【第四章 拠点】第七話 新しいおもちゃ
ヤスは、自分の腹が鳴る音で起きてしまった。
そして周りを見回して、自分の置かれている状況を思い出した。
手元に有ったエミリアで時間を確認すると、6時30分となっている。この世界の時間なのかはわからないが、朝である事は間違いないようだ。
「エミリア。ディアナは戻ってきたか?」
『はい。マスター』
ディアナアプリを起動して、ディアナを確認する。
確かに駐車スペースに戻ってきているようだ。
損傷率81% 修復時間残り・・・4,639分
(損傷率81%?どういう事だ!)
「エミリア!ディアナは大丈夫なのか?」
『大丈夫です。地下5階層のボスとの戦闘で損傷しましたが、戻ってきまして修復中です』
そう言われてしまうと、ヤスは何も言えなくなってしまう。
ボスが残って居たことも知らなければ、ディアナが損傷をした事も知らなった。損傷率が8割を超えていたのなら止めていたかもしれない。しかし、止めてしまうともう一度神殿の攻略をやり直す必要が出てきてしまうことも考えられる。ボス部屋の前でセーブなどできないのだ。
「わかった。4600分って何時間だ?」
『およそ77時間。3日と6時間ほどです』
「そうか、損傷率によって、復帰時間に差が出るのか?」
『はい。工房のスペックが上がれば時間が短縮されます』
「わかった。今後の課題だな。まずは、俺が生き残る為に、食料だな!モンキーで買いに行って、アイテムボックスに入れればいいかな?」
『了』
駐車スペースに移動したヤスは、ディアナを探したが見当たらない。
「エミリア。ディアナは?」
『下の階にある工房で修復中です』
「そうか・・・。わかった」
事実、ディアナは地下2階層の工房で修復が行われている。
ヤスが見に行ったとしても、何が行われているのかわからなかったのだろう。工房に停車しているディアナは、光に覆われている。
ディアナが居ない駐車スペースを見渡してヤスは少しだけ寂しい気持ちになっていた。
(駐車スペースも広いからな。移動の為に、キックスクーター・・・。いや・・・。セグウ○イという選択肢もある!)
ヤスは自分の”ナイスアイディア”を確認する為に、ディアナアプリを開く。
確認してみるが、セグ○ェイはリストには出てきていなかった。
討伐ポイントを確認してみると、200万ポイントまで復活していた。
ヤスは、討伐記録を見てみて、すぐに閉じた。
見ては駄目な物が並んでいた。ドラゴンとついた物が討伐記録に並んでいたのだ。
ヤスは、ギルドカードを取り出した。
そこにも討伐記録が表示される仕組みになっているのだ。
(あぁ駄目な奴だ・・・。でも、まだ可能性がある。討伐記録が絶対なら、ギルドで討伐証明部位の提出を求めない・・・。はず・・・。だよな?)
カードを確認してみると、直近10体の討伐記録しか表示されていない。
エミリアにある”ヤスアプリ”ではすべての討伐記録の確認できる事から、ギルドカードは”ヤスアプリ”の廉価版だと勝手に位置づけた。
思い出したかのように、ギルドでもらった冊子を確認してみると、討伐記録に関しての記述があり、直近10体分の記録を参照できるとなっていた。それ以上は、ギルドにて申請を行わない限り見る事ができないようだ。
(・・・。と、いうことは、ゴブリンを10体を倒せば、討伐記録は消えるのだな?でも、ゴブリンを10体とか意外と面倒だな。モンキーで跳ねればいいのか?)
