【第四章 拠点】第十一話 最奥部

 

 地下3階から地下4階に降りる。

「ヤス殿」

「ん?なんだ?」

「いくつかのことで質問したいのだが大丈夫か?」

 ダーホスが一応質問することを宣言したのには理由がある。リーゼが話しかけてもヤスの操作にミスはなく問題なく走らせる事ができているが、アーティファクトを動かすのには”魔力”を使うのが通説だ。そのために、ユーラットを出てから1時間近く経過しているのに、ヤスが疲れる様子も無いことから話しても大丈夫だと判断はできるのだが、質問しても大丈夫か自分だけで判断しないためにも、ヤスに断りを入れたのだ。

「質問?問題ないぞ?でも、解る事しか答えられないぞ」

「ヤス殿。神殿に入ってから魔物が出てきていませんが・・・」

「あぁディアナで倒した」

「え?」

「コアの部屋に行くのだろう?いちいち魔物を倒していたら時間がかかってしまうから、出さないようにした。その上で、居た魔物を全部倒した」

「は?」

「どうした?」

「いえ・・・。わかりました。攻略時にも同じ様にしたのですか?」

「うーん。よく覚えていない。すまんな」

「いえ・・・。構いません。それでですね。入り口は、前からあんな感じだったのでしょうか?」

「どういう意味だ?」

「何度か冒険者を派遣して報告を受けていましたが、広場は変わっていません。神殿自体も変わりがないようです。入り口が間違っていたのですね」

「どういう事だ?」

「ヤス殿が、アーティファクトで入ったところが本当の入り口なのでしょ?」

「あぁ神殿への入り口はたしかにあそこだな」

「ヤス!もしかして、神殿以外にも」

 アフネスが興奮してダーホスの質問をぶった切った。
 それほど、アフネスが興奮している理由はヤスにもダーホスにもリーゼにもわからない。だが、アフネスには興奮してしまう理由があるのだ。ヤスが居住区と定めた場所は、神殿の一部である事は間違いない。アフネスは、自分たちが入る事ができた事で、ここは神殿に挑戦する人のための入り口で攻略した人の入り口は別にあると考えていたのだ。

「あぁ今は俺しか入る事ができないけどな」

「やっぱり・・・。ヤス。その場所に入る為の条件はわかっているの?」

「条件?いや、なんのことやら」

 もちろんヤスは条件に関しては、マルスに聞いて知っているが、ごまかすことにした。
 自分以外は入る事ができない設定のままの方が良いと考えたのだ。”知っている”といってしまうとアフネスからの追求を躱せる自身が無いのが大きな理由でもある。

「ねぇヤス。コアはまだ?僕、疲れたよ」

 散々騒いで、はしゃいだリーゼがお疲れモードのようだ。
 ヤスは苦笑しながら、エミリアに命令を出す。

”エミリア。スマートグラスに目的到着時間を出せるか?”

”可能です”

”コア部屋の手前への到着時間を計測してくれ”

”了”

 スマートグラスに、”所要時間:計測中”と表示されてから数秒後に画面上に所要時間13分と表示された。
 速度は、アーティファクトHONDA FITから取得したデータを使ったのだろう。通常のカーナビでも同じ表示がされるので、標準機能なのだ。

「リーゼ。あと、15分だと思うぞ」

「わかった!5階層とか言っていたけど?本当なの?」

「そうだ!ヤス殿。神殿が地下5階まであるというのは本当ですか?」

「あぁ地下五階の最奥にコアが納められている」

「最初からですか?」

「俺は、そのあたりの事に記憶が曖昧でわからん。すまない」

「ダーホス。ヤスは、記憶を無くしているのよ。覚えていなくても当然よ?」

 ヤスは、アフネスの言い回しが気になったがあえて・・・。そう!あえてスルーする事にしたのだ。
 怖かったとか、面倒な事になりそうとか、そんな感情が芽生えたわけではない。

「そうか・・・。ヤス殿。このユーラットの神殿は、古い文献によると地下3階までの神殿だったようです。地上部には、誰も入る事ができなかったようですが、地下にはある程度の魔力がある人間なら入る事ができたようです」

