【第四章 連合軍】第二十一話 【神聖国】攻防戦?

 

魔王カミドネが作戦を承認した。その瞬間から、眷属たちが動き出す。

最初に動いたのは、キャロとイドラのコンビだ。魔王カミドネに頼んで、眷属を増やした。自らの眷属になる同族だ。眷属は30体だ。同時に、ポップする同族を3000体を配下に加えた。
キャロとイドラは、半包囲している聖都の固く閉ざされている門の前に陣取って、イドラたちが遠吠えを行い。キャロたちが遠隔からスキルでの攻撃を行っている。三交代で、昼夜の違いなく攻撃を行っている。

第一段階は、聖都に残っている連中に疲労と恐怖を与える作戦だ。
聖都が半包囲されている状況で、包囲網がない部分以外の門を襲われれば、罠だと解っていても、包囲されていない門に人が殺到する。

殺到するが、門は固く閉ざされている。
当然だ。包囲はされていないが、聖都の周りは敵ばかりだ。聖都に残っている者で、商人や職人は夜中にこっそりと抜け出して、帝国に保護を求めている。身元がはっきりとしている者は、帝国本土に送られる。帝国本土でさらなる調査が行われる。身元がはっきりしない者は、王国のダンジョンの一つである魔王ギルバートに送られる。

魔王ギルバートは、猜疑心が強かったために、人の嘘を見破ったり、過去を調べたり、調査系のスキルを多く所持している。
移送は、魔王カミドネの支配領域に住んでいる獣人族が担当する。

王国の魔王ギルバートのダンジョンに到着するまでに、獣人族に暴言を吐いた者は、素性がどうであろうと、奴隷落ちと決まった。
これは、魔王の意向ではない。魔王カミドネと魔王ギルバートで決めたことだ。

半数が、獣人族を見た時に暴言を吐いた。
移送中に残りの半分が逃げ出そうとして、獣人族に捕まり奴隷に落ちた。
魔王ギルバートのダンジョンに辿り着いた者たちの半数は、魔王ギルバートの眷属の調査で”黒”と出た。

身元がはっきりしなかった者で、自由を手に入れたのは、全体の2割に満たない。
その自由を得た者も、働こうとしない為に、魔王ギルバートは支援の打ち切りを決めた。辿り着いた時に、家と2ヶ月程度の食料の提供を行うだけに決めた。これで、魔王カミドネの所に辿り着いた獣人族よりも、厚い支援が受けられている。

聖都の攻略は第一段階から、第二段階に移ろうとしていた。

「マリア。マルタ。マルゴット。準備は大丈夫か?」

フォリが、トレスマリアスに進捗の確認を行う。
作戦開始のトリガーは、フォリが持っているためだ。

「はい。帝国の士官にも手伝ってもらって準備は終わっています」

代表して、作戦案を上申したマルゴットが答える。

「明後日から作戦を開始してください。イドラは居ますか?」

第二段階が開始された。

キャロは、第三段階の為に、イドラを呼びつける。

「イドラは、どうしますか?私は、カミドネ様からご許可を頂けなかったので、ここで待機です。イドラとキャロは、安全マージンを取るのなら、参加してよいと言われました。キャロは、周辺を警戒するために、作戦には参加しないことになりました」

フォリの問いかけに、イドラは少しだけ考えて、キャロと一緒に周辺の警戒と探索を行うと言ってくれた。

フォリは、少しだけ安心した。
魔王カミドネからは、出来れば第三段階の参加は見送って欲しいと言われていた。

第二段階までは、魔王カミドネの眷属たちが協力して行うとしても、第三段階は、魔王ルブランに任せてしまおうと考えていたのだ。
魔王ルブランも、大筋で合意は貰っている。それで、眷属の中には最終段階で魔王ルブランを頼るのは、違うと思っているかもしれないと考えて、最終判断は個々の眷属の意見を尊重すると言っていた。

