【第三章 復讐の前に】第三十二話 実験動物
(ゆるめ?の)性的表現が含まれています。
(ゆるめ?の)暴力表現が含まれています。
抵抗がある方は読み飛ばしてください。前回の話の結果を記載しているだけで、本編には(フラグ的な意味では)影響しません(多分)。
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サトシが珍しく執務室に居る。
ユウキが連れてきた者たちの処遇を確認して、次にユウキが来た時に報告する義務があるためだ。
「彼女たちは、どうしている?」
「実験に協力してもらっているわよ」
「そうか・・・」
29人は、それぞれにトラウマを抱えている。
普段から陽気にやらかすサトシも、小学生の時に盛大ないじめにあっている。いじめという言葉が裸足で逃げ出すような境遇にいた。それでも、現在のように振舞えるのは、サトシが手を差し伸べたからだ。そして、マイやレイヤやヒナから、ユウキの心の傷を聞いた。ユウキの境遇を聞いた。そして、ユウキとサトシに助けられた。
皆が、どこか壊れているのは、幼少期の出来事が影響している。
傷を舐め合っているのではない。傷を認め合っている関係が構築できたのが、29人が我を通しながら、尊重し合える関係が続けていられる。
皆に共通しているのは、理不尽な暴力を受けた過去があることだ。
簡単に言えば、ユウキが連れてきた者たちは、皆のトラウマを刺激するには十分なことをしていた。
そして、加害者だ。
皆は、自分たちが正義のヒーローでもヒロインでもないことは理解している。
自分のストレスになりそうな者を排除する自然な行動として、加害者たちを”人”として扱わない。
日本語を話す実験動物だと思っている。
腕と足を切り落として、スキルで欠損を治す。何度も、何度も、繰り返す。
これは、スキルの有効性を確認するために必要なことだ。ユウキの理論では、攻撃性のスキルも同じ敵には聞きにくくなっていくことが知られている。その為に、わかりやすく欠損状態を連続で治してみれば、”スキル”への耐性が得られて、回復が行われない状態になるのではないかと考えられていた。
詳しい話をまとめるために、マイは魔の森に作られた実験施設に向った。
「イェデア。どう?」
「マイ。そうね。ユウキの説だけど、立証は出来ていないけど、仮説で良ければ、新しいことがわかったわ」
「教えてもらえる?」
「煩いから、口は塞いでいるし、自殺ができない様に、歯は全部抜いている状態にしているけど、いいわよね?」
「好きにして、それで?」
「うん。小指で試すけど、爪の付け根を切り落として、ポーションをかけると、復活するでしょ?」
「そうね」
「でも、指先のこの部分」
「え?第一関節?」
「そうそう。もう少し厳密にいうと、第一関節の一本目の皺の部分ね」
「ここを切り落として、ポーションをかけても復活しない」
「え?でも」
「面白いでしょ。その状態で小指を切り落として、ポーションをかけると指先を含めて復活する。同じように、第一関節から切り落としても復活する」
「え?なんで?」
「まだ、仮説だけど、”同じ部位や場所は、連続では復活できない”のではないかと思っている。腕や足だと、まだうまくできなくて、試している最中なの」
「へぇ面白いわね。実験体は、気をつけてね。他でも使いたがっている場所があるからね」
「わかっている。しっかりと、壊れないようにしているよ」
実験動物としてしっかりと管理されている。
死ぬことが無いように、実験が繰り返されている。
結果に個体差が出ないように順番に行われている。
管理は、ユウキたちが捕えた勇者たちが行っている。勇者たちには、捕えている実験動物が死んだら、殺した者たちが代わりに実験動物になると告げている。
「他は?」
「多種族との交配はダメ。オークやゴブリンは喜んで犯しているけど、それだけ・・・」
「そう?まぁあれは、実験というよりも確認の意味が強かったけど、続けるのよね?」
「もちろん。精神が壊れないようにスキルを使っているけど、弱っている状態の方が、スキルを剥がせる可能性が上がるのよ」
「そう?そっちは、結果が出た?」
「ダメね。スキルを剥がしたら、穴という穴から液体を垂れ流して、精神が壊れてしまった。廃棄はしていないけど・・・。まぁ他のクズに与えたら喜んで使っていたから、それでいいでしょう?」
