言葉で、少しだけ、本当に少しだけ、気持ちが楽になる。

「助かる」

円香さんが、皆に役割を与えていく、キャンピングカーの運転席から、蒼さんが円香さんに何か言っている。
マスコミ対応に関しての質問だろう。

「そうだ。円香さん」

「なんだ?」

「報告書を提出したら、お休みが欲しいのですけど?」

「休み?いいぞ」

「本当ですか?」

「あぁ」

「帰ったら、速攻で、報告書をまとめて、賢者ワイスマンに提出します。来週の水曜日から5日間。休んでいいですか?」

ギルドは、基本土曜日も日曜日も関係がない。
週に二日の休みがあるが、交代で休む事になっているので、連続で休みが取れない。ギルドの人数が少なくなっているために、現在の体制になってから、定休?以外は休んでいない。

「一人旅か?」

「そこは、嘘でも、デートか?と、聞いてください」

「そうか?デートなのか?」

「違います。けど、服とか、いろいろ・・・」

服よりも、深刻なのが下着類だ。だましだまし使っていたけど、そろそろどこかでまとめ買いしておきたかった。
身体が疲れているのも本当の事だけど、リフレッシュがしたい事や、買い物がしたい事も本当の事だ。忙しくて、お金が貯まるのは嬉しいけど、使わなくては意味がない。

「そうか、わかった。一応、連絡がつくところに居てくれればいいぞ」

「あっ!円香さん」

「千明も一緒か?千明が居ない時は、孔明が着いて行けばいい。大丈夫だぞ」

「ありがとうございます」

「千明!それなら、一緒に買い物に行こう。車を出すから、少しだけなら遠出もOKだよ」

「本当?御殿場に行こう」

アウトレットか・・・。いい服があればいいけど、無くても千明とドライブだと思えばいいかな。

「いいよ!土曜日は、市内での買い物に付き合ってよ」

「いいよ。お昼は、茜のおごり?」

「えぇぇぇ。うん。まぁいいかな。あまり、高い物はダメだよ」

天使湖の後始末を終えて、私は休暇を勝ち取った。
何か、忘れているような気がするけど、重要なことなら、思い出すだろうし、思い出さなければ、忘れても問題にならないことなのだろう。

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