【第四章 発展】第四十六話

 

/*** カズト・ツクモ Side ***/

61階層は、見渡す限りの湿地帯のようだ。
これがもう少し上の階層にあったら、田んぼに開発するのだけどな。さすがに、61階層では、開発も難しそうだ。

属性付きのワニが出てくる。見た感じ、ワニモドキなので、ワニと認識しておけばいいだろう。属性も、水と風が半々という所だろうか?
さすがに、強い。ってよりも戦いにくい。湿地帯で、カイとオリヴィエの機動力が削がれてしまっている。

そのために、スキルの使用を前提に戦う事になってしまっている。湿地帯だから、凍らせて、その上で攻撃とかしているが、効率が悪い。これが暫く続くとなると気が滅入ってくる。

なんとかテンションを保っていられるのは、このワニモドキが食べられるという事実があることだ。実食はまだだが、日本に居た時に食べたワニ料理は美味しかった。それを考えると期待ができる。

空中を移動している者に対する攻撃はなさそうなので、進化済みのビーナ達を呼び出して、攻略に協力させる事にした。

逐次、ライが情報を吸い上げる。
下層に向かう魔法陣か、部屋が見つかったら、そこまで誘導させる。

約2時間後に、下層に向かう魔法陣が見つかった。
フロアボスは存在しないようだ。

そのまま、62階層に向かう。多分、この湿地帯フロアは、69階層まで続いているのだろう。
さっさと踏破してしまうほうがいいかも知れない。フロア自体が、上層と比べてかなり狭い。そのために、魔法陣を見つけるのがそれほど手間ではない。戦闘が面倒なだけだ。それも、慣れてくると、楽とは言わないが、倒し方がわかってきた。
スパイダーの糸を紐状にした物を使って、ワニモドキを絡め取る。その後ですぐに、口を縛ってしまえば、後はトドメをさすだけの簡単な”お仕事”になる。スキルに関しては、ワニモドキも詠唱するのかわからないが、口を塞げば、スキルを使用してこない。

「フィリーネ。次、アリゲーターが出た時には、弓矢で口の中を狙ってくれ」
「かしこまりました」

これで、スキルが利用できなくなったら、ワニモドキに関しては、問題は少なくなる。

10回の遭遇で、27匹のワニモドキを倒した。フィリーネが口の中を攻撃できたのは、3匹で、3匹とも、矢が刺さったままでは、スキルを使ってこなかった。何らかの方法で、これでわかったのは、魔物も何らかの方法で、詠唱しているのだろう。

63階層に来ると、ワニモドキがトカゲモドキを従えて出てくる。
トカゲと言っても、コモドドラゴンくらいの大きさがあるので、ワニと遜色ない大きさだ。ワニモドキの方も、一回り大きい奴が交じるようになってきている。倒し方は変わらないので、サクサク進む。

64階層も湿地帯が広がっている。

「カイ。どうしたらいいと思う?セーフエリアはなさそうだよな?」
『はい。無いと思います。一気に駆け抜けますか?』

カイとしては、さっさと深い階層に行きたいのだろう。

「フィリーネ。時間はまだ大丈夫なのか?」
「もう、そろそろ、一旦おやすみして頂きたいです」

もうかなりの時間潜っているからな。

「わかった、今日は、この階層を抜けたら終わりにしよう」

「マスター!明日は?」

オリヴィエは、まだ戦いたいのだろうか?

「そうだな。帰ってから、スキルカードの確認をしてからだな」

最低限の目標を達成できた。
でも、まだレベル7回復は、俺の手元には来ていない。
レベル7即死やレベル7地図は複数枚取得できている。レベル7詠唱破棄なんてスキルも取得した。

「ライ。この辺りだと、魔蟲は少し厳しいよな?」
『うん。でも、でも、スパイダーが、糸で絡めて、アントとビーナで攻撃を行う事で対応は出来る・・・かな?』
「安全マージンを考えると、どのくらいが必要になる?」
『初代がいれば安全かな。僕も一緒なら、ほぼ無傷で倒せると思う』
「どうしよう・・・まずは、この階層を踏破してから考えるか?」
『はい』