「そうね。でも、妊娠は困るわよ?」
「それは大丈夫。こちらの避妊薬が効くのは確認している」
「え?あれを使ったの?」
「問題がある?」
「うーん。別に、ないわね。そういえば・・・」
フィファーナの避妊薬は、罪を犯した貴族家に与えられる。一種の”罰”だ。繁殖能力を奪う。子孫が残せない貴族は、養子を取ってくることになる。ty苦節の血族がいなくなる。
ユウキたちは、捕えた勇者に避妊薬を投与して、子供が出来たら解放すると約束した。
捕えられた勇者たちは、相手を変えて3年間も続けたが、誰一人として子供が出来なかった。避妊薬は、地球にも持ち帰って、実験を行っている。成分を調べているが、何が影響しているのか解っていない。
実験動物が精神を壊したのは計算外だったが、しょうがないと諦めた。
「主犯は?」
「まだ何もしていないわよ?」
「そう、ユウキからは、好きにしていいと連絡が来たわよ」
「本当?家族も?」
「えぇ」
「まずは、煩いから。心を折るわね」
「任せる。自分たちがしてきた事を後悔させてあげて」
「わかった・・・。親は何をしたの?」
「揉み消しと、圧力だね。前田家を孤立させた」
「小心者がよくやる奴ね。揉み消しは?」
「想像通りよ。権力者に・・・。ユウキの獲物だから、そっちは手を出さないでね」
「もちろん!まだそんな事をしているのね。それで?」
「お決まりのパターン」
イェデアは、ロミルに声をかけて、許可が出たことを告げる。
まず行ったのは、両親の目の前で、魔物たちに犯させることだ。経験から、心を折るのには効果が高い方法だ。両親たちには、簡素な武器を渡して、魔物たちを全滅させられたら。娘と一緒に解放すると約束をしている。
マイたちの経験から、子供を権力で守った気になっていた奴らは、子供を命がけで守らない。怒鳴り散らすだけで、何もしない。自分たちだけが助かる方法を必死に考えるか、逃げ出そうとする。
「マスコミは?」
「まだ泳がせているみたい」
「珍しい」
「使い道があると言っていたわよ?」
「そうなの?」
「彼らは、自分が”正義”だと疑わない人が多いでしょ?」
「そうね」
「だから、その”正義”を揺さぶるらしいわよ?」
「”揺さぶる”?」
「うん。ほら、今回、起こしただけではなくて、怪我も治したでしょ?」
「うん。聞いている」
「そう。それとなく、”秘薬”が存在していると匂わすみたい。それで、異世界帰りが関係していると思わせる。それに、マスコミを使うみたい」
「大丈夫なの?」
「どうだろう?最良は、ユウキの想定範囲内で踊ってくれることだけど、ダメなら上を潰すと言っていたわよ?」
「潰す?会社を?」
「ううん。物理的に、上を脅すみたい」
「あぁ・・・。ユウキなら可能だね」
「そうね。やりすぎないか心配ね」
「ははは。そうね。でも、ユウキが敵じゃなくて、よかったよ。サトシに感謝だね」
「本人には自覚はないけどね」
「そうだね。サトシには言えないし、言わないわよ」
「うん。あっサトシが呼んでいる。行くわね。実験動物の対応をお願い」
「はい。はい。未来の王配様」
—
小池彩佳は、自分がなぜこんな状況になっているのか理解が出来ていない。
夢だと考えていた。
友達だと思っていた取り巻きが順番に魔物に犯される。
腕を切り裂かれて、何かをかけられて、傷が治った所にまた同じように切られる。一日中、同じことが繰り返される。
知らない男に犯される状況を見せられ続ける。
切り落とされた腕を、他の取り巻きが食べる。
寝かせてもらえない。
寝ようとしても寝られない。
全裸にさせられて、髪の毛を剃られた。乳房や性器を隠せないように手は天井から吊るされている。排泄は、垂れ流しだ。
夢だと思いたかった。
痛みは、嫌でも夢でないことを物語っている。
取り巻きたちが、おかしくなっていくのを見続けている。
歯を抜かれて、目を潰されて、腕を切られて、足を切られて、犯され続ける。
次は、自分の番だと思えば恐怖が心と身体を襲う。
逃げられない。目の前に居る両親は助けてくれない。両親にはしっかりとした料理が渡されているが、自分には、粗末な物を口に詰め込まれるだけだ。
そして・・・
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