【第三章 魔王と魔王】第十一話 急報
今日も、部屋でまったりと過ごしていた。
俺がやらなければならないことは少ない。
今日も、RPGでレベルアップを行っている。パッチが入らないし、アップグレードも行われない。オンラインゲームはできない。そのうち、ミアやヒアにゲームを教えて対戦をしても楽しいかもしれない。
髭面の大工で、配管工の仕事をしたことがある奴が主人公のカートレースゲームをしてもいいだろう。
『魔王様』
セバスか?
何か、重要な案件が発生したのか?
最近では、どこかの国が攻めてきても、事後報告で受ける事が多くなっている。
「どうした?」
『出来ましたら、玉座で』
「ん?わかった。何が発生したのかだけ教えてくれ」
『はっ。神聖国が、カミドネ村の近辺に兵を配置しております。魔王カミドネの報告では、攻め込む準備だと思われます』
神聖国か・・・。
カミドネの話を聞かなければ解らない。現状で、撃退できるのなら、カミドネに任せればいい。増援が必要なら、セバスとモミジに案を出させればいい。俺は、ポイントだけを考えれば・・・。問題は、ないよな?
いきなり攻め込んできたのか?
カミドネ村は”国”には所属していないから、ダンジョンの付属品だとでも思っているのか?
急報ではあるが、攻め込まれる前に解ったのなら、問題はない。奇襲されるのが怖いのであって、しっかりと諜報や索敵が出来ているのなら、対処を考える時間が持てる。
「カミドネが来ているのか?」
『はい』
カミドネが報告に来る位なら、まだ大きな問題にはなっていない。
急報ではあるが・・・。
俺に話を通したということは、セバスとして、今までにない戦略を試したいのだろうか?
俺に許可を求める必要があると考えているのなら、今までと違う種族を使いたいのか?俺が呼び出していない種族を使う許可が欲しいのかもしれない。
「わかった。先に行って、モミジを呼んで控えさせてくれ、モミジには増援に行く場合に、可能な人材をリストアップしておくように指示を出しておいてくれ、時間がかかるようなら遅れてきても良いと伝えてくれ。その場合には、ミアとヒアを控室に来るように伝えてくれ」
『かしこまりました。ナツメとカエデをサポートして、呼び出します』
カミドネから、大筋の情報を得ているのだろう。
セバスとモミジが主軸となって、ナツメとカエデがサポートを行えば、リストアップは十分だろう。セバスの雰囲気から、派遣部隊を編成するように思える。もし、部隊を編成するのなら、カミドネに部隊を編成させた方がいいだろう。カプレカ島から部隊が出ると、目立ってしまう。それに、カプレカ島には他国を”攻める武力はない”というのが、建前として使われている。
「わかった。5分後に、控室に移動する」
『はっ』
神聖国か、厄介だな。
アイツらの話は、ティモンやボイドからの報告で読んでいる。帝国は、それでも妥協ができるレベルで理知的な判断をしてくれる。お互いに譲れない所が有っても、妥協点を見つける交渉をしてくれている。実際に、城塞村などはいい例だ。貴族が管理をしていない飛び地として管理されている。そのうえ、ギルドや俺たちとの取引には、”税”が掛けられていない。俺たちカプレカ島との緩衝地帯になっている。
神聖国は、ダンジョンは、”人類の害悪で滅ぼすのが妥当”と宣言している。
そのうえで、自分を”神”だと言っている。らしい。痛い。法王は、入れ替わっているらしいが、帝国の情報局やギルドの資料では、”法王”は建国当時から変わっていない。魔王なのだろう。
攻めるにしても、神聖国と戦争を行った上で、ダンジョンを攻略しなければならない。もしかしたら、俺と同じように神聖国をダンジョンの領域にしている可能性すらある。
まぁ考えてもしょうがない。
カミドネが攻められる理由が解らないが、攻められたのなら撃退しなければならない。こちらから、神聖国に攻め込む必要はない。
控室に移動したら、ミアとヒアが揃って待っていた。
「魔王様」
必ず、ミアが俺に声をかける。ヒアは、ミアの後ろに控える事が多い。
「ミア。ヒアと一緒に、先に行って、皆を揃えておいてくれ、ルブランとモミジが遅れるようなら、ミアとヒアが玉座の横に並ぶように」
「「はっ」」
二人は、緊張した表情をしながらも、どこか嬉しそうにして、控室から出て行った。
ミアの声が響いている。セバスとモミジはまだ来ていないようだ。
俺を呼び込む声が聞こえる。
広間に出ると、ミアが控室側に居て、ヒアが反対側に居る。玉座までは、ミアが誘導するようだ。
玉座に座ると、ミアが皆に頭を上げるようにいう。決まり事なのだろうけど、面倒だと感じてしまっている。
「魔王様。お時間」「カミドネ。そういう話は、いい。それで、神聖国が攻めてきたらしいが、規模は?」
既に、情報はセバスに渡っているのだが、俺に報告する義務がある。と、セバスたちは考えている。
「はっはい。私の眷属であるフォリから説明させます」
「わかった。許可する」
カミドネの隣に居た人物が立ち上がって、説明を始める。
思っていた以上にしっかりと情報の収集を行っている。
規模は、5千。3千は奴隷兵だということだ。
帝国や連合国の戦闘を聞いていないのか?