ライが初代と呼ぶのは、最初に進化した5匹の事を言っている。
スキル付きの魔核を吸収させて、”イリーガル”に進化している。60階層を超えた辺りから、”イリーガル”でないと無理なのかも知れない。それも、一体ではなくて、複数での連携を取っての対応になるのだろう。
相性の問題も有るだろうが、安全マージンという意味では、相性を気にしないで倒せるくらいで考えておかないとダメだろう。

『あるじ。魔法陣が見つかった』
「わかった、案内頼む」

うん。徐々にだけど、やっぱり狭くなっているのだろうな。
探す時間が短くなってきている。

この階層も、フロアボスは存在していないようだ。
周りに、ワニとトカゲが居るけど、気にしないで、階層を降りよう。

65階層に降りた。

踏破ボーナスのスキルが手に入った。

!!!
レベル7回復が2枚とレベル8偽装がある。
やっとだ。やっと偽装が手に入った。これで、街に行っても大丈夫なように偽装しよう。

早速帰って実験だな。

「よし。帰るか」

洞窟に戻った。

スーンが待っていた。

「大主様。リーリアから、連絡が入りました」

もう”大主様”の情報は回ったようだ。嬉しそうにしているので、もう戻せないだろうな。

「そうか?なにか、問題でも発生したか?」
「いえ、当初の予定通りに、教会が保持していた、書類やスキルカードや素材になりそうな物。あと、書籍と地図を確保したと連絡が入りました」
「お!地図が手に入ったのは想定外だな。まだ、リーリアは、街の中に居るよな?」
「はい」
「魔核を全部、スキルカードに変えてもいい。教会のスキルカードは珍しい物を除いて、全部使っていいから、街の書籍や武器/防具や食料を買い占めさせろ」
「はっどちらを優先しますか?」
「そうだな。書籍が優先だな。武器や防具は、研究用だな。食料は、ミュルダに売るくらいしか役に立たないけど、書籍は情報になるからな。あと、獣人族が隷属化されているようなら、解除してしまえ!」
「かしこまりました。それから、人族の憎悪を煽ったようですが、よろしいですか?」
「ん?俺たちの存在や、獣人族に憎悪が向かなければ問題ない」
「それでしたら、問題ありません。あの司祭とか言う奴に憎悪が集中しているようです」
「そうか、それだと、リーリアがいつまでも教会預かりになるのはまずいか?」
「大丈夫だと思います。領主の爆発も近いですので、リーリアに買い占めを行わせます。その後はどういたしましょうか?」
「そうだな。レベル7回復も見つかったから、俺たちは、この後、ヒルマウンテンに向かう。リーリアは、ミュルダに向かわせろ、たしか1人、念話持ちがいたよな?そいつに連絡してみろ、無理なら俺が行くまで、ミュルダの近くで待機させろ」
「かしこまりました」

リーリアの件はこれで大丈夫だろう。

「スーン。もし、念話が通じるようなら、レベル7回復が見つかったと連絡を入れておいてくれ、そうしたら、ミュルダの領主は俺に会う理由が出来るだろう?」
「わかりました」
「どうした?なにかあるのか?」
「いえ、どのくらいと伝えればよろしいですか?」
「そうだな。4~5日だろうけど、安全を見るなら、10日だな」
「かしこまりました」

ふぅ次は、素材で、食べられる物は、倉庫にしまって、一部は、獣人族に渡せばいいかな?

