【第十六章 眷属】第百六十五話

 

ティリノがいきなりぶっこんできた。

「ティリノ。ダンジョンにする?どういう事だ?」
『建物をダンジョン化しておけば、移動が楽に出来ます』
「どういうことだ?移動は、転移門が必要だろう?」
『え?マイロード。ペネムからそう聞いたのですか?』
「あぁ」

ティリノの認識では、ダンジョンは飛び地でも作られるようだ。
そして、作ったダンジョンは空間を繋げる事ができるという事だ。

「ペネム。聞いた事はあるか?」
『我が主。我はそのような事は聞いた事が有りませぬ』

どうやら同じダンジョン・コアでも権能に若干の違いがあるようだ。
知識量もそれに合わせて違っているのかもしれない。

「ティリノ。でも、このログハウスは、チアルダンジョンの上に立っているぞ?できるのか?」
『やってみましょうか?』
「うーん。副作用が怖いな。洞窟で試してみるか?ペネムはどう思う?」
『我も、その方が良いと思います』

シロを見るとうなずいている。
話の断片だけしかわからなかったのかもしれない。念話での会話は、聞かれる事がないが、誰が聞いているのかわからない事が困るのだよな。

「ティリノ。ペネム。お前たちを身に着けている場合には、念話ができるよな?」
『マイロード。触れている者や近接のサブ・コアには意思が伝わります』

「それなら。ティリノ。ペネム。お前たち、サブ・コア作られるよな?イヤーカフスの形で複製を作ってくれ」
『はい』『かしこまりました』

ティリノとペネムがイヤーカフスを作り出す。
戸惑っていたので、シロの耳に付けてやる事にした。

これで、近接にいる場合に、ペネムとティリノの会話がシロにも伝わるはずだ。

ログハウスにいる面々に洞窟に戻る事を告げて、シロと洞窟に戻る。アズリだけは連れて行く事にした。何か有った時の戦力としては、下の階に、カイとウミとライとエリンが残っているので問題は無いだろう。

洞窟に戻って、ティリノに話しのつづきをしてもらう
「それで、ティリノ。ダンジョン化する事のメリットとデメリットは?」
『メリットは、ダンジョン内の任意の場所と繋げるので、移動が出来ます』
「それは、距離は関係ないのか?」
『もうしわけありません。わかりません。しかし、魔の森?で試していた程度の距離では問題ありません』
「そうか、わかった。要確認だな。それで?」
『はい。ダンジョンへの侵入者がわかります。常にスキル探索がかけられていると思ってください』
「確かに便利だな」
「カズトさん。それなら野営のときに使えば!」
「なぁティリノ。そのダンジョン化は解除できたりするのか?」
『いえ・・・。まだできません』
「そうか、シロ。ダメなようだ」
「そのようですね」
「設置できる数には制限はあるのか?」
『魔力量に依存します』
「それでデメリットは?」
『移動時に、移動者の魔力を使います』
「ん?設置は、お前の魔力を使って、移動時にはお前の魔力と移動者の魔力を使うのか?」
『そう考えていただいて問題ありません』

たしかに便利だけど、俺やシロの部屋をダンジョン化するメリットにはならないな。
ログハウスも除外だな。あまり長距離移動には適さないようだし、転移門の代わりができると思ったけど、どうやら俺達専用の移動手段の一つと考えたほうが良さそうだな。

「そうなのか・・・。使い所が難しいな」
『マイロード。魔力は微々たる量です。魔の森?でゴブリンなどが移動できていました』

その程度でいいのなら、各区を繋ぐゲートには使えそうだよな。

よし、ペネムと一緒にティリノの魔力増強計画を立てよう。
ペネムにはもっともっとダンジョンを拡張してほしい。ティリノには、安全面を考えて、チアル大陸全域を覆うくらいになってくれたら、いろいろ考えられる。

「ティリノ。ゲートのような物を作って移動する事は可能なのか?」
『できます』
「そのときに、ゲートを使える者を定義する事はできるか?」
『具体的には?』
「そうだな。魔力の登録は人数が多くなると管理が煩雑になりそうだよな。シロ何かいい方法はないか?」
「カズトさん。魔核を埋め込んだ、勲章のような物は作られませんか?」
「勲章?」
「はい」

シロの説明は、代官になるときに俺と面通しをするのだから、そのときに、代官だという証を渡す事にして、その証に魔力を流し込むと、ゲートが使えるようになる仕組みだという感じだ。
ティリノに聞いても、ペネムに聞いても、問題ないという事なので、採用する事にした。
細かい調整は、来週に話し合う事にした。

その上で、現在ペネムの認証も全部変更しようと思っている。
今の魔力登録型では面倒に感じている。主に、俺の手間の意味で・・・。勲章方式なら、最悪偽ツクモに代役をやらせる事もできる。

