【優秀高場】第三話 学校の噂
「どうだ?」
「今年の出来ですか?」
「そうだ」
「芳しくないですね。まだ始まっていません」
「そうか、派閥は?」
「出来ています」
「仕掛けろ、女からは情報が抜き取れているか?」
「もちろんです。全員分の遺伝子情報はいつものように入手しています」
「それは重畳」
「はっ!それで今回はオーダーはなしですか?」
「あぁ自然に任せろ」
この学園では、生徒になんでも与えて、教師に逆らえない状況を作る事から始める。
100名を家畜にする事から始める。大体の家畜が、中学生になるくらいで雌を求める。種族の指定や処女性を求める場合もあるが問題ない。どうせ、わからないのだ。心を壊してしまっているので、奴ら餓鬼に判断できる状況にはない。
それにしても、理事長達は本当に恐ろしい事を考える。
生徒たちを1ヶ所に集めて殺し合いをさせて、一人に知識を集中させる。実際に残った一人は心が壊れるが、いろいろな知識をもった秀才が出来上がる。そして、死んでしまった生徒の遺伝情報を、発展途上国や孤児に治療としてあたえて、整形を繰り返して、別人を作ってしまう。
その程度で親が騙せるとは思えないが、この学校では小学校から高校卒業まで親にはモニター越しにしか会えない。そして、自分たちを上流階級や選民だと思っている馬鹿な親は子供をアクセサリーの一つ程度にしか思っていない。
高校を卒業するときには、別のカリキュラムでマナーや勉強を教え込まれた、整形済みの子供達を自分の子供として喜んで迎える。
どうせ、長男の予備の予備程度にしか思っていないものが、優秀になって帰って来て、長男を支える様になるのだから、学校の評判もうなぎのぼりに良くなっていく。
「そうだ。あの女性の記者はどうした?」
「担当は私ではありません」
「そうか、誰に・・・。あぁ奴隷にしたのだったな」
「はい。今頃、薬で調教している頃です」
「わかった。始末は任せる」
「はっ」
「男は?」
「いつもどおりに処理しました」
「男は困るよな。あまり食べる所も無いからな」
「まったくですね。それに脂肪か筋肉だけで餌にもなりませんからね」
—
「編集長」
「なんだ?」
「佐々木の奴を知りませんか?」
「佐々木?そんな奴居たか?」
周りを見るが、誰しもが同じような反応だ。
学校の事を調べていたのは間違いない。週明けから姿を見ていない。週末には居たはずだ。
何をふざけていると思っても、編集長だけではなく、部員の全員が同じ反応だ。俺の方がおかしいのか?
いやそんな訳はない。確かに、佐々木が学校の事を調べていた。編集長から、蠱毒と言われる呪殺があると教えられていた。
佐々木が言っていた事が気になった。気になったが、皆が知らないのならこれ以上ここで調べる事は出来ない。
俺はひとまず家に帰る事にした。
荷物が届いている。
佐々木の癖のある字だ。俺宛に何か送られてきている。
内容を読んだ。
こんな事が行われているとは思えない。
100人から1人に知識を集める。
集合知の子供を作成して、残り99人はどうなったのか?全員に関して調べる事が出来なかったらしいが、卒業生は有名なので、卒業生と同世代の財閥の子供や関係者を当たってみたら、あの学校に入った人間全てが人が変わったかのようになっている。
ただし、小学校から高校までの間に会った事がある者が皆無で有るために、皆がそんなものだろうと考えているという異常な状態だとまとめられている。そして、取材を”上から”の指示で止められた事。編集長に言われて記事をまとめた事が書かれている。
奴が消えた夜の事も書かれていた。
6階まで上がったエレベータ。3階で止まったエレベータ。
そして、人が変わってしまったかのような編集長。
俺は、明日辞表を提出する事を決めた。
—
「理事長」
「なんだ?」
「今年の卒業生が決まりました」
「それはよかった。予想通りか?」
「いえ、オッズとしてはかなり高いほうです」
「ほぉ・・。これは、皆様に喜んでいただけるかもしれないな」
「はい。販売も好調です」
「それはよかった。一枚1,000万円するビデオが完売するか?」
「はい。残りあと僅かです」
「そうかぁそうかぁそれはよかった。彼らの生活も無駄ではなかったのだな」
—
「おい。能美!能美!」
誰だよ。
後ろを振り向くと知った顔だ
「なんだ。官僚様かよ。出版社をクビになった三流以下の俺に何のようだよ」
「お前が、あの学校の事を調べていると聞いて情報を持ってきた旧友をそんな風にいうのだな」
