【第四章 スライムとギルド】第五十四話 動き出す計画(1)

 

貴子ちゃんと話し合って、スライムの姿の時には、”主殿”と呼んで、人の姿の時には、”貴子ちゃん”と呼ぶことに決めました。

貴子ちゃんたちが、真子ちゃんを治してから、ギルドは大忙しになりました。私は、以前から忙しかったので、問題はありません。
私だけが忙しくなったのなら文句を言おうかと思ったが、私は楽な忙しさだ。貴子ちゃんと真子ちゃんと一緒に不動産屋さんや、工務店を訪れている。あとは、山の所有が可能なのか?可能なら金額を調べる仕事があったが、そちらはすぐに終わりました。
山は、浅間神社の領有している部分は無理でしたが、それ以外の購入は可能でした。貴子ちゃんが持っている山の周辺も、購入が可能になっていました。山梨方面の山も購入が可能でしたので、買えるだけ購入する方針になりました。

そして・・・。
報告を兼ねた会議が始まっています。皆の疲れた顔が印象的です。

「円香さん。本当ですか?」

主殿が、ギルドの防諜を行ってくれました。盗聴はクリアになったと思って大丈夫なようです。

あっ!人型になったので、貴子ちゃんです。間違えると、怒られはしませんが・・・。可愛く拗ねられます。

貴子ちゃんが、円香さんに質問をしています。

私も金額を聞いて、愕然としました。
税はしっかりと払い終えています。日本政府も、貴子ちゃんの存在はイレギュラーだったのでしょう。ギルドに税をおさめるだけで、魔物に関する税金は諸外国やギルドからの圧力に屈する形で、ギルドが納める税だけです。
金額が少ない時には、大きな金額ですが、貴子ちゃんが得た金額を考えれば、金額は大きいのですが、所得税などを考えれば、微々たる金額です。

貴子ちゃんがギルドから受け取った金額は、74億円を越えています。
74億は、貴子ちゃんの売買益ではなく、鑑定ができる魔石を売っただけの金額です。恐ろしいです。ここに、私が報告するオークションの売り上げが加算されます。
予想では、20億くらいと見ていました。その為に、20億で山を買って、土地を買って家を建てる計画にしていました。

ギルド(日本支部の主催ではない)内オークションが開催されて、最初の一つが落札されて、詳細な情報がワイズマンに登録されると、鑑定ができる魔石に関する問い合わせが増えてしまった。
貴子ちゃんに相談したら、快く100個の魔石を融通してくれました。
全部が、鑑定ができる魔石です。

ワイズマンは、ギルド日本支部から100個の提供が出た事で、”鑑定ができる魔石”が製造できる可能性を論じました。私たちの所にも問い合わせがありましたが、ギルド員の個人技能だと言えば、問い合わせは止まりました。ワイズマンから個人技能に取り扱いに関する注意が各ギルドに通達されました。
その後、本部から”定期的に提供ができるのか?”という問い合わせがありましたが、円香さんは”不明”とだけ返していました。

その後、鑑定ができる魔石は全部が同じ品質ではなく、回数が違う場合や、鑑定ができる情報に差異が生じるようになっています。
これも、円香さんと貴子ちゃんが決めた事です。ワイズマンが少しでも誤解してくれるように考えた方法ですが、その結果、オークションが盛り上がってしまいました。

貴子ちゃんが考えてもいなかった大金が入ったので、貴子ちゃんが家を作って、私と真子ちゃんと住むことが決定しました。
あと、ギルド直属の病院も作ります。オーナーは、貴子ちゃんです。

山も買えるだけ買います。地主たちも簡単に手放します。売値に色をつけています。鉄塔の賃貸料が入るために、売り渋っていた人も居ましたが、30年分の賃貸料を上乗せしたら頷いてくれました。楽しい交渉でした。交渉の席で、山に魔物が発生した時の問題点もしっかりと伝えました。そのうえで、上乗せ金額です。頷かない人の方が少ない状況でした。

ユグドが山の一つを管理します。真子ちゃんや円香さんや茜や蒼さんや孔明さんの眷属が過ごす場所に決定しました。
ユグドが管理している山にも、魔物が発生していました。

魔物は眷属たちが駆逐してくれました。
保護した動物たちは、主殿の眷属になっています。主に、鳥系でしたが、何処から逃げ出したのか、猫が数匹と誰かが逃がしたワニガメなどの動物が見つかっています。
ワニガメは、主殿の別宅の庭に居てもらう事に決定しました。

