【第七章 神殿生活】第十六話 お見合い?

 

アデレードとルアリーナの強い。本当に、強い要望で、眷属の紹介を先に行うことになった。

バックヤードに連れて行こうかと思ったが、途中でブロッホから待ったがかかった。

「ブロッホ?」

「旦那様」

ブロッホが人型の時には、”旦那様”と呼ぶことにしたようだ。
俺の呼び名に関しては、”リン”で統一して欲しいと言っているのだが、皆が勝手に呼び出したので、面倒になってしまっている。それに、”名”を呼ばれなくても、繋がりがあるので、問題になることはない。

「どうした?」

「お客人を、神殿内部にお連れになるのは、時期尚早だと思います」

「そうか?」

「はい。ロルフ様が作られた、森の廃墟に、眷属を集めています」

「え?」

ブロッホの言葉を受けて、先を歩いていたアデレードとルアリーナが止まって振り向いた。
そこには、何かを期待している表情がある。

「ブロッホ。眷属が、森で候補を集めたのか?」

「はい。正確には、”支配した”というのが正しいです」

「まずは、俺が契約した方がいいのか?」

「はい。新しい種族は、旦那様の契約が必要です」

「わかった」

「そうだ。ブロッホ。数は?」

「1,000には届いていないと思いますが・・・」

「多いわ!それに、”が”なんだ!」

「少ないと感じた者たちが、探索範囲を広げています」

「は?」

「森の全域に規模を広げて意識を持った者たちを探しております」

ブロッホが何気なく言っているけど、俺たちが廃墟と街道を見ていた時に、眷属の気配を感じなかった。魔物も居なかった。

「は・・・。ん?どうした?」

「リン様。今のお話だと、森の中に、魔物が居なくなるように思えるのですが?大丈夫なのでしょうか?」

「どうだろう?ブロッホ?」

「殿下のご心配は解ります。ロルフ様が、廃墟を中心に魔物が徘徊するように設定を行っております」

「ちょっと待て!それでは、廃墟を中心に魔物が出現するのだな?強さは?」

「外周部に向かうほど強くなります。街道やメルナの町から1キロ以内には、従来の魔物が出ます」

「廃墟の近くが弱いのか?」

「外側には、ヒューマがなんとか倒せる程度の魔物を配置する予定です。具体的には、オルトロスを群れで徘徊させます」

「・・・。ロルフの提案か?」

「いえ、マヤ様が・・・」

「わかった。まだ実行は、していないよな?」

「・・・」

「遅かったのか?」

「はい」

「街道は安全なのだな?」

「はい」

「わかった。アデー。ルナ。俺は、廃墟に戻って契約を行う。廃墟に皆を連れてきてもらえるか?」

二人が了承したので、ブロッホと廃墟に戻る。

ブロッホが、皆に戻ってくるように伝える。
待っていると、気配が濃くなってくる。

最初に戻ってきたのは、アウレイアとアイルだろう。
皆が選ぶ眷属候補の筆頭だ。フェンリル種は数が少ないので、拠点の防衛に残って欲しい。

相性が良ければしょうがないと思うのだが・・・。

ジャッロとビアンコとラトギは着ていないようだ。
森の中なので、機動力が不安なのだろう。

見た事のない種族も多い。

鳥型の魔物は、森の探索を行うのでは必要だし、アロイ側の村との連絡で必要になる。

種族は解らないけど、梟系かな?あとは、椋鳥みたいな鳥もいる。

「ブロッホ。全員が契約希望なのか?」

「はい。群れで神殿に所属することを望んでいます」

「わかった。それから、客人たちとの契約も問題はないか?」

「はい。ミア嬢と同じ契約なら大丈夫です」

それだけ聞いて、群れの長に名付けを行った.目の前にいる種族だけで、2-30の群れだ。
昆虫系の魔物がいる。ブロッホが気を利かせて、皆に貸し与える眷属に向いている魔物を集めてくれたようだ。それでも、4-500は居る。群れの長は、いつものように名付けの効果で進化が発生した。群れの中でも、かなりの魔物で進化が行われた。俺にも力の奔流が押し寄せてくるのがわかる。

