【第一章 勇者の帰還】第七話 残留組の探索

 

「ふぅ・・・」

 ユウキは、前回と同じ浜石岳のキャンプ場に転移した。

 周りを見回すと、全員が揃っている。

(魔力は大丈夫だな。すぐの発動は無理だけど、ポーションを飲めば回復できる量だ)

「ユウキ!大丈夫?」

「マイ?すごく、可愛くなって・・・」

「ユウキには言われたくない!それよりも、魔力は大丈夫?14人、全員はきつかった?」

「大丈夫だ。魔力は3/5程度消費したから、全員は無理だな。14人が限界だと思う」

「そう・・・。どのくらいで回復しそう?」

「予想通り、1時間ってところだな」

「え?」

 よこから、テレーザが割り込んでくる。

「ユウキの魔力って、大台を越えていたよね?」

「あぁ100万を越えている」

「ということは、60万も使ったの?」

「そうだな」

「それが一時間?”魔の森”でも、8時間程度は必要だよね?」

「ん。あぁ俺は、魔力の変換が早いようで、”魔の森”では3-4時間だと思うぞ?」

「それでも、地球は3-4倍ってことにならないか?それとも、この場所はパワースポットなの?富士山ふりやまは古くから日本人のパワースポットだと聞いたぞ?」

「富士山に関しては、そうだけど、ここは富士山とは違う。龍脈が通っているかもしれないけど、それこそ調べて検証をしても、わからない。多分、ここは普通のキャンプ場だと思うぞ」

「そう・・・。サトシには、聞いても無駄だろうけど、マイ?」

「知らないわよ。そもそも、龍脈かどうかなら、私じゃなくて、ニコレッタかレオンの方が得意でしょ?」

 ユウキとマイとテレーザが二人を見るが、二人とも首を横に振る。

「ユウキ。龍脈の下では無いが、龍脈に近い感じはする。近くを通っているような感じだ」

「え?あっ・・・。ユウキ!久能山東照宮と富士山と日光東照宮!」

 マイは、遠足で行った久能山東照宮に向かうロープウェイの中で聞く話を思い出して、ニコレッタとレオンに話をする。

「徳川将軍が、龍脈を知っていたかわからないけど、富士山には”なに”かが、あるのだろう」

「あぁ全部が終わったら、富士山の周辺を調べよう。それにしても・・・。サトシ、お前・・・」

 皆の視線が、サトシに集中する。

「あ?」

「サトシ・・・。マイの話を聞いていたのか?」

「何を?」

自動オート調整アジャスト機能が付いた服を着ていくように言われただろう?」

「あ・・・」

 サトシは、連れて帰ることを考えていて、マイの話をすっかり、完全に、忘れていた。そして、いつもの服装で来てしまって、体が縮んだ。結果、ズボンはずれ落ちて、上着が大きかったために下着姿にはならなかったが、手で抑えていなければパンツもずれ落ちてくる。

「しょうがないわね」

 マイは、少しだけ嬉しそうな表情を見せる。

(久しぶりに見る表情だ)

 ユウキは、マイの表情が、昔からサトシの世話を焼くときの表情だと知っている。召喚される前から、マイはサトシのことが好きだった。

 近くにあるトイレまでサトシを連れて行くマイを皆が”生暖かい目線”で見送る。どうせ、マイのことだから、サトシの服装を見て、自動調整がかかっていないことくらいは見抜いていたいだろう。マイのアイテムボックスの中身は、仲間内でも不思議の宝庫と言われている。サトシに関係する物が次から次へと出てくる。サトシの中学時代に着ていた服くらいなら入っていても不思議ではない。もしかしたら、召喚された時の服が入っているかもしれない。
 ”乙女の秘密”と言っているが、そんな言葉で片付けられない。マイのアイテムボックスの中身を知っているのは、セシリアとヒナだけだ。それ以外の者には、教えられていない。

 マイとサトシを見送った一行は、ユウキを見る。

「どうした?」

「どうしたではない。この場所は、日本なのだろう?」

「そうだな。日本の静岡県だ」

「ユウキ。時々、サトシと同じで、ポンコツになるよな?」

「ん?あぁそうか、俺の魔力が溜まるまでの暇潰しか?」

「簡単に言えばそうだな」

「でも、夕方になっているから・・・。ここには、誰も来ないとは思うけど・・・。町には行けないな。俺たちの速度で、5分ほど降りれば、自販機はあるけど、種類は少ないぞ」

