【第一章 スライム生活】第六話 家
うーん。
ソファーに座り?ながら考える。
学校に行けない(最終学歴は、中卒になるのか・・・)以外で、困ることがなさそうだ。
両親たちの保険が、口座に残っている。多分、前の生活を続けても、死ぬまで困らなかっただろう。
困るのは、食事くらいかと思ったが、スライムボディは優秀だ。一日が経過したが、食事をしたいとも、排泄をしたいとも、思わない。困るのは、睡眠が必要ないこと・・・。正確にいうとしたら、睡眠が出来ないことだろう。目を瞑っても、周りが見えてしまう。そもそも、目を瞑っているのかさえもわからない。
スライム生活は、不便がない。
友達と言えるかわからないけど、親しいクラスメイトは居たけど、私が居なくなっても気がつくか微妙だ。
ひとまず、スライムから人には戻られないと想定して考えよう。
学校は退学しておいたほうがいいだろう。長期での無断欠席だと、先生が訪ねてくる可能性がある。
行政には、届け出る必要はないよね。”人からスライムになりました”なんて言っても、信じてくれないだろう。戸籍がどうなるのかわからないけど、調査とかなかったよね?
家は、有る。だれも居ない。一人だけの家だ。スライムの寿命がわからないけど、私が住む場所だ。
お金は多分・・・。大丈夫。遺産で得た現金がまだ残っている。警備会社と電気代とガス代と水道代とスマホやネット代だけど、困らない。ソーラパネルを設置してくれた両親に感謝だ。水道は、最悪は井戸がある。裏庭には、まだ使える五右衛門風呂がある。田舎暮らしバンザイだ。
裏山は、我が家の持ち物だ。基本は、誰も入らない。木の伐採をしても怒られない。食べられるキノコ類もあるし、季節の山菜も採れる。小川があり、魚も泳いでいる。
あれ?
本当に、困りそうにない。
そうだ!
アイテムボックスの整理をしよう。山道や川で何かを大量に取得した。
裏庭では、家の前の通路から見えてしまう。
跳ねながら、裏山に向かう。
大きくない山で、何も取り柄がない。
『スキル錬金を取得しました』
え?スキル?
私、何か魔物を倒した?
考えてもわからない。行動で、スキルが得られるなんて、話は読んだことがない。
こうなると、先に調べ物をしたほうがいいかもしれない。
裏山に向かっていたが、自分の部屋に移動する。制服をクローゼットに仕舞っておきたい。
階段は、跳ねながら登らなければならない。階段の下で、踏ん張ってみる。ジャンプする要領で階段を登ろう。
”え?”
踏ん張って、ジャンプした。2階に到着した。
”うーん”
スライムボディが優秀だということだね。考えを放棄したほうが、幸せになれそうだ。
でも、ギルドや掲示板にかかれている通りに、スライムが最弱なの?
すごく疑問だ。
すごい速度で、岩や木に当たってもダメージにはならなかった。尖った木が刺さっても、痛くなかった。高い所から、落ちても平気だった。攻撃手段が、岩を落とすしか無いけど、もしかしたら、私が知らないスキルがある可能性だってある。
そうだ!調べるのなら、スマホよりもパソコンの方が便利だよね。
パパの使っていたパソコンを使おう。パパのパソコンだと、身元がわからないようになっていると言っていた。調べ物ならパパのパソコンを使ったほうがいいとか言っていた。
久しぶりに入るパパの仕事部屋。
パパの匂いはしないけど、パパとママが・・・。
パソコンを立ち上げる。認証のPINを入力する。私用になっている画面が表示される。ブラウザしか使えないが、十分だ。
ギルドの日本支部のページを開く。
まずは、スキルの検索をしよう。
検索用の場所に、”スキル・経験保持”と入力する。
”Not Found.”
と、だけ表示される。未発見のスキル?
”スキル保持”でも、”経験保持”でも、見つからない。
それなら・・・。
”錬金”でも、見つからない。未発見のスキル?なの?それとも、魔物にしか、芽生えないスキルなのかな?魔物にも知り合いが居ないから、スキルの使い方を聞けない。
そうだ。魔物も調べよう。
”スライム”を調べる。
やっぱり、最弱の魔物となっている。
え?”スキルを持っていない”?嘘、私は、持っている。私は、スライムじゃないの?
