【第一章 ギミックハウス】第八話 開戦-前哨戦

 

 スキル画面の右上の数字が、100を切った。

 外に居る連中は、いきなり攻め込んでくるのか?

 ちょっとだけ外を見てみたい。
 でも、俺には攻撃力も防御力もない。それに、服は日本からより寄せたものだ。この部屋から出たら全裸になってしまう。

 それにしても、先頭にいる奴らは、薄汚れた格好をしているし、子供だけに見える。
 奴隷とかなのか?

 先代の日記にも、奴隷を戦わせている記述があった。

 うーん。
 ひとまず、落とし穴の水罠は止めておこう。
 転移罠にして、敷地内に隔離する場所を作ろう。

 鎧を身に着けている連中は、攻撃してきたら考えよう。

 間に合うか?

”30”

 間に合った。
 罠を切り替えて、落ちた者を、敷地内に作った牢屋に閉じ込める。簡単な罠だ。

”10” - ”9” - ”8” - ”7” - ”6” - ”5” - ”4” - ”3” - ”2” - ”1”

 カウントダウンが終了した。

 静かだ。

 何かが変わったわけではない。

 陣所から、子どもたちが出てくる。脅されているのが解る。何度も、何度も、後ろを振り向きながら、六芒星の壁に向かって、歩いてくる。

 やっと、顔が見える。
 ん?獣人とかいう種族の子供か?普通の人の子供も居る。
 全部で、50人くらいか?ビクビクしている。

 どういう意図なのかわからない。
 子供に攻撃されても、困らない。暫くは静観してみるか?

 そうだ。領域を広げたのを忘れていた。
 子供たちは、もう俺の領域内に入っている。侵略者だ。

 子どもたちは、落とし罠の手間で止まった。
 何かを感じ取っているのか?そうなると、罠を考え直さなきゃならない。

 ん。あぁそういうことか・・・

 六芒星のどこに入り口があるのかわからないから、入り口を探して戸惑っているのだな。
 6箇所にそれぞれ50人を割り振って、子どもたちに入り口を探させるつもりだな。

 クズの所業。
 そうと分かれば、転移罠で全員を捕らえる。

 子どもたちの足元には、罠を設置出来ない。進む方向に、転移罠を設置する。
 パソコンを使っているから、簡単に設置が完了して、チェックして適用。

 間に合った。
 陣所から遠い場所に子どもたちが配置した。

 偉そうな奴が出てきて、何か喚いているが、俺には聞こえない。

 時間を使って演説をしてくれている。無駄な努力が嬉しい。罠の見直しが出来る。転移罠の先には、檻を作った。ひとまず、全員を同じ場所に閉じ込める。檻の破壊が出来ても、魔王城(仮称)しかない場所だ。出口が見えるような場所ではないし、攻める場所が見えるだけだ。

 まだ、演説をしている。
 えらそうな奴は嫌いだ。

 落とし罠の中にせっかく配置した転移罠は排除しよう。
 せっかく設置したが無駄になってしまった。

 そうか、これが罠を使った戦い方の問題点だな。
 相手に対して柔軟な戦い方が出来ない。

 ん?ポイントが少しだけ上昇している。
 そうか、子供でも侵入者は侵入者だ。子供からポイントを得られているのだな。

 おっ
 演説している奴の近くに、誰かが近づいてきた。
 そろそろ終わるのか?

 なになら、渡している。狙撃とか出来ないかな?銃とかで、頭を打ち抜きたい。
 わからない。わからないけど、偉そうな奴が、何かを受け取って、何かをしたら、子どもたちが、前に進み始めた。

 それにしても、どうやって、門を探すつもりなのだ?
 なにか、ルールがあるのか?

 捕らえた子供に聞けば解るか?