大きな方針は決まった。
ゲートは現地に行かなければできないという事なので、SAやPAには配置しない。行くのが面倒だからだ。
そのかわり、各区と道の駅にはゲートを繋げる場所を用意する。

まずは、俺が必要としている所だけを繋いでいけばいいだろう。その後、訪問時に増やしていく事にする。
眷属の部屋の下に新たにゲートだけの部屋を作る事にする。俺専用のゲートだ。それ以外は、来週の全体会議で決める。

まずは、ロックハンド港と繋いでおけば作っている最中の場所だし都合がいいだろう。
勲章の準備はしておこう。使う使わないは別にして有って困るような物では無いだろう。

「カズトさん?」
「ん?あぁ悪い。考え事をしてしまったようだ。ティリノ。まずは、この下の階層を作るから、そこをダンジョン化してくれ、あとは追って指示を出す」
『かしこまりました』

ダンジョン化の件はこれで大丈夫だろう。
あとは、眷属達に任せる事にしよう。

「シロ。エーファたちの事を考えるか?」
「はい!それで、カズトさん。僕、考えたのだけど、まず、エーファたちにスキルカードをもたせて、戦闘訓練をしてはダメですか?」
「ダメじゃないけど?大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思います。僕もいるし、アズリはかなり強いと思います」
「そうだな。スキルカードを使わせて、特性を見るという事だな」
「はい」
「わかった。それでやってみよう」
「ありがとうございます」

そうだよな。
エリンも付いてくるだろうし、大所帯での戦闘訓練になるだろうから、何かある事は考えにくいよな。

「チアルダンジョンの30階層付近で大丈夫だろう」
「はい。大変そうだったらまた考えればいいですよね?」
「あぁそうだな」

カイとウミとライは、賛成したのだが階層を50階層付近にしたほうがいいと提案してきた。
オリヴィエは、準備をしてからにしたほうがいいと言ったのだが、リーリアがシロの眷属に準備が必要ないという事から、”即刻出発でも問題ない”としか、言えない状況になっていた。

エリンは、戦える事が嬉しいのか賛成している。
ステファナとレイニーは、シロが行く所についていくだけだという反応を示している。

簡単にいうと、何の問題もなくから試す事になった。
ウミとエリンは自分たちの出番が有るだろう事を予測しているが、あくまで新しく眷属になった者たちの戦闘訓練だという事を忘れないようにしてほしい。無駄だろうけど・・・。
まずは、ウミとエリンとアズリを全面に出して戦闘訓練をさせる。特に、アズリはスキルが豊富についているので、その訓練も兼ねている。

その後、30階層付近まで戻ってきて、眷属たちの戦闘訓練を行う事になるだろう。

スーンに連絡をして、予定を伝える。
ルートガーにも伝えておく。

今回は、それほど長くダンジョンに潜らない事を伝える。
来週の全体会議には出席しなければならないからだ。

「そろそろ戻るぞ?」

30階層で戦闘を繰り返す事で、眷属たちが経験を積むことができた。
今回は出た魔核はそのまま吸収させた。持って帰る必要は無いと判断した。

眷属たちも進化して、新しい固有スキルを得た者も出てきた。

// 名前:エーファ・ブルーホルツ
// 種族:フォレスト・ノーヒューム・フォックス
// 称号:シロ・ヴェネッサ・ヴェサージュの眷属
// 固有スキル:魅了・誘引(レベル3)
// 固有スキル:憑依(レベル2)
// 固有スキル:人化(レベル1)
// 体力:D
// 魔力:D

エーファは人化を取得した。
レベル1だと、狐耳と狐しっぽが消せないようで、すごく可愛い感じになってしまう。
妙齢の女性に耳としっぽが生えているのだ。種族も”ノーヒューム”という新しい物がついている。

攻撃手法は、状態異常攻撃を好んだ。
俺やシロからの指示を聞いて、エーファが子供や他の眷属達に伝えるという感じになる事が多い。人化できた事で、指示がしやすくなった。カイとウミとライが俺とシロの周りで護衛のような形になった時でも、眷属達への指示が的確に出せるようになる。

司令塔の役目だろう。
そういえばエーファのしっぽは二本に増えている。
もしかして、九尾まで増えるのかもしれない。それはそれですごく楽しみだ。

// 名前:エーファ・ブルーホルツ
// 種族:イリーガル・フォレスト・ノーヒューム・フォックス
// 称号:シロ・ヴェネッサ・ヴェサージュの眷属
// 固有スキル:魅了・誘引(レベル3)
// 固有スキル:憑依(レベル2)
// 固有スキル:人化(レベル1)
// スキル:念話
// スキル:状態異常攻撃
// スキル:詠唱破棄
// スキル:回復
// スキル:—
// スキル:—
// スキル:—
// 体力:D
// 魔力:D

