【第一章 少年期】第三十一話 襲撃

 

「イーヴォさん。何が有ったのですか?」
「・・・落ち着いて聞いてくれ」

 イーヴォさんに連れられて入った場所は、冒険者ギルドにある会議室だ。

「解りました」
「俺が昔パーティを組んでいた奴からの話しで、俺も裏取りはしていない。そのつもりで聞いて欲しい」
「はい」
「ルットマン子爵家が、冒険者や憲兵崩れや野盗を集めている。そして、ベルリッツに向かっている」
「ベルリッツ?」
「あぁ王都から3日位の距離にある。服飾や小物の生産がメインの街で、この時期に貴族が集まる」
「まさか・・・・。あぁ俺の聞いた話では、ライムバッハ家に”正義の鉄槌”とか言っていたと聞いた」
「・・・」
「どこに行く」

 イーヴォさんが俺の腕を掴んだ。

「はなせ!」
「(こいつこんな殺気が・・・。これが本性か?)アル。解った、行くのだな。死ぬかも知れないぞ」
「かまいません。何もしないで居るのも、死ぬのも大差無いです」
「わかった。俺も行く。すぐに出られるのか?」
「はい。でも、やはり一人で行きます」
「戦力は多いほうがいいだろう?100人以上という話だぞ」
「そのくらいならなんとかなるかもしれません。それよりも、イーヴォさん。私に雇われませんか?」
「どういう事だ」
「依頼料も払います。この件に関わった人間を調べてください。そして、多くの情報を集めてください。できれば、ルットマンの家を潰す位の情報を集めてください。依頼料は、大金貨1枚でどうでしょうか?」
「なっおま・・。解った。その依頼。俺が確かに受けよう。報酬は、ルットマンがしでかした事が明るみに出た時でいい」
「ありがとうございます。それでは、ギルドで手続きをしましょう」

 ギルドで手続きを済ませて、大筋の話をイーヴォさんに聞いてから、俺はシュロート商会に顔を出した。
 ギルに今聞いた話をして、一人で行く旨を伝えた。そして、俺に”万が一”が有った時に、マナベ商会をギルに任せる旨の覚書を交わす。

 それから、イーヴォさんに依頼した内容と同じ事を頼んだ。

「アル。行くのか?」
「あぁラウラとカウラとユリアンネを助ける」
「アル。俺も行く。俺を連れて行け。魔法ではお前に敵わないが、それでも一人よりはいい」
「ダメだ。オレ一人で行く。ライムバッハ家の問題だ」
「それなら、俺は、お前を行かせない。力づくでも止める」
「・・・・」
「・・・・」

「アル。約束してくれるか?」
「あぁ何を、だ!」
「おまえは生きて帰ってこい。いいな!約束だぞ」
「・・・わかった。約束が守れなかった時には、俺の事を恨んでいい」
「ダメだ。必ず帰ってこい。いいな。そうしないと、俺が、ユリウスやクリスやエヴァやイレーネやザシャやディアナに殺される」
「そうだな。わかった。おまえの為にも帰ってくる」
「そうしてくれ、3人で帰ってこい」
「あぁそのつもりだ」
「アル。少し待て・・・餞別を渡す」

 ギルは店舗に戻って、一つの袋を持ってきた。
「これは?」
「餞別だ」
「なっいいのか?」
「あぁ必要な物だろ?」
「ありがたく貰っていく」
「いいか、中身はくれてやるが、袋は”貸す”だけだからな。必ず返しに帰ってこい」
「あぁ解った。商人に貸しを作るほど馬鹿じゃない。利息も怖いからな」
「そうだ。地獄の取り立てをするからな。いいか、必ずだぞ」
「わかった。約束する」

 ラウラとカウラが馬車で出かけたのが、1日半前。まだベルリッツには着いていない計算だ。
 今から飛ばせば、ギリギリ間に合うはずだ!!
 街中での襲撃は・・・・リーヌスが馬鹿でもやらない。と、思いたい。

 ベルリッツから出て王都に向かう道が危ないと考えるのが適当だろう。
 そうなると、2日半の今から行けば、3日程度の余裕がある。
 俺一人なら、二日あれば到着出来る。

 街から出るのに一番時間がかかる。
 夕方になってしまったが、城壁から出る事が出来た。
 ”風の精霊よ。我アルノルトが命じる。我の魔力が残量10になるまで、魔力1にて我に追い風を当てよ”