 罠の発動は、俺が任意に行うようにしている。全員を一気に転移させたい。

 あと・・・。2歩。1歩。今だ!
 6箇所の転移罠を発動。檻に子どもたちを捕らえた。

 おぉぉ。俺もやればできる。子どもたちは無事だな。何か、慌てているけど、大丈夫そうだ。
 魔力妨害の罠も発動する。罠の説明を読むと、設定した空間を、魔法による攻撃や補助が出来ない状態にすると書かれていた。説明の補足には、魔法を使った会話や連絡も全て遮断すると書かれているので、子どもたちを隔離するのには丁度いい。子供でも、魔法を使われて、檻が壊されたら嫌だ。

 前哨戦は俺の勝利だ。

 陣所には、慌てた様子がない。
 もしかしたら、想定の範囲内なのかもしれない。手強いな。

 騎士ではないが、粗末な服装ではない、軽装な人物が10名ほど出てくる。
 罠の場所がわかるのか、落とし穴の手前に、棒を挿している。転移罠も避けている。やはり、罠の探知ができるのだろう。対策が必要だ。

 2-3人の組に分かれて、六芒星の周りを見て回っている。
 それが出来るのなら、最初からやればいいのに、子供を使い潰すような真似をする必要はないよな?意味がわからない。

 門を見つけられた。門と言うか、壁まで行ける道を発見したようだ。複雑にしているうえに、馬では進めない。90度に曲がったり、ロウズ・ヘアピンのように曲がったり、行き止まりになっていたりする。踏み外せば、落とし穴が発動する。
 わかっていても、突破に難しい罠を考えた時に、思いついた。

 範囲攻撃だけだが、塔からの砲撃もある。
 わかっていても、突破は難しいだろう。

 え?そりゃぁずるいな。
 傘のような物を掲げると、塔からの砲撃が霧散してしまった。もしかしたら、魔法を無効にする道具なのかもしれない。罠にあるのだから、道具に有っても不思議ではない。考えれば・・・。そこまで、頭が回らなかった。生き残ったら、しっかりと罠とスキルの研究をしよう。

 陣所から子供が出てきて、すでに6時間が経過している。

 あっ!子どもたちに食事を与えていない。
 どうしよう。

 ”本”で食事を検索したら、この世界では標準的に食べられているパンがポイントで交換できる。あとは、干し肉とスープだ。
 300名の子供だ。パンを、600個と干し肉を2,400個と水を樽で用意・・・。おっ。ワインが有るけど、ワインは早いよな。うーん。水しかないのか、水を樽で30も用意すればいいのかな?スープは、何ででてくるのか書かれていないから怖いからやめよう。一応、侵入者だから、パンと干し肉で我慢してもらおう。あとは、そうだ!タオルと毛布を与えておけば大丈夫だよな。外の気温はわからないけど、寒そうにはしていないから、大丈夫だろう。
 ポイントの合計は、これだけ交換しても、9,000ポイントだ。子どもたちから、1時間に1,000ポイント(騎士たちも門に向かっているから、その分も入って)増えている。食事3回分だとすると、十分だろう。
 いきなり、食事が現れると怖いだろうから、手紙を添えて・・・。面倒だけど、一度、マスタールームから出て、手紙を転移で送ってから、罠の中に食料とタオルと毛布を転移で送る。

 送ってから気がついたが、文字が読める子が居てよかった。
 食事だとわかってくれたようだ。喧嘩をしたり、独占したり、分けなかったら、”殺す”と魔王らしい記述を入れたから、皆がおとなしく食べてくれている。
 手紙が怖かったのか、数名は泣いてしまっている。悪いことをしたな。それから、子供にも派閥があるのか、集団まとまりが出来始めている。

 よく見ると、年長者も居るな。
 今の俺と同じくらいか?

 近くに行けば、鑑定が使えるよな。契約を行うと、ポイントが入らなくなるけど、俺を裏切らなくなるとか書かれていたな。
 チュートリアル中に書かれていたことだし、子どもたちをどうするのかを考える前に、やはり”本”で確認しておいたほうがいいだろうな。

 それにしても、表の大人たちは、何をしている?

 おっ賢い。
 落とし穴の場所がわかって、門の位置の見当がついたから、門を攻撃するのか?
 そう言えば、六芒星の他の壁を攻撃しないのは、何故だ?壁の攻撃をどの程度なら耐えられるのかサンプルが欲しかった。

 罠の上に橋を作るのか?
 それなら、落とし罠を発動して、水罠も発動しよう。

 魔王城(仮称)本来の姿を見せてやろう。お湯を下に感じながら、攻撃が上から注ぐ場所を、歩くのには神経を使うだろうな。

 門のギミックに、気がつくか見ものだな。
 壁を攻撃しないのなら、ギミックを解かなければ中には入られないからな。門が開かない。