旧友はそういって笑ったのだが、俺の経験からいうとかなり危ない橋を渡った事になる。
「大丈夫なのか?」
「ん?あぁ俺の派閥は、あの学校が属している派閥とは逆だからな」
「そうなのか?」
「そうだよ。だから気にするな。でも記事にはできないぞ?」
「かまわない」
「そうか、それなら、この資料を読んで見ろ」
そう言って、旧友から渡された資料はかなりの分量がある。
実際にその場で読めるような代物ではない。
「わかった」
「あぁでも、これ以上は突っ込むなよ。ヤブから蛇程度なら俺でもなんとかなるけど、ヤブを突いて毒虫を大量に発生させられたら対処できないからな」
「肝に銘じておくよ」
旧友に礼を述べてからその場を後にした。
資料は、佐々木のメモにあった事とそれほど違いはない。
違ったのは、佐々木が調べても出てこなかった理事長と学長の詳細な経歴が書かれていた事だ。
そして・・・
理事長と学長は、すでに死亡した事になっている。
いくら調べても状況がわからなかったわけだ。
ベトナム戦争で産み落とされた認知される事がない、ライダイハンやアメラジアンを救済する団体を作って現地活動をおこなっていて、現地団体が某国からの圧力で潰されてから、日本で学校を作って、優秀な生徒を送り出す学校になっていった。
理事長と学長は、学校を作った後もベトナムと日本を行き来していて、その途中でテロにあって殺された事になっている。
死んでしまった者が作っている、秀才を作る工場?
救済された子どもたちがどこにいるのか?
性格が変わってしまった99名と秀才になった1名。
存在が消された佐々木。性格や雰囲気が変わってしまった編集長たち。
佐々木の伝言にあった事実。
3階で何が行われていたのか?6階に止まったエレベータには誰が乗っていたのか?
一つの建物に入れられた100名の子どもたち、一人になるまで競い合わせた結果。一人の秀才が産まれる。
そんな事が有っていいのか?許されるのか?
佐々木のメモに残されていた。蠱毒。毒虫を殺し合わせるのではなく、高校男子を殺し合わせる。そして、勝ち残った者が神童となる。
人間の子供で同じ事をおこなっているのか?
そんな馬鹿なという感情が溢れてくるが、否定できない俺が存在する。
蠱毒
”代表的な術式として『医学綱目』巻25の記載では「ヘビ、ムカデ、ゲジ、カエルなどの百虫を同じ容器で飼育し、互いに共食いさせ、勝ち残ったものが神霊となるためこれを祀る。この毒を採取して飲食物に混ぜ、人に害を加えたり、思い通りに福を得たり、富貴を図ったりする。人がこの毒に当たると、症状はさまざまであるが、「一定期間のうちにその人は大抵死ぬ」と記載されている”
出典Wikipedia
—
「理事長」
「いいですよ。泳がせましょう」
「かしこまりました」
「それよりも、来期の生徒たちの準備はできているのですか?」
「問題ありません。100名の生徒が揃っています」
「そうですか」
「理事長。来期から開始される秀才工場ですが、要望が入っております」
「わかりました。できるだけその要望には答えてあげなさい」
「かしこまりました」
「それで要望は?」
「銃は使わないで、毒物を多用してほしいそうです」
「わかりました。それでは、校舎Bの方がいいですよね。生物兵器が眠っていますよね?」
「かしこまりました」
「ふふふ。楽しみですね」
「はい」
—
「能美!」
「お!これは優秀な官僚様。お呼び立てして申し訳ない」
「それはいい。それでなんだ?」
「あぁ」
能見は周りをキョロキョロしてからため息を付いた
「ここ暫く監視されているような感じだったけど、今日は無いと思ってな。お前じゃないよな?」
「俺が?そんな権限なんて持っていないぞ」
「そうだよな。お前がそんな危ない橋を渡るとは思えないからな」
「そうだな。危ない橋は中学の時と同窓会だけで十分だ」
「そうだな」
中学の時の話と同窓会の話はタブーになっている。
こういう話はあいつの方が得意なのだけどな。
「それでなんだ?」
「あぁ悪い。今日田舎に戻ろうと思ってな」
「そうか、帰るのか?」
「あぁ」
久しぶりに東京で地元の匂いを感じるやつだったけど仕方がない。
奴は東京にいるべきではない。
俺は奴の死亡記事は読みたくない。
もう友達が殺される状況を感じたくない。
「能美!」
「なんだよ!」
「桜は向こうにいるのだろう?俺が会いたがっていたと伝えてくれ!」
「わかった。俺も、桜には会いに行くつもりだからな」
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