【第六章 ギルド】第十一話 到着
王都に入る為には、パシリカの時でもなければ、検閲を受けなければならない。
ハーコムレイ辺りと、ギルドが交渉してくれたら、もしかしたら楽になるのかもしれない。
今は、列に並ぶのが自然な事だ。
それに、目立ちたくない俺たちに取っては、列に並ぶ以外の選択肢はない。
結局、列に並ぶ前に、アウレイアの眷属をどうするのか結論が出なかった。
ミアがテイムしている”白狼”だということにした。
本人?に確認をしたら、そのままミアの護衛としてテイムされても問題はないということになった。身振り手振りでの会話なので、時間がかかってしまったが、満足できる結果だ。
ミアが起きてから、ミアに相談した。
「ミア。この、ホワイトウルフが、ミアと仲良くなりたいと言っている。どうする?」
ミアは、俺とミルの顔を見てから、ホワイトウルフに抱きついた。
「リン?」
「テイムできたようだ」
「ミア。この子に名前を付けてあげて」
ミルが優しく、ホワイトウルフを撫でながら、ミアを諭すように伝える。
「うーん」
ミアが考えている。
ミルが嬉しそうに、ミアの頭を撫でる。可愛くてしょうがないという雰囲気だ。
「シ」「ミアちゃん。もう少し考えてみようか?」
あれは、確実に色から連想した名前だ。
さすがに可哀そうだ。眷属のホワイトウルフの尻尾が下がっている。さすがに、”シロ”は嫌なのだろう。
「うーん。リルも違うし・・・。うーん。レオ!レオに決めた!」
”うぉーん”
レオが気に入ったようだ。
「ねぇリン?」
「ん?」
「ミアの真命だけど・・・。空白だと、獣と同じだよね?」
「そうだな。適当に何か付けた方がいいか?」
「・・・。リン。ミアの真命だけど、”ミハル”じゃダメ?」
「いいけど、なんとなく・・・。あぁ漢字じゃなければ、問題はないのか?」
「・・・。うん。やっぱり、ダメかな?」
「真命がないのはダメだろう。俺には、いい名前が思い浮かばないから、”ミハル・アカマース”にしておくか?」
「え?あっうん!ボクの妹って設定だね」
「まぁ設定っていうか、その方が、誰かに聞かれた時に、説明が楽だろう?種族も、猫人族ではなく、”ハーフ・猫人族”にして置けばいいだろう?」
「うん」
偽装を終えて、確認を行う。
///真命:ミハル・アカマース
///種族:ハーフ・猫人族
///ジョブ:テイマー
///体力:30
///魔力:110
///腕力:40
///敏捷性:90
///魅力:80
///魔法:白(1)
///エクストラスキル:眷属回復
///
///眷属:ホワイトウルフ幼体(命名:レオ)
気になったのは、ホワイトウルフが幼体だった。
結構な大きさがある。レトリーバーの成体と同じくらいだぞ?アウレイアやアイルよりは小さいけど、これで幼体?アウレイアとアイルくらいならいいけど、あれ以上の大きさになるようなら、考える必要がありそうだ。
それに、眷属の名前まで書かれている。
俺の眷属とは違うようだ。あと、ミアのステータスには変化が見られない。偽装をしていない状態でも確認したが、ステータスの向上はしないようだ。
「ミア」
「はい!」
俺が、名前を呼んで、ミアに視線を合わせると、しっかりと俺の顔を見てくれる。賢い子だ。
「ミアは、ミル。ミトナルの妹になった」
「え?お姉ちゃん?」
「うん。そう。ミル姉って呼んでね」
「ミルお姉ちゃん?」
「うーん。まだ緊張しているみたいだけど、今はいいかな」
ミルがミアを抱きかかえて、レオの上に載せる。
いつまでも街道の脇で止まっていたら、通りかかった人たちに不思議な視線で見られてしまう。ミルはそれでなくても、目立つ。可愛いという意味で・・・。それに、ホワイトウルフに乗った可愛い猫人族に見えるミアが居る。不埒な者に襲ってくれと言っているようなものだ。
王都に入る為の列が見えてきた。
「あるじ。あれに並ぶの?」
「そうだ」
