【第三章 魔王と魔王】第九話 俺の家

 

俺は、神聖国の国境近くの村に住んでいた。俺たちは、獣人と呼ばれている。いくつかの種族が集まった集落だ。最初は、俺たちの種族の熊人族だけだったが、周りの集落が獣人狩りに襲われて、生き残りが集落に集まってきた。
鼠人や兎人や羊人などの戦闘に向かない種族だ。しかし、熊人族は、そんな者たちを受け入れた。もともと、一つの種族だけでまとまるメリットはない。複数の種族の力があれば、人族にも抵抗ができる。

族長も住民が増えれば問題も出てくると解っていた。しかし、獣人が増えれば、それだけ狙われるリスクは増大する。族長は、それでも受け入れた。

大陸中央に、獣人族を受け入れている魔王が顕現したという噂話もあるが、大人たちは信じていない。俺も、魔王は怖いと教え込まれている。俺たちの集落の近くにも魔王が治めるダンジョンがある。100年以上も攻略されていない。
大人たちも、何人もダンジョンに挑戦して死んでいる。
俺の父さんもダンジョンの資源を採取に行って死んでいる。でも、ダンジョンの魔物に殺されたわけではない。ダンジョンに居た、人族に魔物の大群を押し付けられた上に、背後から刺されて、動けなくされた。人族は、父さんを囮にした。確かに、父さんはダンジョンで死んだ。でも、殺したのは人族だ。
それから、俺は母さんを支えて生活をしていた。その母さんも・・・。俺と妹と弟を逃がす為に人族に向かって行って殺された。

だから、人族の集団が村を襲ってきた時に、俺は武器を持った。
人族は、なんで子供を攫う?子供を攫う為に、大人を殺す。大人の抵抗を無くす為に、子供を殺す。

人族は人族を奴隷として戦わせる。
意味が解らない。

俺たちは、俺たちが安心できる場所の為に戦う。
人族を殺したいなんて思わない。神聖国と連合国という場所から奴隷商人に雇われた者たちが襲ってくる。

何人も殺されて、何人も捕まっている。
隣に住んでいたおっちゃんも殺された。

そして、3か月前に村の放棄が決まった。
俺たちの部族だけでも残って戦うという選択肢もあったのだが、皆で生き残る方法を考えて、村の放棄に繋がった。次に、人族が攻めてきたときに、村まで誘導して、火を放つ。人族が混乱している間に、村に残っている者たちも逃げる。

俺は、最後まで村に残る選択をした。

それから、人族の国に入らないように、森を抜けるように歩いた。
目指すは、大陸の中央にできた、魔王領だ。帝国に入れば、神聖国や連合国の奴隷商人は入ってこられない。

逃避行は大変だった。
それでも、全部の人族を恨まなくて済むことを知った。帝国にある、魔王領。魔王ルブランが治める場所の近くに作られた城塞街から来たというギルド員とは友好的な交渉ができた。
貴重な食料だけではなく、武器や薬草までも分けてもらえた。対価として要求されたのは、情報だ。俺たちの窮状を教えて、俺たちの村が在った周辺の情報を対価に要求された。放棄した村の情報をなぜ欲しがるのかと、ギルドに属しているハンターに聞いた。

魔王ルブランの指示だと言っていた。魔王ルブランは、獣人だけではなく、魔王ルブランを頼ってきた全ての人を受け入れて、仕事を与えて、不自由のない生活がおくれる場所を作ろうとしている。その為に、手始めに村単位で生活をしていて、国に属していない者たちを誘っているのだと教えられた。
ハンターたちも、探索を行う時の目安が欲しいらしい。村が在った場所や状況が解れば、次に向かう場所を考えられるとの事だ。
族長たちも知っている情報を、ハンターたちに教えた。

人族のハンターだったが、獣人の奥さんが居ると照れていた。
人族と獣族が協力すれば、いろいろな事ができるのだと教えてくれた。

そして、魔王ルブランの所には、獣族の子供が居て、幹部となっていると教えてもらった。
その中に、熊人や鼠人や兎人も居るらしい。

人族のハンターたちは、俺たちの護衛として城塞街まで一緒に行ってくれることに決まった。

それから6回ほど野営を行った。
帝国領内に入ったと教えられた。ハンターの緊張も和らいだ感じがした。帝国領内は、街に入って休むことに決まった。数を減らしていると言っても、100名を越えている。大丈夫なのかと心配していたら、帝国の新しい仕組みで、魔王ルブラン領に向かう者に宿や食事を提供した場合には、後日魔王ルブランから褒賞が届けられる。悪用した者は、反対に魔王ルブランから刺客が送られて、悪くすれば殺される。宿や食事処で、渡された札を魔王ルブランが治める。カプレカ島にあるギルドに提出すれば、持って行った者にも褒賞が渡されるそうだ。誰でも使えるわけではなく、ギルドが認めた場合だけらしいのだが、俺たちは十分に資格を持っているようだ。
どの街でも歓迎ではないが、街で過ごす許可が出たのには大人たちが吃驚していた。

