【第四章 スライムとギルド】第五十五話 動き出す計画(2)
時間を少しだけ巻き戻します。
真子ちゃんの治療が終わって、体力も元に戻った。もう大丈夫だと判断されました。孔明さんと真子ちゃんの仮住まいが決まりました。
ギルドとして動き出せるタイミングで、必要がない素材を、主殿がギルドに持ってきてくれました。
ゴブリンの角や(主殿基準で)使い道がない魔石です。大量です。驚くほどの量です。横流しをして、オークションにかけても余ります。余ったら、各国のギルドに流すことになるようです。
孔明さんと円香さんが話し合って、日本ギルドに横流しを行うブツを決めています。
ギルド日本支部は、主殿の結界で守られています。
防諜は最善を尽くしました。ネットワークは、専門家を雇い入れる方向で話が進んでいます。ワイズマンからの提案は、ギルド日本支部をモデルケースにして、ネットワークの防諜にも力を入れていくという事です。各国でも似たような問題が発生しているようです。
日本ギルドの様に、魔物の素材を軍事に組み込みたい国は多いようです。
海底火山の話は、ワイズマンも検討を開始したようです。
調べるのには時間がかかるらしいのですが、ギルド日本支部から出した推論で間違いはないだろうという話になっています。追試の必要がなく、実地で調べるしかない情報なので、見守っていくことに決まりました。世界規模での観察です。特に、海底火山の近くにある国は狂喜乱舞しています。陸地の魔物は国境を越えないのに、海洋の魔物は国境を越える可能性が出てきているためです。理由は解っていません。でも、魔物が存在しないはずの国の海岸で魔物が発見された事例が出ています。その為に、海洋からの流入を疑っているのです。
ギルド日本支部への褒賞は、主殿の報酬に当てられました。
主殿は、日本の国籍もあり、学生だった時の身分証もありました。国が発行しているカードも持っていたので、ギルドへの登録はスムーズに行えました。
孔明さんは、日本ギルドに横流しを行いました。
追跡は無理かと思ったのですが、主殿が魔石を追跡する方法を教えてくれました。
主殿の眷属である木の魔物から作られた箱で横流し品を持っていってもらったために、情報が筒抜けになっています。盗聴対策をしていても無意味でした。そして、やはり、魔物が存在しない国に魔石を流していました。
それも、相場の10倍近い金額です。ゴブリンの角という使い道があまりない素材も同じように相場以上の金額で流していました。
愚かです。円香さんと孔明さんの張った罠に自ら飛び込んできました。
日本ギルドの人たちは、自分たちは搾取する側だと思っているのです。相手を自然と下に見ています。その為に、下にいる者たちも”牙”や”爪”を持っていることを忘れてしまっているのです。
日本ギルドは、取引を行う時には、”日本”という言葉を省略しています。
使っている様式も、ギルドに合わせています。悪意を感じますが、今回は、その事が裏目に出ます。
孔明さんが横流しを行ったと同時に、一度目のオークションを開催しました。
こちらは、魔石は含まない素材だけのオークションです。
二度目のオークションの準備を行っています。こちらが本命です。
「茜!」
「準備は出来ています。オークションが先ですか?それとも、魔石作成の情報をリークしますか?」
「同時に行う」
「解りました」
二度目のオークションでは、横流しした物よりも、品質も良くて、大きめの魔石を出します。
作った魔石です。半分以上は、主殿の眷属が作ってくれた物です。マッドサイエンティストが調べた所、魔物からドロップした魔石と違って出力が強くて、既存の魔石を使った道具に差し込むと、暫くはいいが出力に耐えられなくて、道具が壊れてしまう。
作られた魔石に合わせて道具を作ろうにも、素材が耐えられない。現状の製品では不可能だという結論が出ました。
道具を作るには最低で上位種の素材を使って、加工にも主殿が推奨する”魔抜き”を行う必要があるようです。もちろん、”魔抜き”は秘匿技術です。
魔石生成の技術はオープン技術です。登録者は、秘匿しましたが、ギルド日本支部が名義を取得した技術です。