どうやら、紆余曲折あって、ミアは俺の事を”あるじ”と呼んで、ミルのことは”ミルお姉ちゃん”又は”お姉ちゃん”と呼ぶことに決めたようだ。最初、ミルのことを、”ミトナル様”と呼んでしまって、ミルが泣きそうになってしまった。
どうやら、俺たちにはできないけど、レオと会話ができるようだ。
そこで、レオがミルを”ミトナル様”と呼んでいるのを聞いて、”ミトナル様”と呼ぶのが正しいと思ったようだ。
列に並んでいる最中に、テンプレの出来事が起きないか心配したが、ここでそんな騒ぎを起こす愚か者は居なかった。
何人か、俺ではなく、ミアやミルを品定めするような目つきで見て居る者が居た。列に並ぶことなく、通り抜けていった。どうやら、一部の商人は貴族と同じ検閲所を使えるようだ。愚かな貴族が居ると教えられていたし、実際にアゾレムのような貴族は多いだろう。それでも、俺たちに絡んでくる者が居なかったのは、肩透かしを喰らった気分だが、良かったと思っている。
王都の門番は、ミヤナック家と懇意にしている者たちが仕切っている。
簡単に言えば、王族派閥だ。宰相派閥の特権を当たり前だと考えている者たちは、貴族が通る門の門番を行っている(らしい)。
俺たちの番になった。
袖の下なしで通過ができた。
ただ、レオに関しては注意された。
テイムしている状態だと解るようにして欲しいという事だ。そのまま入っても良かったのだが、警備の人が屯所で待っていたらテイマーが使っている物を持ってきてくれるというので、待つことにした。
兵士が持ってきたのは、首輪をはじめ、いろいろな物だ。
ミアに見せたところ、選んだのは、腕輪だ。
意外と高かった。コボルトの魔石一つと同じくらいの値段がした。
ミアが気に入っているし、レオをテイムした魔物だと解るようにしておく必要がある。ミアも、お揃いの腕輪を選んだ。これで、魔物がテイムされた状態だと解るようになる。しかし、お互いにまだ腕輪は嵌めていない。俺が嵌めるのを待つように言ったからだ。兵士の手前”礼”を伝えてから、外に出た。テイムしている魔物だと解るようにする道具をこの場でしないのなら、常に側に置いておくように言われた。
腕輪をすれば、すぐにでもテイムされている魔物だと判別ができる。
テイムされた魔物だと解った状態で、レオに危害を加えたら、ミアに危害を加えたのと同等になる。そのミアの主人である俺とも敵対することになる。貴族や上位国民には意味がないが、俺やミルが反撃を行う明確な理由になる。使いたくはないが、ミヤナック家から”借り”を返してもらってでも反撃が行える理由になる。
「さて、ミル。どうしようか?」
「うーん。リンとデートしながら、フェムの店に行く?あそこなら、情報も集まると思うし、ギルドが実際にどうなっているのかわかると思うよ?」
「そうだな。何か、変わっていたら嬉しいし、動いていなかったら、そのまま神殿に誘致してもいいだろうな」
「そうだね」
ミルは、ミアと手を繋ぎながら歩いている。
俺とのデートと言いながら、妹(仮)も一緒に連れていくようだ。
ミアは、ミルに手を繋がれながら自分で・・・。歩いてはいない。ミアはレオの上に乗っている。
「まずは、道具の隷属を切り離す処理だな」
「そうだね」
腕輪には、隷属の魔法が付与されていた。
テイムされた腕輪だが、その腕輪を付けると、主人に逆らえなくなるのは当然だけど、自死まで命令が出来てしまう。そして、それは主人であるミアが最上位に設定されない。教会関係者が最上位になっていた。
だから、俺は嵌めるのを止めさせた。
フレットが教会のお偉いさんの家系のはずだ。何か、知っていることを期待している。
ギルドで、テイムした魔物に関する決めごとを作る必要が出てきそうだ。
いろいろやることが多そうだ。
まずは、テイムされている魔物だと解るように、腕輪に似た物を作って嵌めさせておこう。
フェムの家に向かいながら、道具屋か防具屋か武器屋で腕輪が売っていれば・・・。
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