ワニガメ君が得たスキルが結界だったので、家を守るのに丁度よいという判断です。他にも、主殿の眷属が家・・・。もうごまかせません。屋敷を守っています。そうなのです。家ではありません。屋敷です。地下室があって、庭があって、表に繋がる通路には、敷石で通路が作られて、白い砂利が敷き詰められています。表通りから入った場所には、真子ちゃんと私が住むことになる離れがあります。
部屋ではなく、離れといっても、普通の家です。違うのは、母屋と繋がっていることです。表ではなく、地下で繋がっているのは、真子ちゃんの拘りです。
誰かに襲われた時に、逃げるための通路は必要だと言っていました。
真子ちゃんは、誰と戦っているのでしょうか?
主殿もせっかく新築するのだからと要望を書き連ねてくれました。地下にシェルターにもなる、シアタールームを作っています。ギルドの人間が増えても大丈夫なように、20人くらいが映画を見られるようになっています。

”お金はあるので、使ってしまいましょう”が、主殿の言葉です。

病院も作りました。
孔明さんが連れてきた変人・・・。いえ、頭のおかしいマッドサイエンティストが、院長です。
主殿は喜んでいたので、文句は言いませんが、孔明さんの知り合いにしては珍しいタイプだと思ったら、元々は蒼さんの知り合いだと聞いて、少しだけ安心しました。
人向けの健康診断を行う病院と動物病院が併設する変わった病院です。
医院長は、マッドサイエンティストですが、オーナーは貴子ちゃんです。最初は、貴子ちゃんが辞退しようとしましたが、税制の問題もあるので、病院のオーナーは貴子ちゃんの方がよいと説得しました。

貴子ちゃんが持つ大量のお金をつぎ込む場所として病院が適切です。
健康診断の為には必要がない機材も大量に購入しました。マッドサイエンティストが連れてきた人たちが居なければ、倒れていたのは・・・。

貴子ちゃんのお金を使って、屋敷と病院を作ります。
病院は、貴子ちゃんの実験室にもなる予定です。

ポーションを使った治験は既に開始されました。
もちろん、事前に説明をして、口止めしています。口止めも、貴子ちゃんが契約ギアスを結ぶようになっています。

マッドサイエンティストは、ポーションの実験ができる人材を連れてきては、嬉々として契約を結んで治験を行っています。実験と言っても、病気が治ったり、動かせるようになったり、臓器の損傷を治す程度にしているようです。真子ちゃんに施したような治療は行っていません。

「茜!茜!」

考え事をしていたら、円香さんに怒られました。

「え?あっ!ごめんなさい」

会議中なのをすっかり完全に忘れていました。

貴子ちゃんに、オークションの結果を伝えます。
ギルド日本支部主催で初めて行ったオークションは、貴子ちゃんから提供があった素材が中心です。魔石はオークションを行いませんでした。

カバーストーリーの為です。
孔明さんが、日本ギルドの連中に流した魔石の損失を埋めるために、ギルド日本支部は貯め込んでいた素材をオークション形式で売りに出した。

貴子ちゃんが持ってきてくれた素材の中で言えば、中級程度の品質ですが、今までの常識では上級素材にも届きかねない物です。
オーガの角は、世界でも1-2例しか見つかっていない物を目玉商品として出しています。

同じ物で、品質が高い物が日本ギルドにも流れています。
喜んでいることでしょう。オークションの開催は、孔明さんを通して日本ギルドにも情報が流れています。

情報が流れた翌日には、経済産業省からギルド日本支部がオークションを主催する場合には、日本国籍を持つ者だけに参加資格を与えるように通達が来た。あからさますぎて皆で笑ってしまいました。

オークションの落札価格を、貴子ちゃんに説明しました。

「ありがとうございます」

「物品は?」

「既に、配送を行った」

円香さんは、”配送を行った”と言っているが、実際には孔明さんと蒼さんが、手渡しをしている。

素材は、原則、手渡しです。宅配便や郵送は考えていません。その為に、経済産業省から言ってこなくても、落札者は日本にいる必要があったのです。国籍までは、考えていませんでしたが・・・。

落札者には、メールの暗号化と似たような方法を採用しました。
落札者には、符丁を渡します。符丁の暗号化は、お互いの公開鍵を使います。受け渡し前に、暗号化したデータを貰って、ギルドの秘密鍵で復元を行います。問題がなければ、振込を確認してから、落札品の引き渡しを行う手順です。

面倒だと言い出した落札者も居ましたが、無視です。
面倒だと思うのなら、入札をしなければ良いです。

素材の多くは、私たちが考えた者たちが落札していきました。

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