【第四章 拠点】第八話 最下層

 

 モンキーにまたがってエンジンを始動する。

 ヤスは、地下3階の入り口までは、モンキーにはまだ跨がらないようだ。一度またがったが、少し考えてから、シートから腰を浮かせてモンキーから降りた。押して移動する事にしたようだ。

 地下2階を通り過ぎて、3階の入り口でモンキーにまたがって、スマートグラスを装着した。

(おぉぉぉぉ!!!地図が表示されるし、ナビのようにもなっているのだな)

「エミリア。このナビは、神殿以外でも使えるのか?」

『使えます。マスターの魔力が登録されていますので、マスター以外には使うことができません』

「わかった。ナビに魔物の表示もできるよな?」

『はい』

「色分けとかできるか?」

『指示が曖昧です』

「人族は青色で、ゴブリンとコボルトは黄色で、それ以外の魔物は赤色にできるか?」

『可能です』

「ひとまずは、上記の設定・・・。いや、個人の識別ができるのなら、判断できるよな?」

『可能です』

「人族で、リーゼは青。アフネスとロブアンとダーホスとイザークは緑。あと、ドーリスは青。その他の人族は白」

『了』

 ヤスは、スマートグラスに映るナビ通りに神殿の中をゆっくりと進んでいる。
 地面は、石畳だったり岩場だったりするが、ディアナが通ることができる位の広さになっている。モンキーでの移動に支障が出るわけもなく、順調に進むことができた。

 ヤスがゆっくりとした速度で進んでいるのには理由があった。

「エミリア。宝箱みたいな物が有るけど、開けていいのか?」

『問題ありません』

「罠とかは?」

『存在します』

「罠の解除なんてできないぞ?」

『マスター。ナビに罠があるときには表示されます。何も表示されなければ、罠はありません』

「わかった」

 ヤスは、通り道にある宝箱だけでも開けていこうと考えたのだ、攻略しているのに、宝箱を開けていないのは不自然だと考えたのだ。

 宝箱の中には不思議な物が詰まっていた。
 剣や防具はわかる。ポーションのような物もなんとなく理解しよう。

 しかし、パンが出てきた時には理不尽に感じてしまっている。宝箱の中は、時間が停止しているのか、開ける瞬間に中身が補充されるのか?
 ヤスの手には”焼き立てのパン”が有る。もちろん、毒が混入されていないかエミリアに問いかけてから食べた。空腹は最高の調味料とはよく言ったものだ、焼き立てでもバケットよりも固く味も薄いパンだが、ヤスはすべてのパンを美味しく食べた。
 一息つけたヤスは、探索の速度を上げる事にした。

 具体的にはエミリアに1つの命令を出した。

「エミリア。宝箱の位置をナビに示してくれ」

 エミリアからの返答は一言『了』だ。

 ヤスは、地図上に現れる宝箱のマーク(ヤスが指定)を片っ端から開けていくことにした。

 罠がある宝箱は無視するようにしたのだが、地下3階のフロアボスが居たと思われる場所に有った宝箱から、罠解除の魔道具が見つかった。
 成功率は低いが何度でも使えるので、宝箱から罠がなくなるまで使い続ければ必ず安全に開ける事ができるようだ。解除に失敗しても罠が発動するような事は無い。罠は宝箱を開ける時に発動するので、その前に解除すれば問題ないのだ。

 宝箱の中身をアイテムボックスに入れながら最下層を目指している。

 魔物が一匹も居ない場所で、宝箱だけを回収する楽な仕事だ。ヤスは、快適に進んでいた。ある程度の道幅と舗装されている道ではないが平の道路。制限速度も何も無い道を勝手気ままに走る事ができる。
 それだけではなく、結界を発動していれば、壁に激突しない。それだけではなく転んでも怪我をしない。どんなに乱暴な運転をしてもモンキーに傷がつかない。
 エミリアからの報告で、時速150キロを超えて壁に激突したり、転んだりしたら結界が解除されると言われているが、ヤスもそこまで出そうとは思っていない。実際に路面のミューが低く時折バンプがある道路なので、160キロまでは出せそうにない。
 ヤスも一度直線で思いっきり加速してみたのだが、120キロくらいで限界になってしまっている。細かいバンプにハンドルを取られてしまうのだ。サスペンションを交換するか、もう少し調整しないと無理だという結論に達した。

 それでも、60-70キロ程度で巡回している。かなりの速度で走っている事になる。

 昼過ぎには、地下4階を走破して、地下5階に降りる事ができた。

「エミリア。最下層だよな?」

『はい』

 ナビを見ると、一直線になっているのがわかる。
 距離にして、2キロほどか?

