【序章】第七話
階段を降りた場所は、20畳くらいだろうか?広場になっている。ここは、安全地帯になっているようだ。
魔物の気配がない。ダンジョン固有の事なのだろう、”最初”の部屋には、魔物が出入りできない何かが有るのだろう。ここに、転移してくる事になっているのだとしたら、安全の確保にもなるのかもしれないな。
戻るにしろ、進むにしろ、一旦休憩する事にした。ライに、果物と水を出してもらう。水は、作ったコップで受け止める。カイとウミの為に、水を飲めるように作った深皿を出す。
他に入り口もないらしいし、俺たちしか居ないのは確定しているので、セーフエリアで睡眠を取る事にする。
「なぁカイ。ダンジョンって成長するのか?」
『え?あっはい。徐々に深くなっていくと言われています』
「討伐とかしたほうがいいのか?」
『わかりません。僕たちは、ダンジョンができると、餌場ができるので、人族が来るまでは、近くで住むようにします』
「そうか、ありがとう」
さてどうするか?
このままでもいい気がするけど、できたばかりの段階だと思うし、討伐してしまうのも一つの方法なのだろう。
一旦、転移門を設置しに戻るか?
でも、まずは、寝よう。さすがに疲れた・・・。
/***** ??? Side *****/
「領主様。ただいま戻りました」
「それでどうであった?」
「はい。確実に、レベル7回復を所持しております」
「そうか・・・それで?」
「あっはい。サイレントヒルには、何人か向かわせると言っておりました」
「わかった。下がって良い。それから・・・」
「・・・はい。街に入ったのは間違いありません」
二人の間に沈黙が流れた。
老年の男性が口を開くのを、部屋に入ってきた男が待っているのは明らかだ
「そうか、ブルーフォレストに向ったのだな。目的は、ダンジョンか?」
「・・・」
「それしかあるまい。あの馬鹿者・・・速駆の指輪まで持ち出しおって」
「領主様。それは、全て」
「いうな。解っておる。解っているが、それでも・・・儂は・・・儂たちは、アヤツを・・・っく」
/***** ??? Side *****/
テーブルを挟んで二人の男性が向かいあわせに座っている。
色っぽい話をしている雰囲気ではない。
貴族風の男性は、眉間にシワを作って、目の前に置かれている資料を凝視している。もうひとりの商人風の男性は、出された飲み物に口を付けている。
「お前はどう思う?」
「何がでしょうか?」
貴族風の男性が、商人風の男性を問い詰めているようだが、商人風の男性は、飄々とした態度を崩していない。それが、貴族風の男性をイラつかせる理由にもなっている。
「とぼけるな?お前たちが、”狩り”をしているのは知っている。その商品を、サラトガに流しているのも承知している」
「はぁそれで?」
「ミュルダからの話は聞いているな」
「どちらですか?」
「サイレントヒルの事だ」
「”光の柱が出た”と、いう方ですか・・・チームの何人かが”見た”と言っていましたがね」
「それで?」
「何もしませんよ?」
「なに?」
商人風の男性は、コップに継がれた液体を流し込む。
「悪くないのですが、アンクラムで飲むのなら、エールのほうが美味しいですよ」
「そんな事、それよりも、お前たちの”狩り”にも影響するのだろう?なぜ、調べない?」
「私達の商売にも確かに影響しますが、だからといって、私達が調べる必要は無いでしょう?それこそ、そのために、税を払っているのですからね。違いますか?」
にらみ合う
「それから、お前の所の商品を貸し出せ」
「お断りします」
「なに?」
「当然でしょ?商品ですよ。傷つけられたら、売り物になりませんからな」
「・・・いい。お前には頼らん。そのかわり、お前らも覚悟しておけよ。今までと同じようにできると思うなよ」
「安っぽい脅迫ですな。いいですよ。そうなったら、サラトガにでも行きますよ。あそこなら受け入れてくれるでしょう。あなた達こそ解っていますか?私達が居なくなってしまえば、最終的にこまるのはあなた達ですよ。ここの人たちは、商品を大切に扱うなんて事はできないようですからね」
「もういい!出て行け!」
「はい。はい。それは、ご領主様!」
商人風の男性は、コップに残っていた液体を飲み干してから、部屋をあとにした
「ふん。奴隷商人風情が良い気になりおって、お前の変わりなど捨てるほどいる!」
貴族風の男性は、空になったコップをにらみながらつぶやいた。
/***** カズト・ツクモ Side *****/
