【第十一章 ネットワーク会議】第二話 調査

 

 ユウキとファミレスで食事をして、家に帰った。
 家に着いて、メールを確認すると、未来さんと美和さんからメールが届いていた。

 未来さんは、依頼をまとめてくれていた。
 美和さんは、報酬に関する事と、納期に関する事が書かれていた。報酬は金額とは別に用意されていた。報酬は、かなりの後払いにされそうだけど、約束してもらったのでありがたく貰っておく。

 ネットワーク会議のシステムは、選択肢は少ない。
 未来さんの要望であった”独自サービスに見える”が意外と難しいのだ。

 Skype にがわを被せようか?
 Skype なら、APIが公開されているし、ライブラリもあるから、独自のサービスに見せる事も可能だ。

 ひとまず、提案書を書いていく。
 案件は3つ。
 一つは、余裕だ。美和さんと未来さんのパソコンなら、Skype で十分なはずだ。
 ソフトウェアの代金を考えると、かなりの高額になってしまう。

 Flash はダメだろう。もう、アンイストールが推奨されている。

 着信だ。オヤジ?
 このタイミングで、電話がかかってくるのは、未来さんの件で”なにか”あるのだろう。

『タクミ。未来の奴が面倒を言い出したようだな』

「それはいいけど・・・」

『あぁSkypeのサーバがほしいのだろう?真一から貰った。あとでWindows Server と一緒に送る。まだラックには空きはあるだろう?』

「ライセンスは?」

『正規の物だ。クライアントのライセンス数も問題ない。美和からおおよその人数を聞いて、用意した』

「わかった。でも、足が出てしまわないか?」

『大丈夫だ。美和が、仕組みを他の弁護士に売り込む』

「は?」

『弁護士も大変ってことだな。それと、真一が営業と話を付けた。やつらも、弁護士が使っているインパクトが欲しいらしい。全面的なバックアップが約束されている』

「いいのか?」

『問題はない。美和と未来が営業と話をした。業務内容までは話せないが、どういった使い方をしているのかを、実績として乗せてもいいという話で落ち着いた』

「大掛かりな話だな。いいのか?」

『大丈夫だ』

「地下で運用すればいいのか?」

『そうだ。固定回線を追加するぞ。他の混同するのはよくない。ルータも真一から送られてくる』

「わかった。中も分離するのか?」

『まかせる。美和や未来は、最初の回線からアクセスさせたほうがいいだろう?クライアントには、VPNで繋いで貰ったほうが、話の種が増えるだろう』

「マニュアルが面倒だけどいいのか?」

『この手のやつは、少しだけ面倒なほうが喜ばれる。自分が特別だと思えるからな』

「わかった」

 オヤジからありがたい助言と援助を受けて、一気に実現が簡単になった。
 Skype for Business は、触った事がないから、セットアップや利用方法の情報収集から始める事になる。マナベさんとオヤジが勧めてくるのなら、業務を行うのにスペックは、問題ではないのだろう。セットアップがされているのかわからないから、その辺りから調べておこう。

 ADの運用を考えると、未来さんや美和さんのパソコンを参加させる必要があるのか?
 会議室での運用を考えると、ADに参加は問題ではないだろう。

 ライセンスを考えなくて良いのは本当に楽だ。あの会社の製品で面倒なのが、ライセンスの管理だからな。解らなければ、営業に問い合わせるのが一番だと、マナベさんやオヤジには言われているけど、高校生がマイクロソフトの営業に連絡するなんて”不可能”だ。
 連絡すれば丁寧に教えてくれるのは解っている。それでも・・・。

 提案書は、スムーズに書き上げられた。

 問題がないか、チェックをして、期限前に送付しておこう。

 秘密基地からリビングに戻ると、ユウキがゲームをしていた。

「タクミ。終わったの?」

「ひとまず」

「どうする?お風呂?それとも、寝る?」

「そうだな。ゆっくり風呂に入ってから寝るか」

「うん。僕、お風呂を入れてくるね。タクミ。あと、お願い!」

「おっおう」

 ユウキからゲームのコントローラを渡される。
 ジリ貧な負け戦じゃないか?