話を聞くと、森の中で縄張りを作って、過ごしていたようだ。
今後も、森の中で過ごすこともできる。神殿で生活を始めても大丈夫だと伝えた。

契約を行って、群れの長たちと話をしていると、皆がゲートから出てきた。

「リン君!連れてきたよ」

「ありがとう。説明は必要ないと思うけど、群れの長以外は大丈夫だ」

「ねぇリン君。どのくらいの眷属が居るの?」

「沢山じゃだめか?」

「・・・。一つ相談だけど、リン君の眷属から私たちを選んでもらうのはできる?」

ルアリーナの提案を聞いて、ブロッホを見ると、長の方に視線を動かしている。

長を見ると、皆が頷いているから、眷属が皆を選ぶのでも大丈夫なようだ。

リデルやアイルやアウレイアやビアンコも、新しい長たちの輪に加わって話を始めた。
神殿の事を教えているのかもしれない。ヒューマも来たのか、長たちはヒューマたちに任せて大丈夫なようだ。

「ルナ。大丈夫だ。適当に、模擬戦をやったり、遊んだり、触れ合ってくれ。時間は・・・」

「旦那様。2時間もすれば、夕方です。夜にかけて魔物が現れます。その前に、お決めになるのがよいと思われます」

ブロッホと話をして、後ろを振り向いたら、皆が眷属たちと触れ合い始めている。

「・・・。まぁいいかぁ」

「ねぇリン君。1時間後に、”ふれあい”を辞めるから、皆に誰と一緒に居てくれるのか聞いてくれる?」

「わかった。わかった」

輪の中には、アデレードも混じっている。
いいのか?王女が、魔物を連れて歩いたら問題にならないか?

嬉しそうに、ネコ型の魔物と触れ合っている。

問題があったら・・・。気にしてもしょうがないな。殿下が望んだと言い訳をしよう。それに、護衛としての役割なのだから、文句は言われないだろう。

1時間は、そんなに長くない。
いろいろな種族が居るので、なかなか全部と触れ合うのは難しいのだろう。

俯瞰して見ていると、盛大なお見合いにも見えて来る。
これだけの数が集まったのなら、タシアナの弟や妹にも眷属をつけた方がいいかもしれないな。

「なぁブロッホ。今更だけど、ここに集まっている者たちは、護衛として役立つのか?」

「今の状態では、強者と対峙するのは難しいとは思いますが、マガラ渓谷を警護している程度の者たちなら、4-5人がまとまってきても対処が出来ます」

「え?警護って、門番みたいな人たち?」

「はい。マガラ渓谷を越える時に、前後に付いている連中でも大丈夫です」

ブロッホの言い方では、アゾレムの兵士程度では問題にはならないと考えていいだろう。4-5人は、甘く見ている可能性があるが、皆が逃げる時間くらいは大丈夫だという事だな。

時間が経過したが、ふれあいお見合いは続けられている。
30分の延長を頼まれた。

「タシアナ!」

「何?」

「すまん。タシアナの妹や弟にも、眷属を護衛として付けたいけど、いいか?」

「いいの?」

「もちろん。大事にしてくれるだろう?」

「もちろん!本当?」

「あぁ今日は、もう遅いから次だな。イリメリが外に出ているから、帰ってきてからになるとは思う」

「うん!希望を聞いておくね」

「頼む」

どうせ、二回目の”お見合い”も、タシアナだけではなく、皆が参加するだろう。

さらに、15分の延長が終わって、皆が後ろ髪を引かれる表情で、戻ってきた。

誰が、もてたのかは名誉のために秘匿しておこう。宿屋の看板娘の笑顔は魔物には効果が薄いようだ。
それでも、皆が、自分に寄ってきた魔物の中から、4-5体を選んで契約を結ぶことになる。魔力の関係で、5体以上は難しいようだ。ルアリーナは10体を連れてきて、魔力切れまで契約を試みたが5体以上は無理だった。

神殿の中でマヤと一緒に居るはずのミトナルが俺の横に来て話しかけてきた。

「リン」

「ミル?どうした?」

「ルナの魔力切れは、訓練次第で増える。増えたら、また契約ができる」

「え?」

「僕が試した。最初は、4体で精一杯だったけど、ダンジョンで鍛えたら、7体まで増やせた。今なら、あと3-4体なら増やせる」

これで解った事がある。
契約は、俺の眷属化と違って、ステータスの上昇はない。魔力を使ってのパスを繋いでいるだけのようだ。
パスを繋いで維持するのに、魔力が必要になる。そして、スキルや魔法を使う時の魔力は眷属が魔力タンクになる。パスで使った魔力が上限のようだ。もう少し検証を行うとは言っていたが、こういうのは、フェナサリムやイリメリが解明するだろう。

これで、イリメリ以外には護衛となる眷属が付いた。俺との連絡も簡単になった。
イリメリは戻ってきてから”お見合い”だな。

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