ライに起こされた。
階層を降りたセーフエリアで皆で寝た所までは覚えている。疲れていたのも有っただろうけど、すぐに寝入ってしまったようだ。
カイとウミの姿が見えない。
「ライ。カイとウミは?」
話せないのが辛い。街に行って、念話のスキルカードを取得したい。
ライが、”こっちだよ”と、でも言っているように、ダンジョンの方向に進んでいく。
セーフエリアを出て、少し行った所で、カイとウミがゴブリンと戦っていた。
もう既に、決着が付きそうだったので、そのまま見守る事にする。時間にして、5分くらいで最後のゴブリンが倒れた。見た感じ、カイとウミには怪我一つ無い。一安心だが
「カイ。ウミ。なんで勝手に戦った?」
『カズト様。申し訳ありません』『ライ。内緒だってお願いしたよね』
二匹の反応から、寝ていたときに、ゴブリンの集団反応を感じたのだろう。
俺が寝ていたし、ゴブリン程度なら勝てると思ったのかもしれないけど・・・。ん?ゴブリン程度に勝てる?たしか、カイとウミは、ゴブリンに追われて逃げてきたよな?
そうだ。ステータスを表示してみればわかるか?
名前:カイ
性別:オス
年齢:3
種族:フォレストキャット
称号:カズト・ツクモの眷属
固有スキル:念話
体力:D+
魔力:E-
名前:ウミ
性別:メス
年齢:3
種族:フォレストキャット
称号:カズト・ツクモの眷属
固有スキル:念話
体力:F-
魔力:D+
急激に強くなっている印象がある。魔力の吸収でここまで強く慣れるのか?
”体力G”で”魔力H”のゴブリンに、今のステータスだと、1対1では勝てるのだろうが、群れで襲われたときには、対応できるとは思えない。
「カイ。ウミ。ライ。ゴブリンの死骸を片付けてから、戻って話をしよう」
『はい』『わかった』
ゴブリンの魔力を、カイとウミが吸収する。死骸を、ライが消化する。
そもそも、眷属化すると何かが変わるのか?
// スキル:眷属化
// スキルレベル6
// 意識有る魔物を眷属にする事ができる。ダンジョンの魔物は眷属にできない。
// 眷属を受け入れた魔物は、非眷属の魔物よりも速く成長/進化する。
眷属化した事で、成長が通常よりも早いのだ!
でも、まだゴブリンを駆逐できていた理由にはならない。
// 名前:カイ
// 性別:オス
// 年齢:3
// 種族:フォレストキャット
// 称号:カズト・ツクモの眷属
// 固有スキル:—
// 固有スキル:—
// 固有スキル:—
// スキル枠:念話
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// レベル1:火種(6)・微風(1)
// レベル2:炎(4)
// レベル3:体力強化(2)・攻撃力向上(2)
// レベル4:
// レベル5:
// レベル6:
// レベル7:
// レベル8:
// レベル9:
// レベル10:
// 体力:D+
// 魔力:E-
// 名前:ウミ
// 性別:メス
// 年齢:3
// 種族:フォレストキャット
// 称号:カズト・ツクモの眷属
// 固有スキル:—
// 固有スキル:—
// 固有スキル:—
// スキル枠:念話
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// レベル1:
// レベル2:
// レベル3:体力強化(3)・攻撃力向上(3)・速度向上(4)
// レベル4:炎弾(4)
// レベル5:
// レベル6:
// レベル7:
// レベル8:
// レベル9:
// レベル10:
// 体力:F-
// 魔力:D+
// 名前:ライ
// 年齢:0歳
// 種族:スライム
// 称号:カズト・ツクモの眷属
// 固有スキル:収納
// 固有スキル:物理攻撃半減
// 固有スキル:スキル攻撃半減
// 固有スキル:—
// 固有スキル:—
// 固有スキル:—
// 固有スキル:—
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// レベル1:
// レベル2:
// レベル3:
// レベル4:
// レベル5:
// レベル6:
// レベル7:
// レベル8:
// レベル9:
// レベル10:
// 体力:F
// 魔力:F
そうか、ゴブリンと戦うときに、スキルを使っていたのだな。
それじゃなぜ、こんなに簡単にスキルを得たのだろう?
