【第十三章 遠征】第百三十八話
作戦準備が始まってから、2ヶ月が経過した。
まだゼーウ街や港には大きな動きがない。
正確には、ペネム街に向けての行動に移っていない。
その間、俺たちは準備だけをして、待っていたわけではない。
内政を粛々と行っていた。
大きく変わったのは、呼称を決定して、告知した事だ。
俺たちが治めた大陸は、ヒルマウンテン大陸と呼ばれていたのだが、正式な呼称ではなかったので、ペネム大陸と呼ぼうとしたら、”ペネム・ダンジョンコア”から待ったがかかった。そのために、初めてここで”チアル”ダンジョンの名前を使う事になった。
大陸の名前を、チアル大陸とした。
チアル・ダンジョンコアがどう思うかはわからないが、ペネム・ダンジョンコアからの提案として受ける事にした。
そして、チアル大陸の中心部の区・・・を、チアル街と呼称する事に決定した。
それ以外の今まで街だった場所は、街ではなく区と呼ぶ事が正式に公表された。
チアル街と呼称した場合には、行政区と商業区と自由区を指す事になる。
ミュルダ区やサラトガ区やアンクラム区やユーバシャール区や元街は、チアル街との上下関係から”街”と呼称しないで”区”とする事が決定した。最初は、”区”をつけないという話もあったがミュルダ老と同じ様に、サラトガやアンクラムやユーバシャールが人名でもあった事から各集落の名前に使われている場合もあるので、”区”を付ける事になった。
集落は、今までどおりの呼称を使う事になる。
ショナル村の様に、村呼称も残す事になる。集落で、所属を示す様に、”クレテイユ・サラトガ村”と呼称していた集落は、所属を示すサラトガを削除して”クレテイユ村”と呼称する事になった。
SAとPAと道の駅に関しても、そのまま呼称して、正式な名前も付けていく事になる。ただし、PAやSAや道の駅である事がわかるように、後ろにつなげる事になる。由井PAという様になる。
東海道の宿の名前を使ったあとは、中山道、日光街道、奥州街道、甲州街道の五街道の宿場の名前を使う事にした。
東海道に京街道4宿を加えた57。
日光街道の21。
奥州街道の27。
中山道の69。
甲州街道の43。
157の名前を順次つけていった。良く覚えていたものだと我ながら感心した。
間違いが有ったとしても、誰も調べる事ができない上に問題も無いだろうと思っている。PAとSAの名付けに使った。
現在形になっている道の駅が21箇所なので、都市(メルボルン、サフィール、シャンハイ、バクー、バルセロナ、モナコ、モントリオール、ル・カステレ、シュピールベルク、シルバーストーン、ホッケンハイム、ブタペスト、スパ、モンツァ、シンガポール、ソチ、スズカ、メキシコシティ、オースティン、サンパウロ、ヤスマリーナ)の名前を付けた。これ以上必要にならなかったのは幸いだった。足りなかったら、ル・キャステレ、ル・マン、フジ、セブリングと続けようかと思っていた。
どうせ出処はわからないだろうから、俺がわかりやすいように付ける事にした。出身県の地名にしようかと思ったのだけど、数がそれほどなかった事それほど愛着がなかったので、街道の名前を先に使って、その後は、都市名にした。
これにより、各場所の正式名称が決定した。
これらの変更が一般に浸透するのには時間がかかるが、チアル大陸では、”ガイドブック”が一役買った。
ガイドブックでは正式に決定した名称での記述に変更されたので、読む上で最低限の知識として浸透していった。
待っている間遊んでいたわけではない。強調しないと、遊んでいると思われてしまう程度の事しかやっていないのだが、それは別にどうでもいいことだろう。
メリエーラ老から買った奴隷を使ってガイドブックを作る情報を集めさせたりしていた。
それ以外にも、ボーリング場を作ったり、ビリヤード場を作ったり、ダーツが楽しめるプールバーを作ったりもした。
カジノを作ろうかと思ったが、トランプを作って、麻雀牌を作って、試しにヨーン達に遊び方を含めて教えた。
その段階で、カジノはダメだという事になって、計画を中止した。獣人の一部で、賭け事が人気になった。それは別に身を崩すほどでなければ良いのだが、スキルを使ったイカサマが産まれたのだ。その時点で、人間関係が確立していない状態での賭け事は禁止する事になった。そして、その後、賭け事は”全面的に禁止”する事が決定した。
そんな中人気なのが、ボーリングだ。