 地面は石畳。

 ヤスは、迷うこと無くアクセルを全開にする。

 1分ほどで大きな扉の前にたどり着いた。今までも扉が有った。ディアナが通る事ができる扉なので、ある程度の大きさは有ったのだが、この扉はそれ以上に大きい。異常な大きさと言ってもいいだろう。

 ヤスがモンキーから降りて近づくと、扉が光って内側に向かって開いた。

 中は、大きな空間があるだけでボスが居るわけではなかった。
 ここにドラゴンが居たのかと考えて、ちょっとだけ見てみたかったと考えている。

(ん?そうだ!)

「エミリア。ディアナのフロントカメラは無事だったのか?」

『一部は破損しましたが、撮影には問題ありません』

「動画は残っているか?」

『はい。ディアナアプリのディアナからカメラを選択していただければ確認できます』

「取り出すこともできるのか?」

『”取り出す”とは?』

「例えば、今後TVを購入して家に設置した時に、ディアナカメラの映像を見る事はできるのか?」

『可能です。すべての物がリンクします』

(ビ○ラリンクのような感じだと思えば良さそうだな)

 最下層のボス部屋は広い。天井も高い。
 ディアナが戦った跡だろうか、タイヤ痕が残されている。パーツは残っていない事から、方法は不明だが回収されたのだろう。魔物の死体は、神殿に魔力として還元されている。

 入ってきた場所の対面に小さな扉がある。
 ヤスが掛けているスマートグラスに表示されている内容だと、小さな扉の先が目指すコアがある部屋のようだ。

 ヤスは一度ボスの部屋を出てモンキーにまたがって、小さな扉を目指す。

 小さいと言っても比較対象は今までの扉だ、十分の大きさがある。
 扉は、ヤスが近づくと自動的に開いた。

 部屋は、10人程度が会議をする広さは有るだろう。
 中央に、台座に乗った水晶のような珠がある。大きさは、直径で20cmくらいだろうか?中央部が、赤く光っている。

『マスター。コアに触れてください』

「マルスか?」

『はい。マスター。コアに触れてください』

「あぁわかった」

 モンキーから降りて、中央に歩み寄って、水晶に触れる。
 水晶が光りだした。

『マスター。魔力を!』

「わかった」

 ヤスが魔力を水晶に注入すると、光が集まっていく、光が水晶の中央に集束した。
 赤かった光が白色灯のような光に変わる。

【”神殿んなほすちオぉてェから”のマスター登録が終了】

(え?)

「マルス!」

『マスター。ありがとうございます。これで、神殿を完全に支配下におけます』

「そうか、それなら問題ない。名前は呼びにくいな。変更できないのか?」

『可能です』

「分かりにくいから、神殿はマルスとする。問題はないよな?」

『問題ありません』

「マルス。これからも頼むな。でも、これって他の人間がコアを触ったら、支配権が移動してしまうのか?」

『大丈夫です。ロックできます。マスターの指示がなければ、コアの支配権を移譲できません』

「わかった。ロックしておいてくれ」

『了』

 マルスがヤスに説明ができると言ったが、ヤスは聞いても覚えられないから必要になったら、エミリアかマルスに聞く事にした。
 まずは、食料の確保を考える必要がある事は変わっていない。

「マルス。もう大丈夫だよな?」

『はい』

「FITも駐車スペースに出ているだろうから、ユーラットに行くけど問題はないよな?」

『大丈夫です』

F1&雑談
小説
開発
静岡

小説やプログラムの宣伝
積読本や購入予定の書籍の情報を投稿しています
小説/開発/F1&雑談アカウントは、フォロバを返す可能性が高いアカウントです