エーファの子供達は体力や魔力が上がってきている。経験が足りないのか、固有スキルを取得出来なかったようだ。
スキルをつけるのは進化してからの方がいいだろうという事だったので、現状は保留する事になった。

そのかわり、狐の姿でも身につけられる首輪にスキルを付与して、体力向上や速度向上や攻撃力向上を付けて戦闘で困らないようにする事になった。エーファが、自分の子どもたちに付けられた首輪を羨ましそうにしていたけど、俺は妙齢(24-5歳に見える)の女性に首輪をつける趣味はないので却下した。そのかわり、シロと一緒に服を買いに行かせる事にした

// 名前:ティア・ブルーホルツ
// 性別:オス
// 種族:フォレスト・フォックス
// 称号:カズト・ツクモの眷属
// スキル:念話
// スキル:—
// スキル:—
// スキル:—
// スキル:—
// スキル:—
// 体力:E
// 魔力:E

// 名前:ティタ・ブルーホルツ
// 性別:メス
// 種族:フォレスト・フォックス
// 称号:カズト・ツクモの眷属
// スキル:念話
// スキル:—
// スキル:—
// スキル:—
// スキル:—
// スキル:—
// 体力:E
// 魔力:E

レッチェとレッシュは、種族進化した。
カラーが付いた進化だった。風鎧の派生なのだろうか、イエローがついた。雷属性が芽生えるかもしれない。

// 名前:レッチェ・ブルーホルスト
// 性別:オス
// 種族:フォレスト・イエロー・イーグル
// 称号:シロ・ヴェネッサ・ヴェサージュの眷属
// 固有スキル:爪斬撃(レベル1)
// 固有スキル:風鎧(レベル2)
// スキル:念話
// スキル:速度・命中超向上
// スキル:—
// スキル:—
// スキル:—
// 体力:D
// 魔力:F

// 名前:レッシュ・ブルーホルスト
// 性別:メス
// 種族:フォレスト・イエロー・イーグル
// 称号:カズト・ツクモの眷属
// 固有スキル:風鎧(レベル1)
// スキル:念話
// スキル:速度・命中超向上
// スキル:—
// スキル:—
// スキル:—
// 体力:D
// 魔力:F

2人からの要請で、速度・命中超向上だけをつける事にした。
もう少し訓練をしたいという事だ。

// 名前:エルマン・ブルーヴェルト
// 性別:オス
// 種族:イリーガル・インビシブル・フォレスト・デス・アウル
// 称号:カズト・ツクモの眷属
// 固有スキル:不可視インビジブル(レベル1)
// 固有スキル:夜目(レベル2)
// スキル:念話
// スキル:即死
// スキル:影移動
// スキル:体力・攻撃力超向上
// スキル:速度・命中超向上
// スキル:詠唱破棄
// スキル:—
// スキル:—
// 体力:D
// 魔力:C

// 名前:エステル・ブルーヴェルト
// 性別:メス
// 種族:イリーガル・インビシブル・フォレスト・シャドー・アウル
// 称号:カズト・ツクモの眷属
// 固有スキル:不可視インビジブル(レベル1)
// 固有スキル:夜目(レベル1)
// スキル:念話
// スキル:影移動
// スキル:体力・攻撃力超向上
// スキル:速度・命中超向上
// スキル:詠唱破棄
// スキル:—
// スキル:—
// スキル:—
// 体力:D
// 魔力:D

エルマンとエステルは、種族進化した後で、希望したスキルを付けたら、二段階目の進化をしたようだ。

スキル枠を全部埋めなかったのは、カイからの提案だった。
30階層くらいの魔物との戦闘で決めてしまうのはもったいないという事だ、これから最下層まで目指す段階で強い魔物が増えてくるだろうし、スキルカードのレベル9や10も出てくるだろう。そうしたら再度調整しなければならない。それなら、今は戦えるレベルまで持っていけばいいだろうという事だった。

眷属達も同意したので、必要最低限の強化を行って、今後に得られるであろうスキルカードで再強化を行う事にした。
そのかわり首輪にチャームを付けて、そこでスキルを付与する事にした。

エーファだけではなく、シロやリーリアやアズリが欲しそうにしていたので、ブレスレットやアンクレットを作成して、そこにチャームをつけるようにした。エーファの場合は、人化していない時としている時の2つを与える事になってしまった。
ステファナとレイニーは言葉に出しての要望はなかったが、欲しそうにしているのがわかったので、シロと色違いで小さめで目立たない物を作ってやった。正直な話・・・。戦闘よりも疲れてしまった。

エリンが竜体の時にできる物を欲しがったが勘弁してもらった。

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