全自動にはできなかったのだが、雑談しながらのプレイが受けたのだ。それだけではなく、子供や障害や傷病者や未亡人の勤め先としても人気なのだ。他の遊技場も同じで従業員が集まりやすい傾向にある。仕事に知識を必要としない上に、何かしらの技能が必要なわけでもない。
暇つぶしのつもりで作った施設だったが、慈善事業に近いかたちになってしまった。
リバーシや将棋や囲碁・・・チェスの量産もおこなっている。
スポーツとして、サッカーを普及させた。体格差があるために、競技となるためには見合ったルール作りが必要になってきそうだ。野球は道具の作成が面倒な事と、俺自身が野球に親しみを感じていないためにサッカーが起動に乗り出してから考える事にした。
バトルホースを使った競馬も試しに作ってみた。
元神殿区の子供たちが乗り手になったり、孤児が乗り手となる。通常時に競馬で腕を磨いて、有事の際には”伝令”の役目を担う事になる。バトルホースの繁殖計画が軌道に乗りだしたと報告を受けた事で、遊ばせておくよりはと思って作ってみたのだが、思った以上に受けた。一番はやい馬を当てるだけのシンプルな物だが、それでも結構白熱した。
繁殖は、ギュアンとフリーゼが頑張ってくれた。
バトルホースの長である、ノーリが的確に指示を出してくれているという事もあるが、既に何頭かは商隊に売られている。バトルホース以外にも、ホース系の魔物が育ってきている。ノーリは俺以外を背中に載せるのを拒絶したので、最近ではログハウスでノーリが妻と認めたピャーチと一緒に暮らしている。俺とシロが騎乗する事になっている。
その他では
アジーンがフラビア
ドヴァーがリカルダ
トリーがギュアン
チェトィリエがフリーゼ
と騎乗と変わった。相性の問題もあるが、バトルホースがこの組み合わせがいいと言っているのだ。
神殿区から出てきた者たちもギュアンの下で働き始めている。
一頭の値段が馬鹿みたいな値段になっているので、騎乗するバトルホースが決まった者から、繁殖の手伝いに移ってもらっている。そしてホース系の全てがノーリの支配下に入っているので、売られていった者からの情報が吸い上げられる事になる。売られた者でも、扱いが酷かったり契約と内容が違っている場合には、迷わず他の眷属を使い救出に向かう事になっている。
幸いな事に今の所そのような自体にはなっていない。
他にも思い出したレシピを書き留めて、メイドに渡して再現したりしていた。
レシピは、そのままクリスとカトリナに渡って、食材や道具の普及を見ながら市場に公開されていく事になる。
ソース系の味が尖っているけど、皆には絶賛されている。そして、小麦粉は薄力粉ができてきたので、”粉物”文化を開花させる。俺は、学生時代の数年間を京の街で過ごしていた。二条城近くで住んでいた。お好み焼き屋でのバイト経験もある。
海の幸も手に入り始めている。乾物にして運んできてもらっているが、捨てていた海の草・・・昆布を乾燥させて持ってきてもらっている。
出汁が取れる。あと、食べるに適さないと言っていた小魚・・・も鑑定で毒の有り無しを調べてから、乾燥させて出汁を取ってみた、少し違う感じがしたが煮干し風味の味が楽しめる。
鰹はまだ見つかっていないが、一通りお好み焼きが作れそうなので、実行に移した。
食べさせてから・・・シロが見事にはまった。
控えめに、お好み焼きが食べたいと頼まれた。可愛くねだられるので、連続で作ってしまった。
ゲラルトにお願いして、コテや鉄板を作ってもらったので、鉄板焼きや焼き肉もできるようになった。
焼きそばは麺がいまいちなので、まだ皆には出していないが、シロはかなり気に入っているようだ。続いては、ゲラルトに文句を言われながら作ってもらった、半円の形の物が並んだたこ焼き器。これで、たこ焼きを作って、シロと従者とエリンで食べた。
翌日、従者から聞いたフラビアとリカルダからなぜ誘ってくれないのかと怒られてしまった。
どうやら、粉物文化は異世界にも受け入れられるようだ。
フラビアとリカルダに、たこ焼きを食べさせた次の日・・・
「ツクモ様!!お好み焼きなのですが・・・」
「あぁ?カトリナ。お前にはレシピを渡しているだろう?」
「はい。確かにレシピはいただきました。鉄板と”コテ”も融通していただきました」
「それなら、自分でできるだろう?」
「・・・ツクモ様。一度、店に来て頂けませんか?上手くできなくて・・・あっシロ様も一緒にお願いします」
「なんだ・・・別にいいけど・・・リーリアとオリヴィエは残ってくれ、ルートかモデストが来たら、カトリナに拉致されたと伝えてくれ」
