【第六章 約束】第四話 行動方針
ユリウスはまだ何か言っているが、クリスティーネが納得したので、ダンジョン・コアの説明は、共和国を落としてからに決まった。
俺が攻略したダンジョン以外にも、共和国内にはダンジョンが存在している。現在は緩やかにだが、俺が攻略したダンジョン以外のダンジョンで共和国の屋台骨を支えている。共和国の弱体を狙うのなら・・・。ダンジョンは攻略しておいた方がいいかもしれない。
クォートとシャープがヒューマノイドタイプの戦闘員を連れて戻ってきた。
共和国への侵攻計画を共和国の領土で練っている。
すでに進入を果たしているので、どうやって動くのか?
戦力は、ヒューマノイドタイプを貸し出す。ヒューマノイドなら、コアに繋がる人格を守っていれば・・・。
共和国内にある国で近いのは、デュ・コロワ国だが、アルトワ・ダンジョンのこともある。確実に落とす。
「アル!」
ユリウスとクリスティーナには、デュ・コロワ国を落とすのは、違う意味があるようだ。
「ん?」
「いいのか?」
「あぁ俺は・・・。クォートとシャープを連れて、ダンジョンを回る。一度、王国に帰ってからにするけど、大丈夫だよな?」
「エヴァか?」
「そうだ。約束の期日まで、まだあるけど、攻略を行っていたら間に合わない」
「そうだな。しかし・・・」「アルノルト様。エヴァを国境に呼びましょうか?」
「できるのか?」
「はい。王都には、手の者がいます。エヴァンジェリーナ様も動けるようになっていると聞いています」
「わかった。国境ではなく、ウーレンフートの方が嬉しい。エヴァを、ウーレンフート経由で連れて来る」
「わかりました。確かに、時間的にも無駄がなくてよいと思います」
「悪いな。クリス。頼めるか?」
「承りました」
クリスティーネは、俺とユリウスに軽く頭を下げて、この場を離れた。
王都にいる者に伝令を出すのだろう。距離から考えれば、数日の猶予が出来た。
共和国の・・・。デュ・コロワ国の近くの街を落とすまでは一緒に居られそうだ。
「アル!」
「どうした?準備はいいのか?」
「俺たちは、デュ・コロワ国の首都を急襲する。お前の用意した兵士たちには負担を掛けるが、指揮権を俺たちに渡して欲しい」
「それは・・・。いいが?」
「お前は、すぐに準備をして、ウーレンフートに向かえ!」
「ん?移動は・・・」
「アルノルト様?確かに、少しは余裕が出来ましたが、アルノルト様には、やるべき事があります」
”やるべき”こと?
「・・・。ん?あぁ・・・。そうか、国境を越えた証拠を残す必要があるのだな」
「はい。あと、カルラとアルバンの移送も、アルノルト様の役割です。ライムバッハ領の領邸に届けてください」
俺は、俺の役割か・・・。
確かに、ユリウスたちは信頼している。しかし、カルラとアルバンを運ぶのは、俺の役割だ。他の誰にも渡したくない。
「わかった。クォートとシャープは、俺に着いて来てくれ、他はユリウスの指示に従ってくれ」
これで大丈夫だろう。
「アル。人の欠員も作らないことを誓おう」
「ユリウス。違う。違う。お前たちの誰かが犠牲になるのを、俺は望まない。それに、ヒューマノイドタイプは、魔物でも人でもない。俺の為に、俺の目的のために動く者たちだ。乱暴に扱っていいとは言わないが、お前たちが犠牲になって助ける存在ではない。この者たちも、解っている。それに、お前たちに奉仕することを望んでいる。俺が言えたセリフではないが、ユリウス。頼む。無茶をしないでくれ、共和国は、放置で構わない。共和国は・・・。弱体化が始まる。いいか、絶対に無理するな」
「アルノルト様?」
「クリス。お前はどうする?」
「私は、丁度いいことに、アルトワ・ダンジョンに拠点として使える施設があります。アルノルト様のご許可が頂けるのなら、この場所を拠点として、活動を考えております」
「わかった。皆に紹介して、アルトワ・ダンジョンにいるメンバーを使ってくれ、無茶だけはさせるなよ?」
「わかっております」
行動方針が決まった。
全体の指揮は、ユリウスが行う。当然と言えば、当然な処置だ。
ギルベルトは、アルトワ・ダンジョンに残って、周辺の地図や交通網の構築を行う。主に、国境からの整備を優先する。配下は大量のヒューマノイドタイプだ。力技で解決を行う。まっすぐに、アルトワ・ダンジョンに来られるように道を作るようだ。最初は、反対意見も出たのだが・・・。