「ライ。眷属たちの食べ物は足りているか?」
『大丈夫です!でも、60階層以降の魔物があれば進化すると思う!』
「わかった。それじゃ今回の魔物は、眷属たちに渡してくれ、魔核はいつもどおりにするからな」
『はい!』
「カイとウミもいいよな?」
『もちろんです』『うん。大丈夫!』
「スーン。悪いな。エントとドリュアスはその次な」
「いえ、大丈夫です。まずは、ヌラ殿、ゼーロ殿、ヌル殿たちが安全に下層ダンジョンに入られるようになれば、我らも進化が期待できます」

さて、レベル7回復が二枚新たに手に入ったし、やっと”レベル8偽装”が手に入ったからな。

まずは、偽装だな
// レベル8 偽装
// 種族名/称号/スキル/体力/魔力を偽装/隠蔽ができる
// レベル6鑑定では見破れない。
// 触りながら

俺がやりたい事が出来る。
まずは、俺に固定化だな。

// 固有スキル:固定化(レベル6)
// 固有スキル:眷属化(レベル2)
// 固有スキル:創造(レベル2)
// スキル枠:鑑定
// スキル枠:念話
// スキル枠:呼子
// スキル枠:偽装
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// スキル枠:—-
// 体力:G
// 魔力:A-

まずは、偽装を固定化だな。回復は、レベル9完全回復まで待つか?
称号を、客人から”なし”と書き換えておこう。街に出た時に、人族を見て、種族と称号の変更を行う。後は、魔力を、C+くらいにしておこう。隠蔽も出来るようだから、固定化と創造と念話と呼子と偽装は隠蔽だな。

スッキリした!
名前:カズト・ツクモ
性別:男
種族:人族
称号:なし
固有スキル:眷属化
固有スキル:鑑定
体力:G
魔力:C+

うん。見栄えも良くなった。
カイとウミとライも整理する。特に、種族名を、”フォレスト・キャット”と”フォレスト・スライム”に変更しておく、オリヴィエは、本人の希望もあって、種族は隠蔽する事になった。
称号は、俺のわがままを通して、
カイとウミに関しては、”カズト・ツクモのペット”にした。意味はない。なんとなく、その方が可愛いからだ!
ライは、倉庫番にした。これも意味はない。オリヴィエは、”カズト・ツクモの従者”とした。

さて、ヒルマウンテンの竜族を目指す事になるが、さすがに今日ではなく、あすの朝に向かう事になる。
道案内に、ライの眷属が出てくれるが、黒狼族との面通しに、白狼族の族長がついてくる事になった。

高速移動の方法もなにか考えないとな。
今日は、風呂入って寝よう!

/*** ??? Side ***/

(クソぉ!なんで私がこんな目に、合わなければならない!)

男は、ボロボロになっているとはいえ、法衣をまとっている。
聖職者なのであろう。しかし、法衣は、汗や血や排泄物で汚れて、見る影もない。

連れている従者たちも疲れ切っている。
それもそのはず、彼らは、ブルーフォレスト遠征(獣人族狩り)にでかけた者たちだが、得体の知れない魔物に味方が襲われたと解った瞬間に、逃げ出したのだ。アンクラムには帰られない。
司祭を見捨てて逃げ出したのだ。後方に控えていた、補給部隊を攻撃して、物資や馬車を奪って居るのだ。
実際には、アンクラムに、その事は伝わっていないのだが、かれらは、自分たちの正当性を、アンクラムの教会ではなく、アトフィア教の総本山に出向く事で証明隠蔽する方法を選んだ。

(総本山にたどりつけさすれば、なんとかなる!野蛮な獣人族が大量に居る街なぞすぐに駆逐してくれる。私にこんな惨めな思いをさせたのだ、それそれ相応の報いをうけさせてやる)

逃げなければ、殺されるか、のたれ死んでいたか、よくても、リーリアの操作をうけていた事になる。
そう考えると、生きているだけで良かったのかも知れないが、彼が、その事実を知ることはない。

彼は、生きている事を喜んで神に感謝すべきだった。
彼がすべき事は、このまま何もせずに、生きることだったのかも知れない。

しかし、彼は総本山にたどり着けさえすれば、教皇への面談ができてしまう身分なのだ。
そして、現教皇は、彼の事をよく知っている人物だ。彼を、アンクラムに派遣するのを決めたのも、教皇だったのだ。そして、アンクラムで、数年過ごしてから、本部に呼び戻して、枢機卿の1人に名前を連ねさせるつもりでいたのだ。

彼は、ただひたすら、総本山を目指して、従者たちに命令を飛ばすのだった。

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