「「かしこまりました」」
カトリナが何かいいかけたが言葉を飲み込んだようだ。
カトリナに連れられて、区の中を歩いている
「なんだ、商業区の店じゃないのか?」
「はい。商業区の方は、”甘味”を中心にしているので、自由区に新しい店を作りました」
「儲かっているようだな」
「・・・ツクモ様。ガイドブックは、ツクモ様が承諾されたのですよね?」
「あぁそうだが?」
「私たちにとっては嬉しいのですが、よろしいのですか?」
「何がだ?」
「簡易とはいえ地図が付いてきています」
「あの程度なら問題ないだろう。それに、この大陸に敵が攻め込んできた時点で、俺たちの防御が甘かった事になるのだからな水際で防げないと意味が無い」
「そう言われてしまうと・・・。あっここです」
まだ開店はしていないようだ。
この名前・・・
「お気づきですか?」
「たしか、神殿区に居た・・・女性だよな?」
「はい。計算ができて、料理ができる者を紹介してもらったので・・・任せる事にしました」
店の名前は”トゥア&イレーナ”で、二人が店長になるようだ。
オーナーはカトリナだという事だ。
店の中は、カウンターに鉄板が置かれている形式で、テーブル席もあるが、そちらは鉄板が置かれていない。カウンターで焼いて持っていく形式のようだ。確か、前にカトリナに相談されて答えた記憶がある。各テーブルに鉄板を置くと、スキル道具のコストが掛かってしまう。それは今後の課題だろうな。
「オーナー!」「おかえりなさい!」
「助っ人を呼んできたわ」
「え?」「ツクモ様!」
「あぁいい。跪かなくていいよ。それで何も困っているのだ?」
「えぇーと。オーナー。これって何かの罰ですか?私達・・・」
「え?なに?どうした?」
トゥアとイレーナが泣きそうになっている。
確か、年齢は19だったと思うけど・・・ミュルダ近くの集落に居たけど、アトフィア教の残党に襲われて、生き残った・・・犯されるような事はなかったようだが、恋人と旦那をそれぞれ目の前で殺されたはずだ。それで、心が壊れてしまった。神殿区で養生して、子供の世話をしながら過ごしていて、社会復帰ができるようになったのだろう。
「カトリナ。説明不足!」
「すみません。少し説明してきます。お待ち頂けますか?」
「あぁ大丈夫だ。店の中見ていていいよな?」
「もちろんです。何か問題があれば教えてください」
「わかった」
店の中はそんなに広くない。
カウンターで8名。4人がけのテーブル席が2つ置かれているだけだ。
二人+数名で回すつもりだろうから、この位が限界だろうな。
「なぁカトリナ。この店は、鉄板焼きとお好み焼きだけなのか?」
「その予定ですが?」
「鉄板焼きは、肉や野菜がメインだよな?」
「え?違うのですか?」
そうか・・・発想が変えられないのだな。
「酒や飲み物は?」
「・・・」
「甘味は?」
「・・・」
「あぁあと、一軒目設定なのか、二軒目設定なのかによるけど・・・この辺りの店は何がある?」
「・・・」
「おい。カトリナ。少し、お前に話がある。シロ。二人に、お好み焼きの焼き方を教えてやってくれ」
「え?僕がですか?」
「あぁこの中では、俺の次に上手く焼けるだろう?」
「はい。わかりました!」
トゥアとイレーナもすぐに察して準備に入った。
シロも”奥様”と呼ばれてご満悦だ。
さて、カトリナに説教・・・とまでは行かないけどいろいろ確認しないとな。
「カトリナ。少し表にでようか?」
「・・・はい」
やはり、一般的な調査しかしていなかったようだ。
近隣に食べ物屋がない事や人通りがどうとか・・・そういう事しか調べていなかった。
「カトリナ。お前、お好み焼きを食べたよな?」
「はい!もちろんです!」
「どうおもった?」
「美味しかったです。それに、具材を変える事で、味だけじゃなく、見た目も変化するので、楽しめますし、飽きが来ません」
「そうだな。でも、お好み焼きは単品では満足できないだろう?大きくすれば飽きてしまうし、小さいと物足りない」
「はい・・・それで、鉄板焼きと一緒にと思ったのです。同じ鉄板を使うので、コストもかかりません」
「そうだな。店のターゲットは?」
「え?近隣の者が食べに来ると思っています」
「ここ、自由区だよな?そんなに、裕福な者が多いのか?」
「それほどでは無いと思います」
「だろうな」
「はい。でも・・・」
「近隣に店が無いのが痛いな・・・」
「なぜですか?無いければ、この辺りの客は全部・・・」
「カトリナ。お前、毎日お好み焼き食べられるか?」