ギルベルトが行商人をむざむざ共和国に渡すのは愚かな事だから、まずはアルトワ・ダンジョンに拠点を作らせて、そこから共和国に商いを行わせて、アルトワ・ダンジョンを戻ってくる場所として認知させるようだ。
共和国のデュ・コロワ国以外との経済戦争の拠点にするようだ。
クリスティーナは、アルトワ・ダンジョンに残って、諜報活動を行うようだ。内容は教えてくれなかったが、”笑顔”で説明を拒んだので、大丈夫だろう。
諜報戦だけでは崩壊しないと思うが、やりすぎないように釘をさしておく必要はあるだろう。クリスティーナは、諜報活動と同時に欺瞞情報を流すようだ。
俺の情報は、既に流れてしまっている。国境を越えた情報は消せない。ダンジョンを攻略して回ったのも周知な情報だ。
そして、今回の侵攻を正当化する情報は隠せない。
俺が共和国の一つ”デュ・コロワ国”の者に、”襲われた”のは事実だ。
話を聞いていると、隠せないのではなく、隠す必要がない情報だ。クリスティーネは、報復を正当化する情報を流すようだ。
ユリウスが率いるのは全体の1/2だ。
他は、ギードとハンスがそれぞれ1/4を率いて、王都の周りにある村や町を侵攻する。他の町や村は無視することに決めた。補給の必要がないヒューマノイドタイプが居て、ユリウスとギードとハンスは、アイテム袋を持っている。もちろん、それぞれのパートナー向けに作られた袋も持っている。これが、周りを無視して王都を直撃する理由だ。補給が伸びても、ある程度なら耐えられる。
そして、アルトワ・ダンジョンからの補給は実質的に”無制限”だ。
ユリウスたちに問題が発生した時には、俺に連絡が来る。その為に、エイダをクリスティーナに預けておくことに決めた。
「アルノルト様。本当なのですか?」
「あぁ攻略したダンジョンなら、ドロップの調整が可能だ。ダンジョンの力・・・。まぁ魔力だと思ってくれ、魔力は必要だが、ドロップをある程度なら弄れる」
「攻略とは?」
「最終層のボスを倒して、その先にあるコアに触れる。アルトワ・ダンジョンも、ウーレンフートのダンジョンも、あと共和国にあったダンジョンの多くは、コアルームに入るために、”なぞかけ”が設置されていた。正解を答えると、扉が開かれる。場所によっては、数回の”なぞかけ”が設置されている」
「”なぞかけ”とは?」
「・・・。説明は、難しい。特殊な知識が必要だ。俺は、偶然・・・。その辺りの知識があったから答えられた。アーティファクトや関連の知識が必要だ」
「わかりました。私たちでは、突破ができないのですね?」
「そうだな。簡単に言えば、イヴァンタール博士と同じような知識が必要だ」
「え?アルノルト様は?」
「似たような系統だが、俺は魔法の力を上げた先に得られた知識で代替えが出来た」
「・・・。わかりました。それと、ドロップの調整を行う場合には、どうしたらいいのですか?」
「試したけど、クリスに権限の委譲は無理だった。補助権限でも無理だ。エイダを置いていく、エイダに頼んでくれ」
「わかりました。エイダ様。お願いいたします」
「エイダ。ドロップの調整は、アルトワ・ダンジョンだけだ。他は、必要ない」
”了”
「ドロップを変えてしまうと、ダンジョンの魔力が減るのですよね?」
その疑問は、クリスティーネからだされたが大丈夫だ。
「大丈夫だ。俺が攻略したダンジョンは繋がっていて、ウーレンフートで余っている魔力をアルトワ・ダンジョンに回せる」
「そうなのですね。詳しい話は、教えてもらえるのですか?」
「全部の説明を始めたら、時間が必要だから、簡単に説明をするぞ?」
「はい」
クリスティーネに、ネットワークの概念をのぞいて、簡単に説明を行った。
理解は出来たが、納得が出来ない事が多いとの話だったが、今の所は、アルトワ・ダンジョンの設定を変更しても、全体では大きな問題にならないとだけ理解をしてもらった。実際に数値を示して見てもらわないと解らないだろう。理論を説明するのにも、実際に見てもらう必要がある。
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