 最近解った詠唱で、”ループ”と”if文”が、詠唱で使える。
 これで、魔法の連続使用が出来る。

 待っていろ。ラウラ。カウラ。ユリアンネを、父さん達を守ってくれ。

★☆★☆ Side ユリアンネ
「ラウラ!」
「ユリアンネ様」
「早かったのね」
「はい。一刻もはやくと思いまして、少し無茶をしました」
「そうなのですね。身体は大丈夫?」
「はい。私もカウラも平気です。ロミルダさんは、馬車の中でお休みです」
「そう、わかったわ。お父様。私とラウラとカウラで、店を見てきていいですか?」

 お父様は、ラウラとカウラを見て
「あぁ二人がいれば大丈夫だろう。夕方には宿に来るのだぞ。ラウラとカウラも同じ宿にしなさい。部屋は取っておく」
「ありがとございます。伯爵様」「ありがとうにゃ」

 ラウラが深々と頭を下げて、それを見てカウラが慌てて頭を下げた。
 二人があいかわらずなのが、嬉しかった。

「それじゃ行きましょう」
「かしこまりました」「はいにゃ」

 二人を連れて、いろんな服を見ながら街を散策した。
 女の子とこうして出歩く事もなかったので、すごく楽しい。
 ラウラは少しだけまだ遠慮があるようだけど、カウラはわたくしの手を引っ張ってくれる。すごく新鮮で暖かい。

 お兄様が信頼する二人。
 買い物をしながら、お兄様の話を聞いた。沢山、沢山、話してくれた。
 ラウラもお兄様のお話をする時には、誇らしげに自分のことの様に話してくれる。本当に、お兄様の事が好きなのだろう。カウラも同じだ。

 王都に着いてからもまた3人でお買い物に行けたら嬉しい。

 お父様から言われていた店に着いた。
 ここで、ドレスを買う事になっている。
 時間もなかったので、セミオーダになってしまうが、それでも、お兄様に可愛く見て欲しいという思いが強いので、3人とも真剣に服を見た。

 ラウラは、綺麗な金髪が目立つように、シックな黒のドレスを選択した。
 カウラは、髪の毛に合わせるように燃えるような赤のドレスを選んだ。二人とも、鍛えているのだろう、体型も整っていて、ドレスがすごく似合う。そして、試着した時の、恥ずかしそうな顔がすごく可愛い。わたくしも負けてはいられない。気合を入れてドレスを探した。

 わたくしは、黄色を基調としたドレスにした、足元に行くほど色が濃くなって、オレンジに変わっていくのが可愛くて選んだ。胸元の大きなリボンが可愛い。絶対にお胸が小さい事を隠すためではない。リボンが可愛くて選んだのだ、ラウラもカウラも大きなお胸では無いけど、わたくしよりはおおきくて形もいい。屋敷の者達に聞いても、男性は大きなお胸が好きだと言っていた。お兄様もそうだとしたら・・・。ううん。わたくしは今から育つのです!

 3人が選んだドレスは少し手直しが必要な部分があるので、手直しをお願いした。
 明日の朝までには仕上げてくれるという事だったので、明日の朝にもう一度来る事になった。

 ラウラとカウラが、急いで来てくれたおかげで、1日予定が早く済ます事が出来た。
 お兄様に会うのが一日早くなるのは嬉しい。出発の準備があるので、正確には、半日程度だろうけど、それでも早く出られる事は嬉しい。

 聞いた話しでは、ここから王都までの道は整備されている上に、獣や魔物は殆ど出ない。夜の移動は推奨されないが、休憩所が多く設置されているので、昼過ぎから移動を開始する人たちも多い。
 お父様がどう考えていらっしゃるのか解らないけど、わたくしとしては、一刻もはやくお兄様にお会いしたい。抱きしめられて、頭を撫でられて、”ユリアンネ”と、呼んでいただきたい。それだけでわたくしの疲れは吹っ飛んでしまいます。
 この前お兄様にお会いした時に、お兄様が居ない時には、わたくしが”家族を守らなくてはならない”と、言われましたわ。
 特に、弟はライムバッハ家の後継ぎになるので、お兄様の次に大切な人なのだ、それにカールはわたくしの弟です。”姉が弟を守るのは当然だ”と、お兄様に話したら、頭をくしゃくしゃになるまで撫でてくれた。