「あっ・・・」
「何日かは大丈夫だろうけど、そのうち飽きるだろう?」
「はい」
「それに、あの規模だと客が回転・・・食べたら会計して帰る位じゃないとだめだろう?」
「・・・そうですね」
うーん。
なんちゃってコンサルティングを行おうかな。
失敗しても、スキルカードを消費するだけだからな。
「カトリナ。自由区の外側とダンジョン内なら、どっちの方が店が出しやすい?」
「自由区の外側?」
「屋台規模の店が10-20位入られる場所が有るといいのだけどな」
「それなら、ダンジョン内の方が場所の確保は簡単にできます」
「・・・そうか・・・あ!3本の街道の門でどこが一番並んでいないのは?」
「今は、アンクラム門が一番少ないです」
「そうか、丁度いいかも知れないな。アンクラム門の外側に”区”を一つ作る」
「え?いきなりですね」
「思いついたからな。その”区”は飲食店だけを集める場所にする。”区”にすると代官が必要だからな・・・”フードコート”とでも呼んでおくか」
「フードコートですか?」
「あぁ」
「そんな、飲食店だけを集めて、人が来ますか?」
「やってみればわかる。丁度、ゼーウ街の動きも無いし、時間もあるからやってみるか」
思いついたら吉日!
失敗してもかまわないというつもりで、フードコートの建築に着手する。
アンクラム門の外側に、30程度の店が出店できる広さの建物を作る。
フードコートなので、座席は別途用意するが、900名が来ても大丈夫な様にする。種族的に身体が大きな者も居るので、座席の大きさはいろいろ用意する事にした。
基本は二人がけにした。テーブルを合わせることで大人数でも座れるように工夫できるようにするためだ。
3階建てにして、二階部分には、ボーリングとビリヤードとダーツができる場所を用意した。3階部分は従業員の更衣室やシャワールームを作る事にした。スーンたちに依頼をだしたら、建物と内装を作るのに、2週間で作ってしまった。本当に、優秀だ。スキルカードをふんだんに使っていい事にすると、倍速くらいで作業が進む。
安全面や細かい修正を加えて、1ヶ月位掛かってしまったが、フードコートが出来上がった。
「ツクモ様?」
「あぁカトリナ。ここの支配人(仮)を任せるな」
「え?」
「ん?お前が支配人な?」
「えぇぇぇぇぇ聞いていませんよ!!」
「うん。今言ったからな。さて、施設の説明するな」
「ちょっちょっと待ってください。支配人っていきなり」
「俺、リヒャルトに了承取ったぞ?」
今、リヒャルトはパレスキャッスルに向かってこの場に居ない。ワイバーン便で、リヒャルトに”今度作る店の支配人をカトリナを指名したいけどいいよな?”とだけ伝えて了承の書類ももらっている。書類をカトリナに見せる。
「・・・ツクモ様。”店”となっていますが?これが”店”ですか?」
「あぁ店だ!俺が、店と言っているから店で間違いない!」
カトリナが肩を震わせているが、もう遅い。いろいろ動き出してしまっている。支配人の事だけ黙って、カトリナに”屋台”を出している人間や、店を持ちたいけど予算的に難しい者を10組ほど集めてもらった。残りの20枠のうち半分はカトリナが自由にして良いと伝えてある。残った10枠は、噂を聞いて来た者たちのためにあけておく事にする。
各店の準備も始まっている。
2週間後にはプレオープンして、10日ほど営業したら一旦閉めて、問題点を洗い出してから、1ヶ月後の本格オープンを目指す事になっている。
「わかりました。話だけではよくわかりませんでしたが、こうして場所を見ると納得できます」
「だろう」
「はい。ようするに、誕生祭の時の様に、屋台がたくさんでて、店ごとに特徴ある物を売れば、相乗効果に繋がるという事ですね」
「簡単にいうとな」
「あと、街中にあった、ボーリングをこっちに全部移動したからな。ボーリングをやりたい連中は集まるだろう?」
「ボーリング場で食事がいつも困っているとう話を聞きました。これなら、待ち時間に食べる事もできます」
「門の待ち時間で食事を取ることができるし、休憩する場所としても使えるだろう」
「・・・はい」
「ここに支店を出せば、街中にある本店に行こうという気持ちにもなるだろう」
「そうですね。はじめての料理の場合には、食べてもらうのが課題でしたが、ここで出して、本店に客が来てくれるようになるという事ですね」
「そうなればいいと思っているよ。だから、ここの値段は本店よりも少しだけ高くするようになるだろう?」
