【第一章 ギミックハウス】第十話 前哨戦-温情

 

 確保した子どもたちは、毛布に包まって寝てしまっている。
 よかった、パンも干し肉も食べられたようだ。明日は、違うものを出してあげたい。そうだ、地下に部屋を作ろう。なんとなく、種族別にまとまっているから、種族別に部屋を作るのが良いのだろう。

 ポイントの収支がおかしいように思える。
 ”本”の中に記述が、存在したか確認してみる。チュートリアルの最中には、ポイントの収支に関しての記述はなかった。

 ん?本が光っている?

”権限が拡張されました。新しい項目の閲覧許可を得ました”

 閲覧許可?
 新しい項目?

 戦闘を開始がトリガーになっていたのか?
 理由はわからないけど、ひとまず”本”を読まないと、わからないことだらけだ。

 俺が欲しい情報だと嬉しい。
 おっ今度は、”本”に触れただけで、スキル画面からの閲覧ができそうだ。外は、無意味に”門”を攻撃している。あの程度の攻撃では、罠の突破は不可能だ。ギミックに気がつく様子もない。時間切れを狙ってもいいけど、ポイントを考えると美味しくないのだろう。

 購入した高級ソファーに腰を降ろす。子供の身体だと少しだけ大きく感じるが、高級なソファーなのだろう。すごく座りやすい。

 ふむ・・・。
 子供はポイントが高いのだな。殺すと入手ポイントは多くなるが、一度のポイント取得で終わってしまう。しかし、閉じ込めると、ポイントが経過時間で貰えるようになっているのだな。閉じ込める時のポイントは不明としながらも、身分や体力などを総合的に判断されるようだ。
 ”閉じ込める”の、定義は、今の子供たちの状況は檻の中に入れているが、脱出方法がないので、閉じ込めている状況ではないようだ。鍵や罠で閉じ込めないと、ポイント加算の条件には当てはまらないようだ。

 まぁ子どもたちは、確保しただけだし、今の状態でも赤字にはならない。放置でいいだろう。

 ポイントの取得条件が、新しく閲覧が許可された項目のようだ。
 じっくり読み込む必要がありそうな項目だ。呼んだ結果でわなの作り方も変わってくる。

 今は、門を攻撃している奴らをどうにかしないと・・・。

 門を攻撃しているやつらを見てみるが、あいつら・・・。頭は大丈夫か?

 なんとかの一つ覚えのように、落とし罠の手前から、岩を飛ばしているだけだ。
 音はたしかにすごいが、岩が割れる音がしているだけだ。

 それだけではなく、割れた岩が門の前に積み重なっている。門を、開けようと思ったら、岩をどかす必要がある。あの門は外開きだ。落とし穴のギリギリの位置まで門が開く設定になっている。外開きの門の内側に、扉があり、その扉は左右に開く形にしてある。そして、最後の門として内開きの門が設置している。せっかく、壁を厚くしたから、門にも細工をした。落とし穴と、鉄球が飛び出す罠は停止している。岩が落ちてくる罠は、小さな石に交換してトリガーを設定した。

 魔王城(仮称)の実戦テストを実施したい。

 どうしよう・・・。
 まず、内壁の門に設置している罠も停止しよう。
 解りやすいように、外壁から内壁の門までと、内壁から魔王城(仮称)の入り口までの罠を停止して、細くなるけど、道に街路樹を植えよう。

 子どもたちの檻は、木々で隠そう。奴らの扱いから、子どもたちは俺が確保しておく。

 子どもたちのことは、あとで考えよう。

 よし、街路樹を植えた。落とし罠の上にも、木は設置できるようだ。罠が発動するとどうなるのだろう?
 適用を行う。
 一気に、何も無かった場所に木々が生い茂る森のような状態になる。これなら、森に獣を放ってもいいかもしれないな。魔王城(仮称)の攻略状況次第で
罠の見直しを行おう。
 どうやら、残り800名ほどは、逃げるつもりは無いようだ。
 ポイントに還元してあげよう。

 さぁ次の攻撃で、門が少しだけ開いてあげよう。
 さてどう動くか?

