【第六章 神殿と辺境伯】第二話 広場設計?
「マスター。お食事はこれで大丈夫でしょうか?」
ツバキが持ってきたのは、パンを軽く焼いて焼いた肉を挟んだサンドウィッチのような物と野菜を焼いて塩で味を整えた物だ。
ヤスは受け取って一口ずつ食べた。
「うん。うまい。十分だ。これからも頼むな」
「はい!」
「そうだ。さっきのジュースをもう1杯頼む。さっきより冷やせるなら冷やしてくれ」
「かしこまりました」
ツバキがキッチンに下がってから、ヤスは出された朝食を食べている。
うまいと表現したが全体的にぼやけている。胡椒を使えば格段と美味しくなるだろうと思った。今後、討伐ポイントを支払って日本で使っていたような調味料を渡せば味も良くなるだろうと思っていた。故郷の味だと言えばいいだろうと簡単に考えながらツバキが作った朝食を食べた。
ツバキがキッチンからおかわりのジュースを持って帰ってきた、ヤスの指示通りに先程よりも冷やしてきている。
ヤスは今度ミキサーを交換して果物を凍らせた状態でジュースにする方法を教えようと思っていた。
「マスター。本日のご予定は?」
「予定?」
「はい」
ツバキは不思議なことを言ったわけではない。でも、ヤスは別に仕事をしているわけでも無いので予定など考えていなかった。
「何も・・・。あ!」
ヤスは、戻ってきたらやろうと思っていた、リーゼの家やギルドの出張所。他にも孤児院を建てる事を思い出した。
「マスター?」
「あぁすまん。今日は、広場の設計と整備を行う。ツバキは、マルスの指示に従ってくれ」
「かしこまりました」
「あっ!ツバキ。少し待ってくれ、一緒に二階に行きたい」
「はい!」
ヤスは、ツバキの部屋を作ったことを思い出した。
二階にツバキを連れて行って部屋を確認した。他に必要な物がないか確認するためだ。
「マスター。この部屋は?」
「ツバキが好きに使ってくれ、一応簡単に説明しておくと・・・」
ヤスは部屋の説明を開始した。
ユーラットや領都の宿屋に有ったものは省略してそれ以外の設備を説明する事にした。特に、水回りはしっかりと説明しておいた。
ツバキは、シャワーにすごく反応した。
「マスター!シャワーではお水を使ってもいいのですか?」
「・・・。お湯にもなるけど?水?温度調整の方法を教えておくよ」
「ありがとうございます!」
窓も作っていて光が差し込む事もツバキは喜んだ。ヤスの部屋は窓をそれほど多くとっていなかった為に薄暗かったが、ツバキの部屋は日本の一般的な部屋と同じくらいに窓を大きめに作った。ヤスとしては別に意味はなかったのだがツバキは、ヤスが自分に気を使って光が差し込む部屋を作ってくれたと考えたようだ。
「ツバキは、部屋の具合を確かめてくれ、終わったらマルスの指示に従ってくれ」
「かしこまりました」
ツバキは深々と頭を下げた。
ヤスはエレベータで4階に移動して書斎に入った。
4階はヤスのプライベートな空間として使う事にしたようだ。
設置したパソコンの前に座ると2×2で設置したパソコンのディスプレイに火が入る。設置したスピーカーから音が鳴る。
『マスター。予備ディスプレイの設置をお願いしたいのですが可能ですか?』
「いいけど?予備ディスプレイのサイズは?小型パソコンを接続したほうがいいか?」
『小さい物で構いません。私とエミリアとディアナの状態が表示する予定なので、小型パソコンの設置も合わせてお願いします』
「わかった」
ヤスはエミリアを取り出して、通常使っているディスプレイが31インチサイズで予備ディスプレイとして使っていたのが21インチだったので同サイズの物を一つ交換した。同時に小型パソコンを交換した。
「マルス。パソコンの設定は終わっているのか?」
「あと、1時間15分必要です」
「わかった。暇ができたな・・・。そうだ!」
ヤスは紙のペンを交換した。
デスクの引き出しに入ったので、取り出した。
「マルス。広場の広さと魔の森と後ろの山以外の広さを教えてくれ」
ヤスはサイズをメモして紙にだいたいの縮尺で広場の広さを書いた。
(中央にはまっすぐにすれ違える程度の幅が必要だな)
(俺が駆け下りた方向にも道を作っておこう。こっちは一台分でいいだろう。魔の森方面にはバイクで行けるだけの幅があれば十分だろう)
ヤスは最初に区画整理をしていく。別に思想があるわけではない。ただなんとなく日本に居たときに住んでいた街並みを思い出しながら書いてみているのだ。
リーゼの家を作る場所は約束通り神殿の近くにした。一般的な家がわからないが、ラナの宿屋やアフネスの宿屋を参考にして作ればいいだろうと思っている。エミリアで確認すると、家1ー10と書かれた物が交換できるようになっている。宿屋やギルドと表示されている物もある。
オブジェクトとしてヤスが認識した建物やマルスが神殿のコアが持っていた知識から得た建物は配置できるようになっているようだ。教会や孤児院という物もリストに載っていた。
ヤスは孤児院を見るがヤスが考えているような物ではなかったので、孤児院は自分で作る事にしたようだ。
神殿を背にしてロータリーっぽくした場所を作る事にして、地下からの出口からまっすぐにユーラットへの道まで繋げる。