俺が確認できているのは、数枚のスキルカードだけだ。これが一般的な事なのかわからないが、ゴブリンを倒しただけで、レベル4のカードが手に入っている。価値に関しては考えないようにする。
ライが、進化しているのか?それにしても、強烈なスキルが目覚めたな。物理とスキルの攻撃が半減・・・。魔力も、体力も、まだまだ下の方だと思うけど、それでも、半減スキルはこれからの事を考えると、有効なのだろうな。
セーフエリアで、カイとウミとライを鑑定しながら、これからの事を考える。
神が言っていた、”偽装”のスキルは是非欲しい。それから、俺の固有スキルに関しても、いろいろ検証が必要だ。眷属は、カイとウミとライで、低階層なら困らないのだろう。俺が強くなれば、ダンジョンアタックも困らないのかもしれないが、俺が強くなるイメージができない。
ラノベの異世界転生物でよくある武術の達人とかではないし、個人的に、古流の抜刀術を運動不足解消に、近くの体育館でやっていた教室に通っていたくらいだ。レベルやチート能力でゴリ押しもできそうにない。
眷属を増やす方向で考えるのが正しいか?ダンジョンの魔物は、眷属化できないらしいので、外に居る魔物を探す事になるのだろうけど、そのためにもカイとウミとライに有効なスキルを持たせたい。少ない経験から、スキルを得るためには、ダンジョンアタックが効率が良さそうだ。スキルカードが通貨の役目になっていると言っていたから、地球的に言えば、ダンジョンは”金鉱”と同じなのだろう。
ダンジョンを攻略しつつ、岩場を拠点として、周りの探索を行う。
基本方針としては、これでいいだろう。
そうなると、さっさと転移門を設置して、ダンジョン攻略の環境を整えたほうがいいかもしれないな。
「カイ。ウミ。ライ。一旦戻って、転移門を設置する」
『わかりました』『はい』
ライが跳ねて返事をする。
それから、帰りは戻るだけなので、一本道になる。
戻りながら気がついたが、どこをどう通っても、この下の階層につながる階段に来るようになっているようだ。他に階層を降りる所は用意されていないようだ。
カイに、安全なルートを頼んだら、4時間程度で拠点に戻ってこられた。
拠点の内装づくりは、後回しにして、カイたちがゴブリンを始末した場所に案内してもらう。
ゴブリンが貯めた道具が、置かれていた場所よりも奥まっており、広さもある。拡張予定だったのか、別の通路が作られ始めていた。ライに、ためにして、”洞窟の一部を削る事ができるのか?”と聞いたら、簡単だという返事が返ってきた。
どのくらいの作業スピードかわからないので、ひとまず、広間から、人ひとり通られるくらいの道を5m程度作ってもらう事にした。
待っている間に、洞窟から出て、少しだけ周りを探索する事にした。
ライには、5m程度の通路ができたら、20人程度入られる部屋を作ってもらう事にした。もし、俺たちが帰ってくる前に作り終えたら、洞窟の中で休んでいてもらう事にした。
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