「殿下!」

「どうした!」

「門が、門が、少しだけですが、開きました!」

「ようやくか・・・。それで、突入はできそうなのか?」

 殿下は、周りを見るが、7番隊から来ている者は、居ない。すでに、後方に下がらせてしまっている。

 殿下の言葉に、誰も反応をしない。

「っち。7番隊の隊員は?」

「・・・」

 殿下、自身が7番隊を疎ましく思って、後方に下がらせた。それだけではなく、粛清の対象として考えている。15番隊の副隊長も、殿下の考えを後押しして、決定している。今更、連れ戻して、突入の前準備をさせることは難しい。いや、不可能だ。殿下が、自分の考えが間違っていたと認めなければならない。帝都に帰ったら、首を跳ねるとまで宣言してしまったのだ。魔王討伐を成し遂げて、帝都に帰らなければ、自らの発言が間違っていたと認めてしまうことに繋がる。

「殿下」

「なんだ。15番隊か?奴隷を使うのか?」

「はい。我らが抑え込んでいる」「貴様たちは、子どもたちで大丈夫だと言った!それで、あのざまだ!7番隊に貸しが出来ただけで、何も出来なかったのではないか!」

「それは、想定していない状況に」

「言い訳はいい。今度は、出来るのだな?」

「はい。残り800と、我ら15番隊の精鋭を連れていきます」

「わかった。魔王までの道を切り開いてみせろ」

「はっ。帝国と殿下に永久の忠誠を」

 跪いて、頭を下げた15番隊の副隊長は、殿下が振り返らずに豪奢の椅子に戻ったのを確認して、立ち上がった。
 豪奢なテントを出ると、不機嫌な表情を隠そうとしないで、自らのテントに向かう。

「魔王城に向かう!」

 居並ぶ、部下たちに一言だけ告げる。
 部下たちも、それだけ聞けば十分だという表情をしている。

「副長。誰が向かうのですか?」

 副長の補佐をしている一人が、皆を代表して作戦を聞く。

「全員だ」

「奴隷兵と我ら全員ですか?」

「スキル持ちも連れて行く」

「それは・・・」

 スキル持ちは、15番隊の虎の子のだと言ってもいい。奴隷契約を行っている”者たち”だ。
 奴隷たちは、主人となる者には逆らえないようになっている。その契約を縛っているのが、奴隷スキルを持っている者たちなのだ。通常は、奴隷商人が行っているが、15番隊は自ら捕らえてきた者たちを、適当な罪状を付けて、奴隷にしている。その時に、市井の奴隷商人を使うと、問題行動だと言われた時に、言い逃れが難しくなってしまう。”スキル持ち”として15番隊に所属している者が、奴隷スキルを含む”闇スキル”が使える者を、抱え込んでいる。

 子供が消えた。しかし、スキル持ちや奴隷の主人からは、契約が切れたという報告が上がってきていない。
 死んでいないが、奴隷スキルの拘束が解かれている状態になっている。子供を見つけて、奴隷スキルを使って、強固な行動拘束を考えている。

「準備を急げ!」

「はっ」

 部下たちは、一斉にテントから出ていく、自分が確保している奴隷とスキル持ちを動員するためだ。
 食料は割り当てられている。奴隷に持たせればいいと簡単に考えている。奴隷には食料が必要ないとでも思っているようだ。

 魔王城に侵入して、魔王までの道を作る。
 これが、15番隊に課せられたミッションだ。

 門の前に移動すると、確かに門に隙間が出来ている。

「っち、何も考えずに、砲撃していたから、石が門の前に溜まって、門を開こうとすると、邪魔になってしまうのだな」

「はい。そのようです」

 副長は、副官の言っているような内容を期待しているわけではない。もっと・・・。

「解っているのなら、取り除け!奴隷を使えばすぐに終わるだろう!」

「はっ直ちに!」

 副官は、奴隷部隊を指揮している男たちを呼び出して、門の前に散らばっている、石を退けさせる指示を出す。
 多分に、岩を退けただけでは、門が開いた時に、門の前に居た者たちは、落とし穴に落ちてしまう。

 扉のサイズから、少しでも頭に脳味噌が詰まっていれば、簡単に気がつくだろう。
 だが、第15番隊の副長の指示を実行した、奴隷は合計13名が。開いた門に寄って、落とし穴に落とされる結果になった。