蒼さんに追試をしてもらって、大丈夫だという判断が出ました。論文も提出しています。体裁は綺麗に整っています。
魔石の作成は、びっくりするくらいの喰い付きを見せました。世界中のギルドが追試を行ってくれました。
ワイズマンを通して、各国のギルドに通達が入って、追試の結果が伝えられてきます。
しかし、魔石の作成技術の落とし穴を誰かが発見したのでしょう。落とし穴も追試が行われて、ワイズマンから、各国に既存の道具への適用を見送るように通達がでました。反応が早くて驚きました。
主殿から簡単な方法を、ギルド日本支部は聞いているのですが、秘匿しています。誰かが気が付くのを待っています。ワイズマンからは、何も情報が出てこないので、主殿が提示した”簡単な解決策”には辿り着いていないようです。
既存の道具用にある魔石に、作られた魔石から、マナを注入する方法です。主殿が普通に行っているので、ギルド日本支部では、道具にマナの注入を行っていたので、”壊れる”とマッドサイエンティストが言い出した時には驚きました。
1回目のオークションが終わって、落札品を落札者に受け渡したあとでした。タイミングもびっくりするくらいに良かったです。
オークションは、ワイズマンの許可を得て、日本国内で日本国籍(法人は含まない)を持っている者だけが参加できる形にしました。
やはり落札者は・・・。
愚かですね。ワイズマンからの忠告は、日本ギルドは知りません。
国内外の軍需産業に流している道具の燃料として、魔石が必要なのでしょう。
武器商人たちが、日本ギルドから廻された魔石を使って、道具を起動します。最初は、出力が上がるので喜ぶでしょう。しかし、故障で済めば”よかった”部類です。道具によっては、”破壊”になってしまう可能性があります。”破壊”ならいいのですが、”爆発”や”暴発”も考えられます。日本ギルドは、どう責任を追うのでしょうか?
ギルド日本支部では、ワイズマンに連絡を入れて、”観賞用”としてオークションを行う旨を通達しています。
追試の最中の技術で作った魔石です。何が発生するのか解らないからというのが”建前”です。
日本ギルドから作られた魔石を高値で購入した者たちは、ギルド日本支部に苦情を言ってきましたが、ギルド日本支部との商取引の履歴がなく、尚且つ”観賞用”の魔石を使って道具が壊れたからと、こちらが保証する謂れがないと突っぱねています。
苦情は、転売した人に言ってください。
円香さんと孔明さんが、凄くいい笑顔で苦情を言いに来た人たちを追い返しています。
書類を持ってきていますが、ギルドが定めた書類ではないので、偽物と断定しています。相手も、解っていて、ギルド日本支部に来ているようです。
日本ギルドから何かしらのアクションがあると思っていましたが、まだ何もありません。
その間にも、私たちは精力的に動いています。
新しい眷属が増えました。
円香さんには、木の魔物が眷属として契約ができました。良かったです。
孔明さんの眷属は昆虫型です。害虫と呼ばれるような者たちも孔明さんが契約を結びました。種族で1体だけで、”族”になるようです。
蒼さんは、驚いたことに猫系と犬系とだけ契約が出来たのです。喜んだのは、千明でした。すぐに、保健所に連絡を入れて、猫と犬を大量に引き取ってきました。ギルドで、魔物を討伐するために訓練を行うという建前です。嘘ではないです。主殿も協力してくれて、魔物になった猫や犬を蒼さんが眷属にしました。ただ、キャパシティの問題で猫が1体と犬が1体です。あと、フォレットが1体です。連れてこられた動物たちは、相性が一番いい個体が蒼さんと契約を結んで、他は主殿が引き取ることに決まりました。
こっそり主殿に教えてもらったのですが、どうやら私と真子ちゃんだけの様です。何がとは言いませんが・・・。
マッドサイエンティストがギルドに合流してきてからは、主殿の別宅が大きく広がりを見せました。
孔明さんの元同僚がギルドに合流してきました。
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