カミドネなら倒せると考えたのか?
状況から、単純にカミドネ村が邪魔になったのだろうか?
「フォリ。状況はわかった。カミドネ」
「はっ」
「カミドネ村には、獣人も多く来ているのだな?」
「はい」
「そうか・・・」
「魔王様?」
「ヒア。カミドネに説明してやれ」
「はい」
ヒアが一歩前に出て、ミアを見てから説明を始める。
神聖国の狙いは、カミドネ村で間違いはないだろう。
潰せればいい。潰せなくても、戦闘に出てきた獣人を捕えられれば、奴隷にして戦力増強に繋がる。神聖国としては、大きな損失がない戦闘になるはずだ。
「魔王様」
「カミドネ。お前たちの戦力で、撃退が可能か?フォリの説明では、攻め込まれる想定ルートは、カミドネ村の領域外だろう?」
「はい」
「魔王様。遅れまして、もうしわけございません」
セバスが、モミジと入ってきた。
情報がまとまったのだろう。
「丁度よかった。増援は可能か?」
「はい。神聖国の期待を裏切るような戦力を用意します」
カミドネの表情が変わる。
セバスが言っている意味が解らないのだろう。
セバスとモミジが用意した戦力は、アンデッドを主軸とした編成だ。リッチをリーダにしたグループで編成している。面白い編成だ。神聖国を相手にするのなら、最悪な組み合わせだ。奴らは、アンデッド系の魔物に強いスキルや武器を持っている。
「ルブラン殿。神聖国は、アンデッドに強いのだが?」
「貴殿たちからの情報から、最適を導き出した」
「我らの?」
「そうだ。神聖国の編成を聞いて、編成した」
「え?」
「魔王カミドネ。フォリ殿は、気が付いたようだぞ?」
「フォリ!」
「は。カミドネ様。神聖国の編成は、獣人を軸に物理攻撃が主体です。神官も低位の者で、スキルを持っていないと推測されます」
「あぁ・・・。それで、アンデッド系の魔物での編成なのだな」
セバスが、俺に向き直って、頭を深々と下げる。
「魔王様。アンデッドで部隊を編成する許可を頂きたい」
「わかった。ポイントは、カミドネに付与して、カミドネとルブランで編成しろ。運用は、カミドネに一任。残ったアンデッドは、そのまま森で運営するように」
「「はっ」」
俺の役目は、これで終わり。
後は、セバスを中心にモミジやカミドネたちが考える。
アンデッドを使って、神聖国からの遠征軍を迎え撃つ。
相性が悪いと思われる魔物での対処だ。神聖国からの攻略部隊を慌てるだろう。特に、送り出した者たちは、絶望すればいい。
奴隷兵たちは、無傷で捕えられる。奴隷を解除してカミドネ村に吸収すればいい。
神聖国の奴らが何を考えているのか解らないが、奴らが獣人を使って、獣人の奴隷を増やそうとするのなら、それを捕えれば、カミドネ村の人口が増える。魔王カミドネの名前も売れるだろう。次いでに、魔王ルブランの配下として、獣人を守っていると思われたら、カミドネ村の意味も出て来る。
さて、部屋に戻るか・・・。
「ルブラン。後は、任せていいか?」
「はい。ご報告に伺います」
「わかった」
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