左側の神殿のすぐ側にリーゼの家を作る場所にして、風呂が付いていて広い家10を配置する事にする。リーゼの家の横にセバス・セバスチャンと眷属たちが使う家を配置する事にする。リーゼになにかあるとアフネスだけじゃなくエルフ族が面倒な状態になってしまうことを考えて対処しておく事にしたのだ。
わかりにくいが風呂付きの家は、3,6,7,9,10の5種類あるようだ。
トイレはヤスのこだわりのT○T○さんのおしりを洗う機能が付いた物を配置する予定だ。日本でヤスが愛用していたものと同じだ。ヤスが気にしていた水回りなのだが魔法で解決できることがわかった。汚水に関してはもっと簡単で、家の下に神殿の一部を配置すればそこで処理できる事がわかった。
神殿の権能が使える事で、上水道や下水道の設置を考えなくて良いことになる。
神殿の右側のリーゼの家の正面には孤児院を立てておく事にした。正面に立てたのはヤスが望んでいる孤児院ではなく、裏側に作る建物が本当の孤児院になる予定だ。保育園と小学校を合わさったような施設にするつもりで設計をしている。もちろんグランドもプールも体育館も作る。グランドは二面だ。1面はサッカー専用にするために芝生を敷き詰めるつもりだ。もう1面は通常のグランドだが1周400mのグラウンドにするつもりだ。その他にも敷地内に300名が暮らせる寮を用意する食堂と大浴場も作る予定だ。
左側には後はギルドの出張所を作る。ドーリスがギルドマスターになる場所だが実際に何が必要なのかわからないので、エミリアのリストで”ギルド”と表示されている建物と倉庫を3個ほど作っておくことにする。場所は沢山残されているので必要になれば自分たちで作って欲しいと考えている。
右側の道路に面していない区画には、車の教習場を作る事にした。
カートのコースやラリーコースは、神殿の階層を増やしてもいいと考えている。最初は広場の空き地を利用しようと思っていたのだが実際に作りたい物を書き込んでいくとあまり広くない事に気がついた。ラリーやカートはヤスの趣味なので神殿内部に作る事にした。神殿内部に作る事で討伐ポイントではなく魔力での作成が可能になる上に気候変動を操作する事ができるので、雨のブラジル-インテルラゴス・サーキットを再現したりできるので良かったと思うようにした。あとで分かる事だが、神殿内部ならヤスが交換したパソコン内部に階層の情報を保存する事ができるので、沢山の階層を用意して作るのではなく階層を入れ替える事でいろいろなコースを楽しむ事ができるのだ。
後日階層の入れ替えができることを知ったヤスはカートでだけではなく通常のサーキットサイズの階層まで作ってしまったのだ。
ヤスがエミリアのリストを眺めながら”あーでもない”、”こーでもない”と悩んでいると、ドアがノックされた。
「マスター。マルス様がマスターにお飲み物を持っていくように言われまして、先程の果物のジュースをお持ちしました」
「あぁありがとう。鍵はかかっていないから入ってきて」
「はい。失礼致します」
ツバキがジュースを持って書斎に入ってきた。ヤスの手が届きそうな場所にジュースを置いてヤスが机の上に広げている不思議な物を見ていた。
「マスター。それは?」
「広場の設計をしているだけだ」
「そうなのですね」
「あぁいろいろ作りたくなってしまったからな。考えないと全部を作る事ができない可能性があるからな」
「・・・。あっ!お部屋ありがとうございます」
ツバキは視線をヤスに動かした。
不思議な人だと感じている。そして、自分にあてがわれた部屋のことを思い出した。使い勝手を確認と言われたが、初めて使うものばかりでわからない事だらけだった。ただ、マルスが説明してくれたことを聞いて、ヤスが自分を魔物として扱っていない事に気がついた。
部屋の礼をヤスに告げる事にしたのだ。感謝の気持ちをヤスに伝えようと思ってマルスに相談したのだが、部屋の礼くらいにしておいたほうがいいと助言されて実行したのだ。
「大丈夫そうか?必要な物はなにかあるか?」
「いえ、大丈夫です」
ヤスはツバキの頭から爪先まで見てから少しだけ考えた。
「そうだな。ツバキにも討伐ポイントを使えるようにしておいたほうが便利そうだな」
「え?」
「広場の整備が終わってからだけど、使えるようにはしておくよ。使い方は、マルスに聞いてくれ」
「ありがとうございます」
ヤスは、ツバキの下着の事や服のことを考えたのだが、ヤスがツバキの下着のサイズを聞いて討伐ポイントで交換するのは駄目だろうと考えて、セバスにも使えるようにした事を考えてツバキにも使えるようにしておけば自分で交換するだろうと思ったのだ。
ヤスは知らなかったのだが、ツバキは服を自分で作り出している。厳密の意味では服ではなく皮膚の一部なのだ。しかし、そんなことを知らないヤスは下着と服が必要だろうと考えたのだ。
ヤスが何となく納得できる設計図ができたと満足した。タイミングを見計らっていたかのように、マルスからパソコンの設定が終了したと宣言が行われた。
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