そして、さらに驚いたのは、魔王ルブランの配下になった者たちには”名”が与えられる。
俺たち獣人は、個別の名を持たない。必要ではなかったからだ。でも、魔王ルブランのカプレカ島では、”名”が必要だ。そのために、カプレカ島に住むことを希望して、魔王ルブランに忠誠を誓える者は、魔王ルブランから”名”が与えられる。

さらに、5回ほど寝たら、城塞街に到着した。
びっくりの連続だ。人族と獣人族が一緒に生活している?それでもすごいのに、協力している?俺がショックを受けていると、案内してくれた人族がカプレカ島に連れて行ってくれると言っている、
族長たちは、やはり魔王が恐ろしいと心に刻まれているようで、慣れるまで城塞街で過ごすことにした。

俺たち子供だけで、カプレカ島に行っても良かったのだが、数日は城塞街で過ごすことになった。

街は頑丈な壁で覆われている。
大人たちも、先に住民になっていた獣人族に挨拶をして、仕事を紹介してもらっている。

城塞街は、本当に素晴らしい。
そして、人族の中にも信頼ができる人が居るとわかった。城塞街は、帝国に属しているが、微妙な立場だと大人たちが話していた。帝国の中にも、魔王ルブランを恐れて討伐すべきだという声を上げる偉い族長が居るらしい。その族長たちが、城塞街を潰すために、雇った盗賊を差し向けることがある。しかし、人族と獣人族が協力して、城塞街を守る。堅牢な防御を突破できない。防御陣の前で盗賊たちは倒されていく、生き残った者たちは、ギルドが連れていく、情報を抜き出してから、カプレカ島に送るのだと教えられた。魔王ルブランとの契約なのだと教えられた。一部の盗賊は、カプレカ島で見かけることがあるそうだ。ギルドの職員がいうには、カプレカ島だけではなく、魔王ルブランが治めるダンジョンは広大で、人手が足りないらしい。そこで、盗賊たちを奴隷にして、使っているそうだ。
魔王ルブランは誰からの挑戦も受けると告知している。
実際に、カプレカ島には帝国や王国や皇国からも挑戦者が訪れている。最下層にある魔王ルブランの居城を攻略すれば、魔王ルブランに使える四天王が相手をする。それに打ち勝てば、魔王ルブランが直接相手をするらしい。実際には、最下層まで辿り着いた者は存在しない。

大人たちも落ち着いたので、カプレカ島に向かうことになる。

「え?」

熊人の・・・。俺を逃がす為に、獣人狩りに捕まった・・・。兄ちゃん?うそ?なんで?
間違いない。俺が兄ちゃんを間違えるはずが・・・。兄ちゃん。兄ちゃん。

飛び出してしまった。
兄ちゃんは、女鼠人と男兎人と笑いながら歩いている。

「兄ちゃん!」

間違いない。兄ちゃんだ。

「お!」

「兄ちゃん!」

死んだと思っていた。奴隷にされて、売られて・・・。獣人は死ぬまで酷使される。戦争に駆り出されて肉壁にされる。ダンジョンで、魔物の餌にされる。悪い噂しか流れてこない。
俺は、兄ちゃんの変わりに、弟や妹を守らなければ・・・。

だから・・・。

「ん?妹か?」

「うん。うん。兄ちゃん。兄ちゃん。俺・・・。わたし、頑張ったよ。妹も弟も皆・・・。今、城塞街に、隣のおばちゃんと・・・。一緒。でも、おっちゃんは、死んじゃった。頑張ったよ。兄ちゃん。母ちゃんも・・・。でも、わたし・・・。兄ちゃん」

わたしは、兄ちゃんに抱きつきながら泣いてしまった。
もう、涙なんて出ないと思っていた。わたしが、妹と弟を、とうちゃんの変わりに、兄ちゃんならできた事を、母さんなら・・・。頑張ったよ。兄ちゃん。

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