「わかりました。周辺の警戒をお願いします」

イドラが天幕から出て行った。
キャロは、魔王カミドネに連絡を入れて、魔王ルブランへの助力をお願いする。誰が来るのか解らないが、自分たちが行うよりも、第三段階は魔王ルブラン配下の方が、確実に遂行できるだろう。

魔王ルブランからは、派遣部隊の編成に1日必要だと言われた。
それでも1日でダンジョン攻略の部隊編成が終了すると言っているのだ。それも、数百年に渡って、神聖国の聖都にあったダンジョンの攻略部隊だ。深度も難易度も高いことが考えられている。

『フォリ。ルブラン殿からは、ルブラン殿が部隊長を務めて、少数精鋭で攻略を行うと言われた』

「え?ルブラン様が来られるのですか?」

『そうだ』

「魔王様は、反対をされなかったのですか?」

『戦力を考えれば、ルブラン殿が適任だと言っていた』

「・・・」

『怖く、凄い魔王だ。勝てるわけがない』

「はい」

キャロは、魔王ルブランの声を聞いて安心感を得られる。
そして、魔王ルブランの為に命を捨てるくらいなら簡単にできると思っている。

部隊編成を1日で終わらせて、その後に移動するとして、3日後には到着する。

それまでに、第二段階が成果を出せれば良いとは思っている。
もし、間に合わなければ、魔王ルブランと話をして、第三段階に移行するのを遅らせるか、2.5段階というべき補助作成を実行するか決めればよいと思っている。

「キャロ様」

魔王ルブランとの会話を終わらせたキャロの下に、マリアが戻ってきた。

「何か、問題が発生しましたか?」

「問題と言えば、問題なのですが・・・」

「どうしました?問題が出たのなら、対処を考えなければ!」

「あっ。問題ではないです。ただ、第二段階が、終わりそうです」

「え?」

「門が、内側から開けられてしまいます」

「は?まだ、始めたばかりですよね?」

「はい。第二段階の初手を行った所、聖都はパニック状態に陥ってしまって、現状は初手で作戦を止めています」

第二段階は、聖都の中にトレスマリアスが侵入して、商店や軍の施設に放火する。
放火後に、鎮火まで行い。鎮火時に、皆で作った”チラシ”をばらまく予定になっていた。

内容は、聖王がダンジョンの魔王であることや、人を生贄にして自らの寿命の延長を計っていたこと。帝国や王国を魔王ルブランや魔王カミドネにけしかけていたのは、自らの顕示欲の為だということが書かれていた。
周知の事実だが、はっきりと明言されていなかった。特に、聖王がダンジョンの魔王であり、聖都が魔王に支配されている場所である。そのために、逃げ出した人間が帰って来ないのは、秘密裡に魔王が始末して、自分の”贄”にしているからだと結ばれている。
酷いマッチポンプだとは思うが、放火は”聖王”の見せしめで、その”火”と消火したのは魔王カミドネの配下だと宣伝する予定だったのだ。

予定が狂ったのは、マリアとマルタとマルゴットが、自らの眷属を使って、聖都の中にある15箇所に一斉に放火を行ったからだ。
自らが姿を見られるのを嫌って、太陽が沈んだ時間帯を選んだのも、おおきな間違いだった。

聖都を炎が照らす。
”浄化の炎”のように、聖都を焼き尽くしてしまうのではないかと、聖都に残っている者たちが考えてもしょうがない状況だ。

第二段階では、門を内側から開けさせて、混乱を作り出して、第三段階に移行する予定になっていた。

しかし、第三段階で突入予定になっている魔王ルブランをリーダーにした攻略部隊は、4日後に到着予定だ。
フォリの見立てでは、4-5日でパニックになり、6日目に聖都にある教会施設に放火することで、パニックになると考えられていた。

それが、最初の軍の施設と無人になった商店への放火だけでパニックになってしまった。

トレスマリアスの報告では、少なくても300名以上の死者が出ている。
死者が増えれば、トレスマリアスの眷属が増えることを意味している。

散発的な放火に留めて、魔王ルブランたちが到着してから、第三段階に移行するための作戦を実行することに決まった。

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