【第三十一章 本腰】第三百十六話

 

二日後に、長老会を開催することに決まった。アトフィア教への警戒を強めることになってしまうが、相手が何をしているのか解らない状況では、攻めるにしても、守るにしても、状況の把握をしなければならない。
ルートガーが長老や関係者の間を駆け回っている。
クリスティーネもルートガーの手伝いをしている。ヴィマやヴィミやラッヘルやヨナタンは、クリスティーネの代わりに各所に連絡を行っている。今回の会議は、最初は長老衆だけで行うが、その後にチアル大陸の幹部を含めた会議を行う。
ルートガーは、長老衆との打ち合わせの準備で忙しいために、代わりに幹部会の開催準備はクリスティーネが行っている。

「ツクモ様。シロ様。長老が揃いました。開場まで、ご案内いたします」

「わかった。シロは、欠席だ」

案内の為に、俺たちを迎えに来たイェドーアは、シロを見てから、頭を下げる。
シロは、最近になって体調が悪い。熱はない。風邪とかではない。ただ、疲れが溜まっている感じがして、”だるい”と言っている。長老衆との話は、俺が出れば大丈夫だと思うので、シロに休んでもらうことにした。
シロには、フラビアとリカルダがシロについている。”だるい”だけで、ゆっくりと休んでいることになるのだが、シロの性格もあるのだろうが、寝ているだけだと、落ち着かないようだ。だから、フラビアとリカルダがついて散歩を行うようだ。

「わかりました」

イェドーアが、会議室をノックする。
部屋には、長老が揃っているようだ。室内が、静かなのは、ルートガーから会議の内容が話されているのだろう。アトフィア教との全面対決になると思っているのだろう。

今日は、ルートガーが議長を務める事になっている。

「ツクモ様」

ルートガーが、俺を上座に案内する。

「「「「カズト・ツクモ様。我らの主。御身に忠誠を誓います」」」」

俺が椅子に座ると、長老が立ち上がって、俺に頭を下げる。
ルートガーが始めた儀式だが、どこかの”秘密結社”のようで背中がかゆくなる。辞めて欲しいのだが、シロやクリスティーネに評判がいいので、続けていたら、常態化してしまった。今更、恥ずかしいから辞めようとは言い出せない。

ルートガーが、俺の横の椅子に座る。

「ツクモ様」

「ルートに任せる」

ここまでが、規定の流れだ。

ここからは、俺とルートガーが話をした内容を、正式に公表を行う。皆には、話を通すときに、ルートガーが説明をしているのだが、長老衆が認識をまとめることに意味がある。

会議はルートガーが主導する形で進められる。
内々の打ち合わせは終わっているので、規定の質問が約束通りに出される。

質問の答えに関する質問が行われる。
これは、規定されていないだけに、ルートガーでは答えられない場合が多い。その時には、俺が答えることになるのだが、他の質問に繋がることが多いために、ルートガーからストップがかかる場合もある。

会議時間は、当初の予定では2時間とされていたが、内容が衝撃的だった。
休憩を挟んで、4時間にも及んだ。

会議の終わりが近づいてきた。
長老衆が話をまとめる。

俺とルートガーの答えをまとめて書類を作成する。
クリスティーネの従者たちが、書記を務めていた。

書類の完成を待ってから、幹部会議を行う。

会議は、各部署の幹部とSAとPAと各街からも責任者が集まる。

連絡だけでも、1ヶ月近く必要になる。

長老会議と違って、事前の打ち合わせは出来ない。
初期の獣人たちの族長には話を通しておく、特にアトフィア教のターゲットがわからないだけに、獣人がターゲットになってしまう可能性があるために、獣人の族長たちには、情報を先に伝えて、会議の前にも状況を共有しておく。

会議には、商人の代表も参加する。
ルートガーから上がってくる参加人数は、200名を越えている。

本当は、ピカやハミにも会議に参加してもらおうと考えて誘ったのだが、本人たちが固辞したために、情報をルートガーがまとめて、会議で発表を行う。それでも情報として埋められなかった場合には、会議に参加しているイェレラかイェルンが話を確認する。
その為にも、イェレラやイェルンとピカとハミとの顔合わせを行った。

