【第四章 噂話】第一話 都市伝説
説明回です
読み飛ばしても大丈夫だと思います。
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企業系の提灯記事を掲載しているマスコミを標榜する者たちから、噂が流れ始めた。
少し前に記者会見を開いて、世間を驚かせた”召喚された勇者”たちが持っているポーションは、”欠損”を治せるのではないかと噂が流れ始める。それだけでも価値は天井知らずなのに、権力者としては見逃すことが出来ない効用があると思われている。
公表されていないがポーションの効用で期待ができる効果が”延命”だ。噂話の域を出ていない。帰還した勇者たちを囲っている者や、研究をしている者たちからの発表は、軽微な傷が治る程度という発表だ。
噂には、信頼に足りる根拠が提示されている。
ポーションは欠損を治せるという。実際に、欠損が治ったのではないかと思われる者が存在している。日本人ではないために、証拠としては弱いが経済界の情報網では”ほぼ”間違いないと言われている。そして、欠損が治せるのなら、飲み続ければ、肌だけではなく、壊れた内臓の欠損も治されるのではないか?飲み続ければ、”延命”ではなく不老不死も夢ではないと噂が流れている。
実際に、詐欺のネタとして、ポーションを売る者まで出始めている。
そして、とある宗教法人は、ポーションとは言わずに”神の雫”と銘打って”水”を売り出している。実際には、着色しただけの水だが、100mlで数十万の値段で売り出している。宗教法人では効能を謳っていない。神の奇跡があり、異世界帰りが売り出しているポーションの素になっていると書かれていた。ポーションの噂話にがっつりのっかる形で売り出したのだ。
権力者や経済的に成功をおさめた者たちが望むのは、人類が産まれてから変わっていない。
秦の始皇帝が水銀に効用を求めたように、不老不死の妙薬を求めるのは、何も変わっていない。
自称成功者や先生と呼ばれることで悦に入っている愚か者は、ポーションが不老不死の妙薬という噂を信じた。御用マスコミを総動員して、情報を集めさせている。
そして、集めた噂を精査して、新たな”都市伝説”になるように噂をバラまいている。ポーションは、一部の者だけが知っていればよく、ポーションの効用が”不老不死”に繋がる妙薬だと知っているのは自分たちだけでよいと考えている。
マスコミも、自分たちが”正義”であると勘違いをして、ポーションに群がる蟻の様に情報を求めた。
しかし、この頃になって動き出す羽蟻が得られる情報など既に他のマスコミも握っている。握ったうえで、それ以上の情報が拾えない情報になっている。権力者や経済的に豊かになっている成功者たちが躍起になって求めているポーションを得られれば、自分たちも成功者たちからのおこぼれにあずかれると考えて動いているが、求める情報には辿り着かない。それだけではなく、調べれば調べるほどに情報が反証となる情報が積み上がる。
ポーションが存在しているのは、記者会見で明らかになっている。
地球にある素材での再現を試みているが、ポーションの数も限られているために、研究は進んでいない。
公式に発表されている情報は、これだけだ。
そして、各国にも同じ内容が伝えられている。最初に、ユウキたちが用意したポーションは各国の研究所に売られた。そして、効果が確認されて、研究の素材として扱われている。
現在存在が確認されているポーションは存在しない。
全てが、研究所やそれに類する施設で厳重に管理されている。
解っている効能は、切り傷が消える程度だ。
単純骨折なら骨折から時間を置かなければ治る可能性がある。
単純骨折が治る可能性が言及されたことで、スポーツ界が騒ぎ出した。
それとは別に、動物にもポーションが効き目を発揮するという発表が行われた。
この二つの物事から動いたのは、やはり成功者だ。
競走馬を持っている者たちが、万が一のためにポーションを求めた。他にも、数億の契約金が発生するスポーツ選手たちも、噂を聞いてポーションを求めた。権力者と違うのは、分別があるのか、正式にユウキたちの所を訪れて、ポーションの売買を持ちかけたことだ。ユウキは拒絶を示したが、スポーツ選手たちは、ユウキたちとの繋がりを重視した。何もなければ問題にはならない。何か会った時に、助かる可能性が1%でもあるのなら、繋がりを維持しておく。そんな考えのようだ。
ユウキたちを探っているのは、御用マスコミが多くなっている。
各国の諜報部隊も動いているが、そちらはユウキたちが張った罠に悉く捕えられて、自国に送り返されている。国が不明な者たちは、日本の警察が対応しなければならない場所に放置している。
ポーションの有力な情報を得られないマスコミは、”正義”の下に過激な行動を取るようになっている。
同業者を出し抜いて、”不老不死”のポーションが得られれば、自分で使ってもいいし、誰かに売りつけて一生遊んで暮らしてもよい。そんな妄想を抱く者が多く群がってきている。
”不老不死”は都市伝説の範囲を出ていないが、スポーツ選手だけではなく、代理人を通して成功者たちが、ユウキたちを訪れている事が証拠だとマスコミの”取材”は熱を帯びている。
そんなマスコミに、階段から落ちて怪我をして意識を失っていた女子生徒が、怪我を治して学校に以前と変わらない姿で現れたという情報が流れてきた。
学校側は、すぐに復学の手続きを行おうとしたが、女子生徒は自分が懇意にしているマスコミを連れていて、学校側に”イジメ”という名前の、恐喝・暴行・侮辱に関する事実確認を求めた。学校が認めるわけもなく、女子生徒はその場で退学の手続きを行ってから教育委員会に渡りをつけた。教育委員会でも似たようなやり取りが行われた。女子生徒は、警察に駆け込んだが”民事不介入”という、女子生徒が受けた”イジメ”はお互いで解決しなければならない事だと言われた。
これらのやり取りが全て記事になって公開された。
ネット上の記事だが、一部のマスコミが取り上げたが、すぐに下火になった。
しかし、女子生徒が怪我を治したのは、誰がみても明らかだ。
そして、女子生徒が受けていた怪我は”治る”ような傷ではなかった。顔に大きな傷跡があり、凄腕の美容整形外科でも不可能だと思われていた。そのうえ、耳の一部が欠損していた。手術が難しい指や腕にも縫った跡が残されていたのだが、それらが綺麗に消えていた。
噂として流れていたポーションの効用が証明された。
一部のマスコミは、女子生徒を探し始めるが、最初に現れてから姿を見たという情報が無くなってしまった。
そして、ユウキに辿り着いたマスコミはユウキが住んでいる家に向かうが何故か辿り着けない。
自分たちとスポンサーの意向もあり情報を公開して探すことが出来ない。しかし、ユウキを探し出して、ポーションを貰えれば遊んで暮らせるだけの金銭を得る事ができる。
権力者たちがユウキを見つけても手出しが出来ない状況は、ユウキには想定されていた状況だ。
もともと、ユウキたちはアンタッチャブルな状況になっている。今、ユウキたちに目を付けたような者たちでは、ユウキたちを”見かけ上の権力”で従わせるしかない。そのような物は、ユウキたちには何も怖くない。日本という国に拘っているのは、ユウキの復讐相手が存在するからだ。
牽制しあっていたマスコミだが、周辺への”取材”ではこれ以上の情報が得られないと考えて、より過激で、より愚かな行動に走る者たちが出始めた。
マスコミの暴走こそが、ユウキが復讐の為に必要だと考えていたピースの一つだ。
そして、噂話を流すためにも必要で重要な役割を担っている。
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