「おぉ!日本の自販機!」

「あっ・・・。ロミル。悪い。期待しているような物じゃないぞ?」

「え?」

 フィファーナに居る時にも、日本の変態的な自動販売機の話になったが、ユウキもサトシもマイもレイヤもヒナも、標準な物しか知らなかった。都会東京に行けばあるかもしれないが、田舎育ちの5人にはわからなかった。他の、勇者から聞いた話として、ロミルがユウキに聞いて判明したことだ。

「でも、ユウキ!お金を入れれば、夜中でも商品が出てくるのだろう?偽物じゃなくて?冷たい飲み物は、冷たくて、温かい飲み物は、温かくなっているのだろう?」

「あぁそうだな」

 キラキラした目で、ロミルはユウキに近づいてきた。ロミルのイェデアを見るが、”やれやれ”という雰囲気を出すだけだ。

「わかった。わかった。皆で行くのは、無理だぞ?目立ってしまうからな」

「ユウキ。俺たちは、ここで、サトシとマイを待ちながら、スキルの検証をしている」

 オリビアが、ロミルを見ながらユウキに提案をする。ロミルとイェデア以外にもユウキに付いていきたいと思っていたが、サトシとマイが心配なのも本当だ。皆も、スキルが実際に使えるのか気になっている。

「おぉ。転移だけは注意してくれよ。どんな影響が出るかわからないからな」

「わかった」

「ロミル。イェデア。どうする?マイから預かったのは、500円くらいだから、自販機でジュースくらいなら買えるぞ?」

「買うのは、今度でいい。俺は、日本の自販機を見たい!」

「わかった。それじゃ、行くか?そうだ、イェデアは、認識阻害が出来たよな?」

「できるよ?使う?」

「頼む。スキルを持たない人間にも、スキルが通用するかわからないけど・・・」

「わかった」

 ユウキとロミルとイェデアは、認識阻害を使った状態で、移動を開始した。
 スキルが、通用しているのか判断は出来なかったが、機械には通用しないことがわかった。自販機の前に移動した3人だったが、自販機は、明るくなった。誰かが近くづいた時の反応だ。

「ユウキ。俺たちに反応したのだよな?」

「そうだな」

「もしかしたら、認識阻害では機械は”騙せない”かもな」

「そうだな。そうなると、監視カメラもダメかもしれないな」

「うーん。でも、ユウキ。スマホのカメラは認識阻害では騙せたよ?」

「うーん。地球に居る時には、ダメなのかもしれないな」

 人にスキルが通用するかどかは、後日になるが、自販機はごまかせなかった。

 ユウキたちは、皆がスキルを検証している場所に戻った。

 スキルの状況は、マイがまとめていた。
 攻撃性のスキルは、サトシが的になって確認していた。聖剣使いの無駄使いだが、サトシが的になるのが、周りの影響を抑える方法なので、しょうがない。

「それで?」

「うん。超級とかは確かめていないけど、攻撃性のスキルは使える。攻撃力も、サトシが言うには、フィファーナよりも強くなっている」

「どのくらい?」

「サトシの言い方では、フィファーナでは”ズバン!”が、地球だと”ズドーン”になるらしい」

「マイ。翻訳を頼む」

「私にもわからないわよ。ディドが言うには、スキルの効率が2-3割上がっているらしいわよ」

「2-3割ってかなりだよな」

「そうね。それで、魔力の吸収なのでけど・・・。ユウキが言っていた通り、2-3割だけど、効率よくなっているわね」

「そうか、地球の方が、効率がいいのは、わかったけど・・・。理由がわからないのは気持ちが悪いな・・・。でも、これからのことを考えると、悪い事ではないな」

「えぇそうだね。でも、この浜石岳という場所だからという可能性は残るけどね」

「それは、帰還組が調べるよ。助かったよ」

「いいえ。それよりも、どう?」

「そうだな。今の感じだと、時空転移は発動するけど、余裕を持って、あと10分程度は欲しいかな」

「そう・・・。ユウキ。私・・・」

「いいよ。仏舎利塔だろう?行ってこいよ。サトシは、俺が見ているよ」

「ありがとう」