【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四話 主要メンバー集結(除くリーゼ)
ヤスは神殿に戻って食事を摂ってからから、ギルドに戻った。
ギルドでは、ミーシャがアーティファクトの登録を行っていた。
「ヤスさん。アーティファクトの登録は、全員が帰ってきてから行います。鍵の登録で問題がないと本部から通知が来ました」
「頼むな。それで、カイルとイチカは、まだディアスと見学か?」
「だと思います。呼びますか?」
「いや、いいよ。デイトリッヒも帰ってきていないから、急がなくてもいいだろう。奥の部屋を使っていいよな?」
「はい。ギルドマスターの部屋を使ってもいいですよ?」
「ドーリスの部屋だろう?いいよ。適当に空いている部屋を頼む。全部で、何人になる・・・」
「ヤスさん。ドーリス。サンドラ。私。ディアス。カイル。イチカ。デイトリッヒ。あとは、エイトが付いていましたよね?」
「そうだな。セバスとツバキも呼んだほうが、話が早そうだ」
「そうなると、11名ですか?」
「大部屋だと20名くらい入られるだろう?」
「そうですね。そうなると、エイト1人だと大変だと思います」
「わかった。あと、二人くらい来る様に言っておく」
「お願いします」
ヤスは、ギルドの奥に足を踏み入れた。
大部屋は、学校に通じる場所に作られた場所で、貸し会議室をイメージして作った場所だ。
大きめのディスプレイが備え付けられていて、権限が許せば使えるようになっている。
ディスプレイなので、アーティファクトだと解るのだが、使い方がわからない”インテリア”だと思われている。今日、ディスプレイの真価が問われる。
部屋に入ったヤスはエミリアを使ってマルスを呼び出す。
「マルス。メイドで手が空いている者を2名ほど大会議室に向かわせてくれ」
『マスター。エイトは、個体名ディアスからの依頼で、幼体たちの相手をしています』
「わかった。3名ほど向かわせてくれ」
『了』
「それから、会議室の施設に結界を追加したい。あと、入り口に認証を設置してくれ。学校とギルドで、会議室の空き状況がわかる端末を用意して、確認ができるようにしてくれ」
『了。端末は、タブレットで大丈夫ですか?』
「そうだな。タブレットで頼む」
『了。設定して、シックスとセブンとテンに持たせます』
「会議室の認証はカードで大丈夫だよな?」
『はい。神殿にはゲストはいません。カードで大丈夫です』
「設置はすぐに行えるか?」
『30分で完了します』
「頼む」
『了。会議室の予約はできません』
「予約は必要ないだろう」
『タブレットで確認ができるので必要はないです』
「わかった。会議のときに頼むようにする」
『了』
ヤスが、会議室のセキュリティを考えて新たな仕組みを導入した。ディスプレイに表示される情報を眺めている間に、設置が完了した。
『マスター。設置が完了しました』
「わかった。大会議室に、ドーリスとサンドラとディアスとデイトリッヒとミーシャとカイルとイチカを登録。それから、俺とセバスとツバキとシックスとセブンとテンを登録」
『個体名ドーリスの登録終了』
『個体名サンドラの登録完了』
『個体名ディアスの登録完了』
『個体名デイトリッヒの登録完了』
『個体名ミーシャの登録完了』
『個体名カイルの登録完了』
『個体名イチカの登録完了』
『マスターは、すべての部屋に自由に出入りできます。個体名セバス・セバスチャンの登録完了。個体名ツバキの登録完了。シックスとセブンとテンを会議室付きメイドに登録』
「部屋付きメイド?」
『会議室がある建物には、マスター命名の”給湯システム”があります。部屋付きメイドに登録した者だけが使えます』
ヤスは、自分で作っておきながら給湯システムが有ったのを忘れていた。マルスに言われて思い出したのだ。簡単に料理くらいなら作られる”給湯システム”だ。トイレも完備しているので、住めてしまうのだが、ヤスの思いつきで認証が必要になったために、本当に会議だけを行う建物になってしまったのだ。
防音の結界やディスプレイの存在が知れ渡ってからは、ギルドを訪れた者たちが好んで使うようになるのだが、それはまだ先の話だ。
「会議の終了は?」
『タブレットにて会議室の開放です』
「わかった」
ヤスの手元にはまだタブレットが届いていないが、専用のタブレットになっているのだろうから、見れば解るだろうと軽く考えた。
ディスプレイには、神殿の様子も表示できるので、街や迷宮の様子を適当に選びながら眺めていた。