会議の時には、ピカとハミは隣室に控えてもらうことになった。会議には参加しないが、近くの部屋に控えている。
実際には、ピカやハミ以外にも、アトフィア教から接触があった商人がいる。
関係や情報を持っている者を探したの。中央大陸を活動拠点にしている商人には、アトフィア教から荷物の運搬を持ちかけられた者がそれなりに存在していた。噂話が出回っているのか、間に人を挟んだ依頼になっている場合もある。その為に、知らないで受けてしまった者たちが居た。
商人たちは、やはり船が沈んでしまった者たちが存在した乗組員が誰も戻ってこなかったことから、座礁したと考えているようだ。
豪商と呼ばれるような商人や行商人のように小さい船を持っている者たちまで声を掛けている。

幹部会議の開催が近づいてきて、行政区には速聴たちが集まってきている。
SAやPAから来ている者たちは、護衛を引き連れている。

護衛たちは、ダンジョンにアタックしている。
他にも、行政区近くには、SAやPAにない建物が多い。娯楽が集中しているエリアに、護衛たちが集まっている。各部署には、護衛たちからの話を聞いて、SAやPAに作ることができる施設があるか確認をしている。
食事処の出店依頼が多いが、仕入れの問題もあるので、簡単に出店の許可が出せない。娯楽施設は、仕入れよりも施設を作る大きさの問題が発生する。SAやPAでは施設を作る場所の問題がある。

会議の日程が決まった。

「ツクモ様」

「報告は聞いている。商人たちに、出店の許可を出せ」

「ありがとうございます」

「出店の問題がありそうな場所は?」

「大きな問題がありそうな場所には、出店許可を出していません」

「そうか・・・。それで、会議には、俺は必要ないよな?」

「あ?何を言っている?」

「え?」

「お前が出席するというので、族長だけではなく、商人や関係者が集まったのだぞ?」

「は?なぜ?」

「なぜ?はぁ・・・。クリス。教えてやれ」

ルートガーの横に居たクリスティーネが笑いながら説明をしてくれた。
納得は出来ないが理解は出来た。

俺があまりにも外に出ないから、出席する会議は、よほどの事になるのだろうと考えているようだ。
内々に情報を流したものは、獣人の族長たちだけだ。獣人と付き合いがある者は、族長たちから話を聞いているようだ。俺からは、別に聞かれたら話して良いと伝えてある。情報の格差が産まれているのは、問題へのアクション方法を見るのに丁度よい。

「わかった。ルート。参加者の一覧は出来ているのか?」

「あぁ。長老衆・・・。メリエーラ殿に協力してもらって、要注意人物のあぶりだしをしている」

「ん?まだいるのか?」

「代官は大丈夫だ。商人の中には、問題が確認されている者もいる。直接、アトフィア教と繋がっていないが、関わりがある者たちを間に挟んだ取引を行っている」

「え?まだ?そんな連中がいるのか?」

「残念だが、数名だが、今回は怪しい動きが確認されている」

「監視は?」

「大丈夫だ。交代要員を入れて、雇っている」

「わかった。破壊工作は?」

「そっちは大丈夫だ。問題がある者たちも、破壊工作は考えていないようだ。アトフィア教から、チアル大陸やお前の情報を集めるのが目的のようだ」

「そうか・・・。俺の情報が少ないから怖いのか?」

「さぁな。でも、知られている情報から、チアル大陸が大きくなっているのが気に入らないのだろう」

「ある程度の情報は、流していいぞ。特に、食事の質を上げるための、レシピは公開されている者は、流していいぞ」

「いいのか?」

「あぁレシピだけ持って帰っても、再現は難しいだろう?それこそ、チアル大陸から輸入しないとダメだろう?」

「・・・。怖いな。でも、了解だ。流す情報を精査してみる」

「頼む」

幹部会議という名前にしているが、幹部以外の参加も増えてしまっているようだ。

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