もう一度、スキルを調べる。
”物理耐性”は、既知のスキルだ。
内容が表示される。
でも、これもなんか違う。もしかしたら、魔物が持つ物理耐性と人が持つ物理耐性は違うの?
物理耐性は、物理攻撃に耐性がある。物にぶつけたり、転んだり、高い所から落ちた場合にはダメージが通る。
らしい。高い所から落ちても、物(木や岩)にぶつけても痛くなかった。それとも、痛くないだけで、ダメージは通っているの?
HPやMPという表示は存在しない。
スキル鑑定では、スキルとスキルのレベルがわかるだけだと説明されている。
うーん。
結局、スライムにはスキルが無いの?でも、私は最初から、”アイテムボックス”は持っていた。
”アイテムボックス”を調べてみる。
お!アイテムボックスは既知だ。
え?取得した魔物は”非公開”。まぁ必ず取得出来るわけじゃないし、有意義な・・・。え?有意義?違いすぎる。
80リットルがどの程度かわからないけど、私のアイテムボックスよりは明らかに、容量が少ない。
それに、重さが80リットルを超えると軽減されない。私のアイテムボックスはどれだけ入れても大丈夫じゃないかな?それとも、容量を越えたら、いきなり重くなるのかな?
時間経過も書かれている。説明では、時間経過の確認のために、アイテムボックスに入れたスマホを取り出して、時間を確認している。
私も、アイテムボックスから取り出したカバンを見る。中に、スマホが入っている。時間は・・・。現在の時刻を・・・。あっそうだ。自動で調整されてしまうのだった。失敗したな。確認が出来ない。で
あとで、氷でも入れてみよう。
でも、アイテムボックスを見ると、見てはダメな感じの虫が入っている。魚も入っている。うーん。死んでいるのかな?説明では、生きている物は入らないとなっている。
魔物だからで済む話ではないような気がしてくる。
ギルドのサイトは正式な情報しか載せていないのかな?
掲示板やハンターを自称する人たちのサイトを探してみるが、やはりスライムは最弱の魔物と表記されている。スライムがスキルを持っていると書かれている場所は存在しない。結論として、スライムはスキルを持っていない。と、なっている。
ギルドで、魔物の”共食い”や”食事”を調べておこう。
食事は、必要としていないとなっているけど、ゴブリンは食事をしていたよね?どういうことだろう?
調べれば調べるほど、わからなくなる。
私は、私だ。スライムだけど、私だ。気にしないことにして、アイテムボックスの検証をしよう。
まずは、冷凍庫から氷を取り出して、触手で触るが冷たく感じない。
袋に入れて、アイテムボックスに入れる。同じ袋を用意して、複数の氷を入れて、冷蔵庫に入れる。同じ物を、お皿の上に置いた。キッチンタイマーを起動する。目安があれば解りやすいだろう。
せっかくだから、やってみたいことがある。
子供の時からの夢だ。
もう一度、二階に上がる。ベランダに出る。裏山の方角で、誰かに見られる心配はない。電柱も無いから、何かに引っかかる心配もない。
不思議と怖さはない。出来るという確信がある。
ベランダで、階段を登る時にやったように、踏ん張る。今度は、全力だ。
全力でジャンプする。
”おぉぉぉ”
感覚だけど、2-30メートルはジャンプできた。
ここで、スライムボディを横に広げる!
羽は無理だけど、モモンガのように滑空が出来るのではないか?
子供の時の夢。
空を飛んでみたい!
滑空ができた。
落ちている訳ではない。滑空だ。移動も出来る。風を受けて、空を滑空している。
地面が近づいてきた。
木に触手を伸ばして、捕まる。
安全に降りる方法を考えていなかったけど、うまく出来た。
やっぱり、羽が欲しいな。
空を飛びたいな。せっかく、魔物になったのだから、可能性があるよね?多分。きっと・・・。だと、いいな。
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