 早速、お父様にご報告して、明日には王都にむかえると伝えないとならないですわね。

★☆★☆ Side リーヌス
「おい。まだなのか?街に襲撃をかければ解決しないか?」
「御曹司。駄目です。優秀な貴方ならわかると思いますが、ターゲット以外を傷つけてしまうと、子爵が何か言ってくるかもしれません」
「あぁそうだな。父も弱気だからな。これからは、俺が父に変わって、子爵家を導かないとならないからな」
「そうです。そうです。その為に、お母上もご尽力していると思います」
「あぁ予定では、あっちの方が先なのだよな」
「そうなります。が、ターゲットが一日早くベルリッツを出るようです」
「本当か?」
「はい。そう連絡が入りました」
「わかった。こちらの集まりはどういう状況だ?」
「明日の朝には予定通りに・・・」
「わかった。あいつはどこに居る?」
「あっそろそろ情報を握って、こちらに向かっていると思います」
「ククク。そうか、そうか、やっと、奴に俺の偉大さが伝わるわけだな」
「・・・・。はい」

★☆★☆ Side アルノルト
 この計算なら、半日早く到着できる。
 ベルリッツから出る前に補足できるはずだ。

 魔力の消費量が大きい。
 連続使用は、魔力を大量に消費して、疲れるのだろう。

 ギルから渡された袋を開ける。
 袋の中身はポーションだ。1個、大銀貨1枚とかする代物だ。
 治癒のポーションは、今は必要ない。
 魔力回復のポーションが多く入っているのは嬉しい。一本消費する。
 魔力が補充されるのがわかるが、全開とはならない。感覚的には、2割程度の回復量だ。一般の魔法師が、このポーションを飲めば魔力が全開すると、聞いている。俺の魔力量は、一般の魔法師の5倍程度は、”ある”と、思っていいだろう。減っていた部分からの回復だと考えると、もっとあるのかもしれない。
 数には限りがあるが、次の休憩地点までは着いておきたい。
 魔法を発動した。

 夜になってしまったが、休憩場に着くことが出来た。残った魔力を使って、”かまくら”のような物を作る。天井と左右の壁に空気穴を作成して、中に入ってから、入り口を防いだ。
 待機型の結界を張った。この待機型も最近になって出来るようになった物で、弱い魔力で魔法を維持する事が出来る。ただ、それほど強い魔法の発動が出来ないので、微妙だと思われていたが、俺はこの魔法で、結界を作成している。維持は、魔力の回復量で十分まかなえてしまっている。

”土の精霊よ。我アルノルトが命じる。我を中心に、検知を行え。風の精霊よ。我アルノルトが命じる。土の精霊が検知したら、風で我を防御せよ。風の精霊よ。我アルノルトが命じる。防御を維持しつつ。我の耳元で風鳴りを発生させよ”
”闇の精霊よ。我アルノルトが命じる。先の魔法を我に変わって維持せよ”

 これだけの長い詠唱が必要になってしまう。
 効果はすでに確認している。鑑定が3.00になった事で出てきた説明で判明した使い方だ。

 4時間程度寝られれば、魔力も完全回復する。
 次は一気に街まで行けるだろう。

 はやる気持ちを抑えて眠る事にした。
 不測の事態が発生した時に体力がありませんでしたでは困ってしまう。

★☆★☆ Side ユリアンネ
「お父様!」
「あぁおかえり。いいドレスはあったか?」
「はい!」
「ラウラとカウラも気に入った物はあったのか?」

「はい。伯爵様。でも、よろしいのですか?私達にドレスなど・・・」
「あぁ気にしなくていい。実際のお礼は、アルにいいなさい。ワトを出したのは、アルなのだからな」
「え?」「ふぇ?」
「ユリアンネも、アルにしっかりお礼を言うのだよ」
「はい・・・え?」
「なんだ、お前たち知らなかったのか?」
「はい。何をですか?」
「ドレスの話は、アルから来た話で、全部、アルが出したのだぞ?」
「あなた。それは・・・・。アルノルトに、”内緒にしておいて欲しい”と、言われたことですわよ」
「あっそうだったか?まぁいいだろう。」

 お兄様。
 わたくしまで・・・こんな高い物を。お兄様が、マナベ商会でアイディア料を貰っているのは、承知しているのですが・・・。

「嬉しいです。お父様。ドレス大事に致します」
「あぁアルにしっかり見せるのだろう」
「もちろんです。お兄様に、可愛いと褒めていただきます」

「アトリア。少し心配になってきたぞ」
「なにがですか?」
「兄妹で仲がいい事はいいが、行き過ぎじゃないのか?」
「大丈夫ですわよ。ユリアンネが暴走しても、アルノルトが止めてくれますよ」
「そうだな・・・」

 なぜか、お父様とお母様がわたくしを見てため息を漏らしていますが、そんな些細な事です。
 早くお兄様にお会いして、ドレスを来てお礼を申し上げなくては、ラウラもそう思っているようですわね。