『マスター。ギルドに、個体名ディアスと個体名カイルと個体名イチカが来ました』
「わかった。最初だから、迎えに行ったほうがいいだろうな」
『はい。セバスとツバキとエイトとナインとテンは、説明が終わっています』
「わかった」
ヤスは、エミリアを持って会議室を出た。
ギルドに向かった。
ミーシャがディアスの相手をしていた。
「ヤスさん」「ヤスさん!」
最初にディアスが、気がついて振り向いた、ミーシャはびっくりした顔でヤスを見た。タスの登場があまりにもタイミングが良かったので、驚いたのだ。
「ディアス。説明は終わったのか?」
「はい。門と学校の説明だけです。部屋は、シャワーとトイレと代表的な魔道具だけを説明しました」
「そうか、やはり半日では難しいか・・・」
ヤスは、これからの移住者を考えていた。
大きく増えないと思っていたが、冒険者以外の移住者も増えてきている。冒険者たちは、ラナが始めた宿屋からギルドに通って、魔の森に向かっている。神殿の迷宮区には、神殿の守りに居住して権限を持った者だけが入られるようにしている。
商人なども移住し始めているが、家の説明と門の説明に、半日は必要になる。神殿の守りの説明でさらに半日は使っている。半日と言っても移住の片付けもあるので、実質2-3日に分けて説明しているのが現状なのだ。なんとか、実質一日で終わらせたいと思っているのだ。
識字率が低いので、マニュアルを用意しても読めないと言われてしまうので、人が説明する方法しか考えられないのだ。ヤスが住む場所は妥協しないほうがいいと魔道具を大量に設置してしまったための弊害なのだ。
「そうですね。やはり2-3日は必要です」
「わかった。ありがとう。そうだ、ミーシャも一緒に来てくれ、会議室への入り方を変えてしまった」
「え?わかりました」
ヤスは、ミーシャとディアスの先を歩いた。
カイルとイチカもしっかりとディアスの後をついていった。
「部屋までは変わりないが、部屋にはいるときに、認証を行うようにした」
「認証?」
ディアスが疑問を投げる。
「門と同じだと考えてくれ、後でシックスとセブンが持ってくるけど、会議室の確保を行うときに、会議室に入られる人を登録することにした」
「・・・」
「それで、会議室のドアにカードを近づけると、名前が登録されている会議室ならドアが開く仕組みだ。やってみてくれ」
イチカが手を挙げる。
「ヤス様。私が試していいですか?」
「たしか、イチカだったな?いいぞ、試してみろ。一部屋だけ登録してあるから開くから、探してみるか?」
「え?」
「カイルだったな。イチカとどっちが先に会議室を見つけられるか勝負して、勝った方に、そうだな。金貨1枚程度で欲しい物を買ってやる」
「え?本当か!本当ですか!?」
「言い直さなくてもいいぞ。俺の事は、ヤスと呼べ。様とか付けるな。いいな!」
「わかった!ヤス兄ちゃん!本当に!買ってくれるのか?」
「勝ったほうに買ってやるぞ」
なぜか、ミーシャとディアスも参加して、会議室探しが始まった。全力に近い速度で走り回ったミーシャとディアスは見つけられなくて、一番奥から探し始めたイチカが最初に認証を通した。
「やったぁ!!!ヤスお兄ちゃん!」
「イチカの勝ちだな。何が欲しい?」
「私、本が欲しい」
「どんな本だ?」
「うーん。魔法の本」
「本は、揃えなきゃならないからな。他には、何か無いのか?」
「うーん。そうだ!服!弟や妹の服や下着がほしいです!」
「わかった。ディアス。頼めるか?」
「わかりました。イチカちゃんを連れて買いに行きます」
「そうだな。ディアスなら領都でも問題ないだろう?サンドラと一緒に買い物に行ってこいよ。ついでに、カスパルの遠出のテストを行うからバスで領都まで行って帰ってこい。カイルも連れて行ってやれ」
「え?俺も?」
「カイル。報酬先払いで武器を渡す。ディアスとサンドラとイチカとカスパルとアーティファクトを、お前が守れ。武器は無事に行って帰ってくる護衛の報酬だ。できるな?」
「うん!俺!みんなを守る!」
カイルが嬉しそうにしたので、ヤスは頭を撫でた。
イチカもそんなカイルを見て微笑んでいた。
『マスター。個体名サンドラ。個体名ドーリス。個体名セバス・セバスチャン。個体名ツバキがギルドに到着しました。個体名デイトリッヒが東門を通過しました』
神殿の都の主要メンバーが揃ったのだ。
積読本や購入予定の書籍の情報を投稿しています
小説/開発/F1&雑談アカウントは、フォロバを返す可能性が高いアカウントです