「そうなのか?でも、今は地下3階じゃなくて5階だぞ?」

 実際に、地下5階まである事は確定している。

 話しながらも、ヤスは”右へ”移動して、”左へ”移動して、神殿を進んでいる。

「ねぇヤス。神殿だから宝箱も有ったよね?」

「ん。あぁそうだな。それで、今度ダーホスに頼もうと思っていた」

「なんでしょうか?」

「宝箱の中に、武器や防具やいろいろ有ったから、俺に必要ない物とか、ギルドで買い取りはできるか?」

「できますよ」

「えぇぇぇぇ!!!有ったの!僕も見たい!」

「はい。はい。ダーホス。ギルドに持っていけばいいのか?かなりの量があるぞ?」

「わかりました。大丈夫です。そうだ、ヤス殿。預かり箱を作りませんか?」

それ預かり箱はどういう物だ?」

 ダーホスは、預かり箱を説明してくれた。
 ヤスにとってはよくある設定なので、すぐに受け入れられた。

「通常はパーティー単位ですが、ヤス殿なら一人でパーティー登録しても大丈夫でしょうし、大量の買い取りが発生するのなら、作ってもらったほうがいいですからね」

「わかった。後でギルドに行って申請すれば作る事ができるのだよな?」

「はい。問題ありません。ありがとうございます」

「ねぇねぇヤス。その時にも僕も連れて行ってよ。宝物を見てみたい」

「って事だけど、ダーホス。問題はないよな?」

「大丈夫です」

「ねぇダーホス。ギルドの規約だと、パーティーは複数の人間での構成になるわよね?」

「そうですが、よくある事なので、問題ないですよ?」

「そう言っても・・・」

 アフネスが、ヤスをルームミラー越しに見つめる。

「はぁ・・・」

 ヤスは、諦めた表情で大きく息を吐き出した。
 アフネスが次の言葉を言う前に、言わないと後々まで言われそうだと感じているのだ。

「リーゼ。お前、ギルドに登録しているのか?」

「僕?商業ギルドには登録しているよ?」

「ダーホス。俺とリーゼでパーティーを組んでもその預かり箱は作れるのか?」

「え?問題ないですが・・・。そのときには、ヤス殿と同じ登録にしてもらったほうが、処理が楽です」

「わかった。リーゼ。他の2つに登録して、俺とパーティーを組まないか?」

 ヤスは、ルームミラー越しにアフネスを確認すると、にこやかに笑っている。これで間違っていなかったと確信して少しだけ安堵の表情を浮かべる。

「え?僕?でも・・・」

「いいわよ。リーゼ。ヤスの言う通りにして、登録料は、私たちが出してあげる」

「本当!ありがとう!ヤス。一緒にギルドに行く!パーティー名はどうしようか?」

「リーゼに任せるよ」

 ヤスは自分のネーミングセンスに疑問を持っていた。
 リーゼを巻き込むのなら、リーゼに任せてしまおうと思ったのだ。

 そしてアフネスは思いがけずうまく言ったとニコニコ顔だ。ヤスをつなぎとめる方法を考えていたのだが、こんな早くにチャンスが来るとは思っていなかったのだ。その上、今後パーティーメンバーが増えても、初期メンバーとして意見する事も可能になるだろうと思っている。

「よし!」

 地下5階に降りてからは直線だ。
 アクセルを踏み込んで一気に加速する。160キロを超えたところで、扉が見えてきた。

「ついだぞ」

「ここが最奥部?」

「そうだ」

 ダーホスのつぶやきに対してのヤスの言葉だ。

「ここは自分で開けないとダメだからな」

「わかった。手伝おう」
「僕も手伝う!」

 シートベルトがなかなか外れないというお決まりのイベントをこなしてから、4人は扉の前で止まった。
 ダーホスがやけに緊張している。アフネスは、何をかんがえているのかわからないがヤスを見つめている。
 リーゼは、ただただワクワクしているようだ。

 ヤスが扉に手をあてると、扉が光りだす。

「(やはり・・・)」

 アフネスが小さな声でつぶやくが誰にも聞こえていない。

 光が消えて、”カチャ”となにかが外れる音がした。

「扉を押すぞ!」

 皆が扉に手を置いて押す。
 それほど力を入れていなかったが、ゆっくりと扉が開き始めた。

 扉から光が漏れ出す。ゆっくりとした動作だが、徐々に光が強くなって扉が開いていった。

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