 ユウキが戻ってくるまで現状維持に徹した。ユウキにコントローラを返すと、ゲームをセーブしないで終了させていた。

 風呂に入ってから寝室に移動した。
 明日からは、暫くは未来さんと美和さんからの依頼の下調べだな。マナベさんから送られてくるサーバが届くのがわからないけど、オヤジの言い方だと明日にでも届きそうだ。

”ポーン”

 端末に重要なメールが着信した。枕元に置いているタブレットを使ってメールを確認する。

「え?」

「どうした?」

 寝落ち状態だったユウキが起きてしまった。

「あぁマナベさんが送ってくれた荷物が明日の夕方には届くらしい」

「へぇ。それで?」

 そりゃぁ興味はないよな。

「ん?あぁ。予想よりも数が多くてびっくりしただけだ」

「そうなの?ミクさんの所の話?」

「あぁ」

「そんなに多いの?」

「マナベさんから、送られてきたのが、ダンボールで6箱になっている」

「6箱?大きさは?」

「そこまでは書かれていない。明日は、学校での用事もないし、まっすぐに帰ってきて荷物を受取るとしたら・・・16時には帰ってこられるけど、18時くらいにしておくか」

 学校から帰ってから、荷物を受け取ってセットアップを始める。
 提案書の内容から若干変更があるかもしれないが、大本は変わらないだろう。

 学校には、バイクで行った。ユウキを乗せているので、大将の所におかせてもらった。
 授業が終わって、ユウキを待ってから家に帰ると、16時を回った所だった。17時でも間に合った。荷物の到着まで、ラック周りを片付ける。
 多分、2Uのサーバだろうと予測して、ラックを確認する。ディスプレイにはまだ余裕があるので、繋げておけばいいだろう。

 18時を少しだけ回った所で、荷物が来た。
 裏に回って貰って6箱を受け取った。

 一度、倉庫に入れてから、開封した。
 2Uのサーバと、1Uに4台の小型サーバがセットされている物と、ルータが二つとハブが入っていた。あとは、ライセンスが書かれた物やソフトウェアが入っている箱だ。

 軽自動車が買えるくらいの資産価値があるぞ?サーバは少しだけ古いけど、十分現役で使えそうだ。
 ラックに設定して、火をいれる。物理で二つのCPUが入っている。メモリも16Gも積まれている。小型サーバの方は、監視ソリューションが詰め込まれていた。

 そう言えば、回線を増やすらしいから、ルータは、そのためなのだろう。
 ライセンスの箱は、秘密基地で保管しておけばいいだろう。あとで、リストを作っておこう。

 機材を取り付けて、火をいれる。
 まずは、家のネットワークに接続してみる。IPの設定や現在の状況は、マナベさんのメモが入っていた。内容を確認して、受領のメールを出す。

 オヤジからの返事で、回線工事が来週の土曜日に決まったと連絡が入った。立ち会いも問題ないので、返事をしておく。

 提案書で心配な部分は、クライアントに配布するアプリケーションだ。
 いろいろ実験的に作ってみるしかないだろう。

 この週末に実験的に作ってみるしかないな。

「タクミ!」

「ん?どうした?」

「週末。僕、ママの買い物に付き合ってきていい?テーブルとかソファーとか買いに行くみたい」

「わかった。俺は、秘密基地に籠もっているから気にしなくていいぞ」

「うん。夕方には帰ってくるから、ご飯をよろしく!」

「土日の両方か?」

「うん。いろいろ回るみたい」

「わかった。美和さんが車を出すのか?」

「ううん。美優先輩と梓先輩が手伝いで来てくれる」

「・・・。わかった、二人の分も夕ご飯を用意しておく」

「うん!先輩たちを家に案内していいの?」

「そういう約束をしているからな」

「わかった!ありがとう。タクミ!」

「何が食べたい?」

「簡単な物でいいよ。それこそ、庭でバーベキューでもいいよ!」

「そうだな。1日はそうしよう。もう1日は、タコパでもするか?」

「うん!」

 土日の両方で買い物に行くのか?
 美和さんも本格的に始めるようだな。ネットワーク会議が必要になるような状況が考えにくいけど、必要になっているのだろう。

 ユウキが出かけるのなら、秘密基地に籠もってプログラムを作成しても良さそうだな。

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