ヤスは、地下3階に移動して、マルスアプリを操作して魔物を出そうと考えた。
しかし、いくら操作しても魔物の配置ができない。
確認しても魔力ポイントが無いわけではない。魔物を選択できるのだが配置しようとしてもエラーが表示されてしまうのだ。いろいろな魔物を試したが全部同じ結果になってしまう。
「エミリア。どういう事だ?」
『マスター。神殿の最奥部に居た魔物が討伐された為に、魔物が配置できません。最奥部にガーディアンになる魔物を配置する必要があります』
(ガーディアン。ボスって事だな)
「そのガーディアンを配置すると、何ができるようになる?」
『魔物が配置できます。同時に、自動的に魔力を使って魔物が湧き出します』
「え?ダメ・・・だよな。攻略している事になっているよな?」
『はい。魔物の配置を行えません』
「わかった。諦めよう。討伐記録を見られなければ問題ないのだし、いざとなったら魔の森に行けばいいだけだろう」
『はい』
魔物を倒して、討伐記録を上書きすることはできなかったが、神殿に魔物が居なくなった事が確認できた。
これで、ダーホスたちがいつ来ても問題ない。ヤスは、気楽に考え始めていた。
『マスター。個体名ダーホスが来る前に一度コアの部屋まで来てください』
「わかった。ユーラットから帰ってきたら行くよ」
『お願いします』
ディアナアプリを起動して、討伐ポイントを確認する。
約200万討伐ポイントまで戻ってきている。
購入が可能な物品のリストを眺めている時に、一台の車に目が止まった。
モンキーでユーラットまで移動した時に、道が思った以上に綺麗だった事や大きな岩がなかったこと、木もなぎ倒されていたこと・・・。
雨が降った時や、荷物の運搬を行う為の車を購入しよう・・・。いろいろ言い訳を考えたが、単純に自分が欲しかったのだ。
ヤスは、HONDA FIT Hybrid を選択した。残っているポイントを確認して、コンパクトカーしか買えなかったのだ、無理すればミニバンやS660なら手が届いたかもしれないが、モンキーを購入したときの教訓が生かされている。
通常のポイントだけではなく、異世界由来のオプションを付けなければならない。
そのためにポイントを残しておく必要がある。
結界は必要だ。その他にも、魔法の射出ができるようにしておいた方が、安全に運転する事ができる。
「エミリア。カーナビが付いている車種ではディアナやマルスやエミリアと接続できるのか?」
『問題ありません。すべてディアナが制御します』
「え?そうなのか・・・。わかった」
神殿=工房=マルス
トラクター=ディアナ=すべての車?
スマホ=エミリア
と、覚えておけば困らないだろうと、ヤスは考えることを放棄した。実際、考えてもわからない事をいつまでも考えてもしょうがないという性格なのだ。
「オプションは後から装備することができるのか?」
『可能です』
試しに、モンキーに異世界由来と日本由来の物を追加してみたが問題なく追加できる事がわかった。ただ、追加するのには、工賃のような物が発生するのは、最初に追加する時よりも高くなってしまっている。
あとから追加できる事がわかったヤスは、FITをフルオプションにしないで必要最低限?のオプションを付けて出現させる事にした。
普段の足として使う事に決めたようだ。
ディアナアプリを操作して、購入したFITの駐車スペースを決めた。
出現時間は、約23分。
まだ時間は午前中だし、ユーラットまで1時間もかからないと考えて、ヤスはエミリアから言われたことを先に実行する事にした。
「エミリア。出現するまで時間があるから、先にコアに行こうかと思うけど、道案内はできるか?」
『可能です』
「それじゃ頼む。モンキーでいいよな?」
『はい。大丈夫です。マスター。今後も、バイクに乗られますか?』
「そのつもりだけど?」
『エミリアに接続が可能なARゴーグルかHMDを装備してください』
「そうか、わかった。ポイント・・・残っているかな?」
ヤスが確認すると、残っていたポイントでは、HoloLens は購入できなかった。
「エミリア。スマートグラスでもいいか?」
『リストに乗っている物でしたら問題ありません』
「わかった」
スマートグラスを購入して、エミリアと接続を行う。
一度ケーブルで接続を行えばそれで準備が完了になるようだ。
ヤスはモンキーで最下層まで行く事にしたようだ
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