★☆★☆ Side リーヌス
「御曹司。やつらの馬車が来ます。」
「そうか、ターゲットに間違いはないのか?」
「はい。協力者を確認しました」
「わかった。おまえら。いいか、俺の為に働け!あのライムバッハを殺せばすべてがうまくいく。俺が子爵。イヤ、伯爵になって、イレーネや聖女を妻にして、侯爵になる。お前たちもしっかり働けば、報奨は思うままだぞ!行け!皆殺しだ!」

★☆★☆ Side ラウラ&カウラ
「ラウラ姉。森が騒がしい。誰か来る。すごい数。100か150位」
「野盗か?」
「解らない。こちらに向かっている」
「わかりました。カウラ。ユリアンネ様をお守りして、アル様にユリアンネ様を、お連れしないとならない」
「わかったにゃ。ラウラ姉は?」
「私は、ここで賊を牽制します」
「わかったにゃ」

★☆★☆ Side ラウラ
 これで、ユリアンネ様は大丈夫だろう。
 100か150か・・・。ここで食い止めないと・・・。

 馬車の屋根に登って、左右を見渡す。
 左側の森だけが騒がしい様だ。

「カウラ!」

 移動し始めた、カウラを呼び止めて
「ユリアンネ様とカール様を連れて、右側の森に逃げなさい。敵が左側の森からしか来ていない」
「わかったにゃ。ラウラ姉も一緒に・・・」
「私も、ここで伯爵様達が逃げるのを確認したら、向かう。王都でアル様に褒めてもらいましょう」
「わかったにゃ」

「ラウラ。何があった!」
「賊です。数は150。伯爵様。奥方と逃げてください。この人数ではここを支えきれません。盗賊なら、荷物が狙いでしょう。荷物を置いていけば、時間が稼げると思います」
「おまえも一緒だ」
「ダメです。私は、アル様から、伯爵様を、ユリアンネ様を、お守りしろと命令されています。ここで殿しんがりを努めます。死ぬつもりはありません。生きて帰って、アル様に褒めてもらいます」
「わかった。ラウラ。絶対に無理するなよ」
「かしこまりました」

 多分、アル様には褒めてもらえないだろう。
 でも、出来る限りの事はする。私は、ラウラ。前の名前など忘れてしまった。私は、アルノルト・フォン・ライムバッハの奴隷にして従者。

 惚れた男の人の為に、ここで踏ん張る。
 誰も通さない。

 敵が見えた。
”水の精霊よ。我ラウラが命じる。水の礫となりて、敵を撃て”

 出し惜しみはしない。
 水の礫を正確に、襲ってくる奴らの目に当てていく、当りどころが悪ければ死んでしまうだろう。
 殺すつもりで撃つ。撃つ。撃つ。

『あの魔法使いを殺せ!』

 敵が私の方に向かってくる。
”闇の精霊よ。我ラウラが命じる。暗闇を作りて、敵を惑わせ”

 これで闇魔法が使えない者は、方向感覚が崩れる。
 味方が少ない時にしか使えないが、こういう時には、使える魔法だ。アル様と研究した成果を惜しみなくだす。

“水の精霊よ。我ラウラが命じる。毒の水を生成せよ。闇の精霊よ。我ラウラが命じる。毒の水を敵の頭上に振らせろ”
 これもアル様に教えてもらった方法だ。闇の精霊は、使い勝手がよい。”敵”という認識が出来る。攻撃の補助が出来るのだ。

 一気に、30名位が戦闘不能になる。
 魔力を込めたから、半日程度は苦しみ続けるだろう。
 あと、120名。

”ザクッ”

 え?なに?
 なんで・・私の身体に、なにが・・・アル様。

「なんで、貴方が?」
「わるいね。ラウラちゃん。これもお仕事なのだよ」

 よく知っている。アル様からもお話を聞いていた。
 その人が、私の身体に剣を突き立てている。

「ラウラちゃん。君強すぎるよ。このままだと全滅しちゃうからね。そうなると少し困るのだよ。だから、ここで死んで」
「な・・・貴方が・・なんで・・・アルさ・・・ま」
「あぁアル君も、カウラも、伯爵も、ユリアンネ嬢も、すぐに行くと思うから道案内よろしくね」

 あるさま・・・もうし・・・わけ・・・ありま・・・ん。もう。おやくにたてないようです。
 おしかりは・・・でも、そんなひは・・・・だいす・・・きです。あるのると・・・さ・・・ま。

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