「はい。場所代を取るので、必然とそうなります」
「場所代の代わりに、テーブルは自由に使ってもらえるし、食器も同じ規格だから店舗ごとで洗わなくてもいいようにしただろう?客席にある水は無料で提供して居るから客から文句が出る事は無いだろう」
「・・・・まいりました」
「ん?」
「ツクモ様。これ、本当に、私が支配人でいいのですか?」
「あぁいいぞ?なんで?」
「いえ・・・わかりました。誠心誠意勤めさせていただきます」
「あぁ任せた。それじゃ、俺は店舗を見て回るから、お偉方の対応頼むな」
「かしこまりました」
カトリナに、代官や行政官の相手を任せて、俺は各店舗の準備状況と問題点の洗い出しを行った。
なんとか、今入っている店は、一週間程度で準備が終わりそうだ。
あとは、シミュレーションをやって、プレオープンを迎えられそうだ。
ドタバタしたが、なんとかプレオープン・・・問題点の洗い出しができた。
問題点は、思った以上に客が集まってしまった事だ。
商隊が到着すると、小さい所で、一気に10-15人程度がフードコートの中に入ってくる。入り口で説明はしているのだが、その説明で行列ができてしまった。
団体の入り口と個人の入り口を分ける事にした。最初だけなので、こなれてくれば客同士が説明しあってくれるだろう。10日の間でも初めて来る客は徐々に減ってきて、一度来た客が連れてくるパターンが殆どになっていた。
ウェイター/ウェイトレスの数が足りない事がわかった。
フードコートと言っても形態は屋台の延長線。自分で商品を買って、テーブルに座って食べる。
これだけなのだが、機会化されていた日本での人数で考えてしまった。俺の失態だ。当初30名程度の交代制で考えていたが、倍にしても足りなくなって、最終的には150名まで増えていた。店舗の人数は増やせないので、店舗の手伝いを行う者も必要になってしまった。
他にも、細かい問題が出たが、プレオープンは無事乗り切れた。
カトリナの不安も一掃されて・・・今では、支配人や経営に携わる者の部屋を別棟に作って、そこで指示を出したりしている。
正式オープンの日時が決まって、カトリナから俺に連絡が入った。
プレオープン終了までは俺も手伝ったが、それ以降は支配人と経営陣で運営して欲しいと伝えた。
オープン当日。
フードコート・・・アンクラム・フードコート(後日、一号店と呼ばれる事になる)に朝から行った。
オープンを見届けて欲しいという事だ。
挨拶は辞退した。カトリナが行えばいいと思っていたからだ。けして、面倒だとか・・・そんな気持ちは一切ない。
オープン前から、住民が並んでいる。
そして・・・オープンと同時に住民がフードコートの中に消えていく。
「ツクモ様」
「どうした?」
「いえ・・・少しだけ・・・嬉しいのです」
「どうした」
「今まで、父・・・の名前で仕事をしてきました。成功して当たり前だと言われて・・・」
「あぁ」
「今回も、ツクモ様のアイディアをもらって、建物まで用意していただいて・・・でも、それでも・・・あれ・・・」
「あぁそうだな。カトリナが1人でとは言わないけど、中心になって頑張ったから、オープンできた。それは誇っていいと思うぞ。俺は、場所を用意して、アイディアを出しただけだ。失敗する可能性も高かったのだからな。それを、ここまで形にしたのは、カトリナで間違いないのだからな」
「・・・はい・・・ありがとうございます・・・おかしいです・・・嬉しいのに・・・頑張って・・・涙が出てきます」
「カトリナ。感動している暇は無いぞ・・・ほら、リヒャルトが睨んでいるぞ」
「え?あっ本当ですね。今更寄越せと言っても渡しません。ここは私が支配人の店です!」
「そうだな」
「はい!」
涙を拭いて、カトリナはリヒャルトたち来賓の相手をするようだ。
吸血族の1人が俺に近づいてきた
「ツクモ様」
「動いたか?」
「はい。2日前の情報ですが、準備されていた船に物資を積み込みはじめました。早ければ今日か明日には出港すると思われます」
「それは、第一弾のロングケープ向けだな」
「わかりません。用意している船全てに物資を積み込み始めているようです」
「わかった。関係者を、迎賓館に集めてくれ。丁度、フードコートのオープンでほとんどの者が揃っていると思う」
「かしこまりました」
ゼーウ街が動いたか?
さて、どうなるか・・・情報面では俺たちに分がありそうだが・・・。
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